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ミステリの祭典

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メルカトルさんの登録情報
平均点:6.04点 書評数:1924件

プロフィール| 書評

No.64 7点 慟哭
貫井徳郎
(2010/06/21 23:42登録)
新興宗教とミステリは何故こんなに相性が良いのだろう。
そんな絶妙なブレンドを、デビュー作にも拘らず、老練ともいえる文体で見事に描き切った快作。
最後で作者の仕掛けにまんまと嵌められたわけだが、そこにはカタルシスの欠片もない。
読後はこれでもかというくらい、どんよりとしている。
しかしそれこそが作者の狙いであり、貫井氏の持ち味とも言えるのだろう。


No.63 8点 殺戮にいたる病
我孫子武丸
(2010/06/20 23:49登録)
本作はあのトリックがなくても、我孫子氏の最高傑作だと思う。
この作品なくして我孫子氏は語れない。
だから当然低い点数は付けられない。
それまではどちらかと言うと、ユーモアミステリ的な作風を主体としてきた作者だけに、このような作品も書けるのだと言う事を世に知らしめる為に描かれた様なふしもある。
所謂サイコホラーとしても一級品だし、新本格の心意気も忘れていない稀代の名作だ。
尚、グロさはそれ程醜悪というほどではないので、その意味で敬遠されている方は是非とも読んでいただきたいものである。


No.62 4点 支那そば館の謎
北森鴻
(2010/06/18 23:48登録)
北森氏の『狐闇』が予想以上に楽しめたので、勢いで本作も読んでみたが、正直あまりパッとしなかった。
ユーモアミステリが狙いなのだろうが、いまいち笑えない。
また、京都を舞台にしているが、残念ながら京都独特の雰囲気も私には伝わらなかった。
この作者はやはりプロット重視の本格ミステリが似合っているようだ。


No.61 3点 黒死館殺人事件
小栗虫太郎
(2010/06/18 21:29登録)
この作品は著者が自己満足のために書いたとしか思えない。
あまりの難解さと鬱陶しいほどのぺダントリーに何度も挫折しそうになりながら、何とか読了したが、二度と読む気は起こらなかった。
ミステリに限らず、読者に退屈を覚えさせるのは最悪だが、苦痛を強いるのは作家にとって最大の罪である。
その意味で本作はおそらくミステリ史上最も罪深い作品だと思う。
だから奇書なのか?


No.60 6点 幸福な朝食
乃南アサ
(2010/06/17 21:49登録)
読み終えた直後は多分すぐ忘れてしまうだろうと思っていたが、意外に印象に残っているシーンが多い、不思議な作品。
女性の幸せは美人に生まれる事とは限らない、美人に生まれたからと言って必ずしも幸せにはなれない、という教訓を読者に知らしめる。
幸せな人生はどれも似たようなものだけど、不幸な人生は様々だと思い知らされた、そんなちょっと怖いお話。


No.59 6点 葉桜の季節に君を想うということ
歌野晶午
(2010/06/16 21:55登録)
評判が良かっただけにハードルが上がって、辛口の採点になってしまった。
ハードボイルドはもともとあまり好みではない為、ストーリー自体も今ひとつ楽しめなかった。
最後に叙述トリックが仕掛けられているのだが、作者の狙いほどは驚けなかったのは残念である。
まあタイトルは秀逸だけど。


No.58 6点 密室の鍵貸します
東川篤哉
(2010/06/16 21:45登録)
密室とアリバイトリックの豪華二本立て、しかし全体の印象は地味である。
前半のまったりした雰囲気の描写の中に、ほとんどの伏線が張られているので要注意、うっかりしていると作者の術中に嵌る事になる。
最初の殺人の動機や二番目の殺人の真相はやや疑問視せざるを得ないが、今時珍しいユーモアテイストの本格ミステリであり、良心的な作品と言える。
謎の解明も細かい点までよく練られているし、警察、探偵共に一応の面目を保ってエンディングを迎えている点も好感が持てる。


No.57 7点 人形館の殺人
綾辻行人
(2010/06/15 23:54登録)
「びっくり館の殺人」とはまた違った意味での番外編的作品。
舞台は雨がそぼ降る京都は北白川。
個人的には綾辻作品で最も情景が眼に浮かぶ逸品である。
全体的に評価は低いようだが、私が読んだ中では綾辻氏らしさが非常によく出ている作品だと思う。
「館シリーズ」ブランドを上手く利用した仕掛けは、ここでみなさんがっかりされるのだと思うが、私はありではないかと考える。
本シリーズ中では疵も多いが氏らしい異色作であることは間違いない。


No.56 7点 グッドバイ 叔父殺人事件
折原一
(2010/06/15 00:53登録)
この作品も折原ワールド全開とはいかず。
しかし特筆すべきはなんといっても、ワゴン車で集団自殺に向かう道行の圧倒的な緊迫感である。
まるで自分がその場にいるかのように錯覚させるほどの臨場感は、息詰まるほどであり、その描写力だけでこの点数を献上したい。
尚、叙述トリック及びオチはあまり期待しないほうが無難であろう。


No.55 5点 生首に聞いてみろ
法月綸太郎
(2010/06/15 00:41登録)
本格ミステリ大賞受賞、「このミス」第1位、「本格ミステリベスト10」第1位のこの作品。
さてこのサイトの評価は・・・やはり低いですな。
論理性に拘りすぎるあまり、ドキドキ感やワクワク感が極端に薄れてしまった皮肉な結果に。
まるでお堅い教科書を読まされたような印象を受けた。


No.54 5点 六色金神殺人事件
藤岡真
(2010/06/13 23:38登録)
入手困難との噂と伝奇ミステリという謳い文句を聞きつけ、読んでみた。
途中まではこの摩訶不思議な連続殺人事件をどう収束させるのか、と興味は尽きなかったのだが、中盤で明かされる意外な真相で脱力というより落胆させられた。
真面目な怪奇色の濃いミステリだと思っていたので、裏切られた気分だ。
なので個人的にはあまり評価できず、この点数に。


No.53 6点 虚無への供物
中井英夫
(2010/06/12 23:49登録)
著者自身が本作を評して、初めて「アンチミステリ」と呼んだといわれている。つまり元祖アンチミステリ、という事になるだろう。
みなさんおっしゃるように、三大奇書の中では格段に読みやすい。
しかし、その後のアンチミステリの進化を見てみると、もはや「元祖」という存在意義以外はそれ程の重要性や特化性を見出せない。
当時としては画期的だったと思われるアンチ形態も、現在では色褪せてしまっているようだ。
今や、ミステり界における過去の大いなる遺産となってしまったのだろうか。


No.52 8点 吸血の家
二階堂黎人
(2010/06/10 00:09登録)
冒頭から引き込まれる。
二階堂氏のその後の作品を読むにつけ、氏の中では個人的に最も好きな作品であることに気づいた。
二十四年前の足跡のない雪の密室のトリックは本書の白眉ではないだろうか。
江戸時代から遊郭を営んでいた旧家での殺人という、大時代的な雰囲気もなかなかのもの。


No.51 7点 六枚のとんかつ
蘇部健一
(2010/06/09 23:52登録)
確かにバカミスだが、単なるバカミスだとはどうしても思えない。
『占星術』の本家取りは決してモノマネではなく、オリジナリティを兼ね備えているし、他の作品も十分笑って許せる許容範囲内であろう。
酷評される気持ちも分かるが、どうか寛容な心で読んでもらいたいものである。


No.50 6点 樹のごときもの歩く
坂口安吾
(2010/06/08 23:53登録)
未完であった「復員殺人事件」を高木彬光氏が解決編を執筆し完成させた訳だが、実はこの結末、安吾が予定していた犯人とは別人物だったようだ。
高木氏は坂口安吾の奥様に犯人とトリックを伝えられたが、どうしてもそれが真相とは信じられず、死の間際まで婦人にすら真実を教えなかったと解釈し、高木氏オリジナルの解決編を「樹のごときもの歩く」と改題して完結させた。
リレー形式の難しさを一捻り加える事によって、上手く昇華させていると思う。高木氏ならではの「いい仕事」だろう。


No.49 6点 大相撲殺人事件
小森健太朗
(2010/06/07 23:44登録)
いわゆるバカミスの系列に属する作品。
くだらなさとトリックの安直さは頂けないが、取り組み中に爆死する力士、入浴中に切り取られた力士の頭など、謎の提示は意外と魅力的ではある。
これらの謎に十分納得の行く解決が示されていたなら、傑作になったであろう可能性が高いだけに残念。
小森健太朗にもこんな作品が書けるのだという、新たな認識を世に示した怪作。


No.48 4点 陰摩羅鬼の瑕
京極夏彦
(2010/06/06 22:23登録)
断っておくが私は京極夏彦氏のファンである。
しかし、本作に関してはどう考えても高評価は与えられない。
犯人は最初から分かっているし、ミステリ的な仕掛けもない。
犯行の動機がくどいほど繰り返し説明されるのもマイナス要因にしかならない。
唯一、見所は関口と横溝正史氏との邂逅であろう。
もう少しコンパクトにまとめられていれば、評価も変わったかもしれないが・・・無駄に長くした為、逆に中身が薄っぺらになっている気がしてならない。
この点数は大きかった期待の裏返しだと思っていただきたい。


No.47 8点 わくらば日記
朱川湊人
(2010/06/06 22:10登録)
昭和30年代の東京が舞台。
ある特殊な能力を持った少女が、図らずも様々な事件に遭遇し、その能力で解決に導いていくのだが、その先に待っているものは・・・。
淡くノスタルジックな雰囲気に包まれた本書は、読む者の心を動かさずにはおられない、感動の連作短編集。
物語に登場する人物は、主人公の鈴音をはじめ、語り手である妹の和歌子、彼女らの母親、途中から加わる茜らがそれぞれ生き生きと描かれている。
ホラーともミステリともつかない文芸作品。
母親が茜を川原で背負い投げしながら、世の善悪を説く場面は涙なくしては読めない。
お薦めの一冊である。


No.46 8点 作者不詳 ミステリ作家の読む本
三津田信三
(2010/06/05 23:54登録)
もっと評価されて然るべき作品ではないかしら。
本作はこの作者の原点なのではないかと思う。
その読み応え、面白さは、刀城言耶シリーズにも劣らない。
作中作だけでも読む価値はあると断言したい。


No.45 4点 長い長い殺人
宮部みゆき
(2010/06/05 00:36登録)
財布が語り手の必然性がどうしても見出せない。
別に普通に三人称で書けばいいのでは?と思ってしまう。
そうなると、ストーリー自体にも平凡だし、トリックらしいトリックも仕掛けられていないので、自分はあまり魅力を感じなかった、残念な作品。

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