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ミステリの祭典

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殺人鬼がもう一人

作家 若竹七海
出版日2019年01月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 6点 猫サーカス
(2023/11/01 18:10登録)
辛夷ヶ丘は都心から遠く離れたベッドタウン。ゴーストタウンのような住宅街、荒れ放題の市民公園といった寂れ切った光景の、まるで良いところのない見捨てられた土地として眼前に現れる。第一話「ゴブリンシャークの目」は、二十年間平穏だった町で突如、放火、空き巣、盗難に痴漢と事件が立て続けて発生する最中、金持の老女が路上強盗に遭うことから始まる。多忙な刑事課の割を食ってかり出された生活安全課の砂井三琴が捜査を進めるうちに連れ、住民の鬱屈した心理が次々と露になっていく。真相が明らかになった後に残る黒々とした余韻を味わえる。第二話以降、町を二分する泥沼の選挙戦、警官同士の結婚式で起こる騒ぎ、町の裏側を知る清掃業者の異常な日常、遺産相続でもめる葬儀会場、二十年前の悪夢が甦る最終話と進む中で描かれる人間模様が読みどころである。機能不全を起こした地方都市にあって、そこで暮らす人々も町の呪いにかかったように人格を破綻させていく。そんな黒い笑いを密かに楽しみながら、ふと我が身を振り返らずにはおれない辛辣さが怖い。

No.2 5点 名探偵ジャパン
(2019/09/14 15:54登録)
この作者の書く硬質な文章は、相変わらず独特の癖があって読みにくいです。
第一話で、主人公の刑事が何の説明もないまま、容疑者から盗み取った当り馬券を勝手に換金して横領するというひどい描写が入ったので、「何かのシリーズもので、この主人公のキャラクターを理解したうえで読まないといけないのかな?」と疑いましたが、シリーズではない単独の短編集のようですね。この突き放し感も若竹七海の持ち味(?)です。

ミステリとサスペンスどちらに寄せるのかが曖昧だったり、話によって語り手がころころ変わったりして(主人公の刑事がほとんど出て来ない話もあります)、総じてブラックな話ばかりという共通点以外に、ちょっと私には作者の狙いを読み取ることが出来ませんでした。

No.1 5点 まさむね
(2019/06/01 15:50登録)
 総じて苦みの残る、というかブラック感満載の連作短編集。
 舞台は、都心から離れた寂れたベッドタウン「辛夷ヶ丘」。辛夷ヶ丘署は、ダメ警官の吹き溜まり。住民のクセは強く、遵法意識は弱い。こんな街は嫌だ…コレが第一印象。
 疲れ気味の時に読んだ私が悪いのかもしれないのですが、がっかりな登場人物も多数登場して、何か疲れました。実はユーモアも効いているので、違う体調・気分の時に読んでいれば、印象はガラリと変わったような気もします。
 ちなみに、警察官・砂井三琴とその相棒の描き方はちょっと中途半端だと思いますね。特に相棒の方が。

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