| nukkamさんの登録情報 | |
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| 平均点:5.44点 | 書評数:2900件 |
| No.2140 | 5点 | 山之内家の惨劇 檜山良昭 |
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(2019/06/24 21:23登録) (ネタバレなしです) 檜山良昭(1943年生まれ)は架空戦記小説のブームに火をつけた作家の1人として知られており、他にも歴史ミステリーや冒険小説、果てはノンフィクションも手掛けていますが1982年発表の本書は現代を舞台にした普通の本格派推理小説で、この作者としては異色作かもしれません。山之内家の関係者を次々に災厄が襲いますが、鎌倉時代の源家の滅亡と符合するような展開に刑事たちは悩まされます。刑事が(理由はあるのですが)張り合って手柄争いしたり、警察主催による降霊会が主催されたりとリアリティーを期待する読者にはお勧めしづらいプロットです。それならば開き直って派手に仕立てるのも一手ではと思いますがどういうわけか地味で堅実にまとめようとしており、どこかちぐはぐな印象を受けました。 |
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| No.2139 | 5点 | 血染めの鍵 エドガー・ウォーレス |
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(2019/06/24 21:08登録) (ネタバレなしです) イギリスのエドガー・ウォーレス(1875-1932)は口述した物語を秘書にタイプさせるという、ペリー・メイスンシリーズで知られるアメリカのE・S・ガードナーと同じ手法で長編170作以上、短編950作以上という驚異的な数の作品を残しています。多作家の宿命として死後は急速に忘れられたようですが1923年発表の本書は密室トリックが非常に有名で、後世の作家が紹介したり転用したりしており、作品を知らなくてもトリックだけは知っている読者も多いのではないかと思います。一般的にスリラー小説家と認識されているウォーレスならではでしょうか、本格派推理小説に分類していい作品ではありますが犯人の正体が判明する肝心の場面は本格派の定型パターンから大きく外れていて、1920年にデビューしたアガサ・クリスティーなどの本格派とは一線を画しています。怪しげな中国人が登場するところは時代を感じさせますね。 |
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| No.2138 | 5点 | 怒れる老婦人 レオ・ブルース |
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(2019/06/18 22:11登録) (ネタバレなしです) 1960年発表のキャロラス・ディーンシリーズ第7作の本格派推理小説で、国内では「AUNT AURORA Vol.6」(1993年)で翻訳紹介され、後にはROM叢書版でも出版されました(2023年)。会話中心に進むプロットはアガサ・クリスティーを彷彿させると言えなくもありませんが、キャロラスと容疑者のやり取りばかりが延々と続くプロットは一本調子で、しかも容疑者が20人を超すのですから冗長にさえ感じてしまいます。容疑者同士の会話をすべり込ませてメリハリをつけていたクリスティーとはストーリーテリングが雲泥の差です。ひねりを効かせすぎた真相も読者の好き嫌いが分かれるかもしれません。 |
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| No.2137 | 5点 | 仲のいい死体 結城昌治 |
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(2019/06/18 21:53登録) (ネタバレなしです) 1961年発表の郷原部長刑事三部作の最後を飾る本格派推理小説です。もっとも創元推理文庫版の巻末解説によれば郷原が脇役として登場する作品が他にあるようですが。過去の2作と違って地方を舞台にして転勤した郷原の(やや頼りなげな)活躍を描いているのが特徴です。重要な手掛かりをもう少し早い段階で伏線として登場させていればとは思いますが、通俗性やユーモアの中に埋もれることなくしっかりした謎解きを用意しています。 |
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| No.2136 | 5点 | 十一番目の災い ノーマン・ベロウ |
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(2019/06/14 22:04登録) (ネタバレなしです) 以前に「消えたボランド氏」(1954年)を読んで「これで裏社会の描写がもっとこってりしていたら本格派推理小説というより通俗スリラーになったかも」と生意気な感想を当サイトに投稿しましたが、その1年前の1953年発表のシドニーを舞台にした本書はまさに通俗色が「こってり」で、第11章で説明される2種類の裏社会、怪しげなナイトクラブや麻薬組織と普通の本格派とは大きく雰囲気が異なります。第17章ではそれまでに起こった犯罪の真相の一部が読者に知らされますが、そこには推理による謎解きがありません。直後の第18章で不可解な人間消失が起きるのですが、現場が犯罪組織の拠点であるナイトクラブでは中立公平な証人など期待しようもなく、謎解きに取り組みたい読者は途方に暮れるのではないでしょうか。結末の衝撃度ではある意味「消えたボランド氏」を上回るだけに、本格派好きの私としては読者の謎解き意欲をかき立てる工夫の足りない、惜しい作品に感じました。 |
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| No.2135 | 6点 | 悪魔の呼気 由良三郎 |
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(2019/06/10 23:24登録) (ネタバレなしです) 1990年発表の本格派推理小説で、タイトルはちょっと不気味ですが中身は怖い要素は全くなく、主人公で探偵役の祖父と孫娘のコンビの会話にはユーモアが混じっているほどです。トリックに工夫しているのはこの作者らしいですが、一方で舞台となる老人ホーム描写のリアリティーがいまひとつに感じられるのもこの作者らしいというか...。まあ謎解きを活発にするためにはうるさいぐらいの高齢者たちを揃えて会話をにぎやかにする方が都合よいのかもしれませんが。細かい粗(あら)は気にせず次から次へと仮説が組み当てられてはひっくり返される謎解き展開を単純に楽しみながら読むのが正解なのでしょう。もっとも事件解決後のまさかの締めくくりはいくらなんでも蛇足ではという気もしますけど。 |
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| No.2134 | 5点 | 金時計 ポール・アルテ |
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(2019/06/10 23:05登録) (ネタバレなしです) 2019年発表のオーウェン・バーンズシリーズ第7作の本格派推理小説ですが、行舟文化版の巻末解説によればフランス本国よりも日本での翻訳版の方が先に出版されたらしいのには驚きました。雪の上の死体の周辺に犯人の足跡が残っていない不可能犯罪が発生しますが、本書の最大の特徴は2つのエピソードを交差させながら物語が進むプロットでしょう。1つは1911年に発生した殺人事件の謎解きでオーウェンが活躍しています。もう1つは時代を1991年とし、1966年頃に見た映画のタイトルは何かという謎で始まるミステリーらしからぬエピソードですがだんだんと様相がおかしくなっていくのが印象的です。図解入りで丁寧に説明される足跡トリックは本格派好き読者を満足させるでしょうが、悪夢を見てるかのような(両方の時代の)結末の重苦しさは何と表現したらよいのやら。 |
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| No.2133 | 5点 | 相馬野馬追い殺人事件 皆川博子 |
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(2019/06/10 22:33登録) (ネタバレなしです) 1984年発表の本格派推理小説です。早々と殺人事件が起きるのですが間違い殺人の可能性が出たためか捜査は難航します。さらに投石による落馬事件とか(事故かどうか微妙な)風呂場での感電死事件とか走行中の車内の排気ガス漏れ事件などが立て続けに発生しますが、どれもミステリーの謎としてはインパクトが弱いです。人間関係が複雑な上に誰が主人公なのかさえ曖昧な描写なのでとても読みにくかったです。推理も明確な証拠がほとんどありません。終盤での2人の人物によるコン・ゲーム(だまし合い)的なやり取りが不思議なサスペンスを醸し出しているのが印象的ですが、他にはこれといった特徴がないように思いました。 |
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| No.2132 | 5点 | ドアは語る M・R・ラインハート |
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(2019/06/03 23:09登録) (ネタバレなしです) 本格派推理小説一辺倒で他のミステリージャンルを敬遠している私はサスペンス小説家として名高いラインハートはあまり関心がなく、1930年発表の本書が私にとっては「螺旋階段の闇」(1908年)に次いで2冊目のラインハート作品です。ハヤカワポケットブック版の巻末解説では「クリスティーを思わせる」と紹介されていますが、作風が大きく違うように思います。手掛かりらしきものが多数散りばめられ、最後まで犯人当ての興味で引っ張るプロットで本格派推理小説に分類できる内容ではあります。とはいえほとんどの容疑者が怪しい行動をとるというのが謎としては過剰演出気味だし、展開も非常に回りくどくて重厚過ぎて読みにくいです。謎解き説明がいまひとつ明快でないところもクリスティーとは大きく異なります。丁寧に書かれた力作ではあるのですがもう少し風通しを良くして欲しかったですね。 |
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| No.2131 | 5点 | 裁くのは誰か? ビル・プロンジーニ |
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(2019/06/03 22:33登録) (ネタバレなしです) SF作家のバリー・N・マルツバーグ(1939年生まれ)との共作第2作で1977年に発表されました。何と登場人物はアメリカ大統領夫妻とその側近たちで、反対陣営に寝返っている裏切り者を殺そうとする人物(「われわれ」と称しながら単独描写です)の正体は誰かという風変わりな本格派推理小説です。大統領を取り巻く不穏な空気はそれなりに描かれていますが、政治問題や社会問題に関する会話はほとんどありません。まあ本書にリアリティーを求めるのは筋違いなのでしょう。創元推理文庫版の巻末解説で「結末の大胆さに、髪を振り乱して怒り心頭となるか、感極まって本書を神棚に供えるか、とにかくも、しばし忘れられぬ読書体験を得られることは保証しよう」と読者を選びそうな怪作であることが紹介されてますが、確かに奇抜過ぎるアイデアが用意されていてショックで反発する読者続出かも(笑)。個人的には怒り心頭にこそなりませんでしたが「読んで損はないよ」と擁護する気持にもなれません。 |
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| No.2130 | 5点 | 一心館の殺人剣 鳥羽亮 |
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(2019/05/19 20:21登録) (ネタバレなしです) 時代小説作家として高名な作者ですので何の予備知識もなく本書のタイトルを読んだ人は時代小説と勘違いするかもしれません。しかし本書はミステリー作家時代の1991年に発表された、現代を舞台にした本格派推理小説です。剣道家と不可能犯罪の組み合わせがデビュー作の「剣の道殺人事件」(1990年)を連想させますが、残念ながら出来栄えは劣るように感じました。衆人環視状態の剣道の試合最中の不可能犯罪という「剣の道殺人事件」の魅力的な謎と比べると本書は普通の密室殺人事件に過ぎません。まあそれはまだ大きな問題点ではないのですけど、主人公を偽の犯人に仕立てるために主人公のアリバイをなくすための犯人の仕掛けがあまりにも強引、ご都合主義かつ失敗リスクが高くて馬鹿馬鹿しささえ感じます。早い段階で読者にオープンにしているのがせめてもの救いでしょうか。 |
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| No.2129 | 6点 | 殺されたのは誰だ E・C・R・ロラック |
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(2019/05/11 22:32登録) (ネタバレなしです) 1945年発表のマクドナルド警部シリーズ第26作の本格派推理小説です。風詠社版の日本語タイトルも悪くありませんが英語原題の「Murder by Matchlight」も捨てがたい魅力があります。暗闇で被害者がマッチに火をつけた時にその明りの後ろの暗闇に浮かびあがる顔(犯人?)の描写にはぞくっとしました。被害者の素性がなかなか判明せず、第7章でマクドナルドが「このように混乱された状況下では、身元を偽ることはさほど難しくありません」と述べているように戦時下の雰囲気が漂っており、それは後半になって空襲警報と爆撃の中での捜査場面でピークを迎えます。登場人物の1人がマクドナルドの推理説明を補足して動機を整理してくれたのが個人的にはありがたい読者サービスでした(笑)。 |
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| No.2128 | 4点 | 法水麟太郎全短篇 小栗虫太郎 |
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(2019/05/11 22:10登録) (ネタバレなしです) 法水麟太郎シリーズの中短編は1933年から1937年にかけて全部で8作書かれており何度も単行本に載っていますが分冊掲載がほとんで、意外にも全作を短編集1冊にまとめたのは河出文庫版(2019年)の本書が初かも知れません(正確に調べたわけではないので間違っていたらすみません)。奇書と評価されている「黒死館殺人事件」(1934年)に挑戦する前の入門編として読むのもよしでしょう。ページ数が少ない分「黒死館殺人事件」より早く読み終えれるのは間違いなし、しかも筋を追うのも大変な難解さは中短編であっても超弩級ですので本書でうんざりされた方は「黒死館殺人事件」には手を出さないことを勧めます。読んで疲れた上にほとんど内容を理解できませんでしたが、その中では1番読みやすかった「国なき人々」が個性を感じられず「後光殺人事件」や「失楽園殺人事件」の方があまりの奇想に印象に残っているのですから私の感性も(もともとアブノーマル気味ですが)かなり麻痺してしまったようです。 |
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| No.2127 | 6点 | 謎解きのスケッチ ドロシー・ボワーズ |
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(2019/05/06 18:11登録) (ネタバレなしです) 1940年発表のダン・パードウ警部(本書の風詠社版ではパルドー警部と表記されてます)シリーズ第3作の本格派推理小説です。控え目な描写ながら第二次世界大戦の影響が滲み出ています。謎解きが好きな若者が登場するのでパードウ警部とアマチュア探偵の推理競演になるかと思っていたらこの若者は早々と殺されてしまいます。既に何度か生命の危機を潜り抜けていた被害者は用心したのでしょう、残された言動や手掛かりは非常に謎めいていて容易に真相が掴めません。鳥のスケッチが手掛かりの一つというのもユニークで(残念ながらイラスト紹介はなし)、この謎解きはマニアックな知識が必要なので一般読者には難易度が高過ぎると思いますが決してダイイングメッセージ一発の謎解きではなく、それ以外の手掛かりもちゃんとパードウ警部が説明してくれます。 |
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| No.2126 | 5点 | 繭の密室 今邑彩 |
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(2019/05/06 17:53登録) (ネタバレなしです) 1995年発表の貴島刑事シリーズ第4作です。このシリーズは3作で終了予定だったのを翻意して本書を書いたそうですが、特にシリーズ最終作らしい仕掛けはありません。怪異に満ちた本格派推理小説として始められたシリーズのようですけど本書に至っては醜い人間心理描写はあるものの怪異要素は皆無に近く、普通の本格派推理小説です。私はホラー系が苦手なので普通であることは全く問題ないのですが、肝心の謎解きの出来栄えがいまひとつです。貴島による密室トリックの推理はかなりの部分を憶測で補っているように感じます。まあそれでも辻褄は合っているのでまだいいのですが、犯人当てについては犯人が致命的な証拠を落として発覚してしまうという棚ぼた式展開に不満を覚えます。 |
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| No.2125 | 5点 | 墜ちる人形 ヒルダ・ローレンス |
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(2019/04/26 22:47登録) (ネタバレなしです) 1947年発表のマーク・イーストシリーズ第3作の本格派推理小説で、ハワード・ヘイクラフトやアントニー・バウチャーが絶賛したそうですが本書がヒルダ・ローレンス(1906-1976)の最後の長編作品で、この後は中短編をいくつか発表したのみです。小学館文庫版の裏表紙で「彼女は何者かに殴打され、庭で死体となって発見される。自殺か他殺か?」と粗筋紹介されているのには困惑です。殴打されて自殺かよって突っ込みたくなりました(笑)。表現描写はかなり抑制されていて、せっかくの仮装パーティー場面は盛り上がらないし人物も誰が誰だかわかりにくかったです(しかも登場人物リストに載ってないのに結構登場場面の多い人物が何人もいます)。人並由真実さんのご講評で本書の重厚さをP・D・ジェイムズの先駆的に位置づけているのはなるほどと共感しました。前半はぐだぐだ感が強くて読みにくかったですが、マークの捜査が軌道に乗ってくる9章あたりからミステリーらしくなってサスペンスもじわじわと効いてきます。 |
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| No.2124 | 5点 | 捕虜収容所の死 マイケル・ギルバート |
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(2019/04/26 22:30登録) (ネタバレなしです) マイケル・ギルバートは第二次世界大戦で捕虜となってイタリアの収容所に投獄されたそうですが、その経験を活かしたと思われるのが初期代表作として評価されている1952年発表の本書です。創元推理文庫版の巻末解説で森英俊が「スリラーと本格ミステリの要素が渾然一体となった、奇蹟のような作品」と大絶賛していますが、確かに1943年のイタリア捕虜収容所を舞台にしてイギリス人捕虜たちの脱走計画と囚人の怪死事件の謎解きを両軸にした複雑なプロットはユニークで、読み応えもたっぷりです。しかしながら登場人物リストに載っているだけでも35人の人数はさすがに多過ぎで、例えばあるイタリア人大尉の冷酷非道ぶりが十分描けていないのは残念です。舞台描写もわかりにくくて不可能犯罪(準密室状態らしい)の謎の魅力が伝わりにくく、肝心の脱走場面のサスペンスもいまひとつに感じました。殺人犯探し、スパイ探し、脱走の成否など様々な課題が入り乱れ、珍しい手掛かりによる推理など光る部分もあるのですが私のような単純思考の読者には面白さよりも混乱の方が勝ってしまいました。 |
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| No.2123 | 5点 | クロイドン発12時30分 F・W・クロフツ |
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(2019/04/16 22:14登録) (ネタバレなしです) 1934年発表のフレンチシリーズ第11作で、犯人の正体を最初から明かしている倒叙本格派推理小説です。倒叙本格派の創始者であるオースティン・フリーマンのスタイルに最も忠実な作品と評価されているようですが、少し違うようなところもあります。倒叙本格派と言うと犯人と名探偵の推理バトルが読みどころの1つだと思いますが、本書はフレンチの捜査描写や犯人との対決場面が意外と少ないのです。それにはちゃんと理由があり、代わりに予期せぬ展開を用意したり犯人の逮捕で終わらせず法廷場面に突入するなどプロットの工夫をしていますが本書が典型的な倒叙本格派かと言うと微妙な気もします。地味過ぎて退屈になりかねないクロフツですが、本書は主人公(犯人)の心理描写を増やすことでそこからの脱却を図っています。それでも地味な作品ではあるのですが。謎解きとは関係ありませんが過去のシリーズ作品で昇進を期待してはお預けをくらっていたフレンチは本書でついに悲願成就、警部時代の最後の事件となりました。 |
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| No.2122 | 5点 | 丹後鳴き砂殺人事件 草野唯雄 |
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(2019/04/16 21:18登録) (ネタバレなしです) 1990年発表の尾高一幸シリーズ第8作の本格派推理小説です。マンションの一室で男性が女性(素性は明かされません)に毒殺される場面で幕開けしますが、これは何と感想したらよいのか...。犯人が立ち去った後、現場に男性が忍び込み、さらに女性(犯人とは別人)がやってきて(男性は隠れます)何と既に死んでいる被害者を撲殺、続いて新たな男性が侵入して今度は被害者をベランダから放り投げます(三者三様ならぬ三者三殺)。短時間に何人もの人間が犯行に及びしかも互いに全く顔を合わせない、偶然と言うにはあまりにもとてつもなく計画的と言うにはあまりにも綱渡りです。これを見破る尾高は「合理的な解釈」と主張していますが、いやいやこんな途方もない出来事は合理的に推理できるわけないでしょと突っ込みたくなるような怪作でした。 |
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| No.2121 | 5点 | 重婚した夫 E・S・ガードナー |
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(2019/04/11 20:46登録) (ネタバレなしです) 1961年発表のペリー・メイスンシリーズ第65作の本格派推理小説です。タイトル通り重婚した夫が登場して殺されるのですが2人の妻の登場場面があまりにも少なく、いくら家族ドラマを深く掘り下げる作風でないにしてもこれでは盛り上がりに欠けますね。子供もいるのですがこちらは登場人物リストにさえ載りません。13章に至っても依頼人がなぜ不利なのかがメイスンにもわかっていないなど謎の魅力も足りません。そのためどんでん返しのインパクトも弱く、このシリーズとしては淡々と進み淡々と終わってしまったような印象です(というか印象に残りにくい作品です)。 |
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