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ミステリの祭典

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燔祭の丘
建築探偵シリーズ

作家 篠田真由美
出版日2011年01月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 5点 nukkam
(2019/02/21 22:09登録)
(ネタバレなしです) 2011年発表の桜井京介シリーズ第15作でシリーズ最終作の冒険スリラーです。冒険スリラーといっても展開は遅いしアクション場面も少ないのですが講談社文庫版で700ページを超す厚さが気にならない文章力はさすがです。過去のシリーズ作品のネタが随所で紹介されていますが記憶力が落第生レベルの私はほとんど思い出せませんでした(笑)。とはいえ少なくとも第三部の5作は発表順に読むことを勧めます。これまでのシリーズ作品で蒼、深春、神代教授の人生に大きな影響を与える物語があったので最後が京介の順番になることはまあ想定内でしたが、その割には京介の登場場面は意外と少なく、他のレギュラーキャラクターに十分以上のページを与えています。虫暮部さんのご講評でも触れられてますが、パズル色は薄いものの端正で爽やかな本格派推理小説でスタートしたこのシリーズが暗く重苦しい心理描写のスリラー路線へと切り替わり、しかも過去作品を読んでないと展開についていくのが困難な大河小説風になったのはどう評価されるのでしょう?本格派ばかり求める偏屈読者の私は当然アウト判定なのですけど(笑)。後期の作品ではもはや建築探偵ものではなくなってしまったし。

No.2 7点 初老人
(2016/11/13 14:41登録)
建築探偵シリーズ、堂々の完結である。
最初に「美貌の帳」の表紙に惹かれて手に取り、そこから「未明の家」に遡り順々に読んで来た者にとっては、ある種の感慨を覚えずにはいられない。
主要キャラクターの疑似家族めいた生活の営みが作者の願望を反映したに等しい、現実的に考えてあり得ないと思いつつ読んでしまったのは、ひとえに文章が上手かったからである。
犯人を置き手紙一つで退場させるのも、中々気が利いている。
各々が絵に書いたような、しかし今後に期待を持たせるラストを迎えるのも想定通りで気持ちがいい。
そして最終ページで蒼が自分に纏わる様々なものを脱ぎ捨てて京介のもとに駆け寄るイメージに、不覚にも目頭が熱くなった。
とりあえず篠田先生には、素晴らしい物語の数々を有り難うございます、お疲れ様でしたと伝えたい。

No.1 8点 虫暮部
(2011/07/06 19:29登録)
 このシリーズは、最初の方が端正な純ミステリだったのに、ラスト数作はそれを置き去りにしてまでも“善玉対悪玉”的な対決にこだわっている。必然性があるのは判るが、番外編の多さと相俟って、今振り返ると妙に歪な形のシリーズとして決着したという印象を覚える(それがマイナスだとは言わない)。
 あと、“暗示をかけて他人を思うままに操る”というワザが、なんかもう超能力か憑き物かというレヴェルで描かれているが、世界観の整合性という点でこれはちょっと行き過ぎな気もする。西尾維新じゃないんだから。
 とはいえ、とても面白かった。最後に綾乃さんがくっついたことだけは許せん(笑)。

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