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ミステリの祭典

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錦絵殺人事件
「少年タイムス」編集長シリーズ/旧題『婦鬼系図』

作家 島田一男
出版日1961年01月
平均点6.00点
書評数4人

No.4 7点 斎藤警部
(2018/01/26 01:59登録)
カズオ・シマダ最初期二作ごってり本格の後の方。(先の方は「古墳殺人事件」) ストーリーや舞台装置のベタな本格ミステリ性は量産期諸作とは異質の感がありますが、肉体化され感満載の蘊蓄連射や幅広く豊か過ぎる日本語表現の花束をヒョイヒョイ投げてくるあたりなんざ(探偵役は江戸っ子ファイロ・ヴァンスの趣)後年の軽快かつ人情非情どちらもこってりの会話/地の文キャッチボールに不思議と直結する堪えられない芳醇味がありんす。んで文章は最高に素晴らしいのですけどね、小説のほうは、、神奈川奥地の旧家(天守閣がある!)の主が失踪中だとか、髑髏のずらり並ぶ最上階で不可能殺人だとか、義経伝説見立て連続殺人だとか、まさかの愉しきタペストリー感で展開するちょっとした密室講義の嬉しさや、、とまず魅力充分の古式ゆかしい謎群に較べ、解決篇がちょっくらギスギスドタバタ、、無理感、不自然感の強い物理トリックで折角の大きな(とは言えさほどビックラはこけない)心理トリックの綾を準原色の油絵具で汚く塗り潰しちゃってるみたいなね。。ってまあその辺の人間臭さもご愛嬌で充分許せますけどね。私みたいに雰囲気良けりゃロジック三の次って人以外にはちょィと薦め難いが、シマイチ文学を愛する人でありゃ、是非とも手に取って!

No.3 6点 nukkam
(2016/02/10 12:53登録)
(ネタバレなしです) デビュー作の「古墳殺人事件」(1948年)と共に1949年発表の長編第2作の本書は島田としては異色の作品として評価されています。派手な舞台、いかにも怪しげな登場人物たち、伝奇要素、惜しげもなく投入されるトリックの数々と、充実の本格派推理小説です。あるサイトで横溝正史の「本陣殺人事件」(1946年)を連想させると感想されていましたが、私もその通りだと思います。その一方で行方不明の元子爵や遺族間に遺恨を残す遺言状などの設定は、本書が横溝の後年作である「犬神家の一族」(1950年)や「悪魔が来りて笛を吹く」(1951年)に影響を与えたと推測してもおかしくありません。両者を比較して読むのも面白いと思います。本書以降の島田は軽快でスピーディーな作風に路線変更して大変な人気作家となったのですが、(その成功に難癖つけるつもりは毛頭ありませんけど)歯ごたえのある本格派推理小説を書かなくなったのは個人的には残念です。

No.2 6点 ボナンザ
(2014/05/08 23:05登録)
上を見るなや古墳殺人事件と並ぶ島田の傑作の一つ。
トリックはいずれも面白いし、犯人当てとしても及第点。
横溝的ストーリーを構築するにはやや荷が重かったか。

No.1 5点 江守森江
(2010/06/16 14:34登録)
作者の長編2作目で本格探偵小説路線に見切りをつけた作品。
探偵役は前作に引き続き津田が務める。
錦絵と義経伝説を絡めた見立て殺人とトリックは本格探偵小説としては少しだけ進歩した。
それでも、今更読み返す程ではない。
やっぱり路線変更後のテンポで読ませる軽い(褒め言葉)作品群の方が断然面白い。

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