メルカトルさんの登録情報 | |
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平均点:6.04点 | 書評数:1924件 |
No.84 | 5点 | 館という名の楽園で 歌野晶午 |
(2010/07/15 23:41登録) ガチガチの館ものを期待すると肩透かしを喰らう。 限られたページ数で、本格的な館ものを描ききるのはやはり難しいのだろう。しかし、アイデアは評価できるし、推理作家ならではのオマージュは好感が持てる。 読後感が切ない。 |
No.83 | 6点 | 水銀虫 朱川湊人 |
(2010/07/14 23:56登録) 朱川湊人氏らしからぬ、ダークで後味の悪いホラー短編集。 どの物語も、「水銀虫」に蝕まれた(罪を犯した)者達の末路が容赦なく描きこまれている。 いわゆる因果応報が根底に存在しているのだが、結末がはっきりとした形で示されていない為、読者は不安定な状況に置き去りにされる。 その辺りが後味の悪さに繋がっている、鬱小説である。 |
No.82 | 3点 | 殺人ピエロの孤島同窓会 水田美意子 |
(2010/07/11 23:49登録) 小学生の女の子が描いたにしてはよく出来ているのではないだろうか。 しかし、内容的にはやはり高得点はあげられない。 ミステリというよりは、ホラーに近い作品なのだが、トリックやプロットといった肝心要の部分がすっぽりと抜け落ちている気がしてならない。 出版する側ももう少し考えて欲しいものである。 |
No.81 | 7点 | 夜市 恒川光太郎 |
(2010/07/10 23:54登録) 非常に新人離れしたストーリーテラーぶりを発揮している。 叙情溢れる、しかも無駄のない筆致は作者の生まれ持った才能ではないかとすら感じる。 この文体は真似しようと思っても出来るものではない、とにかく透明感のある筆運びはいかにもファンタジーらしい本作にとてもマッチしている。 同時収録の『風の古道』も作風は変わらず、どちらもちょっぴり不思議で、そこはかとなく切ない、心に響く秀作である。 |
No.80 | 5点 | 館島 東川篤哉 |
(2010/07/08 23:38登録) 相変わらず文体がまったりしているし、ギャグも結構寒い。 せっかくの逸材をユーモアタッチで描いている為、緊迫感の欠片もなく、いわゆる孤島ものとしての雰囲気をぶち壊しているのは勿体無い限りである。 トリックとしてはよく練られていると思うが、個人的には「そうですか」くらいにしか感じられなかった。 驚愕の結末には程遠かった。 それにしても、刑事の相馬の情けなさは何とかならなかったものか、少々腹立たしい思いすら残る。 |
No.79 | 6点 | しゃぼん玉 乃南アサ |
(2010/07/08 00:00登録) ミステリではないが、万人受けする文芸作品であろう。 ひったくりを繰り返し、人を傷つけても何とも思わない主人公をある老婆との出会いが変えていく。 老人達とのふれあいの中で、忘れかけていた本来の自分の心根を呼び覚まされる主人公、翔人。 人間同士の交流が、じんわりと心に染み渡るような佳作である。 |
No.78 | 6点 | 狂骨の夢 京極夏彦 |
(2010/07/06 23:38登録) 百鬼夜行シリーズの中でも幻想色の濃い一作。 宗教に対するアプローチは、「鉄鼠の檻」よりも私には難解に感じられた。 それだけ読み難い印象なのである。 文体が私にはあまり合っていなかったせいもあるが、世間の評価が高いのはやや意外だった気もする。 |
No.77 | 5点 | 骸の爪 道尾秀介 |
(2010/07/05 23:41登録) まず登場人物に魅力と個性が感じられないのは残念な限りである。 仏像の謎に関してはほとんど予想通りだし、そもそもそれほど興味をそそられるほどの謎でもない。 巷ではたいそう持て囃されている作家のようだが、私にとっては逆になぜそんなに人気が高いのかが不思議である。 一作だけで評価するのは早計かもしれないが。 |
No.76 | 7点 | 狐闇 北森鴻 |
(2010/07/04 23:52登録) 骨董の世界に身を置く、旗師・陶子の激闘を描く壮大なスケールの歴史ミステリ。 前半の競り市で魔鏡を手に入れるまでの入念な描写は、思わずのめり込んでしまう。 スピード感もあって読者をグイグイ引っ張っていく。 後半は一転、スケールが大きくなりすぎて、私はややついていけない部分もあったりしたが、概ね高評価。 他シリーズの主役級が友情出演しているのもファンには嬉しい。 |
No.75 | 8点 | 眩暈 島田荘司 |
(2010/07/03 23:45登録) 冒頭の一見荒唐無稽な手記を、現実の出来事として解釈し、実証してみせる豪腕は相変わらず見事と言ってよいだろう。 しかし、マンションとエレベーターのトリックや、手記の両性具有者のくだりは疑問視せざるを得ない。 まあ、そんなことを差し引いても傑作だとは思うし、御手洗シリーズらしい雰囲気は十分楽しめる。 |
No.74 | 6点 | 暗いところで待ち合わせ 乙一 |
(2010/07/03 00:01登録) もっと感動させる事もできるストーリー展開なのに、描写の仕方は意外と平坦である。 個人的にはやや起伏に欠ける、感情を押し殺したような文体が若干残念な気がする。 もう少し盛り上がりが欲しかったし、二人の感情にさらにもう一歩踏み込んでも良かったのではないかと思う。 だが、静かな感動を読者に与える佳作であるのは否定できない。 |
No.73 | 4点 | 黒祠の島 小野不由美 |
(2010/07/01 23:59登録) 「獄門島」を意識した訳ではないだろうが、プロットや設定はそれを思わせる。が、そんな魅力的な舞台設定を全く生かしきれていないのは残念である。 確かに小野不由美の作品でなかったら、これ程評価されなかったであろう、まさにイマイチの作品。 |
No.72 | 6点 | 完全犯罪に猫は何匹必要か? 東川篤哉 |
(2010/06/29 23:11登録) 地の説明文がくどかったり、会話文に不要と思われるような記述があったりと、全体に間延びした感は否めない。 しかし、十年前の殺人の動機には思わず唸らされた、これは猫捜しに大金を払うはずだ。 メイントリックはやはり無理があるような気がするが、一応論理的ではあり、まずまず頷ける。 タイトルは?な感じだが、要所要所で猫が活躍するので、猫好きは必読かも。 |
No.71 | 5点 | 長い家の殺人 歌野晶午 |
(2010/06/28 23:34登録) 著者の本格に対する情熱は十分伝わってくるのだが、いかんせん分かり易過ぎるトリックが決定的にマイナス要素。 探偵の信濃譲二も個人的にはあまり好みではないし、登場人物にもあまり個性が感じられない。 デビュー作にしては可もなく不可もなくといったところか。 |
No.70 | 4点 | 焦茶色のパステル 岡嶋二人 |
(2010/06/27 22:58登録) 乱歩賞を受賞した本作だが・・・。 競馬にもサラブレッドにも詳しくない私にとっては、今ひとつ楽しめなかった。 文体も私には合わなかったし、全体の印象も薄く、インパクトに欠ける。 乱歩賞をますます信用できなくなった、残念な作品。 |
No.69 | 5点 | 独白するユニバーサル横メルカトル 平山夢明 |
(2010/06/26 23:48登録) 完全に一線を越えてしまった、危険な短編集。 軽い気持ちで読んでみようかなどと考えると、後悔する事必至。 勿論、残酷描写や痛いホラーが好きな方はその限りではないが。 究極の苦痛の先には、快楽が待っているのだろうか、などとくだらない事をつい考えてしまう、一般のミステリ読者には決してお薦めできない一冊である。 |
No.68 | 7点 | 夜歩く 横溝正史 |
(2010/06/25 23:39登録) もしあのトリックが前例のないものだったとしたら、間違いなく満点をあげるのだが、残念だなあ。 しかし本作は、首なし死体=入れ替えトリックのお手本としての評価は高いと思う。 また、金庫に保管された日本刀の謎は見事であり、そこから犯人を推理する事もできる、とてもよく出来たアリバイトリックである。 |
No.67 | 7点 | ふたたびの虹 柴田よしき |
(2010/06/24 23:55登録) 優しく暖かい、そして切ない連作短編集。 舞台は東京は丸の内にある小料理屋「ばんざい屋」。 京風の「おばんざい」に誘われて夜毎集まる客たちの、ある時は悩みを聞き、ある時は客の持ち込む謎を鮮やかに解く女将の、安楽椅子探偵ぶりを情感豊かに描く佳作。 それぞれの短編の読後には何かしらの余韻を残すヒューマンスミステリであり、あくまで優しく、しかしどこか芯の強さを感じさせる女将は魅力的である。 女将の恋の行方も気になるところだ。 また、タイトルにも秘密が隠されている。 |
No.66 | 7点 | 粘膜蜥蜴 飴村行 |
(2010/06/23 23:45登録) 第63回日本推理作家協会賞受賞作。 ホラーでもない、ミステリでもない、SFでもない、ファンタジーでもない、それらのエッセンスをそれぞれ良いとこ取りしたような作品。 あらゆるジャンルを超越した、現代の奇書と呼んでも差し支えないであろう。 舞台は第一章と第三章が、戦時下の大病院。 主人公はその病院の御曹司で国民学校初等科に通う、雪麻呂。 彼を巡るさまざまな惨劇と、従姉妹に対する愛、失踪した母親への思いなどが読みやすい文体で描かれる。 第二章は雪麻呂の友人、真樹夫の兄で青年将校の美樹夫が主役を務める。 敵地ナムールで軍部の要人をある村に無事送り届ける為、ジャングルを巨大な虫どもと戦いながら踏破する物語。 とにかく全編に亘って、残酷描写をところどころに散りばめながら、様々なジャンルの要素をぶち込んだごった煮的な作品である。 また、へルビノと呼ばれる爬虫人(頭が蜥蜴で首から下が人間)の存在が要所で重要なポイントとなってくる。 ただ、ミステリとはとても呼べない本作が日本推理作家協会賞を受賞した理由は私には理解できない。 面白く、興味深い作品には違いないが。 |
No.65 | 7点 | コズミック 清涼院流水 |
(2010/06/22 21:27登録) これはミステリではありません。 ミステリとしてはトリックもへったくれもないので、そう思って読むと腹が立つわけである。 しかし、キャラクター小説としてはかなりよく出来ていると感じる。 際立った活躍をするでもない探偵達だが、それぞれの個性は描き分けられていて見るべきものがある。 あくまでキャラを楽しむ小説としてこの点数。 |