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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:1230件

プロフィール| 書評

No.710 6点 ルピナス探偵団の当惑
津原泰水
(2017/12/06 22:20登録)
 軽めの学園系ミステリかと思いきや、収録3話とも結構本格指向の強い作品でしたね。
 ベストは最終話の「大女優の右手」か。死体運搬トリックはかなり強引で、誰にも気づかれずに実行することは不可能だろうと思うのですが、右手切断のホワイの見せ方には感心しました。
 強引さが気になった点は正直他の作品にもあったのですが、メインメンバー達の軽妙な会話も含めて、私は結構楽しく読めたかな。


No.709 7点 メイン・ディッシュ
北森鴻
(2017/11/29 23:58登録)
 連作短編形式の長所を活かした、上質な作品と言えるのではないでしょうか。登場人物がなかなか魅力的なうえ、そのキャラを最終的には伏線の一部としている辺りも心憎い。
 気になる点が無いと言えば嘘になるのですが、個人的には、全体構成の妙と読み味の良さを積極的に評価したいですね。それと、登場する料理が何とも美味そうで、まさに作品に絶妙の味わいを添えている辺りにも好感。


No.708 6点 Y駅発深夜バス
青木知己
(2017/11/25 18:34登録)
 好短編集。読者挑戦モノあり、ホラーテイストあり、倒叙形式ありと、バラエティに富んでおり、かつ、反転も噛ませている点が好印象。ページをめくらせる力量も確かです。
 マイベストは、雰囲気満点で次々とページをめくらされた「九人病」。
 表題作も幻想的で面白いのだけれども、パーキングエリアの件が判りやすかったことと、このトリック、実際にやればおそらく失敗する(簡単にばれる)であろう点で、ややマイナスか。
 「猫矢来」の印象も良いのですが、虫暮部さんがおっしゃるとおり、周りがもっと警告するべきではなかったか、という疑問がどうしても残ります。
 最終話「特急富士」は、ダブル倒叙とも言えるプロットで、ありがちなネタを活かしている点が面白かったかな。


No.707 5点 ビブリア古書堂の事件手帖7
三上延
(2017/11/23 21:52登録)
 シリーズの一応の完結編だそうで、私としては正直「ここまで読んできたのだから、最後も読まねば」という、ある種の義務感(?)で手にした次第であります。
 今回のテーマは「シェイクスピア」。私は全然詳しくないので、結構勉強になりましたねぇ。そして、またまた悪人が登場するのですねぇ。個人的には、このシリーズ、古書好きイコール悪人or変人っていう印象を与えているような気がするのですが、スミマセン、私の思い込みだけかもしれませんね、すみません。
 まぁ、楽しめはしたのですが、一方で、栞子さんと智恵子さんって、何で仲違いしてたんだっけ?というか、智恵子さんって母親としてダメダメ過ぎない?最後が良ければ全て良しなの?的な疑問も残ったかな。


No.706 6点 素敵な日本人
東野圭吾
(2017/11/18 11:45登録)
 9編から成るノンシリーズの短編集。そつがないよなぁ、というのが率直な感想ですね。1編30ページ程度の分量の中で、スッと物語に入らされて、ストンと落とされる感じ。
 落され方が印象的な「レンタルベビー」と、グッときた「水晶の数珠」が良かったですかね。逆に、倒叙形式の2編はそうでもなかったかな。
 全短編に独創的な仕掛けが施されている訳ではないので、どのような期待感をもって読まれたかによって評価は分かれるような気がしますが、個人的には、こういう安心して読める短編集って嫌いじゃないです。


No.705 5点 τになるまで待って
森博嗣
(2017/11/12 18:37登録)
 「手品」のトリックは判りやすかったですねぇ。これ、その場にいたら絶対に気付くと思うのですよねぇ。でも、これを捨てネタにして、「事件」の真相に一捻り加えるお考えなのね…と期待していたら、あらら、犀川センセ登場であっさり解決しちゃいましたねぇ。うーん、そうなのね。
 とはいえ、読みやすかったこと、さらに、もう暫くこのシリーズを読み進めたくなったことも事実なので、この採点にします。


No.704 3点 痛み かたみ 妬み
小泉喜美子
(2017/11/09 22:45登録)
 中公文庫版で読了。1980年、双葉社刊行の短編集に、4短編を増補して再編集したものだそうです。
 表題となっている3作品も含めて、正直、結末が容易に想像できたり、「それで?」と問いかけたくなるような作品が多かったですね。うーん、「入手困難・幻の短篇集の増補復刊」という謳い文句に惑わされちまったなぁ…って感じ。
 ちなみに、増補した4短編のうち3作品は少女向け月刊誌に掲載されたものらしく、相当なイマイチ感が漂っています。最終話の「ヘア・スタイル殺人事件」などは、イマイチどころか、これってどうなの?というレベル。読者挑戦モノというか、クイズスタイルなのだけれども、ちょっと痛すぎたかな。


No.703 5点 サンタクロースのせいにしよう
若竹七海
(2017/11/04 22:42登録)
 友人の紹介で、一戸建ての家に住む女性(銀子さん)と同居することとなった女性(柊子)が主人公。料理や家事を行うことで家賃はタダ。さらに、銀子さんは有名俳優の娘で、極めてマイペースなお嬢様で…という設定。
 ビターな展開も多少あったけれども、同居する2人を含め、個人的に憎めない登場人物が多くて、全体的に読み心地は良かったかな。とはいえ、ミステリとしての評価は消極的にならざるを得ないかな…ということで、この採点に。


No.702 7点 ホワイトラビット
伊坂幸太郎
(2017/11/03 22:50登録)
 仙台の住宅街で人質立てこもり事件が発生。そこに絡んでくる様々な人たち…。お馴染みの黒澤さんも登場して…。
 もっと詳しく書きたいけれども、未読の方の楽しみを奪うことになりそうなので、やめておきましょう。見事な構成力で、兎に角楽しく読ませていただきました。久方ぶりに(?)伊坂幸太郎さんの実力を再確認できた感じ。面白かったですよ。


No.701 6点 小さいそれがいるところ 根室本線・狩勝の事件録
綾見洋介
(2017/10/29 00:06登録)
 2017年『このミステリーがすごい!』大賞の最終選考に残った「隠し玉」作品。
 舞台は根室本線の架空の駅「東羽帯駅」。とはいえ、「羽帯駅」は存在するようですし(表紙のイラストも、ネットで確認した限りでは「羽帯駅」っぽい。ちなみに,この駅も廃止が決定しているそうで…)、他の駅は実名で登場しているので、何となくイメージはし易かったです。いわゆる”鉄ちゃん”の習性とか、秘境駅の醍醐味とか、それはそれで面白かったかな。(単に私の「鉄分」が他の方々に比して高めだからかもしれませんが…)
 正直、ミステリーとしては弱いと言わざるを得ませんし、青臭ささも多分にあるのですが、伏線の配置とか、歴史的・地理的事実の噛ませ方などは、基本的ではありますが、巧く整えられていると感じましたね。
 表紙を見てウキウキしてしまうような「鉄分高め」の同志の方は、試しに読まれてみては?(ただしマニアック度は決して高くないので、「鉄分補給」にはならないような気がしますが)


No.700 10点 黒いトランク
鮎川哲也
(2017/10/23 22:40登録)
 これは凄い。美しい。精緻で凛とした美しさがあります。
 ちなみに、トランク・犯人・被害者それぞれの動きがポイントになるのですが、複雑かつ重層的で、それらを追い掛けるだけでも一苦労です。頭の中だけでの整理は相当に困難で、メモは必須かもしれません。正直、ワタクシもちょっと面倒で諦めたくなった瞬間もございました。
 しかし、その先には何とも言えない快感が待っています。最終盤の「Xトランク・Zトランク取り換え問題」の真相が判明した瞬間は、雷に打たれたような感覚になりましたね。複雑さの中におけるシンプルさ、このコントラストは極めて美しい。そして、実は全て読み終わった後にこそ、本当の楽しみがあるような気がします。(いやはや、様々な人とモノの動きを反芻すること自体が楽しいではありませんか!)


No.699 6点 歪笑小説
東野圭吾
(2017/10/17 22:32登録)
 ~笑小説シリーズ第4弾。今回は、出版社・編集者・作家の関係に特化した短編集です。連作短編と言ってもいいかな。業界ネタというか楽屋ネタという捉え方もできるのでしょうが、ソコも含めて面白い。シリーズの他作品と比して表面的な”毒”は弱いものの、底流に流れている”毒” 自体に結構ハマりました。
 この作品は、東野圭吾だからこそ書けるのだろうし、読者としても笑えるのだろうなぁ、そんな気がしました。


No.698 6点 とってもカルディア
岡嶋二人
(2017/10/15 19:11登録)
 土佐美郷(とさみさと)&織田貞夫(おださだお)の「山本山コンビ」が活躍するユーモア長編。2人は「三度目ならばABC」にも登場していて個人的には名コンビぶりが印象に残っているのですが、80年代の作品ということもあって、肌に合わない方もいらっしゃるかも。
 ちなみに、この「とってもカルディア」ってタイトル、一定年齢以上の方は何か記憶の片隅に引っかかるものがあるのではないでしょうか。それもそのはず、「カルディア」ってのは、1984年に富士フイルムが発売した新型カメラの名前でして、そのCMコピーが「とってもカルディア」だったのですねぇ。当時、小泉今日子を起用したCMが何種類か相当期間流れていたものです。CMソングに「なんてったってアイドル」が採用されていたこともあって、一定の方の記憶には残っているかもしれません。
 そしてこの作品は、富士フイルムが話題作りのため、若手のミステリー作家に小説を書かせてみようということになり、講談社に持ち掛けたことから生まれたとのこと。いやぁ、時代だなぁ…って感じるのは私だけでしょうか。(広報手法は勿論のこと、カメラに対する意識という意味でもね。CMでは「ハイテク全自動」ってナレーションされていましたしねぇ。“ハイテク”ですからねぇ。)
 その経過もあるのでしょう。確かに作品中では全自動カメラ「カルディア」が登場し、その新機能も含めて一定重要な役割を果たしています。とはいえ、決してクライアントにいい顔しながらも手を抜いて…という作品ではなく、しっかりと練られていると思います。相当にご都合主義な面はあるのですが、まぁ、読みやすいし、何よりも様々な意味で当時を思い出せたので、私は結構楽しかったな。


No.697 6点 幽霊刑事
有栖川有栖
(2017/10/12 23:07登録)
 「むむ?有栖川サンっぽくない導入部だぞ」というのが、序盤の率直な感想でした。何といっても主人公が「幽霊」ですからねぇ。これはどうなの?という若干の不安も正直ありました。
 しかし、途中からグングン加速。主人公はもとより相棒の早川クンのキャラもあって、心地よく読み進められました。読者に推理させるよりも、展開をひたすら追っていく要素の方が多く(私の読み方がそうだっただけかもしれませんが…)、その意味では、確かにいつもの作風とは異なるような気がしますが、最終的には「やっぱり有栖川作品はいいよねぇ」という印象に見事に変わっていましたね。


No.696 4点 レジまでの推理 本屋さんの名探偵
似鳥鶏
(2017/10/08 09:37登録)
 西船橋の書店を舞台とした連作短編集。
 個々の短編としては、正直「そこまでやる意味、ある?」とか「そこまではしないでしょ、普通」等々、思ってしまったのですよねぇ。
 一方で、最終話の仕掛けは、決して嫌いではないし、連作短編として巧くまとめていらっしゃると思います。織り込ませている主張にも、同意いたします。
 うーん、でもねぇ…残念ながらその主張は、作品全体を包んでいるというよりも、むしろ邪魔をしている側面も少なからずあると思うのです。総合的に、敢えてこの採点で。


No.695 6点 恋愛採集士
日野草
(2017/10/05 21:19登録)
 諦めきれない恋や忘れられない愛を掬い上げるため、依頼されたターゲットの理想の相手を演じて目的を遂行する女性「ユキ」が主人公。
 作者の出世作「GIVER」と類似した雰囲気の連作短編で、どの短編も一定の仕掛けが用意されています。ページをめくらせる力は十分にあります。
 マイベストは、とある"テスト"のシーンが印象に残る「茜さす」。逆に、最終話は多分に「ありがち」な印象で、前4話で期待を高められただけに、ちょっと勿体ない印象も受けたかな。


No.694 6点 モモンガの件はおまかせを
似鳥鶏
(2017/10/03 21:05登録)
 楓ヶ丘動物園シリーズ第4弾。今回は連作短編です。
 現場は全て「楓ヶ丘動物園」の外側なのですが、飼育員や獣医師のメインメンバー(桃本、七森さん、服部くん、鴇先生)が引き続き活躍してくれています。
 正直、ご都合主義感が目立つ短編もあったのですが、最終話「愛玩怪物」の真相はなかなかに面白かったですね(動物に詳しい方はすぐ気付くのかもしれませんが)。読みやすいコミカルなやり取りの中で、ペットに係る社会派的な主張も全編にわたってなされており、そのバランスにも好感をもちました。


No.693 6点 θは遊んでくれたよ
森博嗣
(2017/09/30 19:38登録)
 Gシリーズ第二弾。
 シンプルな設定なのだけれども、むしろそれが心地よかった(=丁度よかった)かな。キャラも結構イイ感じです。まだこのシリーズは2作品しか読んでいないのですが(つまり順番通り読んでいるということですが)、S&MシリーズやVシリーズよりも気楽に楽しめそうなので、今後も気が向いたときに読み進めてみようかな。


No.692 5点 元気でいてよ、R2-D2。
北村薫
(2017/09/23 21:53登録)
 角川文庫版で読了。集英社文庫版から、書き下ろし短編1編が加わっているそうです。
 筆者自身が「まえがき」で述べているとおり、「陰のある」短編が揃っています。「腹中の恐怖」の直接的な怖さも良いのですが、「マスカット・グリーン」の、何気ない“気付き”の怖さも嫌いじゃない。「さりさりさり」の、うっかりすると見落としそうな描き方も良かったかな。
 決して派手な仕掛けはないのだけれども、こういう短編集も結構好きなんですよねぇ。


No.691 6点 動かぬ証拠
蘇部健一
(2017/09/18 16:47登録)
 ラスト1ページの「イラスト」で決定的な証拠なりが示されるという、その発想は面白い。イラストだからこその衝撃というのも、確かにありますしね。
 イラストを活かしたという意味では、「しゃべり過ぎの凶器」がベストかな。「天使の証言」も含めた2篇は、作者らしくないというと失礼かもしれないが、内容としても端正で、なかなかの良作。
 一方で、作者らしい作品としては「逆転無罪」と「宿敵」が双璧で、どちらもラストのイラストが効いています。私は「くっだらねぇ…」っていう感情は、ある種、爽快感に似ていると思っておるのです。根拠はないけど。でもスカッとしましたぜ。
 今回の蘇部健一ワールドは、結構幅広でストレスもなく、私は正直楽しかったな。

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