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ミステリの祭典

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simo10さんの登録情報
平均点:5.69点 書評数:193件

プロフィール| 書評

No.133 7点 Another
綾辻行人
(2012/02/02 22:10登録)
--ネタばれ含みます--

文庫化されたので購読してみました。ジャンルとしては学園ホラーもの。ある程度読み進んでから、これは「最後の記憶」と同様の、超常現象が成立することを前提とした作品だなと分かりました。なので数ある突っ込みどころも割り切って受け入れることができ、楽しく読めました。
色々と超常現象のルールがありますが良くできていると思います。増えたもう一人が死者であるというのが良い(?)ですね。恐怖というより悲哀を感じてしまいます。
ホラー部分で一番のインパクトやっぱ久保寺先生かな。
一応ミステリ部分もあり、「死者は誰?」というちょっと変則的なフーダニットです。「誰」の正体に関しては、ちゃんと伏線も与えられており、綾辻氏らしい仕掛けもあります。ページ数の多さが全く気にならない読み易さもさすがです。
面白かったのですがラストの解決方法は減点要素です。不可抗力ならともかく、あれはないでしょう。ホラーだからといったらそれまでですが、読後の気分はかなり悪いです。

(図らずも麻耶氏の「隻眼の少女」に続いての義眼萌え系美少女の登場にちょっと辟易。義眼で真実を見る等も被ってるし、これは後発の麻耶氏が意図的にパクったんですかね?)


No.132 8点 隻眼の少女
麻耶雄嵩
(2012/01/27 22:32登録)
--ネタばれ含みます--

麻耶作品がついにメジャータイトルを受賞(しかも2冠)したということで、ためらいなくハードカバー版を購入しました。
舞台設定と登場人物の奇抜さは相変わらずです。
(こんな言い方したら失礼ですが)氏の作品にしては珍しく、登場人物(静馬)に感情移入することができました。探偵御陵みかげも、カバーの表紙も手伝って、見事な萌えキャラが出来上がっていると思いました。
ミステリとしては特に目新しいことはしていないと思うのですが、そこはさすが麻耶雄嵩、見事に世界をひっくり返してくれました。まあ腑に落ちない点は多々あるのですが、この作者にそこまでの完成度は求めていないので、特に問題にしません。
著者には珍しくラストが明るく、シリーズ化も期待できるような終わり方でした。(あの二時間があったから絶対ラストに谷底に落としてくると思ってました。)
これまでの作品とは違い、読み易く、かつ麻耶作品らしさが出ていたと思います。


No.131 3点 追憶のカシュガル
島田荘司
(2012/01/25 21:24登録)
御手洗シリーズ最新版、四話の短編集です。京都大学時代の御手洗の語りを友人が聞き手となって解説するのが主な構成で、ミステリではありませんでした。

①「進々堂ブレンド1974」:御手洗の友人が語るほろ苦い恋物語。
②「シェフィールドの奇跡」:知能に障害を持ちながらも、秘められた才能(重量挙げ)を開花させる子とその親の奮闘記。実話が基になっているとしたら感動秘話ですが、フィクションだとしたらただのご都合主義です。
③「戻り橋と彼岸花」:戦時中の日本を舞台に、強制労働させられた朝鮮人の姉弟の物語。若干の謎かけがあり、オチもうまくまとまっています。重い話ですが、ラストは感動的です。
④「追憶のカシュガル」:表題作ですが全然内容を覚えていません。読み返す気もありません。

「溺れる人魚」で懲りていたのですが、文庫化を待てずにまたしてもハードカバー版を購入。結果、やっぱ買うんじゃなかったと思いました。


No.130 5点 まほろ市の殺人 秋
麻耶雄嵩
(2012/01/23 23:44登録)
--ネタばれ含みます--

舞台設定は縛りがあるようですが、登場人物の名前は相変わらずで麻耶作品らしい世界観は存分に楽しめます。
事件の真相を突き止めるための材料は一応示されているので頑張れば解ける人もいるかもしれません。
ただ、真の真幌キラーの正体に関してはミステリというよりはクイズに近いかな。(普通、あからさまに犯人を暗示する手掛かりが故意に残されていたら、その人物を疑わせるための工作という可能性も考えるでしょう。そんな裏もないためただのクイズと言えます)
ニセ真幌キラーの正体解明も一応筋は通っていますが、ニセ真幌キラーが取った策は、A子と助手があれを覚えていたら一発で疑われるはずなので、もう少しフォローが欲しいところでした。
動機に関しては無茶苦茶ですが、らしいといえばらしいですし、ブラックな落ちも個人的には好きです。


No.129 6点 ゼロの焦点
松本清張
(2012/01/21 11:15登録)
火車に引き続き、有名作品に手を付けてみました。
さすがに時代の違いを感じましたが、日本海側が舞台ということもあってか、全体的に寂しげな雰囲気を感じさせる作りとなっており、私好みでした。
当然、社会派ということもあり、真犯人にまつわるような当時の時代の闇の部分を窺い知ることもできます。
また、真犯人に意外性があり、かつ存在感があったのも良かった点です。
難点を言えば、禎子の推理の飛躍ぶりとその的中率の高さにかなりの違和感を感じた点かな。


No.128 8点 火車
宮部みゆき
(2012/01/18 22:22登録)
評判が高いため以前から気になっていたので読んでみました。
予想通りの社会派ですね。勉強になります。
物語の方はというと8割程進んでも全然話が盛上がらず、思わず何度もつまんねえとつぶやいてしまいました。
しかし終盤に入り、喬子のビジョンが徐々に濃くなるにつれて、いつの間にか私も刑事と同じ様に「彼女の声を聞いてみたい」と同調していました。
そして焦らしに焦らされたラストのクライマックスでのあの幕の引き方には鳥肌が立ちました。残りページが多めだったため(後書ページが多かったんですね)、もう少し話は続くと思っていたのでその衝撃は尚更でした。
結局彼女は一言も喋りませんでしたが、その方が伝わるものが多い場合もあることを教えてくれる作品でした。前評判により高く設定された私のハードルを、終盤にあっさり飛び越えてくれました。
9点をつけようかと思いましたが終盤に入るまではつまらないと思ったのも事実なので8点にしときます。


No.127 6点
麻耶雄嵩
(2012/01/17 22:28登録)
--ネタばれ含みます--

ミステリ要素のみを挙げれば綾辻氏の館シリーズに似た印象を受けました。あのトリックに関しては勘の良い読者ならわかるレベルでフェアと言えると思います。別のあのトリックに関してはは巧いし斬新だと思うけど、別にそれが明かされたからと言って読者が構築してきた世界観を破壊する訳でもなく「ふ~ん」と思う程度でした。ラストは相変わらずの「何じゃそりゃ」。
麻耶作品にしてはオーソドックスな作風(登場人物の名前まで普通!)なため、その分他の作家に比べての文章力の足りなさが目立ってしまうかな。やはりこの作家には破天荒な世界とアンフェアであろうが破天荒なトリックがマッチしていると思います。
厳しめの書評でしたが、それでも面白いし、「早く次の作品を読ませてくれ!」と言わせてくれる作家ですね。


No.126 4点 重力ピエロ
伊坂幸太郎
(2012/01/17 00:09登録)
伊坂作品を読むのは三作目ですが、予想通りミステリとしては緩めで物足りなかったです。タイトルが勝ち過ぎた印象があると思います。
しかし他の方の書評からも窺い知れる通り、この作品の最大の評価のキモはやはり会話文を許容できるかどうかだと思います。
あの会話文から逃げ出したい気持ちと闘いながら読了に到った時の疲労感が一番強く印象に残っています。(実際一度他の著者の作品に逃げてそのまま三か月以上放置しました。)


No.125 4点 夏と冬の奏鳴曲
麻耶雄嵩
(2011/05/28 20:34登録)
こんなに意味が分からなかったミステリは初です。読み終わっても何も手応えが得られませんでした。
ネタばれサイトを数件巡ってやっとなんとか一部理解できたのみです。
しかしネタばれサイトの理論であっても、物語の伏線のみで構築した訳ではなく多くの仮定に基づいているし、その仮定を受け入れても納得できない部分が多すぎます。
展開とかパピエコレとか何か意味あったんでしょうか?
解決を読者に丸投げするのは嫌いではありませんが、自分の読解力ではハイレベル過ぎました。
決してつまらなかった訳ではないのですが、あまりにも納得のいかない点が多すぎるため、特別に(?)1点の評価にさせていただきました。
全てが理解できた時には10点か9点挙げてもいいかも。

--採点の訂正(2012/11/10)--
続編にあたる「痾」を読んで、ネタばれサイトの推論がこの続編に基づいていることを理解しました。
全てが解ったとは言わないがある程度は解ったので採点訂正します。
一つの作品の中だけに情報が詰まっているのかと思いきや、続編に委ねてるとはなあ‥。拍子抜けです。


No.124 8点
麻耶雄嵩
(2011/05/21 00:19登録)
麻耶氏の初期の作品はほとんど絶版なので、発行順を無視して、とりあえず書店に売っていた本を先に購入しましたが、全然前の作品の内容に触れることもなく安心して読めました。

またしても大胆過ぎるトリック炸裂でした。
第一作(翼ある闇)を読んだだけでも、現実に沿わない独特の世界を構築する作家だと分かっていたので、鬼子トリックに関してはそのこともうまく暗幕が張られていたと思います。(普通の作家がいきなりこんな世界観の作品を書いたら、こりゃ何かあるなと疑うと思います)
兄弟トリック自体はすぐに分かってしまったのでカタルシスは得られなかったけれども、真相までは分かっていなかったので最後の数ページでのカタストロフィ→閉幕の流れは痺れました。
不満があるとすれば、説明がやや足りないため、読解力の乏しい自分ではネタばれサイトの力を借りずに全容を知ることができなかったことです。


No.123 7点 ラッシュライフ
伊坂幸太郎
(2011/05/15 21:06登録)
騙し絵の世界を見事に描写していると思います。
語り手が変わるにつれ時間軸が絡まっていく感覚と、最後の章でその時間軸が一本に紐解かれた時の爽快感が素晴らしかったです。
物語も爽快。
登場人物の描き方が(特に京子が)島田荘司っぽい感じがしました。


No.122 5点 オーデュボンの祈り
伊坂幸太郎
(2011/05/13 23:40登録)
初めて伊坂氏の作品を読んでみました。
詩を読んでるかのような独特のタッチで描かれる奇妙な世界は魅力でした。
ただしタイトルから予測した通り、特にミステリと言う訳ではなかったので謎が解けてスッキリという感覚がなく、物足りなくはありました。(勧善懲悪的な結末にはスッキリ感がありましたが)
本人的には島田荘司氏の影響を受けているそうですが、私には全くピンときませんでした。


No.121 7点 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件
麻耶雄嵩
(2011/03/10 23:25登録)
島田荘司、綾辻行人、法月綸太郎らそうそうたる作家達の推す麻耶作品を初めて読んでみました。
はっきり言って、「何だこりゃ」と思いました。すごい作品だと思う気持ちと、よくこんな作品が文庫化されたものだと思う気持ちが3:7くらいの比率でした。登場人物の奇怪な名前も含めて、非常に独特な世界観。いつの時代の作品なのかと思ってしまう。
すごいと思ったのがやり過ぎなくらいミステリの要素を詰まっているところ(こういうのをバカミスと呼ぶのかな)。どんでんあり、密室あり、探偵あり、首切りあり、連続殺人ありと何でもありです。特に秀逸だったのが密室に関するあの推理。あまりにもブっ飛んでいて鳥肌が立ちました。
難点はこのような内容だと登場人物を描き切れない点かな。ほとんど感情移入できず、名前が記号化された状態でした。特に副題に関するあの出来事は正に「何だこりゃ」状態でした。
とはいえトータルで見ればわくわくしながら読めて、非常に楽しめました(批判的な人はすごい多そうですが)。他の作品も読もうかなと思ったら講談社系はほとんど絶版と知ってがっかり。復刊ドットコムにでも書き込もうかな。


No.120 5点 霧越邸殺人事件
綾辻行人
(2011/02/26 23:22登録)
館シリーズとは異なる、邸を舞台とした長編を再読。
意外にも館シリーズには存在していなかった、まさに「雪の山荘」の設定です。
しかしながらその中身はミステリ性に重きを置いたものではなく、幻想性の色が強い作品です。
一応連続殺人やトリック等もあり、確実にミステリの部類には入るんですが、
著者特有のおどろおどろしさや叙述トリックもないので私的には何とも物足りない印象です。
まあ綺麗な作品なので、そういうのが好きな方には向いていると思います。


No.119 5点 鳴風荘事件
綾辻行人
(2011/02/10 21:27登録)
殺人方程式シリーズ第二弾を再読。
当時読んだ時と変わらず、ストーリー、登場人物のインパクトは薄かったです。
しかしながら、トリック自体は今も覚えていたため、そこはインパクトはあったのかなと思います。
伏線、ミスリードの張り方と回収後のロジック展開もしっかりしており、やはり一段目と同様、良くも悪くも本格ミステリの教科書的な存在と思いました。
しかしTV版は偶然ラストの15分程見たけれど、あれはひどかった。


No.118 5点 殺人方程式
綾辻行人
(2010/12/10 23:08登録)
「館」以外の本格ミステリシリーズものである「殺人方程式シリーズ」第一弾です。
メインは急加速問題を理論的に解消する方程式の部分でありながら、まず大技トリックを看破しない限り、その問題に到れすらしない構成がなんとも勿体ない思いです。
犯人は意外ではあったけれどインパクトに欠ける、というか登場人物全員のキャラが薄いと思ったのは昔読んで感じた印象と変わりませんでした。しかし、犯人当ての論理展開は法月作品に似た印象で、好きな人は堪らないかも。
他の方も評される様に、良くも悪くも純粋な本格ミステリの教科書的な出来映えだと思います。
S川を境としたM市とS市に馴染みのある私にとっては思い出深い作品です。


No.117 7点 フリークス
綾辻行人
(2010/12/10 23:00登録)
綾辻氏のホラー中編集を久々に再読。以下の三作から構成されます。

①「夢魔の手 三一二号室の患者」:日記の中だけでもミステリが出来上がっているのがニクい。ラストのどんでんが解り辛かったけど、解った時はなるほど。三作の中で一番怖かった。
②「四0九号室の患者」:愛人の方の可能性には多くの人が早々に思い付くだろうが、さすがにその一歩先は一筋縄ではいきませんね。見事に騙されました。医師と看護師の語りが上手い。
③「フリークス 五六四号室の患者」:作中作にてミステリを仕上げつつ、作中作と現実の接点にミステリ性を仕込ませる構造が上手い。強いて言えば構造が①と被ってしまっているのが痛い。ホラー度は低目です。


No.116 6点 眼球綺譚
綾辻行人
(2010/11/13 18:46登録)
綾辻氏のホラー短編集を再読。以下の7作で構成されます。

①「再生」:グロ系ホラー。ラストシーンのグロさは今でも印象に残っています。
②「呼子池の怪魚」:子宝に恵まれない夫婦への不気味な贈り物。珍しくホッとするラスト。
③「特別料理」:ゲテモノ料理のオンパレード。嫌でも想像力をかき立てられてしまう筆力は見事。ある意味心理的負担は一番大きいかも。
④「バースデイプレゼント」:綾辻氏らしい囁き系ホラー。グロな怖さとサイコな怖さを併せ持っています。
⑤「鉄橋」:怪談ものホラー。テレビ化しやすそうな、解りやすくグロくない話です。
⑥「人形」:恐怖のツボがちょっと異色の作品。生まれ変わる度に彼はパワーアップしてきたのだろうか?
⑦「眼球綺譚」:作中作構成と例の仕掛けが迷路館を連想させます。神の偶像の描写が怖かったですね。

ホラーの中にも若干のミステリ性を持たせており、この分野での著者の才能を堪能できる作品集だと思いました。それにしても全国の咲谷由衣さんはいい気分はしないでしょうね。


No.115 6点 ハッピーエンドにさよならを
歌野晶午
(2010/11/07 22:29登録)
全てバッドエンドの11作品で構成される短編集です。

①「おねえちゃん」:作品のコンセプトを知らなかったのでいきなりまさかの衝撃でした。
②「サクラチル」:一番怖かった作品です。叙述が冴えています。
③「天国の兄に一筆啓上」:4ページのショートショート。特に際立つ部分もありません。
④「消された15番」:母親のイライラと周りの邪魔する様子がコントの様。
⑤「死面」:悪いことをしたら罰が当たるという見本的な話。もう一捻り欲しい。
⑥「防疫」:ラストの展開にタイトルの全てが含まれていますが、教育ママの追い詰められようが見もの。
⑦「玉川上死」:ちょっとしたフーダニット&ワイダニットもの。被害者の両親はどうしたのだろうか。
⑧「殺人休暇」:ストーカー対策として実際ありそうですね。ラストはどうなんだろう。
⑨「永遠の契り」:ショートショート。どうしようもないバカップルの結末に苦笑い。
⑩「In the lap of the mother」:ショートショート。完璧なリスク管理論を提唱するパチンコママの結末に苦笑い。
⑪「尊厳、死」:ホームレス狩りを題材にしています。最後に鮮やかに締めくくりました。見事です。

見事なまでに全てバッドエンドでした。個人的には①②⑨⑩がヒット(?)しました。


No.114 4点 パズル崩壊
法月綸太郎
(2010/10/31 22:08登録)
8つの短編で構成されています。

①「重ねて二つ」:必然性を無視して、トリックのためのトリックを意図して描いた様ですね。
②「懐中電灯」:倒叙ものです。詰め将棋で追い詰める刑事、最後に明される犯人のわずかなミス、潔く自白する犯人等々、古畑任三郎っぽい作品でした。
③「黒のマリア」:密室殺人ものです。結局彼女は真相を知らなかったんですね。
④「トランスミッション」:ミステリではないですが「世にも奇妙な物語」っぽくて面白かったです。
⑤「シャドウプレイ」:意味が解りません。前作の探偵「羽佐間彰」と関連があるんでしょうか?
⑥「ロスマクドナルドは…(略)」:ロスマクドナルドを知らない私に取っては苦痛でした。最後のどんでんらしき展開も完全スルーです。
⑦「カットアウト」:回りくどい文体が煩わしかったのですが、読み終わってから良い作品だと気がつきました。やはり法月氏のワイダニットは良いですね。
⑧「(略)」:探偵法月綸太郎が登場。しかし意味が解りませんでした。

個人的に気に入ったのは②④⑦ですかね。全体的にはタイトル通り、確かに「崩壊」している印象でした。

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