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ミステリの祭典

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ぼくのミステリな日常
若竹七海シリーズ

作家 若竹七海
出版日1991年03月
平均点6.47点
書評数19人

No.19 5点 パメル
(2021/10/18 09:11登録)
作者のデビュー作で、社内誌の連載という形式の12編からなる連作短編集。
「桜嫌い」藤子は桜が嫌いな「ぼく」に日本人の風上にも置けないと言いながらも、もう一人の桜嫌いの話を始める。
「鬼」「ぼく」が公園で出会った姉は「とべら」の木を切ろうとしていた。とべらは妹の敵だと言うのですが。
「あっという間に」突然訪ねてきた寒川のお土産は「ぼく」の嫌いなミックスナッツ。ある疑惑の調査でもらったそうです。
「箱の虫」従妹の夏見の誕生日に「ぼく」はビデオを一緒に見ながら夏見の失敗談を聞くことに。
「消滅する希望」「ぼく」の部屋を訪れた滝沢は、毎年夏になると朝顔の女の夢を見るという。
「吉祥果夢」「ぼく」が宿坊で出会った岸本という女性は、妊娠を望んでいた女性の話を始める。
「ラビット・ダンス・イン・オータム」「ぼく」の業界紙の会社での初仕事は編集長の机の整理。そこには大事なメモがあった。
「写し絵の景色」「ぼく」が久しぶりに会った松山は、盗みの疑いを掛けられているのだと話す。
「内気なクリスマスケーキ」「ぼく」は友人らと自然料理店へ。そこにあったシクラメンを見て友人は思い出を語り始める。
「お正月探偵」酔って電話を掛けてきた姉は「ぼく」に「友人には気をつけなよ」と言う。
「バレンタイン・バレンタイン」「ぼく」は美奈子からの電話で、バレンタインチョコ売り場にいた奇妙な女性の話を聞く。
「吉凶春神籤」公園で本を読んでいた「ぼく」は大学時代の芳野に会う。外見はまるで違っていた。
笑いあり、ほろ苦さあり、不気味だったり、心温まるものであったりとバラエティ豊か。そのそれぞれに小さな謎が含まれており、「ぼく」がそれを解明していく。花や食べ物など季節感にもこだわっている印象。それぞれの短編は「編集後記」で一つにまとめ上げられる。その構成には力量を感じる。ただ、ストーリー、謎自体も小粒で大人しい感じ。

No.18 6点 まさむね
(2017/05/21 11:57登録)
 12の短編に組み込まれた伏線が終盤で回収されて全体の形を見せるという、連作短編としての面白さは十分にあります。(作中作を駆使した1本の長編という見方もできるのでしょうが。)
 一方で、個々の短編(若しくは個々の作中作)自体の面白味はマチマチで、次々にページを捲りたくなったかと問われると、ちょっと辛い部分もあったかな。おいしい終盤まで読まずに放棄する方もいるかも。
 「ちょっと長めの編集後記」における全体像垣間見え感も勿論いいのだけけども、個人的には最終盤の「配達された最後の手紙」におけるゾクゾク感の方が記憶に残りそうかな。

No.17 7点 メルカトル
(2017/03/27 22:00登録)
再読です。
凝った構成の、創元社の伝統を踏襲した連作短編集。と言うか、もはやこれは短編集の枠を超越しているので、トータルで長編とすべきなのかもしれません。或いは変形の作中作か。
それにしても若竹七海がこの路線で本格ミステリを書き続けていたなら、今頃違った意味で人気のミステリ作家の大家になっていたのではないかと思うと、残念でなりません。
各短編はそれぞれ趣が違っており、読んでいて楽しいものではないかもしれませんが、抑揚があっていいんじゃないかと思います。よく注意して読まないと、最後の種明かしには驚かされるばかりです。小さな伏線をかき集めた「編集後記」は圧巻の騙りで、只々なるほどと唸るしかありませんでした。
とにかく本作は個人的に作者の最高傑作で、別格の扱いとなります。
蛇足ですが、ハードカバーの装丁と挿絵は誠に素晴らしい出来で、絵心のない私ですら感心してしまうほどでした。これだけでも1点プラスしたいくらいですが、7点は勿論純粋に作品の評価点ですよ。

No.16 7点 E-BANKER
(2013/07/17 22:25登録)
1991年に発表された作者デビュー作。
ある建設会社の社内報に連載された短編という形式を借りた、企みに満ちた連作短編集(と呼ぶべきか、連作長編と呼ぶべきなのか)。

①「桜嫌い」=4月号。変な形のアパートで起こる火事がテーマなのだが、この文書だけでは建物の様子(部屋割りとか)が想像できなかった。でも、これが謎の鍵となる。
②「鬼」=5月号。両親を亡くした姉妹が主人公。妹を狙っているらしい怪しい風体の男から、妹を守ろうとする姉。しかし、姉の留守をつき、妹が襲われてしまう(?) しかし、最後は反転・・・
③「あっという間に」=6月号。町内の野球チームに持ち上がる「ブロックサイン漏れ」事件(のんびりしてんなぁ)。フランス料理に引っ掛けた暗号かと思いきや、まさか「○○え歌」が解読の鍵になるとは・・・(しかも絵付き)。
④「箱の虫」=7月号。大学のサークル仲間と出掛けた箱根旅行。「箱」とは芦ノ湖ロープウェイのことなのだが、その箱の中から男の子が消えてしまう。ただ、このオチはなぁ・・・
⑤「消滅する希望」=8月号。これは大事な「号」だな。ついに「殺し」までが登場して、ミステリーっぽい一編。謎の鍵は「朝顔」。作中にも触れられているが、実は謎の多い花なんだなぁ。
⑥「吉祥果夢」=9月号。事件の舞台は和歌山・高野山。宿坊で出会った一人の中年女性は、実は・・・という展開。これは確かに不思議な感覚の良作。
⑦「ラビット・ダンス・イン・オータム」=10月号。これも一種の暗号を扱った作品。最近読んだアシモフの「黒後家蜘蛛の会」なんかで頻繁に登場するプロット。そういえば、作者は「黒後家蜘蛛」シリーズのファンらしいし・・・
⑧「写し絵の景色」=11月号。大学時代の仲間が久し振りに集まった飲み会で、昔女傑と呼ばれていた女性が職場での失敗で暗く沈んでいた・・・。その失敗談に係る謎がテーマなのだが、オチは結構脱力系。
⑨「内気なクリスマスケーキ」=12月号。これはラストに炸裂する、いわゆる典型的な「叙述トリック」が決まっている。ただ、動機はイマイチ納得できないのだが・・・
⑩「お正月探偵」=1月号。「無意識に大量の買い物をしてしまう病」にかかってしまった友人からの依頼で、後を付けることになった主人公。この買い物にはある大きな謎が隠されていたことが判明するのだが・・・
⑪「バレンタイン・バレンタイン」=2月号。家庭教師の男性と、女生徒との電話での会話。何となく違和感を感じていたが、そういうオチか・・・
⑫「吉凶春神籤」=3月号。ラストはよい話に・・・。

以上の12編が、各号に掲載された短編。
ただし、本作の仕掛けは終章の「編集後記」にて明らかにされる。
本作がこういう仕掛けになっているという予備知識を持って読み進めていたのだが、それでもよくできてると思ったし、こういう「企み溢れる作品」は好きだ。
こういうミステリーがあっても全然いいのではないか。そんな感想。

No.15 4点 蟷螂の斧
(2012/06/26 22:26登録)
骨組みは凝っていると認めざるを得ないのですが、短編はワクワクして読む雰囲気はありませんでした。”先に読んでほしい解説”(異例扱い?)に、「短編の形式を取っているが、後で全体に関わってくる」と記載されています。短編が面白ければ、このようなことは必要ないと思いました。

No.14 5点 りゅう
(2011/07/25 22:45登録)
 建設コンサルタント会社の社内報の編集長になった若竹七海(登場人物)が匿名作家に依頼した12篇の短編ミステリと編集後記等から構成されている作品。短編集として捉えるべき作品ではなく、全体で一つの意味を持つ長編として捉えるべき作品だと思います。12篇の短編は、ミスディレクションによる錯誤を狙ったものもありますが、解決に必要な事実が後出しであったりして、真相はことごとく拍子抜けするものでした。「消滅する希望」や「吉祥果夢」のように、ミステリとは言えない作品もあります。長編として見た場合には、この2作が重要な意味を持っています。「吉祥果夢」は、独立した作品としても味わいのある作品ではありますが。編集後記で、編集長が匿名作家に会い、12篇のミステリの内容から推理した事柄を語るのですが、着眼点として面白い部分はありますが、飛躍しすぎている部分もあって、(最終的な真相も含めて)さほど感心できるものではありませんでした。

No.13 5点 seiryuu
(2011/02/02 16:53登録)
文章にメリハリが感じなくて寝そうになった。
期待してたよりあっさり終わってしまった。
そこそこ面白くてゆるく楽しめました。

No.12 8点 あるびれお
(2009/11/18 08:09登録)
刊行時に読んでいたのだけれど、なんとなく久しぶりに読みかえしてみた。表現の刺々しさとか、コージー路線ではない若竹さんのスタート地点のような気がする。
連作短編集の最後までいってもう一ひねり、というやり方、東京創元の十八番のように思うけど、その中ではパイオニア的一冊だと思う。

No.11 8点 Tetchy
(2008/08/01 20:10登録)
みなさんが云うように、正直な感想を云えば、各短編それぞれの謎のクオリティと、物語としての面白さには出来不出来の差がはっきりあり、全てが手放しで賞賛できるものではない。
しかし、この一種未完成とも筆足らずとも思える短編が最後になって一枚の絵を描く時、それらが単なるある1つの事件を告発する材料に過ぎないことが解る。
そういった意味で云えば、やはりこの短編集は普通の短編集にはない1つ秀でた何かを持っているのは認めざるを得ない。

最後、私はゾクリと来たのだが、意外とそういう感想がないのに驚いた。

そんでもって作中で出てくる「ぼく」のニックネーム、「ちいにいちゃん」がどうしても解らないのだが、誰か解る人いるだろうか?

No.10 7点 dei
(2007/12/30 21:16登録)
こういう作品は好き
倉知淳の作品で似たようなのを読書済みだったが楽しめた

No.9 6点 ぷねうま
(2007/09/19 22:55登録)
まあ、ラストの収束の仕方とかも面白く読めてそこそこ満足したのだけれど、この人の他の作品を読んでみたいとは思わなかった。

No.8 8点 なの
(2005/06/06 23:10登録)
文章にはまだまだ甘さがありますが、後の作品の素となる魅力に溢れています。
短編が連なり大きなラストへ・・・伏線の収束がとても心地好い作品でした。

No.7 8点 ピンクティンク
(2004/10/27 12:31登録)
若竹さんの作品の中で一番好き☆こういう本自体に仕掛けがあるものは、内容が身近なもので収めてありからこそ全体が際立つと思った。何気ない日常にミステリはあふれているという視点を与えてくれる作品。流れやオチも良い。いい意味で裏切ってくれますよ。

No.6 6点 えむ
(2003/03/07 21:11登録)
短編集だが、個々の内容が最終的に収斂するところが面白い。

No.5 10点 みっくん
(2002/08/19 00:48登録)
 社内報に載せる連載小説ということでそれぞれの月に載せたミステリーが短編になっています。面白いのがそれぞれの月の社内報の目次が載っていてその部分もチェックしてみると作者の遊び心が感じられてより楽しめます。短編1つ1つで見るとこの採点は高いのでは?と思う人がいるかもしれませんがラストまで読んでもらうと多少は納得してもらえると思います。今のところ、若竹さん作品で1番好きな作品です。

No.4 6点 okuyama
(2002/02/08 23:41登録)
「ミステリ?」って話もあったけれど、
それぞれ味があって楽しめたし読みやすい。
伏線→オチがよく考えられていると思う。

No.3 5点 小太郎
(2001/09/19 18:26登録)
ひとつひとつはイマイチ。
最後に全編を通したオチがあってすくわれました。

No.2 7点 はこ
(2001/04/20 20:03登録)
デビュー作品なので、
ちょっとぎこちない部分はあるけど、
それなりに楽しめます。

No.1 5点 馨子
(2001/04/19 13:01登録)
口調があまり好きじゃないのを我慢してしばらく読んだけど、ちっとも盛り上がってこないので古本屋に売ってしまった。全部読んでないので5点。最後まで読んだらおもしろかったのかなぁ。

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