| nukkamさんの登録情報 | |
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| 平均点:5.44点 | 書評数:2929件 |
| No.1389 | 4点 | 玉嶺よふたたび 陳舜臣 |
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(2016/07/03 06:21登録) (ネタバレなしです) 1969年に発表された本書は小説としてのプロットは非常にしっかり作られており、日中戦争時代の中国という時代背景描写も巧みです。派手な個性表現はありませんが人物の描き分けも見事です。しかし波乱があるとはいえ内容的には恋愛を絡めた旅行記といってよく、あまりミステリーらしくありません。終盤になってやっと犯罪小説風な展開を見せますがミステリーとしては物足りなく感じる人がいるかもしれません。小説要素と謎解き要素のバランスが絶妙だった「枯草の根」(1961年)や「炎に絵を」(1966年)とは全く異質に感じられた作品でした。 |
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| No.1388 | 8点 | 人形はなぜ殺される 高木彬光 |
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(2016/07/03 06:18登録) (ネタバレなしです) 1955年発表の神津恭介シリーズ第6作で個人的には高木彬光の最高傑作と思っています。派手な演出と素晴らしいトリックの絡ませ方が絶妙で「読者への挑戦状」を2回も挿入していることからも作者の自信がうかがえますが、確かに謎解き好き読者のわくわく感に応えるだけの内容を持った本格派推理小説です。松下研三のあまりにも滑稽で大袈裟なワトソン役ぶりは少々鼻につきますが。 |
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| No.1387 | 5点 | 検事封を切る E・S・ガードナー |
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(2016/07/02 09:39登録) (ネタバレなしです) 1946年発表のダグラス・セルビイシリーズ第7作ですが本書のセルビイは軍務に就いているため地方検事ではないところが珍しいです。もっとも保安官ブランドンのセルビイへの忠誠心は全く変わらず、殺人現場でもどこでもセルビイを案内しています。問題ないのか、それで(笑)?今回セルビイは検事ではなく弁護人として宿敵カーと対決です(随分簡単に弁護人になっていますが多分資格があるのでしょうね)。ちゃんと法廷場面も用意されており互いに持ち味を発揮してなかなかの見ものです。謎解きはものすごい駆け足気味な上にセルビイはあっという間に汽車に乗って行ってしまいましたね(笑)。 |
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| No.1386 | 4点 | 偽りの名画 アーロン・エルキンズ |
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(2016/07/02 09:23登録) (ネタバレなしです) 1987年発表の本書は新しい名探偵役として美術館員クリス・ノーグレンを主人公にしたシリーズ第1作です。ギデオン・オリヴァー教授シリーズと違ってクリスを語り手にした1人称形式が特徴となっています。絵画に関する専門知識が散りばめられていますが贋作候補がいくつもあることもあって絵画の説明や真贋鑑定場面のページが結構多く、美術に全く興味のない読者にはちょっと辛い作品かもしれません。贋作探しに加えて犯人当て要素もありますがごろつきを雇っての犯行があるのは本格派推理小説としてはあまり好ましくないように感じます。 |
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| No.1385 | 6点 | 殺人への扉 エリザベス・デイリー |
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(2016/07/02 09:10登録) (ネタバレなしです) 1942年発表のヘンリー・ガーメッジシリーズ第4作です。既に怪死事件が1件、手紙事件3件、疑惑の事故4件と結構色々あったらしいことが序盤で提示されますが怪死事件以外はミステリー読者の興味を惹きそうなネタでなく、怪死事件にしても過去の出来事扱いのため前半の展開がやや退屈に感じました。しかし中盤で新たな事件が起きてからはようやく本格派推理小説として目覚めたかのように物語のテンポが上がり、結末もなかなか劇的に描かれています。 |
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| No.1384 | 5点 | ブラッドオレンジ・ティーと秘密の小部屋 ローラ・チャイルズ |
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(2016/07/02 09:07登録) (ネタバレなしです) 2006年発表の「お茶と探偵」シリーズ第7作です。このシリーズはどうもミステリーとしての感想が書きにくく、今回はお茶よりも料理の描写の方が印象的だったとかセオドシアが激昂しているのが珍しいとかティドウェル刑事が(口調は相変わらずぶっきらぼうだが)粋な計らいを見せたとか謎解き以外の部分ばかり記憶に残っています。ほんと、これでもう少し謎解きがちゃんとしていればねえ...(笑)。 |
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| No.1383 | 6点 | 猟犬クラブ ピーター・ラヴゼイ |
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(2016/07/02 08:59登録) (ネタバレなしです) 1996年発表のピーター・ダイヤモンドシリーズ第4作はミステリ談義がたっぷりと盛り込まれ、ミステリに思い入れの強い読者ほど楽しめます(ダイヤモンドをミステリ音痴に設定しているのも巧妙)。ミステリ・ビギナーの読者も大丈夫、本格派推理小説としてのプロットがしっかりした作品でもあります。珍しくも密室殺人事件を扱っており、特別すごいトリックが使われているわけではありませんが非常に丁寧な推理で謎解きしています。犯人当てとしては手掛かりを出し惜しみして逮捕後にダイヤモンドが犯人に尋ねて初めてわかる部分があるのがちょっと残念ですが、ハヤカワ文庫版で600ページ近い大作ながらストーリーテリングが冴え渡って読みやすいです。 |
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| No.1382 | 6点 | 原始の骨 アーロン・エルキンズ |
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(2016/07/01 16:56登録) (ネタバレなしです) 2008年発表のギデオン・オリヴァーシリーズ第15作の本格派推理小説です。シリーズ作品として変わらぬ安定感があり、専門知識と軽妙な会話の絶妙なバランス、謎解きの面白さ、押しつけがましくない旅情(本書の舞台はジブラルタル)などが楽しめます。ただ自分の場合、思考力が衰えてまともな会話ができず食欲だけが旺盛な高齢者の描写が自分の亡き父親の姿とあまりにぴったりと重なってしまい、楽しむというよりは感傷にひたりながら読んでしまいました(個人的な思い出話ですみません)。 |
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| No.1381 | 4点 | レッド・ゲート農場の秘密 キャロリン・キーン |
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(2016/07/01 16:45登録) (ネタバレなしです) 1931年発表のナンシー・ドルーシリーズ第6作です。創元推理文庫版の巻末でこのシリーズは本格ミステリよりはハードボイルドに近いという(個人的には驚きの)解説が書かれていますがそもそも本格かハードボイルドかの二者択一というのは強引な感もします。本書のナンシーが行動派探偵なのは確かですが、今回は活躍よりも助けられている印象の方が強かったです。もっとも最後の一行で述べられているように事件解決後のちゃっかりぶりの方で目立っていたような(笑)。 |
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| No.1380 | 5点 | 牝牛は鈴を鳴らす E・S・ガードナー |
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(2016/07/01 16:39登録) (ネタバレなしです) 1950年発表の本書はシリーズ探偵の登場しない冒険スリラーですが後半には法廷場面が用意されているのがガードナーらしいです。明確な探偵役を置かず、それなりに意外性のある結末ながらも謎解き伏線は十分とはいえないように感じられます。(古い翻訳のハヤカワポケットブック版ながら)テンポのいいストーリーテリングでぐいぐいと読ませます。 |
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| No.1379 | 5点 | おいしいワインに殺意をそえて ミシェル・スコット |
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(2016/07/01 16:28登録) (ネタバレなしです) 米国の女性作家ミシェル・スコットが2004年に発表したコージー派ミステリーのデビュー作です。ワインに合う料理レシピが紹介されているのが特徴ですがそれ以上に印象に残るのが人物描写のうまさです。端役的な人物までしっかり書き込まれており子供の描写も卓抜で、コージー派作家の中でも上位に来るのではないでしょうか。行動型探偵が手掛かりにぶつかってそのまま真相が明らかになるという、コージー派によくありがちな謎解きプロットで推理要素が少ないのが物足りないですが筆力は確かです。 |
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| No.1378 | 5点 | 踊るドルイド グラディス・ミッチェル |
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(2016/07/01 16:19登録) (ネタバレなしです) 1948年発表のミセス・ブラッドリーシリーズ第21作です。クロスカントリーの最中に道に迷った男がたどり着いた家から病人を運ぶのを手伝う羽目になります。その病人は頭まで毛布で何重にもぐるぐる巻きにされていて、病人ではなく死人ではないかと不安になった男は途中で逃げ出しすのですが自分の身体に血のようなものが付いているのに気がつくという、本格派推理小説というよりはスリラー小説みたいな展開です。ほとんど回り道なしで物語が進むのでミッチェル作品としては読みやすく感じましたが読みやすかったのは前半まで。メインの謎がはっきりしないままに捜査が何となく進み何となく謎が解けてしまった、そんな読後感が残りました。ミセス・ブラッドリーよりも秘書のローラの方が目立っていたような印象を受けました。 |
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| No.1377 | 6点 | ベベ・ベネット、死体を発見 ローズマリー・マーティン |
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(2016/06/30 16:52登録) (ネタバレなしです) 2005年発表の本書は歴史ロマンスや歴史ミステリーを書いている米国の女性作家ローズマリー・スティーブンスがマーティン名義で発表した、ベベ・ベネット三部作(本国では「Murder A-go-go Mystery」)の第1作です。作中時代を1960年代にして当時の音楽ファンには懐かしいアーティスト名が登場し、女性作家ならではの細やかなファション描写も印象的です。ユーモアとどたばたに満ち溢れたスピーディーな展開はページをめくる手が止まりません。解決が場当たり的になっているのがちょっと惜しいですが、それでもコージー派ミステリーとしては謎解きをおろそかにしないプロットに仕上がっています。 |
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| No.1376 | 3点 | 猫はペントハウスに住む リリアン・J・ブラウン |
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(2016/06/30 16:42登録) (ネタバレなしです) 1990年発表のシャム猫ココシリーズ第11作で、「猫はスイッチを入れる」(1968年)の舞台だったジャンクタウンが再登場します。もっとも本書では高層アパートメント「カサブランカ」がメインに描かれていてあまり街中の描写はありませんけど。個性的な住人描写やグルメ猫のココが意外なものを食べたりしている場面はそれなりに楽しめますが、ココのスクラブルゲームにほとんど頼ったような謎解きは推理気分が味わえませんでした。 |
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| No.1375 | 6点 | 殺人をしてみますか? ハリイ・オルズカー |
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(2016/06/30 16:39登録) (ネタバレなしです) 米国のハリイ・オルズカー(1923頃ー1969)は1958年発表の本書がミステリー第1作となりますがもともとテレビやラジオの作家としての実績があるためか文章は手馴れた感があり、とても読みやすい作品です。面白いのはフェルダー警部シリーズの第1作であるにもかかわらず主人公は別におり、登場場面の少ないフェルダー警部は要領のいい脇役といったところでしょうか。ユーモアに満ちた軽いタッチの作品ですが本格派推理小説としてしっかり謎解き伏線を張ってあるのが好ましく感じられます。 |
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| No.1374 | 7点 | もうひとりのぼくの殺人 クレイグ・ライス |
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(2016/06/30 16:33登録) (ネタバレなしです) マイケル・ヴェニング名義で書かれたメルヴィル・フェアシリーズ第2作で1943年に発表されました。巻き込まれ型サスペンス風のプロットが特徴ですがそこに自分(主人公)の素性を探る謎解きを絶妙にからませています。犯人当て本格派推理小説としてもよく出来ており、事件の背後に隠れていた大仕掛けのたくらみと皮肉な結末が印象的です。そして何ともしみじみした最終章の後日談がライスならではの締めくくりです。 |
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| No.1373 | 5点 | ポジオリ教授の冒険 T・S・ストリブリング |
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(2016/06/30 13:14登録) (ネタバレなしです) 2004年になって出版されたポジオリ教授シリーズ第三短編集ですが収録されているのは1929年から1935年にかけて発表された第二期の作品群です。つまり第二短編集の「ポジオリ教授の事件簿」(1975年)に収められた第三期の作品よりも先に書かれた作品が収められているわけです(ややこしい)。中編1作と短編8作で構成されていますが、「銃弾」や「ピンクの柱廊」で二転三転する推理に圧倒される一方で「パンパタールの真珠」や「プライヴェート・ジャングル」では解決したのかどうかさえはっきりしない結末になっていたりと良く言えば多彩、悪く言えばとらえどころのない作品が並んでおり、明らかにマニア読者や研究家向きの短編集でしょう。中編「つきまとう影」もユーモアとサスペンスが出色で大胆な推理も印象的ですがそれでいてすっきりしない締めくくりの怪作になっています。 |
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| No.1372 | 5点 | フレンチ警部と毒蛇の謎 F・W・クロフツ |
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(2016/06/29 20:41登録) (ネタバレなしです) 1938年発表のフレンチシリーズ第18作の本書は倒叙本格派推理小説です。但し創元推理文庫版の巻末解説でも紹介されているように主人公の役割が他の倒叙推理小説と異なるところに本書の工夫があり、殺人場面の直接描写もありません。それでも犯人の正体はみえみえなのですが、ハウダニットに関しては読者に対して最後まで謎として残るようにしています。もっともこのトリックは読者が推理で見破るのは至難の業と思いますけど(フレンチだって証拠確認のために警察力に頼っているし)。 |
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| No.1371 | 6点 | 作家の妻の死 ロバート・バーナード |
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(2016/06/29 20:36登録) (ネタバレなしです) 1979年発表のシリーズ探偵の登場しない本格派推理小説です。序盤は登場人物の関係がちょっとわかりにくかったですがそれが整理された中盤以降は大変読みやすいです。真相は過去のミステリー作品に類似例のあるものでしたが、しっかりしたプロットと過不足のない人物描写で十分に楽しめる内容でした。 |
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| No.1370 | 5点 | 暗い迷宮 ピーター・ラヴゼイ |
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(2016/06/29 20:29登録) (ネタバレなしです) 1997年発表のピーター・ダイヤモンドシリーズ第5作で、記憶を失った女性「ローズ」(仮の名前です)の物語とダイヤモンドの物語の2つが交互に描かれ、やがて1つの流れになるというプロットです。本格派推理小説としての面白さは残念ながら前作「猟犬クラブ」(1996年)から後退しており、ダイヤモンドは何が起きたかという事件の再構築はするものの犯人を絞り込む推理プロセスの説明が弱いです。とはいえハヤカワ文庫版の600ページの厚さが苦にならない語り口の巧さはお見事でユーモアとサスペンスにも不足していません。 |
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