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ミステリの祭典

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最長不倒距離
スキー場殺人事件 物部太郎三部作

作家 都筑道夫
出版日1973年01月
平均点5.43点
書評数7人

No.7 5点
(2021/07/08 18:29登録)
シリーズ前作『七十五羽の烏』のラスト・シーンで予告された事件を引き受けることになり、スキー&温泉宿にやってきた物部太郎と助手の片岡直次郎。炬燵にもぐりこんだ太郎が「最長不倒距離」(ものぐさの)と呟くのに代表されるユーモアが楽しめる一品です。
つかみの「口絵がわりの抜粋シーン」は最初の2つだけでよかったんじゃないかとも思えますが、その後説明される最近出なくなった幽霊がまた出るようにしてほしいなんて依頼自体、通常のゴーストハンターものとは逆転の発想で、この作者らしいところです。
エピローグ部分を除くと、12月15日午後3時20分に始まり、12月18日午後1時36分に終わる(章題がわりに時刻が示されています)という、短い期間内で完結する「孤立した山荘」テーマ。
部分的には直次郎が犯人だったなんてところもあって、事件を複雑にし過ぎてごちゃごちゃした印象が残ります。

No.6 6点
(2020/04/11 02:32登録)
 瀧夜叉姫の事件(『七十五羽の烏』)の留守中に、事務所につめていた父親が勝手に取り次いだスキー宿の懇請を、とうとう引き受ける羽目になったものぐさ太郎の末裔、物部太郎。客寄せの幽霊がぱったり出なくなったのをなんとか、また出るようにしてくれとの依頼を解決しに、助手の片岡直次郎と共に群馬県は北利根郡、黒馬町黒馬温泉に来たまでは良かったが、スキー・シーズンを迎えた当の鐙屋旅館では、彼らを待ち構えていたように怪事件が続発する。
 ささやきだけを残して隣の浴室から消えた女、幻のシュプールに続き、宿の露天風呂には女性の全裸死体まで現れた。頭は丸坊主で、左手首にはなぜか腕時計がふたつ、はめてある。女は隣の冬陽館の客で、水島友子と名乗っていた。
 太郎たちはふもとの警察と連絡を取ろうとするが、二十年ぶりの吹雪で交通は途絶したまま。さらに死んだ友子と称する女からかかってきた電話の途中で架線が切れ、宿は外界から完全に孤立してしまう・・・
 なまけものの自称心霊探偵・太郎と直次郎のコンビが活躍する本格シリーズの第2弾。昭和48(1973)年徳間書店刊。『宇宙大密室』収録の〈鼻たれ天狗シリーズ〉や、なめくじ長屋捕物さわぎだと『あやかし砂絵』収録の各篇を執筆しているころ。平行してアームチェア・ディディクティヴ物の『退職刑事』シリーズも始動を開始しており、相変わらずの本格嗜好にもやや変化の兆しが見えてきている時期の作品。
 前作の反省からかそこそこ容疑者数を増やし、吹雪の山荘に加え、密室もどきに宝探しと趣向も多め。最後にスノーモビルとスキーの追跡アクションを持ってくるなど、まずまず楽しめます。お色気サービスとかは正直どうでもいいですが。
 ただ全体に統一感が無いのは問題。消えた女はともかく、シュプールの謎とかはむしろ興醒めでしょう。被害者の毛が上下剃ってあるとかも余計。眼目は腕時計の謎なので、これに絞った方が良い。あと冒頭部分のクローズドサークル推しにも関わらず、隣のホテルとは自由に行き来できるのであまり緊迫感がありません。ストーリーの根幹に関わってくる部分なので、どうしようもなかったんでしょうが。
 色々と文句も言いましたが、シリーズでは最も楽しめる一冊。犯人以外の行動で事件が複雑化するのは変わりませんが(身内も一役買っているのが工夫のしどころ)、論理性やラストでの追い込みの執拗さはなかなかのものです。ダイイングメッセージがああいう形になるのも都筑氏らしいなあ。6点にするかもう少しプラスするか迷うけど、チグハグなところもあるのでまあ6点。

No.5 5点 虫暮部
(2020/01/23 10:46登録)
 作者の意図は判るが、論理が徒にチマチマしているし、物語としてあまり面白くない。私の読み方が下手ってことで。
 夜中の12時に置時計が鳴る場面があるけれど、客から文句が出ないのだろうか。

No.4 6点 nukkam
(2016/06/09 12:21登録)
(ネタバレなしです) 1973年発表の物部太郎シリーズ第2作の本格派推理小説です。光文社文庫版で300ページ程度の長さしかなく文章も軽快ですが密室殺人、死者からの電話、ダイイング・メッセージなど謎は盛り沢山で複雑なプロットになっています。トリックは子供だまし的なものもあってそれほど印象には残りませんが、トリックよりロジック(論理)重視の謎解きは読み応えたっぷりです。できれば舞台となる温泉旅館の見取り図が欲しかったですが。

No.3 4点 E-BANKER
(2014/09/06 21:45登録)
”サイキック・ディテクティブ=物部太郎”が活躍するシリーズ作品。
「七十五羽の烏」に続くシリーズ三部作の二作目。1980年発表。

~スキー宿を兼ねた温泉宿からの「幽霊をまた出してくれ」との珍妙な依頼に、物部太郎と相棒・片岡直次郎と赴くと・・・。野天風呂で女性が裸のまま殺される騒ぎのなか、殺されたはずの女性からの電話!? 密室での新たな殺人事件、不可解なダイニング・メッセージなどなど。「七十五羽の烏」に続き、太郎=直次郎の名コンビが活躍する、謎と論理のエンタテイメント~

前作(「七十五羽の烏」)でも感じたことだけど、どうもワクワク感がない。
密室殺人やら死者からの電話やら、ダイニング・メッセージやら、本格ミステリー好きには堪えられないガジェットが満載。
本来なら、真相解明に向かって頁をめくる手が止まらない・・・っていう感じになるはずなのだが・・・
そうはならなかった。

ストーリーがあまりにも平板だからなんだろうなぁー
確かにロジックは効いていて、物部太郎の謎解きもそれなりに面白いんだけど、「へぇー」っていう思うだけで興が湧かないのだ。
密室も昔からあるやつの焼き直しでパッとしないし、ダイニングメッセージも信憑性に欠ける。
クローズドサークルのなかでそれなりに大勢の容疑者がいてという舞台設定なのだが、フーダニットもどうにも盛り上がらない。ラストも本来はサプライズなのだろうけどねぇ・・・
(冒頭のフラッシュバックもあまり効いているとは思えないんだけど)

玄人受けはする作品なんだろうなぁ・・・
光文社文庫版の巻末解説で倉知淳氏がベタ褒めしているが、素人の私にはどうしても面白さが理解できなかった。
もう少しミステリー好きとしての経験値を増やしてから再読してみることにしよう。

No.2 6点 kanamori
(2010/07/03 21:45登録)
ものぐさ探偵・物部太郎シリーズの第2作。
冒頭で、核となる不可解な事象をフラッシュバック方式で提示して、読者を引き込む手法は巧い。
ロジック好きにはある程度評価されると思いますが、個人的には”ロジックよりプロット”かな。

No.1 6点 江守森江
(2009/06/26 10:48登録)
「七十五羽の烏」の物部太郎シリーズ二作目。
謎と論理のエンタテインメントとの副題に沿った作品で、論理的に謎を解明しながら犯人を絞り込む過程(解決編前半)は良くデキている。
しかし、エンタテインメント性強化の為か結末への展開(解決編後半)が、察しやすくなり逆効果になってしまった。
オーソドックスな論理を詰める犯人当てで書かれていたらもっと高評価しただろう。

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