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ミステリの祭典

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出版禁止 死刑囚の歌

作家 長江俊和
出版日2018年08月
平均点7.67点
書評数3人

No.3 8点 まさむね
(2024/02/03 07:41登録)
 二人の幼児が殺害される事件(柏市・姉弟誘拐殺人事件)が発生。犯行を自供した男の死刑が確定する。当該事件の22年後、幼児の両親が殺害される事件(向島・一家殺傷事件)が発生。死刑は既に執行されており、男の犯行はあり得ない。両事件の裏には何があるのか…。
 複数のルポルタージュや雑誌記事を読み進める形で、徐々に真相が明らかになっていきます。先が気になってグイグイ読まされました。不穏な空気が序盤から漂っているので、それなりに注意深く読んできたつもりだったのですが、ラストには驚かされました。「どういうこと?」と首をひねった私は、きっとすごく幸せな読者なのであろうと、暫くして自分を励ましたりもしました。(よく考えれば、気づけるのでしょうが…)和歌の解釈は、もはや解説サイト任せなダメな私ではありますが、こういった点も含めて、純粋に面白かったですねぇ。

No.2 8点 suzuka
(2022/10/13 01:40登録)
とある事件に関する記事やルポルタージュを編纂した書籍、という体の作品です。
各記事やルポルタージュは書き手も時代も違うので、この時点で大掛かりなトリックを予感させますが、結末はそれ以上のものでした。
あと読んでてとにかく面白い。リーダビリティがあるというのでしょうか。

No.1 7点 メルカトル
(2020/10/30 22:43登録)
『出版禁止』は第2弾も、やっぱり、すごかった! 幼児ふたりを殺した罪で、確定死刑囚となった男。鬼畜とよばれたその男、望月は、法廷でも反省の弁をひとことも口にしなかった。幼い姉弟は死ぬべき存在だった、とも――。本書の「編纂者」はこう書いている。「人の悪行を全て悪魔のせいにできるなら、これほど便利な言葉はない」。あなたには真実が、見えましたか?
Amazon内容紹介より。

重苦しく、読んでいて心地よい感情を喚起する内容ではありません。まるでノンフィクションのようで、噛んで含めるように、言い換えれば執拗に描写されるさまは、異様な迫力をもって読者に迫ってきます。様々な媒体、ルポルタージュなどで構成されており、極端に会話文が少なく、複雑な人間関係を解き解して謎を追うライターたちの執念は最後に結実します。なぜ死刑囚望月は幼い二つの命を絶ったのか、そこには一筋縄ではいかない裏の裏が隠されており、人間の持つ醜さや残酷さを浮き彫りにします。また、刑務所で書された望月の短歌を暗号として捉えたところも重要なポイントとなっています。

それにしても、最後の一行には正直愕然としました。一体何なのだろう・・・。これはどう考えてもおかしいではないかと思いました。そして物語を遡って確認せずにはいられませんでした。なるほどそういうことなのか、と納得したのは暫くしてからでしたね。正直「出版禁止シリーズ」ということで、もっと違ったトリッキーな内容を期待していましたが、良い意味で裏切られました。勿論サスペンスの要素はふんだんに織り込まれていますが、社会派としても十分機能していると思います。

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