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ミステリの祭典

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nukkamさんの登録情報
平均点:5.44点 書評数:2940件

プロフィール| 書評

No.1080 5点 応家の人々
日影丈吉
(2016/02/26 09:01登録)
(ネタバレなしです) 「内部の真実」(1959年)と同じく台湾を舞台にした1961年発表の長編第5作で初期代表作と評価されている本格派推理小説ですが個人的にはいまひとつな感じでした。死亡事件や失踪事件が相次ぐのですが、主人公の久我に伝聞でもたらされる情報が多く、事件との間に微妙な距離感があって謎解きのサスペンスが盛り上がりません。「人々」というタイトルながら人物描写も十分でないように思います。幻想的作風で有名な作者ですが本書に関しては幻想風というよりも書き込み不足ではないでしょうか。しかも序章で起きた事件の終章での扱いといったら、これは中途半端レベルにさえ至ってないです(最後は作者の確信犯的コメントで締め括られます)。


No.1079 5点 ウィルソン警視の休日
G・D・H&M・I・コール
(2016/02/22 09:55登録)
(ネタバレなしです) ヘンリー・ウィルソンシリーズ短編を8作収めた1928年発表の第一短編集です(警視時代の作品と私立探偵時代の作品が混在しています)。論創社版の巻末解説でこの作者は作品の出来不出来のバラツキが指摘されていますが、この短編集でもそれを感じます。「電話室にて」、「ウィルソン警視の休日」、「キャムデン・タウンの火事」、「消えた准男爵」などは地味ながら緻密なプロットだと思いますが、中には終盤に突然登場した人物(論創社版の冒頭に置かれた登場人物リストにも載っていません)が犯人だったのに唖然とさせられるような作品もあります。珍しくもトリッキーな「電話室にて」(「窓のふくろう」という別タイトルの方が有名かも)は現代ミステリーならトリックの実現可能性について大いに問題とされるでしょうが書かれた時代を考慮すると笑って許すべきでしょう。


No.1078 5点 トスカの接吻
深水黎一郎
(2016/02/20 11:55登録)
(ネタバレなしです) 2008年発表の神泉寺瞬一郎シリーズ第2作の本格派推理小説です。「オペラ・ミステリオーザ」という副題を持ち、オペラの上演中に舞台上で歌手が殺されるという事件を扱っています。オペラに関する知識が沢山披露され、謎解きとも少なからず関連があるところが芸術探偵らしいのですが、私のように芸術と縁のない読者だと作中での瞬一郎の芸術解説や芸術論にどこまで馴染めるか微妙だと思います(それがこのシリーズの特徴だとは理解していても)。私の読んだ講談社文庫版では初版にはなかった「読者への挑戦状」代わりの「作者贅言」が挿入されていますがこれは正解でしょう。「作者贅言」で事前に与えられるヒントなしで解決に突入すると不満を覚える読者もいると思います。それだけ当てにくい真相ではあります。この「作者贅言」ではダイイング・メッセージについて「100人が100人、その解釈しかあり得ない、と思うようなものでなければならない」と書いていますが本書のメッセージの謎解きは納得する以前に、複雑過ぎてそんなの当てられないよという声の方が多いのでは(笑)。


No.1077 6点 日曜日ラビは家にいた
ハリイ・ケメルマン
(2016/02/19 12:24登録)
(ネタバレなしです) 森英俊編著の「世界ミステリ作家辞典[本格派編]」(1998年)ではラビ・スモールシリーズのことを「初期の長編ではユダヤ社会をめぐる風俗的な興味と謎解きとがほどよくブレンドされているが、後の作品になるほど前者の比重が大きくなる」といった紹介をしていますが、1969年発表のシリーズ第3作の本書では早くもその傾向が見られます。殺人は中盤近くまで起こらず、そこに至るまでの前半部は平穏な物語ではないとはいえ教会内の派閥対立や若者たちの夜遊び(過激な描写はない)が中心のプロットなので本格派を期待する読者には少々物足りない展開ではないでしょうか。ただ後半は頑張って謎解きしていますし、収束のつけ方がきれいにまとまっているところは評価できます。


No.1076 5点 幻影城の殺人
篠田秀幸
(2016/02/19 11:32登録)
(ネタバレなしです) 2000年発表の弥生原公彦シリーズ第2作の「読者への挑戦状」付きの本格派推理小説です。1970年代後半から1980年代前半にかけて大ブームを起こした角川商法(作中で文化革命と激賞しています)と、その中心的存在だった横溝正史や森村誠一への思い入れのようなものが感じられます。特に森村に至っては作中に登場させておいしい役割を与えているほどです。一方で密室トリックの一部に森村作品のそれをパクリに近い形で使っているのはどうなんでしょう?更には横溝正史の作品のほとんどそのままの状態でのパクリではないかと思えるトリックがあるだけでなく、「本陣殺人事件」(1946年)や「犬神家の一族」(1950年)については重大なネタバレまでやっており、先人作家に対する敬意に疑問符が付きます。複雑で重厚な作品ではありますが、シリーズ前作の「悪霊館の殺人」(1999年)ほどの詰め込み感はなく、ストーリーテリングが大幅に改善されている点はプラス評価したいと思いますが。


No.1075 6点 あつかいにくいモデル
E・S・ガードナー
(2016/02/19 11:07登録)
(ネタバレなしです) カーター・ディクスンの名作「ユダの窓」(1938年)(ハヤカワ文庫版)の巻末解説で、被告を証人として立たせることは非常に危険で、あのペリー・メイスンさえ生涯三度しかやっていないと紹介していますが1961年発表のペリー・メイスンシリーズ第66作の本書はそれが見れる一冊です。名誉毀損という、メイスン好みと思えない事件ながら結構細かくフォローしているメイスンがなかなか好印象です(笑)(後で殺人事件もちゃんと発生します)。最終章の謎解きもやや駆け足気味ながらどんでん返しがきまっています。


No.1074 6点 セントラル・パーク事件
クレイグ・ライス
(2016/02/19 10:17登録)
(ネタバレなしです) 街頭写真師のビンゴ・リグズとハンサム・クザックのコンビシリーズの第1作が1942年発表の本書で、2人がコンビとなる前の経歴も簡潔に紹介されています。頭の回転は早いが考えが粗くて結構窮地に陥るサムと、愚直ながら超人的な記憶力の持ち主のハンサム(本人は意識しないが女性へのアピール度もとても高い)という個性的なコンビの活躍が楽しめます。セントラル・パークで街頭写真の商売をしていた2人が売れ残った写真の中に7年前に同じ場所で謎の失踪をとげたピジョン・サンデーの姿を発見します。多額の保険がかけられていたことを知ったビンゴが首尾よくピジョンの身柄を押さえることに成功して支払い保険金の分け前を頂くことをもくろむという、誘拐及び保険金詐欺という犯罪に手を染めようとしており、おまけに結構人が死ぬ展開ですがライスが書くとこんなプロットでもどこかほのぼのしていますね。本格派推理小説としてのどんでん返しの謎解きもしっかりしています。ある女性を巡る2人の競争(むしろ譲り合い?)もサイドストーリーとして楽しめますがこちらの結末はうーん...(謎)。


No.1073 5点 積木の塔
鮎川哲也
(2016/02/19 09:56登録)
(ネタバレなしです) 1950年代後半からの社会派推理小説の台頭は国内推理小説の大ブームを巻き起こして新作が矢継ぎ早に発表されました(本格派推理小説は対照的に人気低迷してしまうのですが)。しかしおよそミステリーらしくない作品までがミステリーとして発売されるなど粗製乱造気味になってしまい、1960年代半ば頃には読者離れが進んだそうです。これに危機感を覚えた松本清張の責任監修で「新本格推理小説全集」が企画され、10人の作家(清張自身は含まれません)による10の新作が出版されました。その第1号にあたるのが1967年発表の鬼貫警部シリーズ第11作の本書です。もっとも特に「新本格」を感じさせるようなところはなく、これまでのシリーズ作品同様地道なアリバイ崩しの本格派で、犯人の正体は早い段階でわかります。本書で印象的だったのは動機をめぐる推理が転々としていくところで、特に第6章で登場する動機(の候補)はなかなか衝撃的でした。


No.1072 3点 キーライム・パイはため息をつく
ジョアン・フルーク
(2016/02/19 09:43登録)
(ネタバレなしです) 2007年発表のハンナ・スウェンセンシリーズ第9作のコ-ジー派ミステリーです。事件がなかなか起きないし、起きそうな雰囲気もないので物語の1/3ぐらいまでミステリーらしさがありません。焼き菓子審査の要領についてのハンナの説明は面白いですが。では事件が起きてから盛り上がるかというとこちらもいまひとつで、登場人物リストに載っていない容疑者の調査がだらだらと続き、核心に迫っているという緊迫感がまるでありません(リストにない容疑者が犯人だったらそれはそれでアンフェア感が強くて不満ですけど)。解決も推理の要素のほとんどない、唐突な解決でした。記憶に残ったのはキーライムは希少で入手困難なことぐらいです。


No.1071 6点 退職刑事2
都筑道夫
(2016/02/17 20:18登録)
(ネタバレなしです) 現職刑事の息子と退職刑事の父が謎解きに挑戦する、1975年から1976年に発表された7つの短編を収めた1976年発表の退職刑事シリーズ第2短編集です。最初に出版された時はその中の「四十分間の女」をそのまま短編集のタイトルにしていました。1週間続けて同じ下り列車でやって来て40分後の上り列車でどこかへ帰っていく女性が1週間目に死体となって発見される「四十分間の女」は評価が高いですがそれも納得です。退職刑事は安楽椅子探偵役ですが、ここでは息子も安楽椅子探偵状態になっています。謎の魅力も十分ですが、ハリイ・ケメルマンの有名短編「九マイルは遠すぎる」(1947年)をちょっと連想させるような結末が印象的でした。退職刑事自身がある作品の中で「推理だけで証拠はない」と述べているように、十分な手掛かりを用意せずに好き勝手な解釈でつじつまを合わせているように感じてしまう作品もいくつかあります。とはいえ短い中にそれなりの容疑者を揃え、推理を(時に強引でも)丁寧に積み重ねていくプロットは短編本格派推理小説として十分に魅力的で、作品ごとの水準のばらつきも少ないです(ずば抜けた傑作というのもありませんけど)。


No.1070 6点 殺人方程式
綾辻行人
(2016/02/17 20:08登録)
(ネタバレなしです) 「緋色の囁き」(1988年)や「人形館の殺人」(1989年)といったホラー色の濃い作品を相次いで発表して本格派推理小説から作風変更か、と思わせましたが1989年発表の明日香井兄弟シリーズ第1作の本書は切断された死体が登場するもののそれほど過激な描写はなく、謎解きに集中した本格派推理小説でした。光文社文庫版では由良三郎が巻末解説を書いているのが興味深いです。作家デビューが1984年で、綾辻のデビュー1987年とそれほど大差ないのですが年齢では40歳近い差のある由良がどう評価したかというと、「これこそ新本格派の真骨頂」と大絶賛です。フェアプレーを意識した謎解き、こだわりのトリック、(方程式は私はよくわからなかったけど)丁寧な推理説明と本格派推理小説としてよく考えられた作品です。名探偵役の明日香井響のキャラクターがいまひとつ共感できなかったとか、終わり方にすっきり感がないとか、いくつかの点ではちょっと引っ掛かりますが謎解きの面白さを十分に堪能できる作品でした。


No.1069 4点 支配人バクスターの憂鬱
ケイト・キングズバリー
(2016/02/17 19:59登録)
(ネタバレなしです) バルコニーの手すりでなぜか片足でゆらゆらと立っていた宿泊客が墜落死する事件を描いた1995年発表のペニーフット・ホテルシリーズ第5作ですがこれまでの作品中では残念レベルに感じました。推理の要素がほとんどなく、捜査によってこれ見よがしの手掛かりが明らかになるというプロットは本格派推理小説の謎解きとしては物足りません。また少年スタンリーのいたずらはちょっと度が過ぎるし、大人たちの対応も怒ってばかりで(セシリーはそうではないが他人まかせで何もしない)作品の雰囲気がとげとげしくなってしまったのもこれまた残念。


No.1068 6点 ミステリ作家の嵐の一夜
G・M・マリエット
(2016/02/17 19:52登録)
(ネタバレなしです) 2009年発表のセント・ジャスト警部シリーズ第2作です。英語原題は「Death and the Lit Chick」で、作中でもチック・リット・ミステリについて紹介されています。女性読者をターゲットにしたミステリ(作者も主人公も女性が多いようです)で、コージー派とも少し違うようですがロマンチック・サスペンス系でしょうか?本書自体はチック・リットではなく、堂々たる犯人当て本格派推理小説でスコットランドの古城を舞台にし、多数のミステリ作家を容疑者として揃え、嵐の夜に起きる事件と古典的本格派推理小説のファンが喜びそうな設定です。人物の個性も丁寧に描かれていますがやや人数が多過ぎかなと思います。中盤の捜査場面が少し一本調子気味ですが終盤で容疑者を一堂に集めてセント・ジャストが謎解きする場面はどんでん返しがあってなかなかスリリングです。


No.1067 5点 軽井沢マジック
二階堂黎人
(2016/02/17 19:47登録)
(ネタバレなしです) 1995年発表の水乃サトルシリーズ第1作の本格派推理小説です。このシリーズは学生時代のサトルと社会人時代のサトルが活躍する作品があって、前者ではタイトルに「不思議」、後者ではタイトルに「マジック」が使われているようです(例外もあるそうですが)。二階堂蘭子シリーズと作風が違っていてユーモアに富んだ明るく軽妙な作品で、本書では眼球をえぐられた死体が登場するのですが残虐描写など全くなく、純粋なパズル小説です(といっても眼球をえぐった理由を深く考えると気味悪いですが)。すらすらと読めることは長所でもあるのですが、本書の場合は魅力に欠ける真相もくっきりと際立ってしまったのでこの読みやすさは一長一短かもしれません。


No.1066 6点 ミステリ・ウィークエンド
パーシヴァル・ワイルド
(2016/02/17 13:23登録)
(ネタバレなしです) 米国のパーシヴァル・ワイルド(1887-1953)は劇作家として名高く、ミステリー作品は非常に少ないのですがそのどれもが高く評価されています。1938年発表の長編第1作の本書は本格派推理小説で、雪で孤立状態のホテルで起きた殺人事件の謎解きです。4人の登場人物の手記で構成されており、視点が変わることによって謎が明らかになったり逆に深まったりして短めの長編ながら意外と複雑なプロットです。手掛かりには現代の読者にはわかりにくいのがあったり、動機の説明は完全に後出しだったりと問題点がいくつかありますが、犯人当てと同時に誰が謎を解くのかも終盤までわからないプロットはなかなか楽しめます。


No.1065 5点 検事鵞鳥を料理する
E・S・ガードナー
(2016/02/15 01:59登録)
(ネタバレなしです) 1942年発表のダグラス・セルビイシリーズ第5作です。助けを求める女性からの電話を受けたセルビイがバス停留所へ駆けつけると赤ん坊の入ったゆり籠が残されていて電話をかけたと思われる母親は行方不明、しかも赤ん坊の父親は死んだばかりの財産家らしいという事件が起きます。果たして赤ん坊の将来はどうなるのかというメロドラマ風な展開を見せます(一時的に赤ん坊を預かるブランドン保安官の夫人が実にいい味を出してます)。謎解きプロットも強敵弁護士のA・B・カーはもちろん、女性弁護士のアイネズ・ステーブルトンやラーキン警察署長までもがセルビイの捜査に干渉して二転三転する複雑なもので、セルビイがいかにして事件解決するかの興味をうまくつなげて終盤へなだれ込みます。


No.1064 5点 浮遊封館
門前典之
(2016/02/15 00:30登録)
(ネタバレなしです) 2008年発表の蜘蛛手啓司シリーズ第3作の本格派推理小説です。墜落した飛行機の乗客の死体の大量消失、宗教団体の訓練所からの信者たちの消失、身元不明死体の消失と不可解な消失事件が相次ぎ、さらには死体の周囲に犯人の足跡がない雪密室と謎の大盤振る舞いです。怪しげな宗教団体を登場させて組織犯罪の可能性を漂わせているところは好き嫌いが分かれそうです。犯罪の影にある異常な狂気とその犠牲になった被害者の哀れさが印象的ですが、余りに非合理的な真相は本格派の謎解きには向いていないような気もします。


No.1063 6点 サロメの夢は血の夢
平石貴樹
(2016/02/14 05:18登録)
(ネタバレなしです) 2002年発表の本格派推理小説で、更科ニッキシリーズの中編集「スラム・ダンク・マーダー その他」(1997年)に登場した車椅子の女性弁護士、ヤマザキ千鶴が探偵役になっていたのに驚かされます(本書では山崎千鶴と表記されてます)。更科ニッキも脇役としてちょっとだけ登場していますが本書では山崎千鶴との接触はなく事件解決にも貢献していません(登場人物リストにも載っていません)。作者は冒頭で「内的告白」、つまり犯人を含む登場人物の視点や考えていることを読者に対してオープンにしながら同時にフェアな犯人当て謎解きを両立させることに挑戦することを宣言しています。これは非常に独創的な試みでその挑戦意欲は高く評価されるべきでしょう。ただ人物視点の切り替えが非常に早くて誰が誰だか頭の整理が大変でしたし、事件自体は絵画的で派手な内容ながら謎解きは細かいアリバイ調査中心の地味なもので物語としての起伏が不足しているように思います。山崎千鶴も何の脈絡もなく容疑者の一人とベッドインしたりしていて理解しづらいキャラクターでした。


No.1062 5点 死人狩り
笹沢左保
(2016/02/10 13:15登録)
(ネタバレなしです) 1965年発表の本書はタイトルに「狩り」という言葉が使われていたのでアクションを伴うサスペンス小説かと最初思ってましたが地道な捜査の本格派推理小説でした。走行中のバスが散弾銃で狙撃されて海中に転落、乗っていた27人全員が死亡という大事件が発生します。警察の捜査会議で乗客の1人を殺すための緻密な計画に基づく犯行と判断されます。真に狙われた被害者は誰なのか、被害者の身辺捜査のことを「死人狩り」と命名したのです。犠牲者が27人もいるため関係者(容疑者)も含めるとかなりの人数が登場しますが、一つ一つの捜査は簡単に終わるので意外と読みにくくはありません。ある手掛かりから容疑者を絞り込んでいますが現代の読者にはこの推理はぴんとこないと思います(当時の常識だったのでしょうか?私にはわかりません)。それ以上に気になったのがそもそも捜査の最初であのことを(ネタバレになるので詳しく書けないのですが)考えつかなかったのが不思議でなりません。徳間文庫版では意外性を誉めていますが、個人的には意外でも何でもないと思います(私でさえ可能性として考えたぐらいですから)。ものすごく遠回りして解決に至っているという印象が残りました。


No.1061 6点 錦絵殺人事件
島田一男
(2016/02/10 12:53登録)
(ネタバレなしです) デビュー作の「古墳殺人事件」(1948年)と共に1949年発表の長編第2作の本書は島田としては異色の作品として評価されています。派手な舞台、いかにも怪しげな登場人物たち、伝奇要素、惜しげもなく投入されるトリックの数々と、充実の本格派推理小説です。あるサイトで横溝正史の「本陣殺人事件」(1946年)を連想させると感想されていましたが、私もその通りだと思います。その一方で行方不明の元子爵や遺族間に遺恨を残す遺言状などの設定は、本書が横溝の後年作である「犬神家の一族」(1950年)や「悪魔が来りて笛を吹く」(1951年)に影響を与えたと推測してもおかしくありません。両者を比較して読むのも面白いと思います。本書以降の島田は軽快でスピーディーな作風に路線変更して大変な人気作家となったのですが、(その成功に難癖つけるつもりは毛頭ありませんけど)歯ごたえのある本格派推理小説を書かなくなったのは個人的には残念です。

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