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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:1230件

プロフィール| 書評

No.790 5点 屋上の名探偵
市川哲也
(2018/11/18 22:16登録)
 「名探偵の証明」に登場した探偵「蜜柑花子」の高校時代を取り上げた連作短編。
 うーん、「名探偵の証明」シリーズを読んだことがあるかどうかにも左右されそうだけれども、好き嫌いがはっきりと分かれそうな作品ですねぇ。
 主人公「蜜柑花子」のキャラについて、個人的にはそのイタさも含めて嫌いではないし、学園ミステリとしての工夫も分かるのだけれども、トリック自体に特筆すべき点はなく、冗長に感じる部分も否定できなかったので、この採点にしておきます。


No.789 6点 モノレールねこ
加納朋子
(2018/11/14 23:12登録)
 いかにも作者らしい短編集。ミステリ的な側面だけでみれば極めて弱いと言わざるを得ないのですが、全編から醸し出される優しさがそれを上回っている感じでしょうかね。そして、こういう読書もいいものです。
 ベストは、ザリガニ目線だからこその味わい「バルタン最期の日」。こういう再会っていいよねな表題作「モノレールねこ」、映画みたいな「セイムタイム・ネクストイヤー」、実際に自分の親だったら迷うかもな「ポトスの樹」も印象に残りそうかな。


No.788 7点 たけまる文庫 謎の巻
我孫子武丸
(2018/11/04 21:21登録)
 冒頭作の「裏庭の死体」。まさか速水三兄弟に会えるとは思わなかった。これはファンとしては嬉しい。
 次作の「バベルの塔の犯罪」。内容も悪くはないのだけれど、何といってもラスト1行のサプライズが心憎い。いやはや、そう来たか。
 その他の短編もバラエティに富んでいて、楽しめます。特に「Everybody kills Somebody」が好きかな。
 総合的に、なかなか読み得な短編集と言えるのではないでしょうか。(ファン限定な面も一部あるけれどね。)


No.787 5点 名探偵の証明
市川哲也
(2018/10/31 23:37登録)
 鮎川哲也賞受賞作。
 「名探偵」の「老い」とか「弱さ」に焦点を当てたメタ的視点は結構面白かったですし、印象に残りそうでもあります。
 一方で、それらの要素が「読み進めたい欲」を増幅させたのかと問われれば、消極的な回答をしてしまうような気もします。中だるみ感も否定できないし、トリック自体も小粒(既視感満載)と言わざるを得ません。若き名探偵「蜜柑花子」の位置づけも、少なくとも本作時点では中途半端な印象(あくまでも本作だけでの印象だけれども)。
 とは言え、続編or短編集もそのうち読んでみようかなぁ…と思ったのも事実なので、まずはこの採点にしておこうかな。


No.786 7点 オーブランの少女
深緑野分
(2018/10/21 22:46登録)
 「少女」という共通テーマはありつつも、各々異なる舞台や時代を設定し、巧みに活かしています。ミステリ要素云々は措きつつ、どの短編も次々にページをめくらされました。デビュー短編集としては、出色の出来と言えるのではないでしょうか。
 ベストは、やはり表題作の「オーブランの少女」。「仮面」の深さ、「大雨とトマト」の奇妙な味わい、「片想い」の女学生心理、「氷の皇国」の切なさと雰囲気も捨てがたく、いずれも高水準でしたね。


No.785 7点 マレー鉄道の謎
有栖川有栖
(2018/10/14 18:21登録)
 作者の本格愛と確たる技量を感じる作品ですね。密室の真相自体はアレだけれども、謎は決してそれだけではなく重層的だし、最後まで捻られています。伏線の配置もお見事。序盤は冗長に感じた面も正直あったのですが、事件発生後はあっさりと引き込まれましたねぇ。登場人物一人ひとりに役割を与え、決して「無駄にしない」姿勢も素晴らしいです。


No.784 6点 人間じゃない
綾辻行人
(2018/10/07 21:04登録)
 単独名義の著書には未収録であった短編・中編をまとめた作品集。最も古い作品と最も新しい作品の間には20年以上の開きがあり、かつ、「内容の出来不出来や方向性などは無視して発表の順番どおりに」配置したとのことなので、何となく寄せ集め的な先入観を持って読み始めたのですが、結構いい塩梅の配置のような気もするし、各々の作品の順番自体が興味深かったりもします。「洗礼」も印象に残りそうですが、最終話の「人間じゃない―B〇四号室の患者-」がベストかな。


No.783 6点 アリバイ崩し承ります
大山誠一郎
(2018/10/06 09:29登録)
 タイトルどおり、アリバイ崩しに特化した短編集。「時計修理承ります」のほか「アリバイ崩し承ります」という貼り紙がある時計店店主の美谷時乃が、新米刑事の持ち込む謎を解き明かす…という設定。
 結構人によって評価が大きく異なるような気がしますねぇ。アリバイ特化といってもバラエティに富んでいるし、純粋にパズラーとして面白いという意見もあろうし、トリックのためのトリックといった感じで現実感がないとか、クイズ短編集みたいとか、アリバイ崩しだけ読まされるのも辛いといった意見もありましょう。この作者さんの短編集って、総じてそういった両方向からの評価傾向がありますよね。
 ちなみに、私は肯定的に捉えていて、「いや、無理だろ」といった突っ込み自体も含めて楽しめました。最も印象に残ったのが「時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ」かな。


No.782 6点 謎の館へようこそ 黒
アンソロジー(出版社編)
(2018/10/01 20:49登録)
 新本格30周年記念アンソロジー。 姉妹編「白」も合わせ、合計12名の作者さんの作品が揃っています。
 テーマはそのものズバリ「館」であるとはいえ、この「黒」の収録作品に純粋な館モノは見当たりません(そもそも「純粋な館モノ」の定義って何だよ…と突っ込まれそうですが…)。そういう意味で肩透かし感を抱く方もいるとは思いますが、広い視点でなかなか興味深い作品もございました。マイベストは、終盤の転換が見事だった井上真偽の「囚人館の惨劇」で、白黒全体を通してもベストの印象。恩田陸「麦の海に浮かぶ檻」と綾崎隼「時の館のエトワール」も嫌いじゃない。
 個人的には、作者の顔ぶれから、まずは「白」に興味をそそられて先読した訳ですが、「館モノ」の魔力に捉われなければ、「黒」の方が読み得という印象もあります。白黒両方を読んでみるのも面白いかもしれません。


No.781 6点 ゲームの名は誘拐
東野圭吾
(2018/09/26 23:19登録)
 「はい、ここ伏線ですよ~」と言わんばかりのネタが多数あり、結末には一定の予測がつきます(作者が敢えてそうしている可能性も高いのですが)。さらに、犯人は極めて頭が回る設定であるはずなのに、何故にこんな分かりやすい罠(?)をスルーしてしまうのだろう…といったチグハグ感も、確かにございます。
 とは言え、リーダビリティの高さは流石でして、グイグイ読まされたことも事実です。「一定の予測がつく」と書いてしまいましたが、正直に言えば、その想定の上をいく真相でもありました。完全に身を委ねて読む場合でも、「こういう真相なんでしょ?違うの?早く教えてよ」と予測しながら読む場合でも、それなりに楽しめるのではないかと思います。


No.780 7点 ささらさや
加納朋子
(2018/09/22 23:35登録)
 「ああ、良いな」と単純に思わせられる連作短編集。ミステリー要素は決して濃くはないのだけれども、その使いどころも巧いですね。主人公「サヤ」を取り巻くキャラクターも魅力的で、作者の優しさを感じることができます。
 一方で、「サヤ」の気弱さや頑固さ(?)を心配してしまう(というか、多少イライラしてしまう)面もございました。そう感じるのは、私が単に身勝手だからなのか、それとも中途半端に年をとってしまったからなのか。うーん、そういう意味でも考えさせられたかな。


No.779 6点 謎の館へようこそ 白
アンソロジー(出版社編)
(2018/09/17 21:35登録)
 新本格30周年記念アンソロジー第二弾。
 テーマはそのものズバリ「館」で、第一弾「7人の名探偵」よりもテーマ自体のハードルは高いと思います。こちらもハードルを上げて読んでしまった面もあるのですが、作者ごとの個性は十分に出ていて、その点では楽しめたと言えるのかな。個人的なベストは、思考の落とし穴をスッキリと見させてくれた、青崎有吾氏の「噤ヶ森の硝子屋敷」でしょうか。


No.778 6点 5分で驚く!どんでん返しの物語
アンソロジー(出版社編)
(2018/09/13 21:36登録)
 宝島社文庫の「ひと駅ストーリー」シリーズと「10分間ミステリー」シリーズから、選ばれた25の掌編で構成されています。「どんでん返し」と銘打っているだけに、オチが分かりやすい作品も確かにあるのですが、なかなか味わいのある作品も複数ございました。次の掌編はアタリかハズレか…というような楽しみ(?)もあって、スキマ読書としては悪くなかったですね。


No.777 7点 黒い白鳥
鮎川哲也
(2018/09/10 21:37登録)
 いかにも「鮎哲」という作品。後半はアリバイ崩しがメインとなり、個々のアリバイトリック自体は分かりやすいのだけれども、決してそれだけで解決するものではなく、複数のトリックを非常に巧く組み合わせています。鬼貫警部の調査の過程も面白く、途中の複数の転換点の驚きもあって、ほぼ一気読み状態。
 個人的に大好きな名作「黒いトランク」は、一般的には複雑さを敬遠される向きもあると思うのですが、この作品は、脳内で十分に完結できる作品なので、鮎哲初心者向きと言えるような気がします。
 ちなみに、優等列車「白鳥」が登場するのだろうと、勝手に思い込んでいたのですが、全然関係なかったのですねぇ。


No.776 5点 探偵Xからの挑戦状!Season2
アンソロジー(出版社編)
(2018/09/08 21:02登録)
 2009年にNHKで放映された番組のために辻真先、近藤史恵、井上夢人、我孫子武丸の4名が執筆した作品を文庫化したもの。それぞれ、問題編と解決編に分かれています。
 丁寧に考えていけば解けるであろう作品もあれば、いやいや、これは分らんだろう…って作品まで、幅は様々。クイズ好きの方は読んでみてもいいかも。


No.775 6点 少女を殺す100の方法
白井智之
(2018/09/04 23:10登録)
 タイトルどおり、たくさんの少女たちの死体が遠慮なく登場する短編集。作者らしいグロ鬼畜系の作品が揃っていますが、ミステリーとしてのバリエーションは意外に豊か(?)で、心に一定の壁を作って読めれば、楽しめるのではないでしょうか。でも、決して万人受けするとは思えないので、ご注意ください。我慢して読んでいくうちに慣れるという面もありますが。
①少女教室
 いきなり21人の少女が殺され、ある意味で圧倒されます。しかし、全短編読了後に振り返ってみると、この作品が最も王道路線だったような気もします。
②少女ミキサー
 もう、タイトルから嫌な予感がしますよね。荒唐無稽な設定すぎて、絶対に人を選ぶ作品です。何が謎なのか、ちょっと判らなくなったりもします。ああ、ミキサー自体は謎じゃないのね…って感じ。
③「少女」殺人事件
 個人的にはこれがベスト。別に人が死ななくてもいいような気はするけど、メタミステリとして面白い。「ノックスの十戒は作者が守るルールであって、読者が守るルールじゃありません」…という台詞は名言。
④少女ビデオ 公開版
 作者らしいエログロが全編にわたって展開されます。白井ワールド全開で、好き嫌いは相応に分かれると思いますね。
⑤少女が町に降ってくる
 これも、荒唐無稽すぎる設定。ああ、少女が空から降ってくること自体は、謎ではないのね…って感じ。


No.774 6点 虚栄の肖像
北森鴻
(2018/09/02 22:30登録)
 絵画修復師・佐月恭壱シリーズの第二弾。
 過去の恋人も登場し、佐月の過去も多少明らかにされています。シリーズとしての続編を期待したくなる締め方であるものの、もはや続編を読むことが叶わないことが残念でなりません。


No.773 3点 ηなのに夢のよう
森博嗣
(2018/08/26 22:53登録)
 うーん、「F」以来読み続けて来た読者にとっては、コレはコレでいいのかもしれないけれども、もはやミステリーとは言えないのではないか?そして、正直、ファンに甘え過ぎなのではないか?
 ちなみに、私は、萌絵嬢はもとより、犀川も紅子も四季も好きになれないタイプなのに、何故にこのシリーズを読み進めているのだろうかと、今さらながら悩みだしています。


No.772 7点 眼球堂の殺人~The Book~
周木律
(2018/08/24 23:41登録)
 メフィスト賞受賞作であり、現在も続く「堂シリーズ」の第一作。
 舞台となる「眼球堂」の秘密については、序盤における建造物の図面や丁寧な伏線を把握する中で、全てではないにしても、その一部はかなりの読者が気付くような気がします。それをなぜ、天才数学者が気付けないのか等々、突っ込みたくなる点もございます。
 とは言え、エピローグも含め、作者の気概は評価したい。現実味はともかく、志は天晴。続編も読んでみようかな…と思わせられた時点で、私の負け(?)です。


No.771 6点 朱色の研究
有栖川有栖
(2018/08/19 09:59登録)
 放火殺人事件、海岸での殺人事件、マンションでの殺人事件を組み合わせ、朱色をキーワードに巧く纏めたなぁ…という印象。
 次々とページをめくらされ、楽しめたことは間違いないのですが、読後の爽快感が何か物足りなく感じたのも事実。何故なのだろう。やはり、第二の事件の犯人の心情が、個人的にはイマイチ理解しにくかったからなのかな。

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