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ミステリの祭典

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アリアドネの弾丸
田口&白鳥シリーズ

作家 海堂尊
出版日2010年09月
平均点7.17点
書評数6人

No.6 7点 あびびび
(2014/11/24 15:53登録)
海堂尊は初めて。医療関係の物語はあまり好きではなく、どこか敬遠していたところがあったが、まさかこれほど本格的な推理小説だとは思わなかった。しかし、実行犯が、弾丸の行方を微細に計算していたイメージが浮かばず、なんとなくすっきりしなかったが、警察に対して、いや法医学、司法解剖に対して警鐘を鳴らしていたのは好感が持てた。

しかし、白鳥さんは凄い。映像では誰が演じているのだろう?

No.5 7点 蟷螂の斧
(2014/03/13 22:38登録)
前半は官僚小説のようです。後半はタイムリミット型エンターテイメント+本格で楽しめました。ロジカルで犯人を追いつめる場面は結構迫力がありました。皮肉で辛辣な会話がテンポよく、ニヤニヤしながら読むことができました。

No.4 8点 E-BANKER
(2013/11/26 22:02登録)
バチスタシリーズの到達点とも言える本作。
すでにTVドラマ化もされており、映像で触れた方も多いのではないか?
当然ながら、本作も一連の「桜宮サーガ」としての一翼を担う。

~不定愁訴外来の田口公平医師はいつものように高階病院長に呼び出され、エーアイセンターのセンター長に任命されてしまう。そのため田口は、東城大学病院に新しく導入された新型の縦型MRI・コロンブスエッグの説明を技術者の友野から受けた。しかしその矢先、MRIのなかで友野が亡くなった。原因は不明、過労死と診断された。そして、ついに病院中を大きく揺るがす大事件が発生してしまう!~

これは大方の評判どおり、いや評判以上の秀作だろう。
これほどトリッキーでロジカルな本格ミステリーは久しぶりに読んだように思う・・・それほどの感覚。
文庫版の巻末解説ではなんと御大「島田荘司」が登場し、本格ミステリーとしての本作を褒めちぎっている。
(島荘自身も医療系の話はよく書いてるしね・・・)

島荘も指摘しているとおり、本作のトリック&ロジックの鍵となるのが「MRI」という存在。
MRIが如何なる特徴を備えているのかの理解なしでは本作を楽しむことはできない。
そして、もうひとつの「鍵」がタイトルにもあるとおり、「弾丸」ということになる。
弾丸をこういう方向性で取り扱っているのは別の作品で見たような気はするけど、これはトリックとしては強烈。
(まさに“島荘ばり”という表現がピッタリかもしれない)
こんなトリックを思いつくこと自体、作者がミステリーを愛している証拠なのだろうと思う。

その他については、いつもどおりの「海堂ワールド」が展開される。
特に本作では今までのシリーズ登場人物が勢揃いとでも呼びたくなるほどの豪華版。
何にもまして、本作での白鳥の名探偵ぶりは凄みすら感じさせる(これも“御手洗潔ばり”と言うべきか?)。
その分、田口医師はいつにも増して頼りなく、存在感の薄いまま終わった感がある。
そして、作者による「死因不明社会」に対する強烈な警鐘・・・

海堂ワールドの作品もかなり読んできたけど、いよいよ終わりに近づいてきた。
これだけシリーズを重ねてきてもこんなクオリティの作品を書けるなんて、改めて作者の才能と力量に驚かされた作品。
本格好きなら十二分に楽しめという評価。

No.3 7点 HORNET
(2011/05/05 16:16登録)
「本シリーズ(海堂作品)はミステリではなく,医療エンターテイメント」という評判を覆す快作。ロジカルモンスター・白鳥が,隙のないロジックで真犯人を追い詰めていくくだりは痛快であり,往年の探偵小説の解決編のようであった。各登場人物のキャラクターを描く腕は流石で,それぞれの個性が生かされ,うまくストーリーに絡んでいる。
 一つ目の事件の謎解きが少し突飛で雑な感じがしたが,なんといってもメインの事件の謎解きは,医療現場(というかMRI)の特質に基づいた納得のロジックで,現役医師である作者ならではの筋書きと感じた。シリーズを読み進めてきた読者はもちろん,「もうバチスタ・シリーズはいいかな」と感じ始めていた人にも,この作品は勧めるに値する。

No.2 6点 まさむね
(2011/02/06 22:11登録)
 ほほう。本格ミステリしてますね。氏は「医療エンタメ作家」と思っていたのですが…何とも嬉しい誤算(?)です。
 いやはや,これまでのシリーズとは一線を画していて,良かった。しかも登場人物のキャラ立ちはいつものとおり。楽しかったですね。

 難を言えば,前半が結構冗長だったことでしょうか。前半のみだと,また海堂節炸裂かぁ…と何度か投げ出しそうになりましたから… 中盤以降はミステリ度が増してきて一気読みでしたけどね。前半部で投げ出さなくて良かったなぁ…と。
 ちなみに,次回作の前宣伝も,まぁアリとは思いますけど,何とも長すぎるし,中途半端なんですよねぇ。ソコを削ってもっとコンパクトに…というか,すぐにミステリ部分に突入した方が良かったと思いますね。

No.1 8点 江守森江
(2011/01/14 07:50登録)
もはや海堂作品はミステリーの範疇外だと思っていたら、ナントビックリ!白鳥が名探偵役な本格ミステリだった。
それも、多数の伏線、些細な気付き、ロジカルな推理にCSI的科学捜査まで盛り沢山。
それでいてシリーズ本来の面白さであるキャラ立ち、海堂ワールドのリンク、医療問題に対する主張と論戦も全く損なわれていない。
事件の本筋とは関係ない部分の伏線とシリーズ展開(黒崎教授のエピソードなど)も楽しい。
何人かの登場人物が以降の海堂ワールドへの前宣伝的で投げっぱなしなのと証拠捏造には証拠捏造で立ち向かう白鳥の対応の甘さで最初の事件がスッキリ解決しない点にやや難を抱えるが、文句なしの面白さで満足感もあり御贔屓点も加味して満点(8点)とする。
※補記
あくまでシリーズ作品として存在している事と作者の作品世界がリンクしている為、いきなり本作を読んだら面白さは半減する。
でも作者の主張が勝った作品を何作も読むのは好きでないと苦痛になる。
つまり本作は、追い続けたファン限定なプレゼントだろう。

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