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ミステリの祭典

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白霧学舎 探偵小説倶楽部

作家 岡田秀文
出版日2017年10月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 まさむね
(2018/12/23 22:58登録)
 ストレートど真ん中の作品。古典的とも言えるプロットで、それほど驚愕の展開がある訳ではないのだけれども、何かいいな。昭和20年という舞台設定と、「探偵小説倶楽部」のメンバーのおかげかな。雰囲気がイイ。
 ちなみに、177ページのとある部分は、確実に誤記ですね。一瞬、これは何かの伏線なのかと色々考えちゃいましたよ(笑)。

No.2 6点 名探偵ジャパン
(2017/12/03 19:02登録)
今どき、こんな……、と思ってしまうような、直球正統派の本格ミステリです。
タイトルの通り、少年少女が探偵役を務め、戦時下の疎開先という特殊な舞台、時代設定で、この時代を知らないはずなのですが、なぜか郷愁のようなものを感じてしまいました。とあるアニメのスタッフが、中学生の恋愛をテーマにした作品作りのため、現役中学生の恋愛事情を取材をしたのですが、「スマホやLINEがあるという以外には、僕たちの年代の頃とほとんど変わっていないと感じた」と語っていたことを思い出しました。時代が変わっても、少年の心の持ちようというのは、あまり変遷しないものなのかもしれません。もちろん、読者にそう思わせるというのは、作者の確かな取材知識、筆力に裏打ちされてのことです。
「探偵小説倶楽部」のメンバーたちも、エキセントリックに過度なキャラクター立てをするでなく、しかし個性的な少年少女ばかりで、(もちろん、時代的なものもあるのでしょうが)目先の受けに走らない人物造形で好感が持てます。人並由真さんも書かれていますが、薫もかわいいです。

No.1 6点 人並由真
(2017/11/21 10:37登録)
(ネタバレなし)
 国民の多くが米軍の来襲による本土決戦を覚悟する昭和20年の夏。「ぼく」こと、旧制中学四年生の美作宗八郎は東京から疎開して、某県の寄宿舎学校・白霧学舎に転入した。宗八郎は寄宿舎に着くや否や、一つ学齢が上の先輩・滝幸治、同学年の斎藤順平、そして学齢は一つ上だが実年齢はずっと上の奇矯な天才「教授」こと梁川光之助が編成する「探偵倶楽部」に迎えられる。倶楽部の目的は田舎にあるわずかな数の探偵小説の精読と、この地方で実際に数年前から起きている謎の連続殺人事件の解明だった。近所にある一条女学院の気が強い美少女・早坂薫も仲間に加えた一同は、真犯人の正体と事件の真相を探り始めるが、それと前後して彼らの周囲で新たな怪死事件が…。

 作者の今年の新作ミステリ長編二本目。人気の名探偵月輪シリーズは今年は出ないみたいで、その代りに本作と別の時代ものの『帝都大捜査網』を出した。ちなみに筆者は後者はまだ未読。

<太平洋戦争時の一地方を舞台にした青春ミステリ>を謳う通りの内容で、多くのミステリファンは梶龍雄の諸作あたりを思い浮かべるんだろうけど、もしかするとアニメ映画『この世界の片隅に』のヒットにあやかったものかなとも考えた。
 それはともかく溌剌としたキャラクターと時代色、それに現在また新たに生じる殺人事件の謎といった要素の掛け合わせがとてもバランス良く語られる。大技を使った『黒龍荘』の時は見えにくいが、本作や『海妖丸事件』を読むとこの人は基本的にクリスティー的な作風だよね、と思う。ミステリとしてのカードの切り方がよく似ている印象だ。
 そんな事件の真相は、良くも悪くも昭和の国産・佳作~秀作ミステリにありそうな感じで、意外なような、普通に無難な線を狙ったような。ただし大事な手掛かりの大きな一つが真相解明まで伏せられているのはちょっと…という気もしたが、まあ多分それを先に伏線として見せると大方の読者は前もって事件の構造に気が付いてしまうかもしれない。
 口上の通りの<太平洋戦争中の一地方が舞台の青春ミステリ>として佳作~秀作。ヒロインの薫も可愛く、若いうちに読めるなら読んでおいた方がいいかも。

■P177の滝くんの説明のあたりは誤記か誤植だよね。滝が語って、同じ当人がそれを聞いて驚いているので。再版の際か文庫化のときに直しておいてください。

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