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ミステリの祭典

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私雨邸の殺人に関する各人の視点

作家 渡辺優
出版日2023年04月
平均点6.71点
書評数7人

No.7 7点 ミステリ初心者
(2026/01/15 00:50登録)
ネタバレをしております。また、この作品は、アガサ・クリスティーのある作品のネタバレがされています。

 クローズドサークルに惹かれて購入しましたw また、興味が湧くタイトルですね!
 そのタイトル通り主に3人の主観文章で進みます。しかし、ごくごく一般的なクローズドサークル作品です。そのため、非常に読みやすく、あまり時間をかけずに解決篇前まで読むことが出来ました。曰く付き物件を改装した別荘ではあるものの、過去の事件はあまり絡まず、オカルト的なものもないです。事件発生前日ぐらいから文章が始まり、ほぼ私雨邸で完結します。最近のクローズドサークル作品にしては珍しく本格推理小説に徹している感じがします。
 登場人物を見るとかなり珍しい苗字の名前が出てきます。そのため、私はライトノベル的な作風を予感しましたが、ほとんど逆で、端正な推理小説でした。端正すぎて最近の作品にしては遊びが少ないと感じるぐらいでしたw
 少しユニークな要素としては、クローズドサークルを体験して歓喜するミステリマニアの二ノ宮ですw 人が殺されているのに不謹慎に喜びまくりますw ミステリファンのステレオタイプみたいなキャラです。ただ、牧が毒を飲んだ際に、毒を大麻と予想したのは流石にアホ過ぎる気がします…。ミステリファンなら(でなくてもですが)先にタバコを疑いませんかねw

 推理小説要素について。
 非常にレベルが高くて満足しました! 多重解決系であり、さらに1つ1つの説の否定も論理的だし、細かいながら読者にも推理できるヒントもあります。さらにやや既視感があるものの密室トリックがあり、また指紋をつけないために犯人が取った行動は独創的でした(これは難癖点もあるので後記w)。ラストの田中による推理も納得感が高いものでした!

 難癖ポイント。
 手に糊を付けて固めることでコーティング。それをして犯行し指紋を残さないトリックは見たことがなく、感心しました。しかし、糊といっても色々あり、あまり想像できませんでした。また、手形が残らなくても凶器に糊が残ってしまわないのか疑問です。科学捜査の精度もすごいでしょうしね。そうでなくても、手についた直後の血は温かいだろうし、少量でも糊が溶けてしまわないのでしょうかね? ピンときませんw
 過去の有名作品でも、ネタが割れてしまうようなネタバレは書かないほうが良いと思います;;
 難易度の高さを感じましたが、その一端は探偵不在のためかもしれません。探偵役は読者からすると絶対に間違わない・嘘を言わない(嘘をいう探偵もいるけどw)ヒント提供役の役割もあると思いますので。

 総じて、読みやすく真面目で完成度の高い推理小説で満足しました。挑戦状こそ無いものの、読み返すべきポイントでそれをほのめかす文章が書かれており、作者の心遣いに痛み入りますw 私はもう一度読み直しましたが、当てることは出来ませんでした…。鍵のトリックを見た時、あまりの自分の馬鹿さに頭を抱えました;;

No.6 7点 zuso
(2025/03/19 21:29登録)
山奥の大豪邸で当主の老人が殺され、推理小説研究会所属の推理好きの大学生、地元雑誌の編集者、当主の無職の孫の三視点から顛末が語られる。彼らに限らず登場人物はそれぞれ事情を抱えており、途中で「全員が一つづつ嘘をついている」と明かされるなど、全員信用できない。
多重推理も結構な迷走を見せ、放蕩に解決するのかと思っていると、意外な伏線が拾われて一気に解決する。その後の展開もなかなか面白い。

No.5 8点 虫暮部
(2024/07/26 12:26登録)
 クローズド・サークルに細かい工夫をアレコレ施した、派手ではないが意義のある果実。私はホワイダニットに注目。あの心理が成立する状況は調っていたと思う。

 途中、某がAC作品を引き合いに出して “子供だからといって侮ることはできない” と思考している。しかし、フィクションを根拠にして現実の一般論を語っても無意味だ。もっとも、その人の浮かれたキャラクターは、確かにそんな風に考えそうでもある。私はこの部分をアイロニーとして受け取ったけれど、それにしてはさりげなく書き過ぎではないか。
 それとも、私の気付かぬところにそういう棘がもっと埋まっているのだろうか。人は見たくないものは見ない生き物だからね。

No.4 5点 take5
(2024/04/14 11:42登録)
いわゆる藪の中的な多重視点作品
クローズドサークルでの殺人事件
素人探偵も登場、各々が推理する
すみません極めて私見なのですが
人物の描写にあまり魅力を感じず
最後の真相もあまりぱっとせず…
殺人が抑圧された心情の開放なら
もう少し人間を描かないと厳しい
300ページは極めて読みやすく
深みを求めなければまあ良しかと

No.3 7点 まさむね
(2024/01/20 23:37登録)
 クローズドサークルでの密室殺人。複数の視点での物語の進行。確たる探偵役はおらず、各々が推理を開陳して…という、正統派フーダニット作品。目新しさという観点では弱いし、動機も弱いと思うのだけれども、ロジカルな本格作品というのは、やっぱりいいものですな。締め方も良いですねぇ。
 昨年末の各種ミステリランキングで、もう少し評価が高くても良かったのでは?…などと思いましたね。目立ちはしないけど、佳作とは言えると思います。

No.2 6点 みりん
(2023/10/01 04:16登録)
探偵役以外にあまり真新しさはないのですが、ロジックがよく練り込まれている作品だと思いました。フーダニットが好きな方におすすめできます。
改名前のツイッターという言葉が出てくるのには時代を感じさせますよね、今年の作品なのに笑 ある人がある人を犯人だと気付いた理由もいかにも現代らしくて良いです。


うわ〜読む前に人並由真さんの書評を読んでおけば良かったですね〜 クリスティのおそらく有名作(?)に関してネタバレの如き仄めかすものをくらいました。実は私、今年の新刊でもう一つクリスティの超超有名作のネタバレをされているのでまたか〜と少し消沈。まあこちらは流石に読んでない私が悪いと思うのですが、クリスティは必修という共通認識があるんですかねぇ… 国内作品に逃げずに海外古典も読めよというメッセージだと前向きに受け取っておきます。

No.1 7点 人並由真
(2023/06/15 05:54登録)
(ネタバレなし)
 その年の6月下旬。SNSで「クローズド・サークル」ものミステリへの強い思い入れをぶちまけていたT大学ミステリ同好会の会員で、18歳の二ノ宮は、とある老人から「自分はかつて殺人事件が起きた屋敷の主である」とコンタクトを受ける。老人は、大企業「雨目石鋼機」の名誉会長で77歳の雨目石昭吉だった。かくして同じサークルの同性の会長・一条とともに、昭吉の所有する山間の館「私雨邸(わたくしあめてい)」を訪問する二ノ宮だが、そこには様々な成り行きから11人の男女が集結していた。そして殺人事件が起きる――。

 2016年の『ラメルノエリキサ』で出会って以来、評者が著者の本を読むのは、これで三冊目。
 自分の読んでないものも含めて、創作対象の裾野がかなり幅広い印象の作者だが、ウレシイことに今回は直球のフーダニットパズラー、しかもクローズドサークルものと来た。
 さらにネタバレになるのでここでは言わないが、後半には、フーム! という感じの趣向まで用意されている。
 いい意味で細かいトリックの積み重ねが小気味いいし、何より最大の眼目は……(以下略)。
 
 後半のスリリングな展開(これくらいは言っていいだろう)を経て、事件の真相が開陳。
 そのあとの味付けがちょっとフランスミステリめいていて、作品の方向性は少し違うものの、余裕が出てきた安定期の泡坂妻夫作品らしい雰囲気めいたものも感じたりした。
 次回もまたパズラーかどうかはしらないけれど(なんかまた別の文芸ジャンルに行きそう)、こういう持ち味でまた新作を読ませてくれるならウレシイとも思う。

 なお中盤で、ネタバレ……ではないにせよ、某クリスティーの初期作品について少し余計なことを言い過ぎてるので、ここだけは玉に瑕。具体名は出さないで、分かる人、当該作品をすでに読んでいるヒトだけピンとくるようにすれば、それで十分だったんでないの?

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