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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.86点 書評数:1195件

プロフィール| 書評

No.595 6点 ノッキンオン・ロックドドア
青崎有吾
(2016/06/30 22:46登録)
 裏染シリーズでお馴染みの作者の新シリーズ。
 How専門とWhy専門の2人の探偵を主役に据えた設定なかなか面白く、推理の反転に巧く結びつけています。また、考えられたプロットで、どの短編も非常にコンパクトながら、伏線、反転が綺麗に織り込ませています。ストレスなく読み進められると思います。
 個人的には、「髪の短くなった死体」、「十円玉が少なすぎる」、「限りなく確実な毒殺」が好みかな。


No.594 6点 誰も僕を裁けない
早坂吝
(2016/06/26 19:51登録)
 上木らいちシリーズの第3弾。
 個々の仕掛けの組み合わせは、なかなか巧いと思います。2視点で交互に語られていくスタイルもいい。
 でも、らいちの得意技があまり見られなかったことがちょっと残念かな。デビュー作が衝撃すぎたので、その印象に追いつくのはかなり大変だと思いますが…。


No.593 7点 「このミス」が選ぶ!オールタイム・ベスト短編ミステリー 黒
アンソロジー(出版社編)
(2016/06/19 19:28登録)
 「このミステリーがすごい!2015年版」に掲載された「オールタイム・ベスト国内短編ミステリーベストテン」作品を、5作品ずつ、『赤』と『黒』に分けて刊行したもの。ちなみに、ランキングは以下のとおりで、私は未読作品があった『黒』を手にしたもの。(第2位・第3位・第4位・第9位・第10位の作品を収録)
 第1位 戻り川心中(連城三紀彦)
 第2位 天狗(大坪砂男)
 第3位 達也が嗤う(鮎川哲也)
 第4位 赤い密室(鮎川哲也)
 第5位 押絵と旅する男(江戸川乱歩)
 第6位 妖婦の宿(高木彬光
 第7位 桔梗の宿(連城三紀彦)
 第8位 DL2号機事件(泡坂妻夫)
 第9位 第三の時効(横山秀夫)
 第10位 心理試験(江戸川乱歩)
 まぁ、いずれも名作中の名作なので敢えて語る必要もないと思うのですが、批判を覚悟して言わせていただければ、「天狗」の良さが正直よく分からないのですよねぇ。ダメな読者かなあ?


No.592 9点 湖底のまつり
泡坂妻夫
(2016/06/09 22:34登録)
 第1章の時点で妖しい香りが漂っています。第2章まで読みますと、何がどうなっているのか、私はいったいどこに連れていかれるのかと、完全に作者の掌で転がされてしまいます。真相については、確かに「普通はアノ方が気付くだろうなぁ。ちょっと無理があるかなぁ」といった思いはございますが、真相を知った瞬間の眩暈感の方がはるかに強かった。
 私にとっては、めちゃめちゃ好きなタイプの作品。ストーリー、プロットともに秀逸で、文体も含めて印象に残りそうです。複数の現役作家が、好きな作品の一つとして本書を挙げるのも、分かる気がします。(一方で、好き嫌いが分かれそうな作品でもあります。)


No.591 5点 ら抜き言葉殺人事件
島田荘司
(2016/06/04 23:19登録)
 日本語に関する薀蓄だとか、それはそれで面白かったのだけれども、吉敷シリーズの中での小粒感は否めないかな。


No.590 6点 パズル崩壊
法月綸太郎
(2016/05/29 23:00登録)
 8作で構成されるノンシリーズの短編集。最終話のみ法月綸太郎センセが登場するのですが、これは書きかけ長編の第1編のみが掲載されているものであって、探偵役にすらなっていない(謎すら提起さていない)段階のもの。したがって、ノンシリーズの短編集と言って差し支えないでしょう。
 内容としては、思ったよりも崩れていなかったなぁ…という印象。確かに、読み進めていく順に変格度が増してくるのですが、骨格はしっかりしているので、むしろ、変化が楽しめたとも言えます。「トランスミッション」、「シャドウプレイ」辺りが好み。決して読みやすいとは言えないけれど、「カットアウト」も印象に残りそうかな。


No.589 7点 戦場のコックたち
深緑野分
(2016/05/21 20:40登録)
 タイトル&表紙のイラスト、さらには「戦場という非日常における日常の謎」という触れ込みから、もっと「コック」の役割が大きいのかと思いきや、実際は「戦場」という舞台設定の意義の方が大きいですね。
 第二次世界大戦の史実を活かしながら、戦争と人間性について、決して重々しくはなく、しかしながら考えさせる内容、学園モノとは一味違う青春小説としての側面、伏線の配置も含めて考え抜かれた構成などなど、盛りだくさんの感想を抱きました。前半は冗長な印象も受けたのですが、読みどころは中盤以降でグイグイ読まされましたよ。


No.588 5点 ラプラスの魔女
東野圭吾
(2016/05/08 11:45登録)
 「脳」を題材とした、作者らしい作品。ストーリーテラーぶりは相変わらずで、どんどん読まされます。その辺りはさすが。
 一方で、伏線もなく、読まされているうちに「へぇ~」と真相がわかって…というスタイルには、様々な評価があり得ると思いますね。それと、これは言いっこなしなのでしょうが、現実味が…。


No.587 7点 箱庭図書館
乙一
(2016/05/05 12:01登録)
 読者から投稿されたボツ原稿を乙一氏がリメイクして発表するという、集英社の企画「オツイチ小説再生工場」から誕生した短編集。
 それは乙一氏の作品と言えるのか?といった意見もありますでしょうが、ネタ元が複数なだけに、内容もバラエティに富んでいますし、これまでの乙一氏にはなかったタッチの短編も読めたりしましたので、一読者としては「アリ」かなと思います。
 などと書きながら、ベストは収録作中で最も作者らしさを感じた「ホワイト・ステップ」。各短編に緩やかな繋がりを持たせているのですが、この作品を最終話に持ってきて「オツイチじんわり系」をかまされると…うーん、弱いんですよねぇ、参りました。他の収録作品の中では「コンビニ日和!」も好きかな。
 まぁ、ガチガチなミステリもいいけど、ちょっと違う気分で読んでみようかな…という方はどうぞ。


No.586 6点 リバース
湊かなえ
(2016/05/03 22:14登録)
 測量ボーイさんの書評のとおりで、謎の一つ(告発文の犯人)は容易に想像できます。もう一つの謎(事故の真相)は、確かに伏線はあるものの、明確な謎としての位置づけが弱いせいもあって、突如として真相が告げられる感じ。そのサプライズも嫌いではないのですが、正直、既視感のある結末ではあります。
 とはいえ、事故死した友人の過去を調査していく過程、皆の心の葛藤等々、読みやすい筆致でグイグイ入り込ませる展開は流石です。楽しめましたね。


No.585 5点 陽気なギャングは三つ数えろ
伊坂幸太郎
(2016/04/26 22:52登録)
 「陽気なギャング」シリーズの三作品目。前作から9年の年月を経ているそうです。
 エンタメ小説として標準以上には楽しめたと言えるのかな。一応、密室的な謎も無くはないのですが、まぁ、これは遊び心の一環といったところでしょうか。(「密室」とか書いちゃいましたが、決してココだけを期待してはいけませんよ。念のため。)
 一方で、前二作を読まれている方にとっては(現実には、そういう方がこの本を手にする可能性が高いわけですが…)、想定の範囲内というか、水戸黄門風の予定調和感を抱くものと思われます。敵に「仕返し」するのであれば、もっと直接的で簡易な方法もあるだろうに…という、それを言っちゃあお終いだと認識しつつの率直な感想も、正直ございました。
 総合的に、この点数で。


No.584 7点 その可能性はすでに考えた
井上真偽
(2016/04/16 11:48登録)
 「全てのトリックが不成立であることを立証しようとする探偵」という発想自体がまずは面白いし、各々の刺客との論理合戦もなかなか楽しいですね。とはいえ、一番の読みどころは3刺客登場後の展開でして、全体のプロットは極めて秀逸だと思います。作品の中核部分は、バリバリの本格指向です。(ただし、最終的に肩透かし感を抱く可能性もなくはないかな)
 一方、多分にラノベ的雰囲気を漂わせており、好き嫌いはあるような気がします。私も読み始めはちょっと辛かった…。無論、読み進めていくうちに、謎の不可解さを含めたプロットの巧さに包まれてしまいましたが。
 ちなみに読中、私もHORNETさん同様、円居挽「ルヴォワールシリーズ」が頭をよぎりましたね。


No.583 6点 黒野葉月は鳥籠で眠らない
織守きょうや
(2016/04/02 18:55登録)
 新米弁護士を主人公とする連作短編集。法律をポイントとした転換がなされ、なかなか面白い読み味です。現役弁護士の作者さんならではといったところでしょうか。(だからこそ、法律を学んだ方であれば、途中でネタに気付くであろう短編もありそうです。)
 ベストは「三橋春人は花束を捨てない」で、終盤の転換がお見事。語弊を恐れずに言うならば、「絶妙な後味」でしたね。他の三篇もそれぞれに違った面白味があって、良かったですよ。


No.582 5点 真実の10メートル手前
米澤穂信
(2016/03/28 22:48登録)
 「さよなら妖精」、というか最近では「王とサーカス」で名を馳せる、太刀洗万智を主人公とした短編集。
 物語の時系列的には、「王とサーカス」の前ってことになるのかな。収録短編自体が、それなりに一定の期間を経て書かれており(2007年~2015年)、作中の太刀洗万智の職業も新聞記者からフリーの記者に変わったりしています。よく言えば、太刀洗万智に対する作者の想いの変遷が滲んでいますし、思い切って言ってしまえば、何とも中途半端で面白味が薄いような気もします。短編集と長編を単純比較するのは気が引けますが、「王とサーカス」と比べると…。
 いや、確かに巧い作品もあるのです。でも、無理やり「報道のあり方」にというようなテーマに結び付けたと感じずにはいられない作品もあって、個人的には米澤氏に対する期待が大きいだけに、このくらいの点数にいたします。


No.581 7点 王とサーカス
米澤穂信
(2016/03/23 20:26登録)
 新聞記者を経てフリージャーナリストとなった太刀洗万智。彼女を知ろうと思い「さよなら妖精」を先読したのですが、特段読んでいなくても問題ありませんでしたね。すんなりと入り込めます。
 さて、各種ミステリランキングで評価の高かった本作。2001年6月に実際に発生した、所謂「ネパール王族殺害事件」を扱っており、舞台となったネパールの首都カトマンズの異国情緒も含めて興味をそそられます。
 一方で、謎の解明という側面で多少の肩透かし感を抱いたのは事実です。また、王族殺害事件の真相について新たな切り口を見せてくれるのかと思いきや…という印象も残ります。
 しかし、ジャーナリズムのあり方という古くて新しい問題と、がぶり四つに組んだ姿勢は評価すべきでしょう。奥深く、読みごたえのある作品ではあります。


No.580 5点 人影花
今邑彩
(2016/03/19 22:03登録)
 これまで作者の個人短編集に収録されたことのない作品をまとめた短編集。サスペンス溢れる展開の中、ホラーとして着地するのか、反転があるのか…と、ついつい読み進めさせるあたりは流石です。
 「疵」、「鳥の巣」、「神の目」の3短編が好み。他の作品のレベルはまちまちといった印象ですが、氏らしさを感じることのできる短編集と言えましょう。


No.579 6点 江ノ島西浦写真館
三上延
(2016/03/13 22:40登録)
 ミステリーとしては微妙、というか謎自体に取ってつけた感が強いため、その反比例でインパクトは弱くなっているような気がしますねぇ。
 とは言え、先を読みたくさせる書きぶりは、流石にベストセラー作家。スラスラ読ませつつ、綺麗にまとめています。
 この作品が初の単行本というのも、言われてみればそうなのですが、何か新鮮な気持ちがしましたね。ビブリア古書堂ファンには、ちょっと違った雰囲気(似た点も多いのだけどもね)を楽しんでみるのも良いのではないでしょうか。


No.578 5点 恋文
連城三紀彦
(2016/03/12 18:22登録)
 昭和59年の直木賞受賞作品。ミステリーというよりも、そういった味付けも一部ある恋愛小説といったところでしょうか。
①恋文:正直、男の心情も女の心情もよくわからない。私が未だにお子ちゃまだからなのだろうか。ともに身勝手なような気がするのだが。
②紅き唇:なかなか沁みます。何年か前の某作家の作品って、この作品にインスパイアされたのかな?
③十三年目の子守唄:個人的に最も作者らしさを感じた短編。反転の妙ですね。
④ピエロ:女性登場人物の心理が分かるようで、よく分からない。身勝手なような気がするなぁ。ひたすら、哀しいなぁ。
⑤私の叔父さん:うーん、よく分からない。結論はこれでいいのだろうか?男も女も身勝手すぎると思うのだが…。

 ③と②は良かったかな。他の3編は、なんだか、難しくてよく分からん。身勝手なような気がするのですがねぇ。


No.577 8点 図書館の殺人
青崎有吾
(2016/03/06 19:13登録)
 ロジック全開の青崎・館シリーズ3作目。直球ど真ん中の本格パズラーはやっぱり楽しいですな。
 個人的に好まないダイイング・メッセージを扱ってはいますが、当然それだけではないし、伏線の配置と回収も見事。名探偵コナンなどの実作品を使った遊び心や、登場人物の会話も楽しく、飽きさせない工夫にも感心。
 正直、動機は理解しがたいというか、相当な矛盾を感じるのですが、まぁ、やむを得ないのかなぁ…。
 ちなみに、高校生探偵・裏染天馬は、次第にまともになってきているような気がしますね。続編も楽しみ。


No.576 5点 七色の毒
中山七里
(2016/02/28 18:09登録)
 タイトルどおり、色にまつわる7つの短編で構成されており、いずれも毒のある結末であります。探偵役は「切り裂きジャックの告白」の犬養隼人刑事。
 高速バス事故、いじめ自死、保険金目的殺人、アルツハイマー、性同一性障害・・・などなど、社会問題を扱った作品が多く、「社会派短編」とでも呼びたくなるテイスト。非常に読みやすく、入り込みやすい展開です。
 一方で、結末に毒が用意されていることが「お約束化」しているため、真相はかなり想像しやすいかな。そこを逆手にとるってのも、悪くなかったような気がしますね。
 ちなみに、最大の毒は、第3話の「白い原稿」。かなりストレートな設定だけど、いいのかなぁ、大丈夫なのかなぁ…、ってところが読みどころ。個人的には「へぇぇ、そうなのか、ならばソレを(今更だけど)一度読んでみようか…」って気になったから、まぁ、いいのかな。

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