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ミステリの祭典

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平均点:6.00点 書評数:1848件

プロフィール| 書評

No.368 6点 ハッピーエンドにさよならを
歌野晶午
(2010/11/29 23:19登録)
すべてバッドエンドで終わる作品を並べた短編集。
まさにタイトルどおり、「ハッピーエンドは許さない!」強い意思を感じました。
①「おねえちゃん」=やや唐突に暗闇に突き落とされた感じ。そこまでしなくても、理奈ちゃん・・・
②「サクラチル」=実に歌野らしい・・・今は学歴じゃないですよ!幹久さん・・・
③「消された15番」=狂った女性ほど怖いものはないという話。でも、こういうこと割とありますよねぇ、臨時ニュースとか・・・
④「死面」=ブラックな話をサラリと書いている感じ。そんなに怖くはないですけど・・・
⑤「防疫」=またもや狂った女性の話。夫がかわいそう。よく我慢してるよなぁ・・・
⑥「玉川上死」=うーん。救われない話。そんな奴ら、殺す値打ちもないよ! 秋山君!
⑦「殺人休暇」=それだけいろんな物もらったんならそれくらい我慢しなよ! 理恵さん!
⑧「尊厳、死」=何がその人の「尊厳」なのかという話。ラストは軽いオチが・・・予想の範囲内。
以上8編+ショートショート3編あり。
全編後味の悪い作品ばかりですが、もうワンパンチ欲しいなぁというのが正直な感想でしょうか。
まぁ、でも作者らしい捻りの効いた作品集ですし、一読して決して損はないでしょう。


No.367 5点 びっくり館の殺人
綾辻行人
(2010/11/29 23:04登録)
ミステリーランドで読む「館」シリーズ。
ジュブナイル向けとはいえ、綾辻色を出して「ライトホラー」とでも名付けたくなるような雰囲気。
古屋敷老人の腹話術も、書き方次第ではかなり不気味な味わいになりそうなんですけど、そこは少年少女向けにやや抑え気味に表現されてます。
肝心のミステリー部分については、一応「密室殺人」ですが、実は密室ではなかったというオチ・・・
ラストももう一捻り欲しいところですけど、まぁそれも欲張りなのかもしれません。
全体的には、大人の鑑賞に堪えるにはやや不満が残る印象で、何も「中村青司」まで出さなくても良かったかな?と思っちゃいます。
あぁ、「奇面館」が待ち遠しい・・・


No.366 7点 検察捜査
中嶋博行
(2010/11/27 23:28登録)
第40回江戸川乱歩賞受賞作。
作者は現役の弁護士(当時?)で、弁護士業界をはじめ、検察・裁判所といった法曹界の裏側、薀蓄を興味深く知ることができます。
主人公は美人検察官というわけで、権力欲や名誉欲に凝り固まった法曹界の「悪や膿」に立ち向かっていくキャラとしては、こういう「美しいヒロイン」が確かに適してますね。
ざっと15年前の作品ですから、はたして今の状況と合致しているのかは分かりませんが、検察システムの問題や弁護士のギルド制(?)などについては「これでいいのか?」と考えずにはいられません。
法廷物の作品は他にもいろいろありますが、法曹界そのものをミステリーの舞台とする作品はあまりないと思いますし、処女作とは思えないほど高いクオリティ・・・
是非他の作品も読んでみたいなという気持ちにさせられました。


No.365 8点 毒入りチョコレート事件
アントニイ・バークリー
(2010/11/27 23:15登録)
巨匠バークリーの名作。
シェリンガムをはじめ、「犯罪研究会」メンバーが「毒入りチョコレート事件」に対して、それぞれの推理を披露していく展開が面白い作品。
6名の会員の推理が1つずつ披露されるわけですが、展開的には徐々に真相に迫っていくのかなぁ・・・と思ってると、結局最後まで「真相」ははっきりせずという流れ・・・
そこはバークリーの考え方というか皮肉のわけで、結局”真相なんて作者の匙加減一つじゃないか!”ということなんですよね・・・
ということは、「後は読者で考えて!」というスタイルも有りかなと思ってしまいました。
個人的にはシェリンガムの推理に惹かれたんですが、チタウィックの推理もやはり捨てがたい。(皆さんそう思うのかもしれませんが・・・)
本作も海外ミステリー黄金期の一作として、必読の書という評価でいいと思います。


No.364 8点 臨場
横山秀夫
(2010/11/27 23:03登録)
別名「クライシス・クライシ」の異名をもつ倉石検視官を軸として展開される連作短編集。
まさしく「横山短編集!」とでも言うべき良質の作品が目白押しの一冊。
①「赤い名刺」=倉石の部下、一之瀬の狼狽振りや心の動きが身に染みます。
②「眼前の密室」=個人的に本作ベスト。作者得意のマスコミネタを絡ませ、最後は意外な犯人と意外な動機が判明する展開。たいへん面白い。
③「鉢植えの女」=エリート刑事、高嶋課長と倉石のガチンコ対決。もちろん勝者は・・・
④「餞(はなむけ)」=横山流”心温まる話”。ラストがまたグッときます。
⑤「声」=映像化が似合いそうな作品。真相はかなりブラック・・・こういう女性は確かにいるんでしょうね。
⑥「真夜中の調書」=子を想う親の心・・・ですね。
⑦「黒星」=パーフェクトを誇った倉石が始めて付けた「黒星」・・・女性警察官を主人公にする話も作者の得意技。
⑧「十七年蝉」=17年ごとに発生する蝉の異常発生・・・倉石の優しさを感じさせる一作。
以上8編。
いやぁ、ホントうまくて面白いですねぇ・・・
短い作品の中で、登場人物ひとりひとりのキャラをきっちり書き分ける筆力やラストの余韻・・・「短編の名手」という形容詞は作者に捧げたいですね。


No.363 6点 名探偵の肖像
二階堂黎人
(2010/11/23 19:02登録)
他作品の有名探偵を主人公にしたパロディ短編とJ・Dカーについての対談、おまけにカーの全作品短評を付けた珍しい作品。
①「ルパンの慈善」=もちろんM・ルブラン「怪盗ルパン」シリーズのパロディ。雰囲気は出てますが・・・
②「風邪の証言」=鬼貫警部と丹那刑事のコンビが登場。なぜか「読者への挑戦」まで挿入されてますが・・・
③「ネクロポリスの男」=A・アシモフ風のSFパロディ。
④「素人カースケの世紀の対決」=これは一体なに? 何がしたいのか言いたいのか、さっぱり分かりません。
⑤「赤死荘の殺人」=H.M登場のパロディ作ということで、一番力は入ってますが、脱力感たっぷりの真相。
⑥『地上最大のカー問答』=芦辺拓氏とのカー作品に関するマニアックな対談。そこまでカーに思い入れがない身にとってはそれほど共感できない・・・(芦辺氏は割りと冷静に対応してますけど)
⑦『J・Dカーの全作品を論じる』=あくまでも作者の目線で見た評価ですが、全作品の短評が付いているので、割合参考になりそうです。(名作の中では「皇帝のかぎ煙草入れ」を評価していないというのがやや驚き!)
以上5編+2
全編にわたって二階堂テイスト満載で、氏の趣向や考え方がよく分かります。


No.362 6点 退職刑事2
都筑道夫
(2010/11/23 18:47登録)
作者の代表的シリーズ第2弾。
今回も現役刑事である息子の話だけで事件を解決してしまう「脅威の退職刑事」が大活躍!しますが、途中の2編は息子以外の人物の話を聞いて・・・という点でやや変化を付けてます。
①「遺書の意匠」=絶対に自殺しそうにない人物が自殺するのか? その理由は? という趣向。
②「遅れてきた犯人」=短編向きのプロット。要は時間差の問題で・・・物事は見る角度で違って見えるということですね
③「銀の爪切り鋏」=なぜ片手の指の爪だけを切ったのか? 想像力の勝利ですねぇ・・・
④「四十分間の女」=この短編集では一番の有名作。実際の事件を下敷きにして創作したそうですが、普通の想像力では真相に至らないでしょうね。
⑤「浴槽の花嫁」=パート1でも同じようなプロットが出てきましたが、確かに「意外性」はあるんですよねぇ・・・
⑥「真冬のビキニ」=真冬の海で、どうしてビキニ姿になったのか? 謎そのものは魅力的。
⑦「扉のない密室」=これも謎そのものはたいへん魅力的ですが・・・真相はちょっと残念な感じ。
以上7編。
前作同様、「安楽椅子型探偵物」として水準以上の出来だとは思いますが、ロジックというよりは想像力の問題のような気がするのも事実。
いずれにしても秀作がそろった前作よりはやや落ちるかなという印象です。


No.361 5点 バスカヴィル家の犬
アーサー・コナン・ドイル
(2010/11/20 23:12登録)
ホームズ物の4長編(「緋色の研究」「四つの署名」「恐怖の谷」)のうちの1つ。その中では一番の有名作?
私のホームズ初体験も、ご他聞に漏れず、小学校時代に図書館で借りた本作でした。
あれから何十年かぶりに、創元推理文庫で再読することに・・・
まぁ歴史的な作品に対して、今さらトリックがどうとか、プロットがどうとか論じるべきではないかもしれませんね。
他の方の書評にもありましたが、「短編」のような切れ味あるプロットを味わうというよりは、謎の魔犬やホームズの意外な登場など、サスペンス的な展開を楽しむべきなのだと思います。
読者にとっては推理できるような材料が提示されないので、ワトソンの慌てぶりやホームズの超人的な推理などをひたすら追っていくしかありません。
まぁ、評価としてはどうしても「短編」諸作よりは落ちるかなということになっちゃいますね。


No.360 6点 終着駅殺人事件
西村京太郎
(2010/11/20 22:39登録)
光文社のミリオンセラーシリーズの復刻版で超久々に再読。
日本推理協会賞受賞作であり、氏のトラベルミステリーの到達点と言うべき作品。
お馴染みの名コンビ、十津川警部と亀井刑事の2人が連続殺人事件を捜査、解決していくわけですが、特に今回は事件の舞台が「青森」というわけで、亀井刑事が主役級の活躍振り。(亀井刑事って、「青森」や「東北」という言葉を聞くと、条件反射のように「なつかしい顔」になるように書かれてます)
トラベルミステリーとしては、まだ3作目(「寝台特急殺人事件」「夜間飛行殺人事件」の次)の本作ですが、上野・青森間を走る寝台特急「ゆうづる」(当時)をメインに据え、安定感たっぷりの展開。連続殺人の「動機」の謎についても、ダイニングメッセージに絡めて、うまく処理しています。
ただ、「アリバイトリック」や「密室トリック」はやや脱力感を感じるレベルのものですし、トラベルミステリー以前の氏の作品レベルに比べれば、決して誉められるものではないでしょう。
こういう作品を読んでいると、新幹線のない時代の「鉄道」に憧れますね。(今や「ブルートレイン」すらほぼ全滅しちゃいましたから・・・)


No.359 7点 ガラスの麒麟
加納朋子
(2010/11/16 23:10登録)
日本推理協会賞受賞、作者代表作の連作短編集。
殺された一人の美少女をめぐって、6つのストーリーが紡がれていきます。
①「ガラスの麒麟」=まず、美少女麻衣子の殺人事件が発生。友人であるもう一人の女子高校生にも魔の手が・・・
②「三月の兎」=少女の学校の担任が本編の主人公。何となくうまくいかないことあるよねぇ・・・でもラストはホロリとさせられます。
③「ダックスフントの憂鬱」=神野先生の慧眼にビックリ! 
④「鏡の国のペンギン」=狙われるもう1人の女子高生・・・
⑤「暗闇の鴉」=もう一人の(元)美少女が登場。2人の美少女の存在がシンクロしていきます・・・
⑥「お終いのネメゲトサウルス」=殺人事件とそれを巡る謎に一応の解答が示されますが・・・ちょっと消化不良。
以上全6編。
作品中に何とも言えない独特の雰囲気がありますねぇ・・・トリックやロジックなどとはまったく無縁なのですが、単なるミステリーでは決してなく、読者の心の内に何事かを問いかけてくるような感覚とでも言ったらいいんでしょうか。
とにかく、一読の価値は十分有りだと思います。


No.358 6点 虚栄の肖像
北森鴻
(2010/11/16 22:49登録)
花師にして絵画修復師という別の顔を持つ男、佐月恭壱シリーズの第2弾。
作者らしい上質で気品のある連作短編集に仕上がっています。
①「虚栄の肖像」=古備前の甕とピカソの絵画、そしてそれを取り巻く人間の欲望や思い・・・何とも言えない重い雰囲気を醸し出してます。
②「葡萄と乳房」=佐月の元恋人と洋画の大家、藤田嗣治の未発表絵画・・・やっぱりラストは意外な展開に・・・
③「秘画師遺聞」=佐月も魅せられた女性の「縛り画」の作者の謎・・・作者とモデルの正体は意外な人物でした。
以上3編。
全編に渡ってピーンと糸を張ったような緊張感のある作品。
何となくスッキリしない展開やオチが多いので、若干残尿感を感じてしまいました。
あと、できれば本作は前作「深淵のガランス」読了後にお読みください。その方が登場人物の関係性が頭に入りやすいでしょう。(私は読む順番を間違えちゃいました)


No.357 6点 卒業−雪月花殺人ゲーム
東野圭吾
(2010/11/16 22:33登録)
作者初期の青春ミステリー。
大学生の加賀恭一郎が連続殺人事件の謎に挑みます。
現場の見取り図や鍵の形状をわざわざ挿入した割りに、密室トリックはたいしたことはありません。
ただ、例の「雪月花ゲーム」のトリックについては、なかなか面白い仕掛けだと思います。まぁ、「茶道」自体馴染みのない世界ではありますが、ここまで懇切丁寧に説明されれば、読者にも十分推理可能ですし、フェアでしょう。
「青春ミステリー」としてもよくできてますね。あの年代の頃の悩みや苦しみ・・・何となく思い出してしまいました。
剣道や茶道の薀蓄話も適度に絡ませてあるのも好印象です。
評点は辛めですが、作者の初期代表作、そして加賀刑事の初登場作品として外すことのできない作品なのは間違いないところです。


No.356 7点 死神の精度
伊坂幸太郎
(2010/11/13 00:03登録)
「死神」を主人公とする連作短編集。
今回も「伊坂ワールド」全開という感じで、独特のストーリーを味わうことができます。
①「死神の精度」=唯一の「見送り」なんですよね。これが伏線として最後に効いてきます。
②「死神と藤田」=ラストがよく分からなかったな。
③「吹雪に死神」=何と「雪の山荘」で連続殺人事件が発生! ですが、そこはやっぱり「伊坂作品」ですから・・・
④「恋愛で死神」=とってもいい話。なんで「見送り」にしないかなぁーと思ったら、そういうことですかぁ・・・
⑤「旅路を死神」=死神の行動&言葉が何ともいえずいい。
⑥「死神対老女」=ラストはサプライズが2つ。そうかぁ・・・そういうまとめ方かぁ・・・うまいなぁ!
以上6編。
「死神」が何ともいえない「いい味」出してます。是非続編を出して欲しいですね。


No.355 5点 死の鉄路
F・W・クロフツ
(2010/11/12 23:54登録)
フレンチ警部物の長編。
鉄道工事現場が作品の舞台となっていますが、これは作者の前職(鉄道技師)での経験がフルに生かされており、なかなか読み応えのあるストーリーにはなっています。
クロフツ作品らしく、容疑者1人1人のアリバイ&動機を丹念に調査し、その結果有力な容疑者が犯人として逮捕されますが、これが何と「誤認逮捕!」
最後はフレンチではなく、容疑者の恋人が真犯人を特定する有力な証拠に気付き、逮捕に至るという始末!
『主力の探偵役が結局事件を解決できず、他の登場人物が真犯人を指摘する』という展開がほかの作品でも見られますが、特に今回はそれがヒドイ!
この程度なら、当然フレンチ自身が捜査のうえ気付いて当然じゃないかと思わずにはいられません。読者に対してもこの事実が最後の最後にやっと提示されるので、その点でも不満が残ります。(動機も)
ちょっと貶し過ぎかな?


No.354 6点 101号室の女
折原一
(2010/11/12 23:42登録)
折原らしいテイストが手軽に楽しめる短編集。
全体的にはまあまあの出来でしょうか。
①「101号室の女」=よくある趣向ですが、そこは折原流にアレンジされてます。主人公と母親は後年作「暗闇の教室」でも登場します。
②「眠れ、わが子よ」=サスペンス感を盛り上げながら、ラストは反転させる・・・
③「網走まで」=「手紙」のやり取りを使った作者得意の展開。ラストでタイトルの意味が分かります。
④「石廊崎心中」=結末はすぐに分かりますが・・・
⑤「恐妻家」=交換殺人がモチーフ。妻がいなくなればという気持ちは分からないでもありませんが・・・
⑥「わが子が泣いている」=女ってこわいね!
⑦「殺人計画」=なかなか面白い趣向ですが、ラストは捻りすぎ?
⑧「追跡」=よくあるプロット。結末はすぐ読める。
⑨「わが生涯最大の事件」=折原らしいプロット&結末。ワンパターンといえばワンパターン。
以上全9編。
すべて平均的レベルという感想。「折原一入門編」としてはいいかもしれませんね。


No.353 7点 密閉教室
法月綸太郎
(2010/11/07 18:01登録)
記念すべき作者デビュー長編。
今回「新装版」で再読。
今さら読んでみると、なかなか意欲的で面白い作品だったんだなぁ・・・という印象。
もちろん、若さ故の「粗さ」や人物の描き込み不足といった欠点もあるんですが、学園内で起こった殺人事件を瑞々しい筆致で、かつロジックも十分及第レベルには評価できるかと・・・
本作の「肝」は「なぜ教室の机と椅子がすべて持ち去られたのか?」という謎に尽きますが(「密室」は付録ですね)、これだけのプロットをよくここまで膨らませたなぁとある意味感心しました。
主人公・工藤や友人との会話や、事件の背景や動機については、「まぁ、ちょっと現実性が薄いな」というところは否めませんが、これはこれで作者のステップとしてはよかったのではないかと・・・
法月綸太郎という作家を理解するためには、やはり本作は必読だと思いますね。


No.352 6点 サムソンの犯罪
鮎川哲也
(2010/11/07 17:49登録)
三番館シリーズの第2短編集(創元文庫版)。
前作に続いて、弁護士に雇われた私立探偵の「わたし」が三番館のバーテンダーの的確な助言を得て、事件を解決します。
①「中国屏風」=ちょっと違った角度で見たら、不可能が可能になる。言われてみると簡単なことですけど・・・
②「割れた電球」=これも発想の転換が見事。
③「菊香る」=双子登場でトリックはやはり双子絡みですが・・・たいしたことはありません。
④「屍衣を着たドンファン」=これも本シリーズ典型的な内容。あまり印象に残らない・・・
⑤「走れ俊平」=新宿通りをストリーキングした理由は? この謎がロジカルに明かされるところがいい。
⑥「分身」=珍しく殺人事件以外の内容。けっこう面白くて好き。
⑦「サムソンの犯罪」=短編らしい逆転の発想。
以上7編。
秀作が多かった前作に比べると、若干レベルダウンした印象。さすがにここまでワンパターンが続くと、読む方もちょっと変化球的作品が欲しくなる・・・


No.351 5点 ふたたび渚に
西村寿行
(2010/11/07 17:32登録)
前作「遠い渚」に続いて、関守充介を主人公に据えた「渚」シリーズ。
作者の十八番といえば「ハード&ロマン」というわけで、今回もそれを見事に踏襲、主人公・関守が単身で巨大な悪に立ち向かい、様々な妨害に逢いながらもラストは悪を殲滅させます。
もちろん、お得意の「○○シーン」もサービス満点・・・その点でも十分満足させてもらえます。
確かにワンパターンと言えばワンパターンなんですけど、それが作者の魅力であって、これがないと「やっぱり寿行じゃない!」となるのがスゴイところです。
まさに行間から「男臭さ」が漂ってくるような作品。(まぁ、読者を選ぶでしょうけど・・・)


No.350 8点 龍臥亭事件
島田荘司
(2010/11/03 23:32登録)
350冊目の書評はこの作品で。
御手洗潔シリーズというよりは、情けない中年の象徴「石岡」覚醒&再生の物語・・・
まず最初から「何で光文社ノベルズで石岡が?」という初歩的な疑問を持ちながら読み進めていきますが、最後の最後で「あの人が○○だったのか!」という(ファンにとっては)驚きの真相が披露され、島田氏の「企み」に唸らされる結果に!
作者あとがきでも触れてますが、本作はいわゆる「コード型ミステリー」と島田流日本の昭和史の融合を狙った作品ということで、それを十分に感じるほどのエネルギーとクドさを十二分に堪能できるでしょう。
「見立て」の必然性の問題とか、いかにも島田流の大掛かりなトリックについては、そのクオリティ云々を含めて、今回はあまり気になりませんでした。
「津山三十人殺し」や、それを生んだ日本の風土・風習など、その正誤や是非はともかく、読み手に考えさせずにはいられない圧倒的なスケール感にはやはり脱帽するしかないような気がしますね。(当然、好き嫌い・合う合わない、はあるでしょうが・・・)
今回、久々にこの超長編を再読して改めて思いました。「島田ファン以外がこれを読破するのは相当キツイ」と!
何しろ、上下刊で千ページ強。これでもかと続く殺人事件のオンパレード! こんな作品書ける作家は他にいないでしょうねぇ。それを含めての評価。


No.349 7点 ポアロのクリスマス
アガサ・クリスティー
(2010/11/03 23:07登録)
ポワロ物の佳作。
時期的にはちょっと早いですが、中味もあまりクリスマスを意識した内容ではありません。
本作、「館」に集まった大家族や怪しげな使用人、ゲストも登場という具合にいわゆる「コード型ミステリー」の要素満載ですが、そこは”いかにもクリスティー!”というストーリー&プロットを十分に感じさせてくれます。
正直、前半~中盤まではやや平板で盛り上がりに欠けるような気がしたところへ、ラストで意外な真犯人が指摘されます。
既視感のある「意外さ」なのは確かですが、見せ方がうまいですね。簡単に騙されてしまいました。
「外から施錠された密室(?)」というのも理由付けを含めてなかなか面白いと思います。

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