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ミステリの祭典

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双孔堂の殺人~Double Torus~
堂シリーズ

作家 周木律
出版日2013年08月
平均点5.71点
書評数7人

No.7 5点 ミステリ初心者
(2021/11/10 17:07登録)
ネタバレをしています。

 癖の強い数学者、十和田が探偵の館系のシリーズです。前作がなかなか面白かったので買いました(笑)。
 今回もクローズドサークル…ではあるのですが、事件が起こるのは1度で、2人いっぺんに殺されています。途中、鳥居が失踪する事件も起きますが、どちらかというとクローズドサークルのわくわく感は薄いです。
 探偵である十和田が自白し、逮捕されるという衝撃の展開で、文章の主人公格は警察である宮司になります。十和田は安楽椅子探偵なのですが、意味の分からない(笑)難しい数学の話をして宮司をイライラさせています。そういう変人感をだせるのは安楽椅子探偵で正解だと思います。
 私には難しすぎる数学の話?が多いですが、それ以外は読みやすい文章であり、読了まで時間はかかりませんでした。

 推理小説部分について。
 館ものらしい大規模な仕掛けは、館ものが好きな読者にとっては垂涎です。これは本当に気が付かれないのかな…?という疑問は残りますが(笑)。宮司のエレベータに乗った時の描写は怪しいので、いろいろ考察しましたが、真相を当てる事ができませんでした(笑)。

 全体的には、本格推理小説のツボを押さえた作品であり、安心感があります。しかし、館もの特有の謎としては小粒であり(当てられなかったから恐縮ですが)、長くて難しい数学の話をのぞいてしまえば、短編~中編ぐらいに収まりそうな内容の薄さを感じました。佳作にはもう一歩足りない印象です。

No.6 5点 nukkam
(2021/10/12 02:35登録)
(ネタバレなしです) 2013年発表の堂シリーズ第2作の本格派推理小説で、新たなシリーズキャラクターとして宮司兄妹が初登場です。語り手を務める兄の司は警察庁の警視、まだ学生の妹の百合子はあまり出番がありませんけど事件解決後のプロローグ的な場面では存在感を示します。シリーズ前作「眼球堂の殺人」(2013年)で名探偵役だった十和田只人は何と殺人容疑者として警察に身柄確保された上に「犯人は僕だ」と自白(?)する始末で、放浪の数学者が拘留の数学者になってしまいました(笑)。私の読んだ講談社文庫版のあとがきで作者は「数学の話が入るだけで読者が辟易するのは容易に想像がつく」と言い訳しながら「少なくないページを数学の話で費やしてしまった」と自白していて、確かに十和田の説明は前作以上に数学的で頭が痛くなりますが数学問題を解けと迫っていない分だけ高田崇史のQEDシリーズの歴史・文学・伝承の謎解きに比べればまだ読みやすいです。前作同様に舞台とトリックに凝った作品ですが、一部の仕掛けは早い段階で気づいているのに肝心な部分は十和田に指摘されるまで(ご都合主義的に)見落としている警察というのはいくら少人数の捜査チームとはいえちょっと不自然感が漂います。まっ、これは名探偵に花を持たせるための演出と割り切るしかないですね。

No.5 6点 まさむね
(2019/08/25 21:46登録)
 「堂」シリーズの第二弾。スケール感は前作に及ばず、密室の真相には拍子抜け感も残ります。とはいえ、全体としてはシリーズの「肝」を押さえつつ、最終盤の捻りも含めて巧く纏めていらっしゃるなぁ…という印象。ポイント自体はシンプルで、それが判明した時点でスルスルと解けていくようなスタイルって、個人的には好きなんですよね。
 でも、数学的な記述は、私には難しすぎるというか、ちょっと苦しい。いや、作品として記す意義は分るのだけれども、ソッチ系の部分をかなり軽めに読み飛ばした同志(?)も多いような気がするなぁ。

No.4 6点 makomako
(2019/01/06 16:53登録)
眼球堂が好みの作品だったので期待していたのですが、これはちょっと。
 難しい数学のお話は私には全く理解不能。放浪の数学者十和田は眼球堂の時よりさらにはるかにへんな人となり、これまた理解不能。第1作ではもうちょっとまともだったのになあ。これでは精神鑑定にかけられて無罪になりそうです。
 語り手として登場の警察庁のキャリアが極めてやさしい普通の人で、これで何とかこの話がもっているのでしょう。
 善知鳥神はこの作品でも感情が全く消失した殺人鬼としか思えない行動をとっていますが、作品の中では結構友好的な人物として描かれています。
 要するに全く現実から離れたお話であることは間違いないので、あまり目くじらを立ててもいけないということなのでしょうかね。

 堂シリーズはさらに変化しているとのことです。
 ついていけるか心配ですが、実は次作五覚堂も一緒に買ってしまったので読んでみましょう。。

No.3 5点 E-BANKER
(2018/02/25 11:49登録)
「眼球堂の殺人」につづく、『堂』シリーズの第二弾。
今回も一風(かなり?)変わった建物、そして新たなシリーズキャラクターも登場。
2013年の発表。

~二重鍵状の館“Double Torus(ダブル・トーラス)”。警察庁キャリアである宮司司(ぐうじつかさ)は放浪の数学者・十和田只人に会うため、そこへ向かった。だが彼を待ち受けていたのはふたつの密室殺人と容疑者となった十和田の姿だった。建築物の謎、数学者たちの秘された物語。シリーズとして再構築された世界にミステリーの面白さが溢れるシリーズ第二弾~

「眼球堂」よりもスケールではワンランク下・・・っていう感じだ。
前作につづき今回も「堂」にまつわる“大掛かりな”トリックが十和田の推理のもと詳らかにされる。
図面もふんだんに挿入されていて、その点はいいんだけど、どうにも分かりにくいような・・・
文章を追っているだけでは、「いったいどういう仕掛けor建物?」っていう疑問が湧いてきた。
まぁ、ものすごく単純化して表現するなら、そのむかし、推理クイズなんかであった「崖の上に立つ建物」(○Fが実は・・・ってネタバレか?)のようなものか?

密室は・・・肩透かしといえば肩透かし。
なんとなく「入れなくちゃいけないんで入れました」というような開き直りを感じてしまう。
動機やラストのどんでん返しは・・・こんなもんかな。ちょっと陳腐かもしれない。
数学の話は・・・まぁ必要か不必要かと問われれば「不必要」なんだろうけど、作品の世界観にかかわることだからねぇ・・・。十和田が探偵役を務める以上は付き合わざるを得ないでしょう。

全般的には他の方も触れられているとおり、綾辻の「館」シリーズと森の「S&M」シリーズをハイブリッドして数学風味をプラスしました、っていうことなんだろう。
そう聞くだけで背を向ける読者も多そうだけど、難しい分野に敢えて踏み込もうとするチャレンジ・スピリッツは買いたい。
上から目線っぽいけど、そんなことを感じた次第。
(シリーズキャラが今ひとつ弱いのがねぇー地味な理由かな)

No.2 6点 メルカトル
(2017/05/16 22:22登録)
前作が7点に近い6点だったの対し、本作はそれよりやや落ちる感じは否めません。
早い段階で密室殺人が起こり、テンポよく話が進むので相変わらず読みやすく、好感触。しかも探偵の十和田が自首するという意外な展開で、どうストーリーを進行していくのか興味が持てます。
あとがきにもあるように、数学に関する衒学趣味が横溢しているのは意見の分かれるところかもしれません。確かに我々素人にはさっぱり理解が追い付かず、退屈を強いられます。まあ我慢できないほどのボリュームではないので、一つのアクセントと考えれば許容できるのではないかと思いますが。
さらには名探偵不在の中での地味な捜査、というか調査が延々と続くので、その意味でも冗長さをどうしても感じてしまいます。
しかし、いかにもな本格ミステリの「雰囲気」は十分に味わえます。どうやら作者は作品ごとに工夫を凝らし、新たなトリックを提供しようとしているようで、その姿勢は大いに買えます。作風は変えず、新たなアイディア(建造物)を加えながら、新風を吹き込もうという意欲は称賛すべきものだと思います。

No.1 7点 虫暮部
(2013/11/25 14:21登録)
順調に風呂敷を広げたこの2作目で、作者は綾辻行人のアレと森博嗣のアレを組み合わせたようなシリーズ展開を宣言していると言ってもよいだろう。1~2作目の水準を維持出来るなら、なかなか楽しみなことである。徒に大長編化せずによい塩梅の長さにまとめられている点も好感が持てる。

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