home

ミステリの祭典

login
まさむねさんの登録情報
平均点:5.86点 書評数:1195件

プロフィール| 書評

No.735 6点 贋作『坊ちゃん』殺人事件
柳広司
(2018/03/18 20:14登録)
 四国から東京に戻って3年後の「坊ちゃん」が、赤シャツ自殺騒動の真相を追って山嵐とともに元の赴任地を再訪する…。
 本家「坊ちゃん」の詳細は忘れてしまっていたものの、「いかにも坊ちゃんが言いそう、又はやりそう」という描き方がまずは楽しい。他の登場人物の使い方を含めて、本家への作者の愛情を強く感じましたね。
 赤シャツ自殺騒動の真相はもとより、本家「坊ちゃん」が全く違った姿で解釈されていく様が読みどころで、久しぶりに「坊ちゃん」をじっくりと読んでみたくなりましたね。


No.734 5点 人形は眠れない
我孫子武丸
(2018/03/15 21:56登録)
 文庫版のあとがきで作者自身が述べているとおり、ミステリ味はどんどん薄くなってきていて、キャラクターの方に力点が移ってきています。気軽に読む分にはいいのではないか…といった印象ですね。ちなみに、私は最終盤に明かされる「関口の母親の正体」が唯一の(?)ツボでしたね。


No.733 5点 御子柴くんの甘味と捜査
若竹七海
(2018/03/12 23:48登録)
 御子柴刑事って誰? 小林警部補の元部下って言われても、そもそも小林警部補って誰? 短編集の「プレゼント」に登場していた?ほほう、娘のセーラームーンの自転車に乗って現場に駆け付けた警部補ねぇ、確かに記憶にはあるな。でも相棒の若い刑事なんて覚えてないよねぇ…って感じ。
 その御子柴刑事、長野県警から警視庁に出向し、両者の様々な調整をさせられているという設定で、その気苦労については、立場は違えどかなり身につまされました。「調整」って、漢字で表すとたった2文字なのに、実際はもの凄く複雑だし、そもそも自分の心はまったく整うことがないのですよねぇ。頑張れ御子柴クン、っていう印象だけが残りそうな連作短編集かも。


No.732 5点 マスカレード・ナイト
東野圭吾
(2018/03/11 21:25登録)
 若い女性の殺害事件に関する密告状が警視庁に届きます。犯人は、ホテル・コルテシア東京で行われる年越しカウントダウンパーティ(通称:マスカレード・ナイト)に姿を現すという…。
 コンシェルジュの山岸尚美と刑事の新田浩介のコンビ、それを取り巻く同僚たち、怪しげな客たち等々、それぞれ興味深く、次々ページをめくらされました。流石に達者ですよねぇ。なお、後半の怒涛の展開は、なるほどと思わせる部分もあるにはあったのですが、全体の構造としては少なからず唐突感がありましたねぇ。これは気付けないよなぁ…。
 ちなみに、高級ホテルって、客の我が儘にそんなに対応してくれるものなの?何か嫌みに感じたなぁ。もちろん、単なる僻みなのだけれども。


No.731 5点 松谷警部と向島の血
平石貴樹
(2018/03/03 22:00登録)
 松谷警部シリーズ第4作にしてシリーズ完結編(らしい)。
 このシリーズはいずれもスポーツ界が舞台となっています。今回の舞台は「相撲」で、力士の連続殺人が起きる設定。とはいっても、凶器がカラオケのリモコンであったり、犯人が現役横綱だったり、相撲協会と貴●花親方の確執が…という内容ではございません。(2016年発表の作品ですしね。)
 このシリーズに共通しているのですが、内容としては捜査の過程を追い掛けるという側面が強く、合理的に読者が推理できるかは微妙なところ。(単に私がそのように読んでいただけかもしれないのですが。)また、肝の部分は、科学的に警察が気づくのではないかな…という気もしました。とはいえ、懐かしの更科ニッキが登場したのは少し嬉しかったかな。


No.730 6点 ジョーカー・ゲーム
柳広司
(2018/02/25 23:59登録)
 吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞したスパイ・ミステリー。読みやすく、純粋に楽しめた連作短編でした。
 結城中佐の神レベルの能力はもとより、スパイの矜持(?)に対する教義も、実は現代に通じるものがあって、興味深かったですね。「(必要なものは)その場その場で自分の頭で考えることだけだ」、「いかなるものにも、決してとらわれるな」。
 ちなみに、マイベストは、2作目の「幽霊」かな。


No.729 7点 煙の殺意
泡坂妻夫
(2018/02/23 21:07登録)
 亜愛一郎シリーズとも異なる、捩じれた味わいを堪能できるノン・シリーズ短編集。バラエティに富んでいて、楽しめます。
①赤の追想:ラストの一言が心憎い。
②花山訪雪図:美しいのだけれども、解説の評は盛り上げすぎの感も。
③紳士の園:どこに着地するのか予測できず。「スワン鍋」にやられた。
④閏の花嫁:結末は予測できたものの、面白い。
⑤煙の殺意:ぶっ飛んだ動機が印象的。
⑥狐の面:エセ魔術も含めて楽しめた。
⑦歯と胴:捻りのある倒叙もの。
⑧開橋式次第:アノ勘違いは、結構多くの人がやりそうだと思うのだが…。


No.728 6点 インディアン・サマー騒動記
沢村浩輔
(2018/02/18 20:03登録)
 「夜の床屋」と改題された文庫版で読了。
 (文庫版の)表題作から連なる前半の3短編は、個人的には好きなタイプの「日常の謎」系統。いずれも、スマートに物語に入り込ませてくれます。
 後半は、ガラッと雰囲気を変えていきます。自分はどこに連れられて行かれるのか…といった不安感と期待感の中で読了いたしました。不思議な余韻を残す作品です。
 既存短編にプラスαの意味付けをしつつ連作短編に仕立て上げた工夫は認めつつも、その評価は分かれそうな気がします。


No.727 7点 スウェーデン館の謎
有栖川有栖
(2018/02/17 12:31登録)
 正統派の本格作品。この時期に読んだのも雰囲気が出てよかった。(偶然にも2月14日に火村が現場の裏磐梯に到着する設定でしたしね。)寒い冬に雪密室、うーん、炬燵にミカンみたいなものですな。
 雪上の足跡の謎。確かにインパクトとしては弱いのだろうけれども、解決に至るロジックは相当に楽しめましたね。一方で、犯人にとっては相当にリスキーな手法ではないのか、その時点での対応策として合理的とは言い難いのではないか…といった疑問もないではありません。
 しかし、堅実かつ誠実で、リーダビリティも高い作品というのは、個人的には評価したくなりますね。


No.726 6点 人形は遠足で推理する
我孫子武丸
(2018/02/09 23:40登録)
 人形探偵シリーズ第2弾。今回は長編です。これまでの書評にもあるとおり、このシリーズの設定自体は短編向きなのでしょうが、様々な工夫をこらしながら、長編として成り立たせています。肩肘張らずに楽しく読みたい気分だったこともあって、全体的に悪い印象はなかったですね。


No.725 5点 ぬいぐるみ警部の帰還
西澤保彦
(2018/02/05 23:27登録)
 「ぬいぐるみを偏愛するイケメン主任刑事」と、それを取り巻く癖のある刑事たちによる短編集。
 主人公が魅力的かどうかは別として(個人的には消極に捉えているのだけれども)、個々の事件については、特に動機面の強引さが目立つような気がします。無理やり「ぬいぐるみ」をとってつけた作品もあるしなぁ…。
切り上げてこの採点、というのが率直なところですね。


No.724 9点 屍人荘の殺人
今村昌弘
(2018/02/01 22:32登録)
 まずは、クローズドサークルを作り出した設定の絶妙さに感心。なるほど、こういう手法があったか、そしてそこから生み出される相乗的な効果!うーん、考えられています。
 フー、ハウ、ホワイを巧く融合させながら、その全てを織り込んだ志の高さにも脱帽です。伏線の配置と回収の手際、解決編の切れ味も素晴らしい。リーダビリティが高いうえに、読者への親切心も垣間見せる心憎さ。昨年のミステリランキングを席巻したことも素直に頷けます。
 この完成度はまさに「新人離れ」と言う他なく、私にとって、新作を楽しみに待つ作家さんの一人になりそうです。この探偵&助手での続編を期待します。


No.723 7点 AX
伊坂幸太郎
(2018/01/27 22:48登録)
 殺し屋シリーズ第三作品にして、シリーズ初の連作短編。グラスホッパーやマリアビートルの話題も一部登場はしますが、このシリーズは一応それぞれの作品内で完結するスタイルですので、仮に前二作品が未読だとしても特に支障なく楽しめると思いますね。
 凄腕の殺し屋、でも極度の恐妻家で家族思いという、いかにも作者らしい設定の殺し屋「兜」が主人公です。登場人物たちの洒脱な会話を楽しみつつ、殺し屋なのになぜか「がんばれ、がんばれ」って応援している自分がいました。そして後半で急展開。ちょっと驚いたというか…とにかく、最終話がイイ。ラストの余韻もなかなか。


No.722 6点 開けっぱなしの密室
岡嶋二人
(2018/01/21 21:27登録)
 ノンシリーズ短編集。作者らしい、軽快な作品が揃っています。爆発力がある短編がある訳ではないのですが、肩肘張らずに、ある意味安心して(?)読める短編集って好きです。表題作、がんじがらめ、罠の中の七面鳥が良かったかな。


No.721 5点 鉄道探偵団 まぼろしの踊り子号
倉阪鬼一郎
(2018/01/15 22:59登録)
 作者の作品を読むのは初めて。作者が国内全線完全乗車を目指す「乗りテツ」だと知り、志を同じくする者として手にせざるを得なかった(?)次第であります。
 ミステリーとしては、結末が想像しやすかった作品もあって、積極的な評価は正直しにくいのですが、全体としては、個人的に結構楽しめましましたね。(車窓が思い浮かんだりしてね。)でも、属人的な乗りテツ補正が相当に入った感想なので、皆様に広くお薦めできるかと問われますと、ちょっと辛いです。ちなみに、私は続編を期待しているのですが…、一般的にはどうなのだろう。


No.720 7点 人形はこたつで推理する
我孫子武丸
(2018/01/13 21:55登録)
 ユーモアミステリーとして極めて堅実(?)で楽しめましたね。腹話術人形「鞠小路鞠夫」が"売り"なのは言うまでもないのですが、実は「おむつ」こと、保母・妹尾睦月の存在が一番のポイントでしたね。この辺りのキャラ設定にも好感。
 どの短編も好きなタイプでしたが、ベストは「人形はテントで推理する」でしょうか。トリック、というか着目点が面白かったかな。


No.719 6点 朝霧
北村薫
(2018/01/11 22:01登録)
 シリーズ5作品目で「私」もとうとう社会人に。大学時代とは違ったメンバー、環境における「私」の語りがなかなかに新鮮です。自分の社会人初心者時代を思い起こしましたねぇ。
 とはいえ、全体の雰囲気は変わらず、読み心地の良さ、余韻の素晴らしさもそのまま。前々作、前作とは異なり、今回は短編形式に戻っています。ちなみに、このシリーズは短編の方がよりフィットするような気がしますね。
 内容としては、リドル・ストーリーを扱った「走り来るもの」がベスト。白い風さんがおっしゃるとおり、ラスト2センテンスを考えるという趣向がまず面白く、実際の結末にも唸らせられました。
 そのうち、続編も読むことになりそうです。


No.718 5点 301号室の聖者
織守きょうや
(2018/01/08 23:30登録)
 良くも悪くも、現役弁護士が書いた作品だよなぁ…というのが率直な印象。
 良い意味で述べれば、法律的な知識、それを複数活かした構成は流石であります。訴訟上の和解に至るまでの過程も、実務を踏まえていて興味深い。時に見かける、脇の甘いリーガルミステリもどきに比べれば誠実です。
 一方で、若手の木村弁護士の心情の描き方は、その内容が青臭い点は措いておくとしても、あまりに直接的過ぎるのでは。同じネタでもっと達者な作者さんが書いたとすれば、厚みと余韻の点で、ぜーんぜん違う作品になるような気もします。だって、これは準備書面じゃなくて小説なのだから。裁判官の心証を得ることが目的ではないのだから。
 とは言え、やはり興味深い分野を主戦場にできる作家さんだと思いますので、今後も期待したいですね。


No.717 6点 名探偵と鉄旅
アンソロジー(ミステリー文学資料館編)
(2018/01/06 17:54登録)
 収録作品は以下の8篇です。①三毛猫ホームズの感傷旅行(赤川次郎・1986年)、②急行《あがの》(天城一・1976年)、③緋紋谷事件(鮎川哲也・1955年)、④碓氷峠殺人事件(内田康夫・1984年)、⑤鉄路に消えた断頭吏(加賀見雅之・2006年)、⑥お座敷列車殺人号(辻真先・1983年)、⑦恵那峡殺人事件(津村秀介・1991年)、⑧特急列車は死を乗せて(山村美沙・1988年)。ちなみに、③はその後「碑文谷事件」に改題・改稿されています。
 アリバイ物は半数の4篇で、その中ではやはり③が抜きんでています。非アリバイ物の中では⑤が断トツ。他の作品は、まぁ、良くも悪くも懐かしさを感じるなぁ…といったところでしょうか。書かれた時期がバラバラなだけに、当時の交通事情に想いを馳せることも出来たし、全体としては読み得な印象を受けましたね。


No.716 2点 NO推理、NO探偵?
柾木政宗
(2018/01/01 22:03登録)
 うーん、どうなのでしょうねぇ。人によっては、最終話にたどり着く前に放り出しそうな気もするなぁ。まぁ最終話がポイントなのだろうけれども、正直、最終話を読んで「ここまで待った甲斐があった!」とも思わなかったしなぁ。いや、色々と狙っているのでしょうけれどもねぇ…。
 うーん、最近はこういうのがイイとされてるの?そうだとすれば、ごめんなさい、フィットできない私が悪いのだろうなぁ…。

1195中の書評を表示しています 461 - 480