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ミステリの祭典

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山師タラント
フレンチシリーズ

作家 F・W・クロフツ
出版日1962年01月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 4点 レッドキング
(2023/08/01 21:36登録)
クロフツ第二十五作。原題「(James)Tarrant, Adventurer」。山師=アドベンチャーねぇ。アドベンチャーには冒険家の匂いがするが、山師って言うと詐欺師の臭いが・・・。もともと和英共に「起業家」てな趣なんだろが、資本主義米国と違い、階級社会英国でも家系社会日本でも、起業家・資本家には「成り上り者」の胡散臭さが付きまとう。
で、この作品、その詐欺師まがいの起業家男の死を巡る殺人法廷劇がハイライト。たとえ死刑でなかろうとも、被告を有罪として裁くには、「Aは犯人であり得る」=必要条件だけでなく、「Aは無罪ではあり得ない」=十分条件を満たさねばならんだろうが。ましてや、死刑判決においてをや・・にも拘らず、フレンチも、検事も、ついでに結局は判事も、必要条件:「あり得る」をもって被告を弾劾可能としている。そもそも、あれが殺人だったって言う確実な十分条件の証拠さえないじゃん。クイーン「ニッポン何とか鳥」の親父警視とかの「ロジック」まだしも・・これは・・我慢できんなあ。もちろん、取って付けた様な冤罪救済をトってツけてるけどねぇ。 ※話自体は法廷サスペンスとして面白い。

No.2 5点 nukkam
(2016/06/08 18:52登録)
(ネタバレなしです) 1941年発表のフレンチシリーズ第21作の本格派推理小説です。時代が時代だからかもしれませんが、素性の知れない薬品が簡単に市場に流通するストーリーにはそれほどリアリティーを感じられませんでした。前半は野心家の薬局店員タラントの物語ですがタラントばかりに焦点を当てているわけではなく、彼と利害関係のある人間も丁寧に描写されていて群像ドラマ風です。もっともクロフツなので性格描写という点ではそれほど成功してはいません。フレンチの登場は中盤以降で、いつもながらの地味な捜査に加え、法廷シーンがあるのがクロフツとしては珍しいです。作者は更に法廷後の場面も用意するなどプロットに多少工夫しているところがありますが、棚ぼた気味の解決に加えて謎解き説明が十分でないのが残念です。

No.1 6点 kanamori
(2013/03/01 20:32登録)
前半に犯罪行為を描き、後半がフレンチの捜査過程になるといった、クロフツが中期以降に多用した倒叙ものかと思っていたら本書はちょっと違いました。

野心家タラントを中心にした詐欺まがいの医薬品販売事業を巡る群像劇風の前半部は結構面白いです。いわば”ゼロアワー”もので、犯人を明示せず事件の直前で終わることで、フーダニットものになっています。また、終盤の数章は裁判シーンに費やすというクロフツの作品では珍しい構成になっています。
ただ、そのためフレンチ首席警部の捜査編は、すでに読者が知っている事件背景を後追いするだけのものになっていて少々退屈に感じました。また、結末のどんでん返しが唐突であっけないです。

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