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ミステリの祭典

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壷中美人
金田一耕助シリーズ

作家 横溝正史
出版日1960年01月
平均点4.67点
書評数3人

No.3 5点 nukkam
(2019/02/08 22:43登録)
(ネタバレなしです) 1957年発表の金田一耕助シリーズ第18作(シリーズ第20作とされている「志那扇の女」(1957年)のことが作中で語られていますので間違いかもしれません)の本格派推理小説です。少女が身体をくねらせながら小さな壺の中に収まる壺中美人という芸が紹介され、それをテレビ鑑賞していた金田一が後の事件解決につながるヒントに気づくという序盤(等々力警部は気づきません)、そして殺人現場でこの芸を試みる少女が目撃されるという不思議な謎(見られていることに気づいて芸を中断して逃亡します)という展開はなかなか魅力的ですが中盤以降は地味過ぎてだれてしまいます。動機がかなり後出し気味ですし、何よりもなぜわざわざあの芸をしようとしたのかという説明がきちんとされていません。

No.2 5点 斎藤警部
(2016/08/22 09:25登録)
犯人はちょっと意外。犯人露呈の伏線(!)も確かに意外。加えてもっと不気味なムゥドがあればなあぁ。。題名が暗示するある種のおぞましさは無く、何ともcozyな雰囲気で語られる中篇(二百頁超)。なんてことない蕎麦屋のくだりが忘れ難い。緩めに話が進む分、最後の惨殺屍体発見シーンはちょっと衝撃。しかし〆の「世界犯罪史上云々」はいくらなんでも言い過ぎだ。

角川文庫併録の短篇 「廃園の鬼」
密閉されない山地の館もの。高齢の学者と三度目の結婚をした元レコード歌手(素晴らしい死語)の新妻。彼女の元夫二人と金田一を交え数名の男女(大半は男性)が集い、その中の数名が同時に目撃する(折りしも元夫である映画監督のロケ撮影中)距離を隔てての新妻らしき女の謀殺シーン。。。。それは現実の事件か映画のリハーサルか? 事の真相はともかく動機の核心については、熱いものを内に込めたままのリドルストーリー。まソレについてはアレじゃあるまいかと想像もしたが、まさかそこまで徹底してたとは。。題名の「鬼」は、そういう意味か! ってやっぱりこっちの作品の方が熱く語っちゃうねえ。

No.1 4点
(2011/03/29 23:00登録)
角川文庫版で200ページちょっとの短い作品です。『スペードの女王』や『夜の黒豹』と同じく短編を引き伸ばしたものだそうですが、本作にはそれほどの価値があったかなと思えます。元の短編は読んでいないのですが、ひょっとすると長編化にあたって複雑化したせいでしょうか、犯人の設定が、結末の意外性という点から見てどうもすっきりできないのです。また冒頭で金田一耕助が疑惑を持った壷中美人についての秘密も、そのアイディア自体は悪くないのですが、だからこそこんな殺人事件になったというつながり方が弱いと感じました。
それより、角川文庫版に併録されている長めの短編『廃園の鬼』の方がすぐれています。大胆な計画と人情話的なラストがうまく組み合わさっていて、動機がはっきりしないのはどうかなと思えますが、いい読後感を残します。ただ、タイトルは内容に合っていません。

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