私雨邸の殺人に関する各人の視点 |
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作家 | 渡辺優 |
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出版日 | 2023年04月 |
平均点 | 6.60点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 8点 | 虫暮部 | |
(2024/07/26 12:26登録) クローズド・サークルに細かい工夫をアレコレ施した、派手ではないが意義のある果実。私はホワイダニットに注目。あの心理が成立する状況は調っていたと思う。 途中、某がAC作品を引き合いに出して “子供だからといって侮ることはできない” と思考している。しかし、フィクションを根拠にして現実の一般論を語っても無意味だ。もっとも、その人の浮かれたキャラクターは、確かにそんな風に考えそうでもある。私はこの部分をアイロニーとして受け取ったけれど、それにしてはさりげなく書き過ぎではないか。 それとも、私の気付かぬところにそういう棘がもっと埋まっているのだろうか。人は見たくないものは見ない生き物だからね。 |
No.4 | 5点 | take5 | |
(2024/04/14 11:42登録) いわゆる藪の中的な多重視点作品 クローズドサークルでの殺人事件 素人探偵も登場、各々が推理する すみません極めて私見なのですが 人物の描写にあまり魅力を感じず 最後の真相もあまりぱっとせず… 殺人が抑圧された心情の開放なら もう少し人間を描かないと厳しい 300ページは極めて読みやすく 深みを求めなければまあ良しかと |
No.3 | 7点 | まさむね | |
(2024/01/20 23:37登録) クローズドサークルでの密室殺人。複数の視点での物語の進行。確たる探偵役はおらず、各々が推理を開陳して…という、正統派フーダニット作品。目新しさという観点では弱いし、動機も弱いと思うのだけれども、ロジカルな本格作品というのは、やっぱりいいものですな。締め方も良いですねぇ。 昨年末の各種ミステリランキングで、もう少し評価が高くても良かったのでは?…などと思いましたね。目立ちはしないけど、佳作とは言えると思います。 |
No.2 | 6点 | みりん | |
(2023/10/01 04:16登録) 探偵役以外にあまり真新しさはないのですが、ロジックがよく練り込まれている作品だと思いました。フーダニットが好きな方におすすめできます。 改名前のツイッターという言葉が出てくるのには時代を感じさせますよね、今年の作品なのに笑 ある人がある人を犯人だと気付いた理由もいかにも現代らしくて良いです。 うわ〜読む前に人並由真さんの書評を読んでおけば良かったですね〜 クリスティのおそらく有名作(?)に関してネタバレの如き仄めかすものをくらいました。実は私、今年の新刊でもう一つクリスティの超超有名作のネタバレをされているのでまたか〜と少し消沈。まあこちらは流石に読んでない私が悪いと思うのですが、クリスティは必修という共通認識があるんですかねぇ… 国内作品に逃げずに海外古典も読めよというメッセージだと前向きに受け取っておきます。 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | |
(2023/06/15 05:54登録) (ネタバレなし) その年の6月下旬。SNSで「クローズド・サークル」ものミステリへの強い思い入れをぶちまけていたT大学ミステリ同好会の会員で、18歳の二ノ宮は、とある老人から「自分はかつて殺人事件が起きた屋敷の主である」とコンタクトを受ける。老人は、大企業「雨目石鋼機」の名誉会長で77歳の雨目石昭吉だった。かくして同じサークルの同性の会長・一条とともに、昭吉の所有する山間の館「私雨邸(わたくしあめてい)」を訪問する二ノ宮だが、そこには様々な成り行きから11人の男女が集結していた。そして殺人事件が起きる――。 2016年の『ラメルノエリキサ』で出会って以来、評者が著者の本を読むのは、これで三冊目。 自分の読んでないものも含めて、創作対象の裾野がかなり幅広い印象の作者だが、ウレシイことに今回は直球のフーダニットパズラー、しかもクローズドサークルものと来た。 さらにネタバレになるのでここでは言わないが、後半には、フーム! という感じの趣向まで用意されている。 いい意味で細かいトリックの積み重ねが小気味いいし、何より最大の眼目は……(以下略)。 後半のスリリングな展開(これくらいは言っていいだろう)を経て、事件の真相が開陳。 そのあとの味付けがちょっとフランスミステリめいていて、作品の方向性は少し違うものの、余裕が出てきた安定期の泡坂妻夫作品らしい雰囲気めいたものも感じたりした。 次回もまたパズラーかどうかはしらないけれど(なんかまた別の文芸ジャンルに行きそう)、こういう持ち味でまた新作を読ませてくれるならウレシイとも思う。 なお中盤で、ネタバレ……ではないにせよ、某クリスティーの初期作品について少し余計なことを言い過ぎてるので、ここだけは玉に瑕。具体名は出さないで、分かる人、当該作品をすでに読んでいるヒトだけピンとくるようにすれば、それで十分だったんでないの? |