まさむねさんの登録情報 | |
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平均点:5.86点 | 書評数:1195件 |
No.1015 | 6点 | クスノキの番人 東野圭吾 |
(2022/08/02 22:27登録) 不思議なクスノキを巡る人間ドラマ。 次々とページをめくらされた辺りは、さすが東野さん。安心して読めるイイ話で、特段の不満がある訳ではないのですが、最後の方は少し書き急いでいる感じも受けたかな。皆の「その後」も気になったのだけれども、読者として欲張り過ぎかな。 |
No.1014 | 7点 | 幻月と探偵 伊吹亜門 |
(2022/07/25 22:02登録) 昭和初期の満州国を舞台とした作品。岸信介氏も登場します。衝撃的な事件があった今こそ読んでみようかと、手にした次第です。 探偵役・月寒三四郎のハードボイルドタッチの探偵譚としても楽しめたのですが、真髄はホワイダニットの部分。この時代の、この国(地域)だからこその物語。歴史の結末を知っている自分が言うのはおこがましいのですが、極寒の乾いた満州の風景とともに描かれる、儚い一時期の夢(と表現していいのか?)が印象的。今では語られることも少なくなった、当時の満州国に対して想いを巡らせていただいた点に感謝して1点加点。 |
No.1013 | 5点 | さよならに反する現象 乙一 |
(2022/07/23 22:45登録) 5編を収録した短編集。うーん、どうなのだろう。総じて中途半端な印象を受けました。 最も作者らしい設定の短編が「悠川さんは写りたい」。心霊写真を作ることが趣味の青年と交通事故で亡くなった女子大生のやり取りが、何かホッとします。でも尻切れトンボ感が否めず。「そしてクマになる」も嫌いじゃないのだけれど、もうワンパンチほしかった印象。 |
No.1012 | 6点 | シェルター 近藤史恵 |
(2022/07/18 22:38登録) 整体師シリーズ第3弾。 安定的に面白いのだけれども、1作目、2作目と比較すれば、多少下がるか。力先生と恵・歩姉妹、さらに小松崎のメインメンバーの関係性が固まってしまっているので、やむを得ない部分もあるとは思うのですが、真相を知って振り返ってみると怪しげな人物の置き方があざと過ぎて、何かうまく流された感じも受けます。 とはいえ、メインメンバーのキャラは魅力的。今後続編はないものか。 |
No.1011 | 7点 | 茨姫はたたかう 近藤史恵 |
(2022/07/11 23:26登録) 前作「カナリヤは眠れない」の読み心地の良さから、早速シリーズ続編も入手して読んでみました。 前作に引き続いて好印象。力先生をはじめ、登場人物たちの雰囲気が何とも好ましいのですよね。主人公の成長も好ましく、うまく言えないのだけれども、嬉しい気分で読み終えました。力先生のコトバも沁みる。このシリーズ、いいな。 |
No.1010 | 5点 | 寝台特急(ブルートレイン)八分停車 西村京太郎 |
(2022/07/09 16:16登録) 相当前に読んだはずなのですが、ほとんど記憶に残っていないので再読。 腎臓結石で入院した亀井刑事が、夜のレントゲン室から漏れる男女の会話を耳にします。寝台特急は八分間停まる。八分あれば人殺しもできる。今週の日曜日には必ず奴を殺す。 序盤から中盤まではグイグイと引っ張られました。中盤以降は、犯人が明らかなこともあって、ちょっと中だるみの印象もあったかな。ラストは、レントゲン室で自身の犯行を思わず叫んじゃうのかな?と思ったら、結構あっさりとした幕引き。亀井さんの石が早めに出てきてくれたことは良かったけどね。 ちなみに、有名な話では、あるのですが、作者の、文章は、読点が、多すぎて、とても、読みにくいですよね。 |
No.1009 | 6点 | 珈琲店タレーランの事件簿7 岡崎琢磨 |
(2022/07/03 23:08登録) 4つの短編と3つの掌編で構成されています。うち4短編については、全て実際の出来事を題材にしたとのこと。その方針のきっかけとなったらしい「ビブリオバトルの波乱」がベストかな。一方で、4短編ともに無理やり感が漂うような気がしましたね。実際の出来事を用いただけに、やむを得ない部分もあるのかな。 ちなみに、今回の美星バリスタは、一部の掌編を除いて、純粋に探偵役に徹しています。これはこれでいいかも。でも、美星バリスタはお客の話を盗み聞きし過ぎでは?それを言っちゃあ短編集にならないか。 |
No.1008 | 6点 | スクイッド荘の殺人 東川篤哉 |
(2022/06/30 21:19登録) 烏賊川市シリーズ13年ぶりの長編。鵜飼探偵&流平コンビ、さらに砂川警部&志木コンビ等々、とても懐かしい気分で読ませていただきました。その点は素直に嬉しかったですね。(朱美さんが顔を出す程度にしか登場しなかったのは少し残念だったけど。) 一方で、ミステリ的な側面についての積極的な評価はしにくい。端的に言えば、長く引っ張るだけのネタだったのだろうか、といったところ。伏線も含めて巧くまとめているし、スイスイと楽しく読ませてはいただいたので、全体として悪い印象ではないのですが、もうワンパンチほしかったかな。 ちなみに、「烏賊」の英訳が「スクイッド」らしいですね。烏賊押しの姿勢は嫌いじゃないです。 |
No.1007 | 7点 | カナリヤは眠れない 近藤史恵 |
(2022/06/22 21:35登録) 買い物依存その他諸々、テーマ自体は重たい内容だと思うのですが、そんなに鬱々とならず、むしろ前向きに読み終えられたことに好感。「そんな迂遠な手法をとるのかなぁ」とか、突っ込みどころもなくはないのですが、メインメンバー達の雰囲気のよさやリーダビリティの高さが勝って、心地よく読み切りました。転換の内容とタイミングについても、個人的にはポイントが高い。 ちなみに、自分も合田整体師に心と体を調整してもらいたいものだなぁ…としみじみ感じました。最近、疲れがとれにくくなっているのですよねぇ。続編もそのうち読むことになりそうです。 |
No.1006 | 6点 | 堪忍箱 宮部みゆき |
(2022/06/14 22:18登録) 8篇からなる時代モノ短編集。 江戸の市井の人々の日常生活を描きつつ、登場人物の心情について、押しつけがましくなく、スッと読者の心に染み込ませる力量はさすがの一言。「心の動き」で次々にページをめくらされました。 ホラー風味の短編から純粋な人情モノまで幅広い品揃えで、読者としては、同パターンが続かなかったことも嬉しいですね。個人的には、「敵持ち」の味付け、「砂村新田」の優しさが特に良かったかな。 |
No.1005 | 6点 | なぜ、そのウイスキーが死を招いたのか 三沢陽一 |
(2022/06/11 16:59登録) 仙台のバーが舞台となる短編集。バーテンダーが馴染みの客の話を聞き、真相を解き明かすスタイルで統一されています。 4短編のタイトルは、「何故、ブラック・ボウモア四十二年は凶器となったのか?」、「何故、死体はオクトモアで濡れていたのか?」、「何故、犯人はキンクレイスを要求したのか?」、「何故、利きマッカランの会で悲劇は起きたのか?」。タイトルどおり、ウイスキーにまつわるホワイドニット中心の構成。内容として、斬新な何かがあるものではなかったけれど、悪い印象はなかったですね。ウイスキーへの愛は強く感じました。(逆に、その辺りが合わない方もいらっしゃるかもだけど) |
No.1004 | 5点 | ミステリなふたり a la carte 太田忠司 |
(2022/05/28 21:37登録) シリーズ第3弾。一編一編がコンパクトな短編集なので、スキマ読書用として活用させていただきました。結果、結構長い期間をかけて読み切ることになってしまったのですが、前半の短編の内容はほとんど覚えていない(汗)。悪くはないのだけれど、「ほほう」と記憶に残る点もないという、まぁ、そういった短編集。 |
No.1003 | 8点 | 六人の嘘つきな大学生 浅倉秋成 |
(2022/05/24 22:35登録) 見事です。この間、様々な媒体で高い評価を受けていたことも頷けます。 多くの皆さんが経験する(した)であろう「就活」をテーマにした上で、最終選考に残った6人たちで内定者1名を決定するためにグループディスカッションを行う…まずはこういった舞台設定が興味深い。第一部で就活時点を描き、第二部で8年後を描くという、時間差攻撃?も効果を上げています。何よりも、「犯人は誰だったか」という主たる謎のみならず、周辺にも複数の謎を配置し(しかもそれらの謎が主たる謎と絶妙にリンクしてくる辺りが心憎い)、伏線を配置しながら二転三転させてくる技巧には唸らされました。 読み終えた後、「自分だったら、ディスカッションの際、そんなに取り乱さずに別の対応を採ると思うな」といった不自然さを感じた面も正直ございました(そもそも、こういった採用手法自体があり得ないだろうしね)が、全体の作りこみ具合は、こういった不自然な点を凌駕していたと思います。本当に採用すべき人材は誰だったのか、否、そんなことを結果論で捉えること自体が間違っているような気もするし、様々に考えさせられる作品でもありました。 |
No.1002 | 6点 | むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。 青柳碧人 |
(2022/05/16 22:43登録) 日本昔話シリーズの続編(ちなみに、この間「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。」も出版されているので、昔話シリーズとして括れば3作目ということになりましょうか)。 第一作に比べて、ミステリとして様々に手を加えようとする姿勢を感じた一方で、手を広げすぎというか、紡ぎすぎというか、そんな印象も受けました。勿論その努力は買うのだけれども、面白味に結びついているかという観点では消極的な評価。特に最後の二話連作(猿蟹合戦+ぶんぶく茶釜)は、舞台設定としてはなかなか興味深かっただけに、すごく惜しいような気がしましたねぇ。結果、この作品の中では、第一作の雰囲気に最も近い「竹取探偵物語」が個人的に一番しっくりきたりして。 |
No.1001 | 7点 | 華麗なる誘拐 西村京太郎 |
(2022/05/12 22:52登録) 左文字進探偵シリーズの第二作。 面白かったですねぇ。まずは、全国民を誘拐したとして政府に5千億円の身代金を要求するという発想が斬新。そして政府が支払わないと見るや、犯人グループは、安全・平和と印刷された5千円のワッペンを付けていれば殺さないと国民に呼びかける。売れ続けるワッペン。まさに「華麗なる誘拐」。どんどんページをめくらされましたねぇ。左文字の語る「犯人の計画が成功すればするほど破滅が近づく」という論理も記憶に残りそう。 犯人グループの特定があっさりし過ぎていないか?という気がしないでもないのですが、個人的には、西村京太郎作品の中でかなり上位に入りそうな作品。(ちなみに、現時点でのトップは「殺しの双曲線」であります。) |
No.1000 | 6点 | 消えた巨人軍 西村京太郎 |
(2022/05/04 19:32登録) 左文字進探偵シリーズの第一作。十津川警部以外のシリーズがあることも、そしてこの作品のタイトル自体も、ウン十年前に承知しておりましたが、私にとってこのシリーズは初読です。東京駅から新幹線で遠征先の大阪に向かった巨人軍の監督、コーチ、選手ら37人が姿を消したという展開。左文字探偵や警察の捜査過程も含めてなかなかに魅力的で、西村先生らしさが出ている作品と言えます。(ちなみに、終盤で「このタイムリミット内にそれらの行動をするのは絶対に無理だよね」と思わずにはいられない部分があるのですが、まぁスピード感重視ということで…) 最後に、先生のご訃報に接してヒトコト。今から3年前に湯河原の西村京太郎記念館を訪問した際、偶然ですが先生とお話をさせていただく機会に恵まれました。私が好きな西村作品を挙げたところ、「あれはあまり売れなかったからねぇ」と笑われていたお顔が心に残っています。在りし日のお姿を偲びつつ、改めて先生の作品を読ませていただきたいと思います。 |
No.999 | 9点 | 大誘拐 天藤真 |
(2022/04/29 22:00登録) 純粋に面白かったですね。テンポもよく、ハラハラさせられながらコミカルでもある。そして痛快。登場人物のキャラ設定も抜群です。真の悪者がいないのもイイ。全員を応援したくなりましたね。 それもこれも「とし子刀自」のおかげ。「とし子刀自」を生み出した作者に敬意を評します。 |
No.998 | 7点 | 硝子の塔の殺人 知念実希人 |
(2022/04/17 14:56登録) 昨年は「~の殺人」をタイトルとする好作品が目白押し。「硝子の塔」も読み逃がせまいと手にした次第です。 塔の見取り図だけでも興味津々。ガチガチ本格設定の使い方が巧みです。なるほど、なるほど、そう来たか。面白かったし、唸らせられましたね。作家さんが寄せた帯コメントも楽しく、特に綾辻氏の「ああびっくりした」は味わい深い。 一方で、同時期であれば「兇人邸」や「蒼海館」を推したくなる自分がいたりします。評価というものは、難しいものですねぇ。 |
No.997 | 6点 | いつものBarで、失恋の謎解きを 大石大 |
(2022/04/02 15:01登録) 馴染みのバーでオーナー兼ママに過去の失恋を話す綾。同席していた初老の男が社会学や心理学を基に、すれ違いの原因を推理する…というスタイル。驚きの展開はないけれども、平成に流行した歌や時事ネタも織り込まれているので、懐かしさとともに読み進められました。 ちなみに、個人的には綾の失恋話よりも、オーナー兼ママ・みひろの若かりし頃の思い出の方が、しんみりとして良かったかな。 |
No.996 | 7点 | 白鳥とコウモリ 東野圭吾 |
(2022/03/24 22:17登録) 竹芝桟橋近くの路上に違法駐車されていたセダンの後部座席から、男性の遺体が発見された。ほどなく、被害者は弁護士であることが判明。警察は、生前に弁護士事務所に電話をかけてきた愛知県三河安城在住の男に注目するが、ある日突然自供を始めた。「すべて、私がやりました。すべての事件の犯人は私です」 東野圭吾版「罪と罰」という触れ込み。被害者と加害者の家族の心情も含めて読ませます。中盤、冗長に感じた部分もあったのですが、終盤はほぼ一気読み。作者の力量を感じます。ちなみに、読中に横山秀夫氏を想起しました。これって私だけ? |