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ミステリの祭典

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神津恭介、密室に挑む: 神津恭介傑作セレクション1
神津恭介シリーズ

作家 高木彬光
出版日2013年04月
平均点5.33点
書評数6人

No.6 6点 まさむね
(2023/11/18 22:42登録)
 よく言えば、昭和の薫り溢れる短編集。雰囲気が堪らないですね。一方で、言い方を変えると「古い」ということにも…。
 個人的には「妖婦の宿」がベスト。犯人当て短編として誉れ高いことも頷けます。次点が「影なき女」の階層性か。「白雪姫」も嫌いではないけれど、他の短編は…といった印象。
①白雪姫:「雪密室」だけに着目するとアレだけど、トリッキーな短編ではある。
②月世界の女:人間消失モノ。雰囲気は嫌いじゃないけど真相は見えやすい。
③鏡の部屋:これも人間消失モノ。鏡の部屋だからねぇ…ってタイトルどおりか。
④黄金の刃:密室というよりアリバイ系?正直、ちょっと評価できない。
⑤影なき女:トリック自体は別として、なるほどよく考えられている。
⑥妖婦の宿:「犯人当て」の名作。

No.5 5点 じきる
(2022/04/09 22:51登録)
「妖婦の宿」「影なき女」といった名作が収録されていますが、流石に現代の読者には厳しいところがあるのでは。古き良き探偵小説としての趣は感じられました。

No.4 4点 ねここねこ男爵
(2020/04/03 01:59登録)
ネタバレ風味です。

発表当時はどうだったのか分からないが、1〜4作目は現代の視点からでははっきり言って凡作…少なくとも古さを感じさせない名作とは言い難い。
この作者の密室は機械的なものがかなり多いのだが、長編では(作中人物が述べている通り)あくまで作成法はどうでもよく、密室作成理由こそ本質としていて、実際その通りの作品に仕上がっている。
一方それが短編になると…機械的であること、作成理由が「密室になってるから自分は犯人ではないよ」のケースが多いこと、トリックが想像の延長上にあるものばかりなこと(隠れる場所がない→こうすれば隠れられるよねとか、足跡がない→こうすれば足跡を残さず移動できるよねとか)でかなりイマイチ。劣悪密室の条件が揃ってしまっている。

5作目の「影なき女」がやはり突出している。これがあるので3点にしたいところを4点とした。
6作目は当時としては斬新だったろう…現代の読者は「手記」であることから例の人物が登場した瞬間にピンときてしまうだろうけど。
また、犯人あてとしては候補2人から1人に絞れないと思うのだが…スリッパと人形の件は「不要な偽装工作であるが不気味さ演出のためやってしまった」と言われたらどうしようもないと思う。やる理由に乏しいだけで実行可能ではあるのだから。もちろん真犯人の人形の活用法は素晴らしい。

全体として、この短編集自体に価値は見出しづらい。後半の有名作は色々な場所で読めたりするので。

No.3 4点 いいちこ
(2017/07/09 16:09登録)
特に「妖婦の宿」「影なき女」の2作が世上高く評価されている短編集。
無理と無駄の少ない筋肉質なパズラーという作風には好感が持てるのだが、やはり古い。
新本格以降のミステリを渉猟してきた立場としては、退屈に近い古さと言わざるを得ない

No.2 7点 青い車
(2016/08/28 00:12登録)
 今時のすれた読者が読むにはキツイものがある作品が目立つ気がします。ただし、後半のふたつ『影なき女』と『妖婦の宿』は間違いなく傑作で、これだけはミステリーを語るなら読んでほしいと言っても過言ではありません。特に『妖婦の宿』はたったこれだけの頁数で二段構えの推理が堪能できるフーダニットの傑作だと思います(特に人形の使い方が上手い)。『影なき女』の方は、事件の構図の反転が鮮やかで、当時としては画期的な発明だったでしょう。

No.1 6点 E-BANKER
(2013/05/03 17:53登録)
「宝石」や「新青年」誌に掲載された「神津恭介」登場作品をまとめた短編集。
テーマはズバリ「密室」ということで、ミステリーファンの心をくすぐる作品なのは間違いない(だろう)。

①「白雪姫」=いわゆる「雪密室」に双生児というミステリーに付き物のガジェットを絡めた作品。何よりスゴいのが密室トリック。ここまで「密室トリックらしいトリック」に触れたのはもしかすると初めてかもしれない・・・
②「月世界の女」=あるホテルのロビー、衆人環視の環境でひとりの美女が煙のように消えてしまう・・・というのが本編の謎。登場人物などの設定を考えれば、自ずとトリックは見えてしまうのが難。ワトスン役の松下研三が右往左往するさまがなかなか愛おしい。
③「鏡の部屋」=これも密室からの人間消失がテーマ。鏡が登場する時点で、トリックの方向性は分かってしまうのではないか? いわゆる奇術師のトリックだな。
④「黄金の刃」=“四次元の男”を名乗る男が登場。要は密室とアリバイトリックの合体技に挑んだ作品なのだが、それほど出来のいい作品とは思えなかった。
⑤「影なき女」=なかなか趣向を凝らした作品。連続殺人事件のなかで、“影なき女”が共通して登場するのだが、この使い方に旨さが出ている。神津恭介は途中から登場し、快刀乱麻の如く事件を解決。
⑥「妖婦の宿」=「犯人当て」を主眼として書かれた作品。ある登場人物を視点人物として配したことで、ある大トリックをうまい具合に隠すことに成功している・・・って今時ならよくあるプロットではあるのだが。

以上6編。
密室括りとはいっても、典型的な「密室殺人」を扱っているのは①くらいで、あとは人間消失など広義の密室というべき作品が並んでいる。
まぁ、今現在から見れば古臭いという感覚になるのは否めないが、それでも流石に大作家だけのことはあって、バリエーションにとんだ密室トリックを味わうことができる。
そういう意味では、なかなかお得感のある作品集。
(個人的ベストは⑤か①。あとは横並びかな)

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