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ミステリの祭典

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赤々煉恋

作家 朱川湊人
出版日2006年07月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 パメル
(2024/10/20 19:31登録)
愛する者に向ける妄執ともいえる激しい執着の果てに、モラルの埒外に行ってしまった者たちの姿を、ホラーという意匠を用い、エロス溢れる筆致で描いた背徳の作品集。
「死体写真師」若くして病死した妹。美しかった生前の姿をとどめたいと考えた姉とその恋人は、死体を着飾らせてポーズをとらせた姿を撮影する写真師がいるという葬儀社を探し出し、目を閉じていることを除けば生きているような、ウェディングドレス姿の美しい妹の写真を残すことが出来た。退廃美に彩られた死体写真の鮮やかなイメージ、姉が最後に知ることになるおぞましい事実と直面する恐怖。背徳的でグロテスクな味わいのダークホラー。
「レイニー・エレーン」出会い系サイトで知り合った女とホテルに入った時、渋谷で死んだ同級生を思い出した男が陥った物語。
「アタシの、いちばん、ほしいもの」生きている時に得られなかったあるものを求め、自殺した少女の心が漂う物語。ただ悲惨なだけでなく、やるせない気分になる。
「私はフランセス」両親に遺棄され、過酷な人生を歩んだ女性が自分を大切にしてくれる男と出会い、やがて愛し合い同居する。だが男には奇妙な性癖があることを知る。究極のマゾヒズムが描かれている。
「いつか、静かの海に」少年が出会った青年が育てていたものに惹かれる幻想的な物語。

No.1 6点 メルカトル
(2010/10/01 23:45登録)
『水銀虫』と共に、朱川氏の作品の中では異端的な扱いを受けている短編集。ノスタルジック・ホラーを得意とする作者にしては、後味の悪い作品が並んでいる。
本作では愛に執着するが故に、悲惨でありながら耽美な倒錯の世界に身を投じる人間の悲しい性が、端正な筆致で描かれている。
お薦めは『死体写真師』と『私はフランセス』。

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