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ミステリの祭典

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依頼人は死んだ
葉村晶シリーズ

作家 若竹七海
出版日2000年05月
平均点6.70点
書評数10人

No.10 5点 パメル
(2022/05/23 08:21登録)
私立探偵葉村晶シリーズ第1作目で、4つの季節を2巡する間に出会った8つの事件と1つの「闘い」を描いた連作短編集。ホワイダニットあり、叙述トリックありと多彩だが、それぞれの作品に共通しているのは作者らしい「毒」が感じられること。
「濃紺の悪魔」探偵稼業に復帰した最初の仕事は、アイドル松島詩織の警護。究極の善意が操られる時、考えられない真相が告げられる。評価が分かれるでしょう。個人的には今ひとつ。
「詩人の死」詩人として華々しいデビューを飾り、私生活では結婚を目前にしていた青年の自殺の動機を探る。謎のバランスが見事。ラストの視覚効果も効いている。
「たぶん、暑かったから」平凡なOLが人事課長をドライバーで刺した事件の真相とは。いくつもの仮説が一瞬にして背筋が凍る感覚。インパクト大。
「鉄格子の女」自殺した挿絵画家が残した1枚の絵画。夜と女をリアリズムに封じ込めたその作品に惹かれた私が見た青い地獄とは。依頼人姉弟の設定が笑いを誘う一方で、主題たる狂気と悪意が戦慄させられる。
「アヴェ・マリア」ふたつでひとつの聖母像の盗難事件の奏でるリフレイン。演出者の謎を解体する時、陰惨なクリスマスストーリーは、微笑の中に封印される。途中で先が読めてしまったのが残念。
「依頼人は死んだ」莫大な財産を巡る修羅たちの争いの中、密かな悪意は殺意に変わり、自ら墓穴を掘る。幕切れは鮮やかだが、プロットは平凡。
「わたしの調査に手加減はない」何不自由ないお嬢様育ちの離婚妻は飛び降り自殺した。2年も前の自殺者が旧友の夢の中に現れて訴えたのは。わかりにくいのが難点。
「都合のいい地獄」白い霧の向こうから、濃紺の悪魔は帰ってくる。ある自殺の真相を巡り、命と謎を天秤にかけたゲームは始まる。辿り着いた結末とは。この終わり方は何だろう。謎は終わらなという解釈でいいのかな。

No.9 5点 makomako
(2017/01/18 21:32登録)
 さよならの手口が面白かったので、葉村晶シリーズを読んでみようと思い何冊か購入しました。本作品が葉村晶の原点。連作となっていますが、初めのほうはなんだかいやな感じの登場人物が多く出てくるし、葉村もあまり感じよくないし、であまり感心しませんでした。
 女性しか書けない世界であることは間違いなく、女ってこんな風なんだというところは随所にみられ興味深いのですが、女から見ると女は随分感じの悪いのが多いようで、女性に対するあこがれが爺になっても消えない私にとってかなりショッキングです。
 葉村はもっといい女のようにも思うのですが。
 肝心のお話のほうは推理モノやちょっと幻想風のものなどがあり、でこぼこな感じでした。
 全体としてはすごくよくはなかったが、悪いということもないといった感じです。

No.8 7点 まさむね
(2016/12/22 21:53登録)
 個人的には、これまで若竹作品はあまり手にしてこなかったのですが、「アメトーーク読書芸人」でメイプル超合金・カズレーザーが「静かな炎天」をプッシュしていて興味を魅かれ、ならば葉村晶シリーズの1作目から読むべきであろうと思い立ち、手にした次第です。(完全にミーハー的な感覚です。すみません。)
 結論としては、思っていたよりも相当に楽しめましたね。各短編とも、反転が絶妙だし、一部ブラックな味わいも悪くない。飾り立てない葉村の描き方にも好感。続編も読んでみようかな。(長編ではどうなのか、興味がありますね。)

No.7 7点 E-BANKER
(2016/05/05 21:55登録)
2000年発表の連作短篇集。
最近久しぶりに続編が発表された、女探偵「葉村晶シリーズ」の第一作目が本作。

①「濃紺の悪魔」=辞めたはずの探偵事務所から再雇用の話が・・・。結局フリーの立場で契約を結んだ晶が巻き込まれる事件。ある女性の警護が仕事なのだが、謎の人物にしてやられることに・・・
②「詩人の死」=夫に自殺された友人と共同生活をおくることになった晶。その夫は現代には珍しく“詩集の売れる”詩人だったのだが・・・。そこにはある事情が隠されていたわけです。
③「たぶん暑かったから」=これはもう、最後の一行が強烈なインパクトを残す一編と言うしかない! いやぁーこれはなかなか・・・
④「鉄格子の女」=ある作家&画家の書誌を作成する仕事を引き受けた晶が巻き込まれる事件。途中、ある一枚の不思議な絵が登場し、その絵に纏わる謎が本作の鍵となる。
⑤「アヴェ・マリア」=晶ではなく、同僚の探偵・水谷の視点で語られるのが異質な本編。なぜこういう設定となったのかは、終盤に判明するのだが・・・。何となく途中から察してはいたけど、まずまず旨いプロット。
⑥「依頼人は死んだ」=表題作となってはいるけど、それほど佳作というわけではない。
⑦「女探偵の夏休み」=②でも登場した友人みのりとともに三浦半島のリゾートホテルで夏休みを過ごすこととなった晶。で、やっぱり事件に遭遇する(?)というか、知らないうちに事件は解決していた(?) 作者の技が光る作品。
⑧「わたしの調査に手加減はない」=夢の理由を調べて欲しいという無理難題が今回の仕事。なのだが・・・ちょっと分かりにくいかな。
⑨「都合のいい地獄」=本作のみ単行本化に当たって書き下ろされた模様。①で登場した謎の人物が再び晶の前に現れる。しかも、周りの人物は彼のために・・・となってしまう! 結局そのからくりは謎のままでフェードアウト・・・。最後の一行は???

以上9編。
これは想定外。予想以上に面白かった!
連作短篇としてもまとまってるし、一編ごとも短編らしいプロットや切れ味を感じる作品が多くて読み応えも十分。
晶のキャラクターもなかなか。
さすがに十年超えてシリーズ化していくだけのものはあると感じた。

敢えていうならハードボイルドになるかもしれないけど、ちょっと分類しにくい作品。
でもまぁこれなら続編も絶対読むだろう。
(個人的ベストは断然③で次点は⑤かな)

No.6 4点 メルカトル
(2010/11/16 23:28登録)
ほぼ女探偵、葉村晶の一人称で描かれる、主にホワイダニットを扱った連作短編集。
人間の奥底に潜む、醜さ、嫌らしさを容赦なく描写する作風は相変わらずである。
しかし、個人的には文章が心に響いてこなかったのは致命的だった。
もう若竹女史の作品を読むことはないだろう、さらば若竹七海。
この文体を許容できるファンの方には失礼かもしれないので、とりあえず謝っておこう、どうかご容赦願いたい。

No.5 6点 884
(2005/01/06 02:03登録)
 青春してるなぁ、とか思っちゃったり(笑)。

No.4 5点 しゃんてん
(2003/04/15 11:16登録)
 ほとんど葉村の一人称で語られるが、時折入る葉村の突っ込みがいい。嫌悪感がにじみ出て、シビアで、滑稽にも感じられるが、怖く感じるときもある。
 各短編のどんでん返しは鮮やかで、そのどんでん返しによって明らかになる真相はどれも醜い。すごく嫌な気分になる。しかし、それはこの作品がすごいからだろうが。
 ラストは不透明な感じがして、私には少しわかりにくかった。しかし、それでも、すごく怖い。やはりいやーな感じになる。自分や人間について色々と考えさせられる。やっぱり人間が一番不気味で怖い。その人間の不気味さな怖さが上手く描けているように感じた。
 しかし、この作品の続編の『悪いうさぎ』のほうが、私の好みに合っているようだ。この作品はこの作品で、有意義な読書体験が出来たのだけど。

No.3 9点 シマネコ
(2002/02/21 21:12登録)
いいですねえ。男性の私立探偵ものにありがちなナルシズムがまったく無くて。愛想無く 妥協のない女探偵にシビレました。10点にしなかったのは もっとたくさん読みたかったから。

No.2 10点 美来
(2001/11/08 14:57登録)
どの話も、すっごく事件そのものは酷い。でも、語り口が良いので読後感良し。

No.1 9点 氷雨
(2001/09/20 13:14登録)
今のところ若竹著書の中では最高傑作。最後の一行は予測できるものだと思うが、それでもガツンとくる。そのあとニヤリと笑える。

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