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ミステリの祭典

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家守

作家 歌野晶午
出版日2003年11月
平均点6.21点
書評数14人

No.14 6点 虫暮部
(2022/04/16 12:23登録)
 「人形師の家で」、ラストの台詞のような事情があるなら、共犯者を呼び出す必要は無いよね。
 「転居先不明」、偶然をどこまで許容するかは悩ましいところだが、人を殺した夜に偶然もう一人の人殺しがやって来た? うーむ……。

No.13 7点 パメル
(2021/03/22 08:38登録)
家を守ると言えば「ヤモリ」が思い浮かぶが、人が家を守るとはどういう事か。家にまつわる捻りの効いた本格ミステリ5編を収録した短編集。
「人形の家で」過去の嫌な記憶や事件の真相が幻想的な趣向を含めて暴かれていく展開が楽しめる。
「家守」完全犯罪の崩壊と「家」の封印からの解放の重奏を奇抜な殺人トリックが彩る。
「埴生の宿」認知症の話し相手をするだけという好条件のアルバイトが奇矯な死を招く。
「鄙」官能小説家の兄弟が遭遇した田舎医者の事件カルテ。時代背景、人里離れた集落だからこそ起こりうる真相にゾッとする。
「転居先不明」都会に引っ越してきた夫婦が、晒される好奇な目の正体とは。安すぎる物件の罠が巡る真相。ブラックなオチが痛快。
「家」といいうテーマの縛りもあるが、何より各話が二重構造になっているという凝りように感心させられる。いずれもミステリとしての企みに満ちながら、執着と葛藤がせめぎ合う。抒情と郷愁、因習と因果、皮肉と諧謔といったツボを押さえ、予想外の方向へ導いてくれる。

No.12 7点 名探偵ジャパン
(2019/05/13 16:51登録)
一話目の「人形師の家で」を、なかなかいい心地で読んでいたところ、ラストの人形トリックで、「えー」となりました。あの状況に追い込まれても、ああするかなぁ? トリックのために人間を動かす、大山誠一郎イズムを感じました。
続く「家守」と「埴生の宿」は、完全な島荘イズムが込められていますね。特に「埴生の宿」の、あの豪快な仕掛け。島田荘司が書いたと言われても私は信じますよ。
残る「鄙」と「転居先不明」も、ついでに無理矢理他者の作風に当てはめると、正史イズムと乱歩イズムになるでしょうか。

以上五編。作者の引き出しの広さを再確認させる、好中編集でした。

No.11 7点 メルカトル
(2019/01/03 22:35登録)
これはかなりの高水準の短編集だと思います。全て家に纏わる物語に体裁としてはなっていますが、それぞれ違ったタイプの作品です。例えば表題作。本格物で、現実的かどうかは別にして、相当奇妙奇天烈な密室トリックを用いていますが、その発想力は見事としか言いようがありません。しかもその裏に隠された真実は、驚嘆に値します。一見何でもないような出来事が伏線となって読者を翻弄します。
『人形師の家』は明らかに島田荘司の影響を受けていると思われる作風ですね。冒頭のピグマリオンの神話からラストに至るまで、巧妙に話を繋げる高等テクニックには脱帽するしかありません。
『転居先不明』は異色な作中作の変形であり、そのプロットは思わず上手いと拍手を送りたくなります。

ほかの作品にも言えることですが、全体を通して構成の妙は歌野作品の中でもトップクラスなのではないでしょうか。この作者は短編のイメージがあまりないと思いますが、逆に大胆な着想が余計な夾雑物を排しており、トリックやプロットが際立っているように感じました。適度に捻りも効いていて、抑揚に富んだ書きっぷりは他に類を見ないものとなっていると思います。
いずれ劣らぬ佳作揃いの5篇。光文社文庫刊を新たに角川文庫から再刊行されて、入手しやすくなっていますので、是非読んでいただきたいものです。

No.10 7点 まさむね
(2017/04/16 23:36登録)
 捻りの効いた作品が揃った、高水準の短編集だと思います。
①人形師の家で:ギリシャ神話から始まる、多層的な構成が一本の線で結ばれる様が美しい。
②家守:バカミス+構成の妙。
③埴生の家:裏の裏は…的な発想が実に面白く、秀逸。
④鄙:様々な意味での“密室モノ”。横溝を想起させる雰囲気で余韻も印象的。
⑤転居先不明:正直、この作品だけは消極的な評価。

No.9 5点 測量ボ-イ
(2011/02/06 17:02登録)
代表して、表題作「家守」を書評します。
結構斬新な密室トリックでした。やや無理っぽいところが
密室の巨匠ディクスン・カ-を彷彿とさせます。
殺された奥さんが家を立ち退かない理由には成程と思わせ
ました。

他の作品も、可もなく不可もなしで。
採点は5点or6点で悩みますが、後者だと他の皆さんと
同じになってしますので、天邪鬼の僕は前者でいきます。
(笑)

No.8 6点 HORNET
(2011/01/16 09:36登録)
 表題作のトリックは,推理は出来ましたが愕然としました。これは現実的に可能なのでしょうか。プロバビリティーの犯罪を題材とした「転居先不明」は,夫婦二人暮らしの家の中で展開される,その様子を思い浮かべながら読んでいるとなんだかぞっとしました。
 ここまでの採点者オール6点に合わせたわけではないですが,同じになりました(笑)。

No.7 6点 kanamori
(2010/07/13 23:44登録)
裏・本格系統のミステリ短編集。
「正月十一日、鏡殺し」ほどの毒気は感じられませんでしたが、各編とも何らかの企みに満ちた好短編集。

No.6 6点 E-BANKER
(2010/07/01 22:23登録)
「家」をテーマに置いた短編集。
相変わらず短編はうまいし、冴えてます。
①「人形師の家で」=2つの一見関係ない話が交わったとき、過去の意外な事件が明らかに・・・なかなか面白い
②「家守」=一種の密室もの。過去の誘拐事件については最初から察しがつきますけど・・・
③「埴生の家」=個人的には本作中ベスト。分かってしまえば単純なんですけど・・・
④「鄙」=タイトルの意味がよく分かりませんでした。話自体は地味。
⑤「転居先不明」=特に捻った作品ではありませんが、何となく後味の悪さを感じます。
以上5編。
ということで、トータルでは水準級といったレベルでしょうか。

No.5 6点 yoneppi
(2010/05/22 10:17登録)
同じ家でも初期の作品よりいい。短編も意外と向いているかも。

No.4 6点 simo10
(2010/02/08 12:14登録)
-ネタバレ含みます-

「家」をテーマにした5つの短編集。

①「人形師の家で」:他者の評価にあるように、確かにギリシャ神話の絡ませ方が巧い。しかし真相はちょっと(?)エロい。
②「家守」:トリックは小粒だと思ったけど真相はなるほど。「有罪としての不在」的な構成も作者ならでは。
③「埴生の宿」:実は裏がなかったのが逆に裏になっている。個人的には雰囲気が凄く好き。
④「鄙」:共犯モノは好きじゃないけど、これは納得。「鄙」という言葉を始めて知った。
⑤「転居先不明」:オチがダーク。「鏡殺し」に収録して欲しい。

どれも地味な作品でありながら良くできています。
文章がうまくなっている感じを受けるし、歌野氏らしさが楽しめます。

No.3 6点 いけお
(2008/09/15 16:05登録)
家をテーマにした高水準な佳作短編集。

No.2 6点 シーマスター
(2008/06/17 21:08登録)
作者が好きな、「家」をモチーフにした短編作品集。

・「人形師の家で」・・・ギリシャ神話の絡ませ方が巧い。
・「家守」・・・このトリックは成功せんだろう。 プロローグは・・なるほど。
・「埴生の宿」・・・人を小バカにしたような仕掛けが面白い。
・「鄙」・・・最近こういう雰囲気も割りと好きになってしまったが、あのトリックはチョットふざけてるよね。  隠蔽の動機も受け入れ難い。(が羨ましい)
・「転居先不明」・・・凝った構成なのにオチはありきたり。

全編に渡り、歌野氏らしさがそこそこ出ていてハズレではない短編集だと思う。

No.1 6点 おしょわ
(2007/10/13 23:03登録)
全体的に地味ですが悪くないです。
「埴生の宿」は一発ネタが島田っぽいし、「鄙」とか妙に横溝っぽい。

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