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ミステリの祭典

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nukkamさんの登録情報
平均点:5.44点 書評数:2940件

プロフィール| 書評

No.1300 6点 つかみそこねた幸運
E・S・ガードナー
(2016/06/13 01:37登録)
(ネタバレなしです) 1964年発表のペリイ・メイスンシリーズ第73作です。これまでにも手強い敵対者が登場する作品はいくつかありましたが、本書に登場する相手はしたたかさも行動力も持ち合わせており、どうやってメイスンがやっつけるのか興味深く読めました。その決着がちょっと宙に浮いてしまったようなところがあるのが心残りではありますけどメイスンが勝勢であることは確かだと思います(何かミステリーの感想らしくないですね)。


No.1299 5点 救いの死
ミルワード・ケネディ
(2016/06/13 01:32登録)
(ネタバレなしです) 1931年発表の本書(共作を除くと長編第6作)はケネディの前衛的作品の代表作とされ、友人(かどうか一部で疑問視されていますが)のアントニイ・バークリイに献呈されています。探偵役のエイマーが仮説を構築してはそれが崩れ、また新たな仮説を構築するという展開はコリン・デクスターのモース主任警部シリーズを髣髴させるところもあり、その限りでは確かに本格派推理小説以外の何物でもないのですが結末はあまりにも斬新というか型破り過ぎで謎解きとしては破綻してしまったように思えます。


No.1298 5点 殺人犯はわが子なり
レックス・スタウト
(2016/06/12 05:54登録)
(ネタバレなしです) 1956年発表のネロ・ウルフシリーズ第19作は、ウルフたちが事件に巻き込まれる出だしから快調で中盤まで文句なく楽しめる本格派推理小説でした。残念なのは重要証拠がどこにあるかという推理はあるものの、それがどういう証拠なのかはウルフが関係者を集めて真相を説明するまでヒントさえ与えられていないこと。読者が自力で謎解きするには手掛かり不足なのが惜しまれます。


No.1297 5点 薔薇は死を夢見る
レジナルド・ヒル
(2016/06/12 05:40登録)
(ネタバレなしです) 1983年発表のダルジールシリーズ第7作は一応は本格派推理小説のようですが、頭の回転が鈍い私は本書のプロットはどこに解くべき謎があるのかよくわかりませんでした。過去に何人もの人間が謎の死を遂げていてその影には常にある人物が存在するという設定は、レックス・スタウトの「腰抜け連盟」(1935年)という先例もあります。しかし殺人と実証されていないためパスコーたちが何を追い求めているのか曖昧なまま物語が進むので読みにくいことこの上ありません(第三部第ニ章でやっと状況整理されますが)。ダルジールが第四部第五章でコメントしているように、「ないことずくめ」の変なミステリーです。何だか最後になってようやく謎が提示されてそこで終わってしまったような不思議な読後感が残りました。


No.1296 3点 スープ鍋につかった死体
キャサリン・ホール・ペイジ
(2016/06/12 05:35登録)
(ネタバレなしです) フェイスが伯母のチャットに頼まれて介護施設の怪死事件を調べることになる、1991年発表のフェイス・フェアチャイルドシリーズ第3作ですが意外だったのは警察がフェイスに(限定的とはいえ)捜査への協力を依頼しています。過去の2作品でフェイスの推理が事件解決に貢献している部分は少なかったと思いますけど。推理が弱くて自白でほとんどの真相が明らかになる、というのはこのシリーズでは珍しくないのですが、作品の中で起こっていない事件まで解決しているのはどういうこと(動機の伏線は張ってありますが)?問題が出てないのに答え合わせが始まったみたいな奇妙な体験でした。


No.1295 7点 リチャード三世「殺人」事件
エリザベス・ピーターズ
(2016/06/12 05:25登録)
(ネタバレなしです) 別名義での作品を含めると70作を超す女性作家でエジプト考古学者でもある米国のエリザベス・ピーターズ(1927-2013)は4作のジャクリーン・カービーシリーズを書いていて私はその内3作を読みましたが、1974年発表の第2作である本書は最も本格派推理小説の要素が濃い作品だと思います。ジョセフィン・テイの「時の娘」(1952年)でも取り上げられている英国王リチャード3世がらみのミステリーです。登場人物以外に歴史上の人物の名前が入り乱れますが文章が読みやすくて混乱せずに読むことができました(ユーモアも豊かです)。ジャクリーンに言わせれば「犯人は一目瞭然」だけど犯人のねらいがわかないという、ホワイダニット色の強いプロットです(もちろん犯人の名前も最後に明かされるので、犯人当てにも挑戦できます)。テイの「時の娘」を読んでいなくても問題はありませんが、作品中でリチャード・ハルの「伯母殺人事件」(1934年)のネタばらしがありますのでそちらを未読の人は注意して下さい。


No.1294 5点 血に飢えた悪鬼
ジョン・ディクスン・カー
(2016/06/12 05:10登録)
(ネタバレなしです) カー(1906-1977)の最後の作品となった1972年発表の歴史本格派推理小説で、作中時代は1869年、探偵役を「月長石」(1868年)の作者ウィルキー・コリンズが務めています(作中で「月長石」のネタバレがありますので未読の読者は注意下さい)。もっともコリンズは出番が意外と少なくてそれほど印象的ではありません。史実としてこの時代のコリンズはリューマチと阿片中毒に苦しんでいたそうなので意図的に精彩に乏しい描写をしたのかもしれませんが。密室トリックは小手先のトリックで可もなく不可もなくといった感じですが、中盤で明かされたもう一つのトリックにはどちらかといえば悪い意味で驚かされました。ある人物が長々と説明しているのですが、これは絶対に無理だという思いが頭から離れないまま読みました。本書はユーモア本格派ではありませんが、こんなお馬鹿で強引なトリックは笑い飛ばすのが1番か(笑)?


No.1293 4点 使いこまれた財産
E・S・ガードナー
(2016/06/11 07:33登録)
(ネタバレなしです) 82冊もの長編が書かれたペリー・メイスンシリーズですが被告に法廷で証言させているのは非常に珍しいそうです。1965年発表のシリーズ第75作の本書はその珍しいシーンが読める作品です。メイスンのライヴァル的存在のはずなのに結構お間抜けぶりの方が目立ってしまうハミルトン・バーガー検事が本書ではなかなか健闘しており、法廷での対決ではメイスンよりポイントを稼いでいるのではという印象を受けました。謎解きは極めて粗く、最終章でメイスンがこの人は犯人でないと説明していますが理由が皆無に近く、私はこの人が犯人だっていいのではと思ってしまいました。


No.1292 4点 毒の神託
ピーター・ディキンスン
(2016/06/11 07:15登録)
(ネタバレなしです) 1974年発表の本書はジャンルとしてはシリーズ探偵の登場しない本格派推理小説に分類できる作品ですが相当奇妙な味付けがされた作品です。謎解きプロットは意外とストレートなのですが、これでもかと言わんばかりの独特な世界の描写に圧倒され、ミステリーであることを忘れてしまいそうです。空想世界を舞台にするのはディキンスンの得意とするところですが、架空のアラブ人や沼族の風俗習慣、チンパンジーの学習プログラムなどあまりにも異世界的で、私のような想像力も読解力も乏しい読者には厳しい作品でした。


No.1291 7点 俳優パズル
パトリック・クェンティン
(2016/06/11 02:17登録)
(ネタバレなしです) 1938年発表のピーターとアイリスのダルース夫妻シリーズ第2作ですが本書ではまだ結婚前で、名探偵役は前作「迷走パズル」(1936年)に続きレンツ博士が務めています。前半は同時代のジョン・ディクスン・カーに匹敵するほどのオカルト雰囲気と合理的なトリックの組み合わせの妙が楽しめます。後半はがらりと様相が変わり、複雑な人間関係描写を中心にした謎解きになります。この多面性を高く評価する読者も多いでしょうが、個人的には最後まで怪奇性を維持してほしかった気もします。


No.1290 5点 荒野のホームズ
スティーヴ・ホッケンスミス
(2016/06/11 01:52登録)
(ネタバレなしです) 米国のスティーヴ・ホッケンスミス(1968年生まれ)はジャーナリスト出身で、ミステリー作家としては2000年のデビューです。当初は短編ばかりでしたが2006年発表の本書から長編も書くようになりました。シャ-ロック・ホームズのパロディー風なタイトルで(英語原題は「Holmes on the Range」)ホームズが実在する世界という設定ですがホームズは登場せず、西部アメリカを舞台にして赤毛のカウボーイ兄弟(ホームスに私淑する兄グスタフがホームズ役、弟オットーがワトソン役)が活躍するシリーズです(ちなみに初登場作品は「親愛なるホームズ様」(2003年)という短編だそうです)。個性豊かな人物が登場し、西部ならではの撃ち合いもあるかと思えばぞっとするような猟奇的な場面もあったりと起伏のある物語ですが手堅い文章で意外とドライに流れます。まあこのプロットで描写が丁寧過ぎると汚らしさやおぞましさや品のなさが気になりそうなので本書程度で十分だと思います。どんでん返しの謎解きが楽しめますが、グスタフだけが知っていた手掛かりで犯人を特定できる立場にあったというのでは謎解き好き読者に対してアンフェアに過ぎる気がします。


No.1289 6点 苦いオードブル
レックス・スタウト
(2016/06/11 01:04登録)
(ネタバレなしです) 1940年発表の本書はテカムス・フォックスシリーズ第2作の本格派推理小説です。「手袋の中の手」(1937年)の女性探偵ドル・ボナーも顔を出しますがわずかな登場シーンだけの脇役扱い、しかも活躍しているとは言えないのがちょっと残念。私立探偵に対して必ずしも協力的ではない事件関係者からどうやってフォックスが情報を探り出すかというのを丹念に描いているところはネロ・ウルフシリーズと共通していますね。本書のプロットなら危機に巻き込まれたエイミーにもっと焦点を当ててサスペンスを盛り上げるというのも一つのやり方ではあったでしょうけど、探偵の丁寧な捜査と推理を堪能できる本格派推理小説として手堅く書かれた作品に仕上がりました。


No.1288 4点 誘拐殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2016/06/09 17:44登録)
(ネタバレなしです) 1936年発表のファイロ・ヴァンスシリーズ第10作ですが、サスペンス小説に流れやすい誘拐と本格派推理小説の謎解きを組み合わせようとする努力は評価したいものの、彼の作風に合わないハードボイルド小説要素まで織り込もうとしたのは失敗だったと思います。もともとこのシリーズは知識教養を豊富に織り込み、スリラー系が主流だった当時のミステリーとは一線を画していたことが成功要因だったと思いますが本書はそういったイメージと微妙に乖離していて、とはいえ通俗というほど開き直ってもいないので中途半端な作品に感じます。当時の評価も散々だったようです。駄作とまでは言わないまでも、後期のヴァン・ダインはレベルダウンしてしまったと言われても仕方のない出来だと思います。


No.1287 5点 密偵ファルコ/水路の連続殺人
リンゼイ・デイヴィス
(2016/06/09 16:53登録)
(ネタバレなしです) 1996年発表のファルコシリーズ第9作は無差別連続殺人の犯人探しを扱っていますが、王道的本格派推理小説とは異なるプロットになっています。犯行パターンから犯人の特長を分析するプロファイリング手法を歴史ミステリーに織り込んだ本格派推理小説というべきでしょうか。被害者の素性は大半が最後まで不明のままだし、犯行動機に至っては完全に無視されています。停職中の警備隊長のペトロをファルコが助手代わりに使っていますがほとんど役にたっていません(笑)。ヘレンの方が断然有能そうですが、家族を危険に巻き込まないよう必死でファルコが押し止めています。ローマ帝国自慢の水道網を謎解きに絡めているのはナイスアイデアですが、読者に馴染みのない知識なのでちゃんと地図が添付しているとはいえ推理が難解に感じられました。このシリーズとしては盛り上る場面が少ない方ですがそれでも終盤はサスペンス豊かな場面が続き、解決後に笑えるネタまで用意しているところが巧妙です。しかも次作を待ち遠しくさせるようなエンディングに至っては何と商売上手なこと(笑)。


No.1286 6点 最長不倒距離
都筑道夫
(2016/06/09 12:21登録)
(ネタバレなしです) 1973年発表の物部太郎シリーズ第2作の本格派推理小説です。光文社文庫版で300ページ程度の長さしかなく文章も軽快ですが密室殺人、死者からの電話、ダイイング・メッセージなど謎は盛り沢山で複雑なプロットになっています。トリックは子供だまし的なものもあってそれほど印象には残りませんが、トリックよりロジック(論理)重視の謎解きは読み応えたっぷりです。できれば舞台となる温泉旅館の見取り図が欲しかったですが。


No.1285 6点 金雀枝荘の殺人
今邑彩
(2016/06/09 12:00登録)
(ネタバレなしです) 1993年発表の本格派推理小説です。冒頭に置かれた「序章という名の終章」では幽霊視点のような描写があり、霊感豊かな(?)登場人物が何度か「出た~っ」と騒ぐなど、ホラー小説的な味付けがなされていますがあくまでも味付けに留まっておりホラー小説が苦手な私でも許容範囲でした(逆にホラー要素に期待し過ぎると物足りなく感じると思います)。作者のあとがきで、犯人はAかBか、2つの可能性だけ提示して答えは出さず、どちらを選択するかは読者の自由という無責任な探偵小説を当初は構想していたと書いていたのには驚きました。後年発表の東野圭吾の某作品の先駆になった可能性があったのですね。結局本書はきちんとした解決を迎えており東野作品ほどの知名度は得られませんでしたが、私は作者の良心的な姿勢が感じられる本書の方が好きです。謎解きも巧妙なミスディレクションに感心しました。カーター・ディクソンの「ユダの窓」(1938年)のネタバラシは勇み足だと思いますが。


No.1284 5点 山師タラント
F・W・クロフツ
(2016/06/08 18:52登録)
(ネタバレなしです) 1941年発表のフレンチシリーズ第21作の本格派推理小説です。時代が時代だからかもしれませんが、素性の知れない薬品が簡単に市場に流通するストーリーにはそれほどリアリティーを感じられませんでした。前半は野心家の薬局店員タラントの物語ですがタラントばかりに焦点を当てているわけではなく、彼と利害関係のある人間も丁寧に描写されていて群像ドラマ風です。もっともクロフツなので性格描写という点ではそれほど成功してはいません。フレンチの登場は中盤以降で、いつもながらの地味な捜査に加え、法廷シーンがあるのがクロフツとしては珍しいです。作者は更に法廷後の場面も用意するなどプロットに多少工夫しているところがありますが、棚ぼた気味の解決に加えて謎解き説明が十分でないのが残念です。


No.1283 6点 クッキング・ママの依頼人
ダイアン・デヴィッドソン
(2016/06/08 18:46登録)
(ネタバレなしです) コージー派ミステリーでアマチュア探偵が事件捜査に顔を突っ込むのは、自分自身か大切な人が事件に巻き込まれたのがきっかけというケースが圧倒的に多いのですが、1997年発表のゴルディシリーズ第7作である本書は何と大嫌いな人のために探偵するというのが非常に珍しく、これはどういう結末になるんだろうとわくわくさせます(できれば過去のシリーズ作品を読んでから本書に取り組むことを勧めます)。最後はやや棚ぼた式に犯人が判明していますが、推理するための伏線も張ってあります。ゴルディが逃げようとする犯人を捕まえるやり方も機知に富んだものです。


No.1282 6点 バースへの帰還
ピーター・ラヴゼイ
(2016/06/08 18:28登録)
(ネタバレなしです) 警察をやめて2年が経過しているピーター・ダイヤモンドがかつて自分が殺人犯として逮捕したマウントジョイの脱獄の件で警察から協力要請される、1995年発表のシリーズ第3作です。過去の2作品に比べて本格派推理小説要素が増え、CWA(英国推理作家協会)のシルヴァー・ダガー賞を獲得しています。ただキャラクター描写はやや表面的になり、特にマウントジョイの無実を訴える声や誘拐犯としての危険な雰囲気がそれほど伝わってこないところは評価の分かれそうなところです。良くも悪くも淡々とした筋運びの作品で分厚い割りには読みやすいです。謎解きは動機についてはかなり細かく追求していますが、逮捕するだけの具体的な証拠探しについてはやや不十分の印象を受けました。


No.1281 5点 グリシーヌ病院の惨劇
ジャック・バルダン
(2016/06/08 18:20登録)
(ネタバレなしです) フランスの高校教師ジャック・バルダン(1965年生まれ)が友人の勧めで夏休みの間に書き上げた1997年発表の本書はかなり風変わりな本格派推理小説でした。目を引くのが「読者に対する意識」です。作者からの読者へのメッセージのようなものが随所で挿入されるだけでなく、作中人物のアルソノー刑事にまで「推理小説の人物として読者を意識した発言」を何度も言わせているのが斬新です。「重要容疑者を物語の終盤になって登場させては読者も不満に感じるだろう」などとまともな本格派推理小説を期待させておいて、最後に型破りな結末が待ち構えているところなどは油断なりません(不満に思う読者もいるでしょうが)。

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