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ミステリの祭典

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江守森江さんの登録情報
平均点:5.00点 書評数:1256件

プロフィール| 書評

No.836 3点 本格ミステリ・ベスト10 2003
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2010/06/05 04:49登録)
毎度のごとく年刊雑誌なので一律3点。
海外ランキングは本格でも興味がないので扱いが少ないのを歓迎している。
更に、古典作品が翻訳されて新刊扱いでランクインするあたりは常々疑問を抱いている。
どの道購入せずに立ち読み→忘れた頃に図書館でおさらい、な雑誌なので再度の値上げ傾向も関係ない。
原書房に移り売れ線な本作りは昨年に同様(綾辻の記念インタビューのみ特別)
個人的には、下位だがカッパ・ワンで実質デビューした3人の名前があるのが嬉しい。
全体的に本格らしい作家が上位なのも「本ミス」らしくなった。
今眺める資料としてもミステリーコミック紹介コーナーに未読だが面白そうな作品が並んでいて参考になった(漫喫に数日通って読み込んでみたい)
※福本伸行・カイジをミステリー扱いしているのが非常に嬉しい。


No.835 3点 このミステリーがすごい!2004年版
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2010/06/05 04:26登録)
毎度のごとく年刊雑誌なので一律の3点。
海外翻訳ランキングには興味なし。
この年は歌野晶午「葉桜の季節〜」に尽きるだろう。
それでも、作家ランキングは伊坂、横山が上位だし、作品ランキングも多方面な作品がランクインして守備範囲の広い「このミス」らしさが出ている。
最近ではミステリーに軸足のない伊坂や石田衣良をインタビューで取り上げているのも「このミス」らしい。
それでも、今となっては当時を懐かしむ一資料でしかない(図書館に揃っているのに誰も貸し出ししない事が如実に物語っている。


No.834 3点 このミステリーがすごい!2003年版
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2010/06/05 04:09登録)
毎度のごとく年刊雑誌なので一律の3点。
こちらも毎度のごとく海外ランキングには興味がない(基本的に原書の出版と翻訳時期のギャップは拭い去れない)
元々購入せず、この当時はランキングの立ち読みすらしていないので、私にとっては図書館で当時の流行を眺めるために存在する一資料でしかない。
現実の司法制度に絡む問題で直木賞を逃した横山秀夫「半落ち」が1位なのが「このミス」らしい。
収録の一編程度ならよかったが全編を読むのがキツかった乙一「GOTH」が2位は微妙。
作品自体は嗜好と合わないが作家の上位2人は納得できる。
「本ミス」も同様だが復刊作品のランクインには疑問を呈しておきたい!
この年から自前の新人賞「このミス大賞」が始まり、同様な新人賞であるメフィスト賞とその受賞者・古処誠二インタビューを掲載して対比させ売り込む小賢しさは如何ともし難い。
※この本(’03版)最大の見所(←読み所ではない!)
今では帽子を被った写真しか掲載されない二人の禿(ハゲ)人(2chのスレタイ)こと綾辻行人&二階堂黎人の無防備な写真が隠し玉コーナーに掲載されているので比較するのも楽しい!


No.833 5点 江戸川乱歩 コロナ・ブックス
事典・ガイド
(2010/06/05 03:33登録)
巨人の名前を冠した本なので、同タイトルの本が何種類もありそうだ(そこまでの乱歩マニアではないので詳細不明)
今回、私が書評するのは1998年にヴィジュアル・シリーズとして発行されたガイドブック。
ふんだんに写真が掲載されながら、縁の場所・人物像・作品(6作品の一部を掲載)を紹介していて、江戸川乱歩資料館を訪ねた雰囲気が味わえる。
更に、乱歩事件図は実在した東京市の地図上に印を付け、次ページで事件と作品を記していて、持参しながら東京散策をしたくなる。
そして目玉は「乱歩を読み解く十三語(キーワード)」で、各ワードに各々十三人のエッセイを掲載している。
「ユートピア」では、SM小説の大御所・団鬼六が、乱歩を夢幻の官能世界を描いた変態小説と言っている。
他では「探偵」での都筑道夫のエッセイも楽しい。
俳優の佐野史郎までエッセイがあるが、当時の芸風は乱歩的だったからなのだろうか?


No.832 7点 ダブル・ジョーカー
柳広司
(2010/06/03 10:51登録)
「ジョーカー・ゲーム」の続編になる連作短編集。
戦時下の論理を基に読者をも騙すスパイ活動、それに伴う些細な気付きや操り、その先にある鮮やかな反転は、シリーズを通じて本格ミステリとして素晴らしい。
前作以上に「仏印作戦」などは上記に長けてきたし、前作が抱えていた結城中佐を上回る存在に関する幾つかの疑問点を(結城中佐の)過去を「柩」で説得力を持たせる話で描き出し払拭した事は評価出来る(ここまで満点)
しかし、ある種の天才に英才教育を施し育成した超人的スパイの話は鼻についてきだしたし、それが敗戦国(実在の戦争故に結果は周知の事実)のスパイである辺りにもモヤモヤ感が生じてしまった(1点減点)
※個人的には前作「ジョーカー・ゲーム」に「柩」・「仏印作戦」を収録した厚めの一冊なら文句なしの満点だった。


No.831 4点 トーキョー・プリズン
柳広司
(2010/06/03 10:01登録)
基本的に戦争絡みな小説は、宗教観や人生観を問う小説と同様に好みではない。
しかし「ダブル・ジョーカー」をより楽しむ為に、作者の世界観を知る意味で読んでみた。
密室トリック(無理筋)云々から本格ミステリ扱いも出来るが、本質は戦争の暗部を抉り出す事で作者の戦争観を読ませる作品で、ゲンナリしてしまった。
自ら、この作品を読んで「ジョーカー・ゲーム」シリーズ2冊の楽しさが増さない事を実体験してしまった。
※警告(アドバイス)
この作品を先に読んで「ジョーカー・ゲーム」シリーズを回避する‘被害者’になってはいけない!
この作品に関しては、戦争観を読む事が嫌いでない方のみ読んでみればよいのではなかろうか。


No.830 2点 血戦 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京 2
楡周平
(2010/06/02 03:12登録)
「ワンス・アポン・〜」の続編で、これも私的にはミステリーの範疇にないのでポリシー通り2点。
前作から8年後に舞台は移り、主役も息子夫婦に移った。
前作で義父に野望を打ち砕かれた崇が、義父の選挙区から対立候補として政界再挑戦する。
嫁は妹夫婦とお受験でも対立する。
ボリュームが半分になり、作品の方向性が現実の政界パロディにシフトしたストーリー展開とキャラで、笑って読み飛ばす小説に成り果てた。
それでも、ドラマ化すれば役者の演技で見所充分な作品になりそうではある。


No.829 2点 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京
楡周平
(2010/06/02 02:57登録)
上・下巻合わせ約700ページで一気に描く現代版「華麗なる一族」で、この手の政治&家族小説も世間ではミステリーに含める事を「このミス」や新聞広告のキャッチコピーで認識した。
それでも私的なミステリーの範疇にはないのでポリシー通り2点。
本年・テレ朝で「宿命」のタイトルでドラマ化されたが、ストーリーはほぼ同じながら主役が親ではなく息子に改変されていた。
原作の主役は二人の親で、学園紛争での別れから、息子と娘の見合いの席で運命的再会をするが、息子に託した頂点への夢と義父になる男の野望が交錯し、過去の因縁も絡みドロドロするプロットは良いのだが、人物造形の描き込みが薄いし、行動は突っ込み所満載(一般小説でも4点程度)
その分、スラスラ読めるが、役者のネチッコイ演技でドロドロしたドラマ(昼ドラに近い)の方が格段に楽しめた。
久々に観た真野響子に加えて、小池栄子と上原美佐にはホレボレした。


No.828 7点 ドサ健ばくち地獄
阿佐田哲也
(2010/06/01 05:24登録)
作者は色川武大の本名で純文学(未読なので詳細不明)でも名を成したが、麻雀・賭博小説の第一人者としての「阿佐田哲也」の方が格段に知名度が高い。
代表作「麻雀放浪記」は青春賭博小説としては金字塔的作品だがミステリー分野には含まれない(私的見解)
そこで、賭博小説の最高峰(世間的評価)なこの作品ならピカレスク・ロマンとしてミステリー扱いも出来るので取り上げる。
命をすり減らすやり取りやヒリヒリする臨場感は読んで体験して下さいとしか言いようがない。
タイトル通りに「負けるも地獄、勝ち続けるも地獄」な世界が描かれている。
そして、この小説から「賭博で勝ち続けるプロも、負けて溺れる人々も、同一に賭博依存症患者ではないだろうか!!」との真理に思い至る。
更に論を進めると、何かに打ち込む人々は成否にかかわらず対象物の依存症患者だとも言える。
私も賭博&ミステリ依存症の末期患者で、絡めとられ抜け出せない地獄でもがき苦しんでいるのかも知れない。


No.827 6点 走れホース紳士
石川喬司
(2010/05/30 03:31登録)
第77回東京優駿(日本ダービー)デーにちなんでの競馬ミステリー書評は、SF分野では評価の高い石川喬司作品で締めくくろう!
ダービー当日の夜に東京競馬場を走っていたら(実際は警備が厳しく侵入出来ない?)怪しい増沢ハイセイコーと名乗る老人に出会い、彼が会長をしているNHK(ニホン・ホース・キチガイ連盟)に入会を勧められ、二百円馬主や馬券を買えば必ず儲かる秘密組織・競馬銀行の謎に挑む怪作。
競馬・ユーモア・コンゲームをごった煮にした作品で、馬券ファンやハイセイコー世代には懐かしさと楽しさが混在する嬉しい作品だった。
※ダービーに纏わる余談
NHK杯まで不敗を誇り、怪物の名をほしいままにしていたハイセイコー(増沢騎手)が日本ダービーで3着に敗れ、逆に日本中のアイドルになった事が懐かしく思い出される。


No.826 4点 五冠馬の謎
赤木駿介
(2010/05/30 03:07登録)
後に「蒼い天馬」と改題して復刊した。
この作品を書いた当時の作者は競馬評論家で、本業は競馬専門紙「競馬ブック」への予想掲載だった。
そして徐々に作家に転身し競馬小説や歴史小説で一応の評価を得た。
シンザン(実在の五冠馬←東京オリンピック時代のディープインパクト)に次ぐ五冠馬(もはや死語)を目指すジェミニとそれを阻もうとする敵対馬主、さらにジェミニに瓜二つな人工受精馬の謎を二本柱に愛憎渦巻く競馬サスペンス。
現実世界で競走馬を人工受精生産すれば馬産ビジネスが崩壊するだけに厳重に対策されていてリアリティに欠けるし、発想自体は安易に浮かぶので褒めようがない。
そして作者も自覚したのかミステリー分野からは早々に離れた。
※余談的トリビア
五冠馬とは、日本の競馬世界でのみの表現で、皐月賞・日本ダービー・菊花賞のクラシック三冠に加えて天皇賞・有馬記念を制覇した馬の事。


No.825 3点 回転木馬
赤木駿介
(2010/05/30 02:37登録)
奇跡の馬ジュピタースリーに関わった主人公が、次々に起こる不可解な出来事に巻き込まれる競馬サスペンス。
生産牧場・馬主・大手商社の絡んだ陰謀とジュピタースリー出生の秘密が主題だが、実際噂にあった生産牧場の不正をストーリーにしただけなので不満が残る。
作者はミステリーやサスペンスではないドキュメント風競馬小説の方が持ち味が出せているので、競馬に興味があれば「ハイセイコー物語」なんかを読む方が絶対楽しい。


No.824 5点 ターフの罠
海渡英祐
(2010/05/30 02:22登録)
スポーツ紙の記者と競走馬ワンダーボーイの馬主の娘が、ワンダーボーイ絡みの陰謀に気付き危険に巻き込まれる競馬サスペンス。
主人公から陰謀に至るまで競馬サスペンスの王道を行くベタさ加減が、かえって競馬(馬券)ファンには読みやすく楽しい。
競馬小説では、やたらと記者と馬主の娘が主人公になる設定が多いが、実際にそんな関係が多かったのか?個人的に興味がある。
※採点はベタな競馬小説部分を評価していてミステリーとしては微妙。


No.823 3点 平成ダービー殺人事件
狩野洋一
(2010/05/30 02:07登録)
作者は、競馬専門紙の記者からプロ麻雀に転じ日本一になった後に競馬ミステリー作家に方向転換した。
麻雀の指南書は書いたが阿佐田哲也が君臨した麻雀小説分野では分が悪いとの判断からか?小説は競馬主体だった。
この作品は、念願のダービー制覇を果たした調教師の突然の死亡が、遺書や状況から自殺と判断されるが、親しい競馬記者が疑問を持ち調査するサスペンス。
この作品に関してはありきたりで、阿佐田哲也の居ない競馬小説でも生き残れるか疑問に思える。


No.822 4点 蹴る馬
松岡悟
(2010/05/30 01:41登録)
作者は函館在住の医師会の重鎮で、道営出身馬ドクタースパートでクラシックの1冠・皐月賞を制した馬主でもあった。
この作品の後も作家に憧れでもあったのか競馬ミステリーを何冊か出版している(馬主が競馬界の内情を綴ったので競馬ファンには結構話題になった)
この作品は、作者その物な設定の主人公が、ベテラン厩務員が馬に蹴られて死亡した件の原因を競馬界の内情を絡めて描いたドキュメント風競馬サスペンス。
先の要因で話題になった作品なので、ミステリーとしては素人丸出しでお粗末なため競馬ファン以外には何ら楽しくない。
※余談
当時、北海道に住んで道営競馬も注目していたのでドクタースパートの皐月賞では儲けさせてもらった。
そして日本ダービーは私の予想通りに着外に消えた。


No.821 5点 暗号馬激走す
高本公夫
(2010/05/30 01:08登録)
本日は第77回「日本ダービー」デー。
本来なら「ダービーを撃つ女」を書評するのだが(3月にしているので)ほぼ同系統な実践的暗号解読型馬券ミステリーなこの作品集を取り上げる。
「大レースには影に隠され仕組まれた演出があり、それを解読すれば馬券で大儲け出来る」を作者は標榜していた。
そして、その暗号解読パターンが、文学的素養や常識を必要とする辺りに知的好奇心をくすぐられて感化された。
こちらは4編からなるが、レース終了後の後付け解釈小説なので残念ながら「ダービーを撃つ女」には到底及ばない。
※余談
作者は早逝したが、生きていたら9・11テロの年の有馬記念で「マンハッタンカフェ→アメリカンボス」を予言した小説を発表していたか?興味は尽きない。


No.820 4点 狐の密室
高木彬光
(2010/05/30 00:28登録)
高木彬光ファンには自前のシリーズ探偵・神津恭介と大前田英策の共演は嬉しい筈だった。
しかし(元々、落差は激しいが)作品レベルの低下をキャラの共演では誤魔化しきれずに多数の高木彬光(特に神津恭介限定)ファンはガッカリした事だろう。
当時かくゆう私も、本を手にした時の喜びと、読後のガッカリ感との落差が大きかった。
この作品のせいで初期・神津シリーズの再読以外は長期的(約十年)に作者の作品から離れたほどだった。
さほどのファンでなく今から高木彬光を読み進むならば、初期の神津シリーズのみ、社会派も許容範囲なら「誘拐」あたりまで読んで打ち止めでよいと思う。
※採点は神津恭介に対する愛で1点加点している(いちいち記載していなかったが個人的には黒歴史な作品も含め神津恭介登場作品は全て思い入れで1点加点してある)


No.819 6点 名探偵ベスト101
事典・ガイド
(2010/05/28 03:34登録)
国内外混合で、ホームズ以降になる1901年から25年区切りで4ブロックに分け、1作家1名で101人の名探偵を紹介している(ランク付けはしていない)
古い年代は圧倒的に海外の名探偵を紹介しているが1976年以降は国内が多くなり海外63名:国内38名の割合になっている。
見開き2ページで1人の紹介で、名探偵の能力をレーダーチャート化したり、下段5分の1でその探偵を理解するための作品(その探偵あるいは作家以外でも影響下にある作品など)を4作づつ紹介しガイドとして工夫されている。
非常に素晴らしいと思うのだが、唯一の欠点として、御手洗潔、明智小五郎、星影竜三など不可欠と思える名探偵が紹介されていなかったり、ポアロでなくマープル、神津でなく墨野、江神でなく火村、加賀か湯川でなく天下一など疑問の残る選択がされている。
それでも、この本を眺めながら自分の名探偵ベスト10なんかを考えるのは楽しい。


No.818 6点 本格ミステリーを楽しむ法
評論・エッセイ
(2010/05/28 03:03登録)
鮎川哲也の一度は雑誌や作品解説に掲載されたエッセイを分類・章立てして一冊に纏めた物。
本格作品の解説の章には、よくぞネタバレせずにこれだけ書けるものだと感心する。
作家達との付き合い・生い立ちから日常に関するエッセイは鮎川自身に興味があれば楽しく読める。
一番の読み所は自作解説の章で「赤い密室」「黒いトランク」「達也が嗤う」などの名作を読んでから読めば非常に楽しい。
出典を記した後、所々に呟きが付されていて、それも楽しい。
それでも、限定的なファン・ブックな事を考慮して採点は6点に抑える。


No.817 4点 本格ミステリ・ベスト10 2002
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2010/05/28 02:45登録)
本来なら年刊雑誌なので一律3点なのだが、改革の第二弾を評価して4点とした。
ランキングに関しては30位まで発表を始めた。
個人的には大倉崇裕「三人目の幽霊」の6位ランクインが素直に嬉しい。
また、昨年度から始まった映像に加えて、日本人の本格ミステリには欠かせない捕物帳・ミステリーコミック・YA(ヤング・アダルト)作品の紹介コラムまで始まりマニア向けに益々充実してきた。

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