| nukkamさんの登録情報 | |
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| 平均点:5.44点 | 書評数:2900件 |
| No.2220 | 5点 | 黄 雷均 |
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(2020/03/10 19:44登録) (ネタバレなしです) 中国の雷均(レイジュン)が2015年に発表した本格派推理小説です。ドイツの裕福な家庭の養子となった盲目の中国人青年を主人公にし、中国で起こった少年の両眼をくり抜くという悲惨な事件(生命は助かります)の謎解きに挑むというプロットです。非常に構成に技巧を凝らしていることが感じられます。例えば第1章は主人公が興奮で手が震えている場面で終わり、第2章は主人公の興奮が全身に広まっている描写で始まります。ところがこの2つの章は作中時代が異なっていて実は連続性がないのです。他にもある村で犬がいないことを不思議がる場面で章を終わらせたかと思うと次の章ではいきなり犬が吠えかかる場面で開始する、やはりこの2つの章も作中時代が違っています。過去と現在を交互に描く構成は他にも例はありますがこういう技巧で読者を煙に巻くというのは私は初体験です。もっとも私がそれを理解するのには時間がかかり、何かちぐはぐで読みにくいなと思いながら読み進めました。犯人当て謎解きとは別に主人公の意外な秘密を明かすのも効果としては印象的でしたが、どこか目指すゴールをずらされたような気分にもさせられます。 |
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| No.2219 | 5点 | 黒い花束 島田一男 |
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(2020/03/02 20:38登録) (ネタバレなしです) 作品によって本格派推理小説と軽ハードボイルド小説に分かれるとされる南郷弁護士シリーズにあって、1959年発表のシリーズ第6作の本書は前者に属します。南郷の助手の金丸京子に山で遭難死したはずの友人からダンス・パーティーへの招待状が届きます。南郷と京子が友人宅を訪問するとそこには様々な来客がいますが、その中の1人が不可思議な状況下で行方不明になります。その後も失踪事件が相次ぐという展開が早見江堂の怪作「本格ミステリ館消失」(2007年)を連想させます。犯罪性がはっきりしない失踪事件だとミステリーとして退屈になりやすいのですが、本書には当てはまりません。犯人と思われる三本指の男(横溝正史の某作品を意識したのでしょうか?)によって南郷が何度も裏をかかれるなど盛り上げるためのサービスには事欠かず、後年の阿井渉介の列車シリーズのごとく風呂敷を広げまくります。推理はかなり強引で、広げた風呂敷を上手く畳めたかというと微妙な気もしますがまずまず楽しめました。 |
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| No.2218 | 6点 | 薔薇の輪 クリスチアナ・ブランド |
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(2020/03/02 20:19登録) (ネタバレなしです) 「はなれわざ」(1955年)までのブランドは一流の本格派推理小説の書き手としての名声を確立していましたが、その後は非ミステリー作品を発表したりと作風の幅を広げました。別名義で発表することもあり、1977年発表の本書も初版はメアリ・アン・アッシュ名義でした。序盤はややごちゃごちゃした感じもありますが第4章の終わりで三重事件が発生し、チャッキー警部が登場すると謎解きプロットが盛り上がります。特に第7章からのどんでん返しの連続はブランドならではです。解決がやや駆け足気味ですっきり感が弱いのが残念で、E-BANKERさんがご講評で論じられているように1940年代から1950年代にかけての傑作群には及ばないものの、「暗闇の薔薇」(1979年)とともに1970年代の本格派の代表作だと思います。ちなみにどちらもタイトルに「薔薇」が使われていますが作品間の相互関連はありません。 |
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| No.2217 | 6点 | 探偵さえいなければ 東川篤哉 |
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(2020/03/02 20:03登録) (ネタバレなしです) 2013年から2016年にかけて発表された短編を5作収めた、2017年出版の烏賊川市シリーズ第3短編集です。本書に至るまでに長編5作と短編集2作が発表されたためか、烏賊川市がすっかり「犯罪都市」として定着してしまいましたね(笑)。それでもユーモア本格派推理小説であることにはぶれがなく、気楽に楽しめる作品です。特に「ゆるキャラはなぜ殺される」と「博士とロボットの不在証明」の会話ははじけ飛んでいて滅法楽しかったです。しかし最も印象に残ったのは「とある密室の始まりと終わり」です。何と扱われた犯罪は猟奇的殺人事件で使われたトリックも実に猟奇的、これをユーモア本格派に仕立てた豪腕が凄い。流平君、トラウマにならないんだろうか?この内容を江戸川乱歩とか二階堂黎人とか猟奇描写を気味悪く描くのが上手い作者が書いたなら...、いやあんまり想像したくないです(笑)。 |
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| No.2216 | 6点 | ネロ・ウルフの災難 女難編 レックス・スタウト |
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(2020/02/27 22:07登録) (ネタバレなしです) ネロ・ウルフシリーズ第11中短編集(1960年)、第12短編集(1962年)、第13短編集(1964年)から1作ずつ選出して国内独自編集版として2019年に出版されました(国内単行本としては4冊目です)。最も女難らしい作品は「トウモロコシとコロシ」(1962年)で女難に遭ったのはアーチーですが、アーチーのトラブルはウルフにとってもトラブルです。愛憎ドラマ風のプロットがこのシリーズとしては珍しく、強引なところもありますが推理もまずまずです。「殺人規則その三」(1960年)では何とウルフを面と向かって罵倒する女性が登場、これには思わず笑ってしまいました。ウルフがアーチーの助手となる逆転設定はあまり効果を上げてないし、推理も強引かつ唐突ですが楽しく読める作品です。「悪魔の死」(1961年)はオカルト要素はなく、女難らしさも希薄、推理が弱くてはったりのみでの解決にしか感じられず3作の中では1番印象に残りませんでした。 |
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| No.2215 | 6点 | 人形式モナリザ 森博嗣 |
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(2020/02/27 21:43登録) (ネタバレなしです) 1999年発表のVシリーズ第2作の本格派推理小説です。女性のみによって人形を操る乙女文楽が演じられている最中の殺人事件の謎解きですが、むしろシリーズキャラクターである紅子たちの複雑な人間ドラマの方にウエイトを置いた作品のように感じました。それはそれで謎めいてはいるのですけど。殺人の謎解きとは別に意外な真相が明かされるのが印象的ですが、これを殺人捜査のミスリーディングに使っているのは少々あざといように思います。 |
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| No.2214 | 6点 | 亀は死を招く エリザベス・フェラーズ |
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(2020/02/27 21:34登録) (ネタバレなしです) 1950年発表の本格派推理小説で舞台は地中海沿岸のフランスの港町、第二次世界大戦の傷跡が人々の心や生活に残っています。ホテルに集まった様々な国籍の人々が多彩に描かれ、やがて悲劇が起きます。地味な展開ながらも揺れ動く人間ドラマが退屈をぎりぎりで回避しており、サスペンスがじっくりと醸成されます。解決がかなり唐突感があるのと(ネタバレなしで説明しにくいですが)殺害トリックに感心できなかったです(確かピーター・ラヴゼイも使っていたような)。 |
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| No.2213 | 5点 | マスカレード・ホテル 東野圭吾 |
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(2020/02/27 21:24登録) (ネタバレなしです) 2011年発表のマスカレードシリーズ第1作です。無差別連続殺人の次の犯行現場が一流ホテルのホテルコルシア東京と予測した警察が刑事たちをホテルスタッフに変装して張り込ませることになります。野心あふれる新田刑事と彼の教育係となるフロントクラークの山岸尚美が主人公です。何らかの秘密を抱えているらしい宿泊客たちと新田や山岸が織り成す人間ドラマが魅力的です。ホテルの舞台裏を描いたミステリーでは、作家になる前はホテル勤務だった森村誠一の社会派犯罪小説の「銀の虚城」(1968年)が知られていますが本書もよく描けていると思います。本格派推理小説、サスペンス小説、そして警察小説の要素が入り混じったジャンルミックス型ですが、巧妙に張られた伏線が活きる展開は感心しますが誰が犯人で誰を次に狙ったのかという肝心な謎についてはほとんどが自白頼りで明らかになるのが残念でした。その代わりサスペンス豊かな締めくくりになってますが。 |
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| No.2212 | 5点 | シュロック・ホームズの冒険 ロバート・L・フィッシュ |
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(2020/02/27 20:59登録) (ネタバレなしです) コナン・ドイルが生み出したシャーロック・ホームズシリーズのパロディ作品、パスティ-シュ作品が多く書かれましたがアメリカのロバート・L・フィッシュ(1912-1981)によって32短編が書かれたシュロック・ホームズシリーズはそれらの中でも優秀なパロディ作品と評価されています。作者の生前には2つの短編集が発表されましたが、1960年から1964年にかけて発表された12編を収めて1966年に出版された第1短編集が本書です。このシリーズの特徴はシュロックが次から次へとそれらしい(?)推理を披露してワトソン役のワトニイは感心し、依頼人も満足という結末が多いのですが実は推理は的を外していて肝心な問題は解決していなかったりしているのです。ただその肝心な問題の真相がはっきりと説明されず示唆に留まってしまうことが多いので、軽妙なテンポと明快な文章にも関わらず理解しづらいという欠点があり、そこが評価の分かれ目になると思います。ハヤカワ・ミステリ文庫版の巻末解説では英語の微妙なニュアンスを補足してくれていて理解するのに役に立ちました。個人的なお気に入りは「赤毛の巨人」と「誘拐された王子」です。 |
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| No.2211 | 5点 | どもりの主教 E・S・ガードナー |
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(2020/02/17 22:10登録) (ネタバレなしです) 1936年発表のペリー・メイスンシリーズ第9作の本格派推理小説で、複雑なプロットとスピーディーな展開の組み合わせは初期作品ならではですが、個人的には拙速気味に感じました。マロリイ主教と名乗る人物がメイスンの依頼人になりますが何度も話の途中でどもることからメイスンは弁護士や主教はどもりの人間には務まらないはずだと若干疑います。他にも本物なのか偽者なのか怪しい人物が登場するなど事態はどんどん錯綜します。終盤は一気に解決するのですが、推理説明が不十分に感じられ、例えばある人物の行方が明らかになる場面はあまりにも唐突な印象があります。最後に次回作の予告がされますが、なぜかハヤカワ文庫版ではシリーズ第10作の「危険な未亡人」(1937年)でなく第11作の「カナリヤの爪」(1937年)の予告でした(弾十六さんのご講評では米国初版ではちゃんと「危険な未亡人」が予告されていたらしいです)。またハヤカワ文庫版の巻末解説ではアガサ・クリスティーの「スタイルズの怪事件」(1920年)の犯人名とトリックが堂々とネタバレされてますのでまだ未読の人は注意下さい。 |
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| No.2210 | 4点 | 武蔵野殺人√4の密室 水野泰治 |
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(2020/02/17 21:45登録) (ネタバレなしです) 1987年発表の本格派推理小説で、大富豪の女性が密室で殺され容疑者の大半がその一族という古典的な設定です。中盤に意外な展開があるのですが私の読んだ講談社文庫版では裏表紙の粗筋紹介でネタバレされているのでせっかくの意外性が台無しです(もったいない)。プロットにもトリックにも凝った仕掛けが用意してあり、手がかりのカモフラージュにも技巧を見せるなど謎解きに関してはなかなか力が入った作品です。とはいえいきなりベッドシーンで物語が開始したり、下品きわまりないせりふが挿入されたりと通俗色が濃厚すぎる作風は私には合いませんでした。 |
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| No.2209 | 5点 | ドロシーとアガサ ゲイロード・ラーセン |
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(2020/02/17 21:25登録) (ネタバレなしです) アメリカのゲイロード・ラーセン(1932年生まれ)については私は勉強不足でよく知らないのですが、彼のミステリー代表作と評価されているのが1990年発表の本格派推理小説である本書です。イギリスの本格派黄金時代を牽引したドロシー・L・セイヤーズとアガサ・クリスティーを主人公にしたという設定が興味を引きます。他にも同時代のミステリー作家たちが多数登場していますがこちらは完全に脇役、もっと活躍させたらと思わないでもありませんが。意外だったのが前半の展開で、事件に巻き込まれたドロシーが助けになろうとするアガサ達を拒絶して雰囲気がやや険悪になりかけます。しかし後半になると関係は修復され、2人がタッグを組んで謎解きに挑戦するという期待通りの展開になります。巻末解説で若竹七海が指摘しているように当時のミステリーに関する記述ミスが散見され、それを突っ込むのも読者のお楽しみかもしれませんがおっさんさんのご講評でも触れられているように、謎解きに絡んでいる知識に誤りがあるのはいただけません。 |
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| No.2208 | 7点 | 探偵事務所 巨大密室 鳥羽亮 |
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(2020/02/14 22:15登録) (ネタバレなしです) 1996年発表の探偵事務所シリーズ第4作の本格派推理小説です。室生を訪れた依頼人は6年前の同窓会の服装でビルの屋上から飛び降り自殺したらしい友人の調査を依頼します。死亡当時の屋上は人の出入りが不可能な「屋根のない密室」状態で、遺書も残されていたことから警察は自殺と判断しています。ところが室生が調査を開始して間もなく、依頼人までもが6年前の同窓会の服装でビルの屋上から墜落死します。「巨大」の演出が弱いながらも謎がどんどん深まる展開は読み応えがたっぷりで、同じような屋上密室事件が続くのですが後になるほど密室としての完成度が高くなるなど実に芸が細かいです。最終章に至ってようやく室生がたどり着いた真相はルース・レンデルの某作品を連想させますが、非常に手の込んだ犯人の細工が印象的でした。新たな探偵助手(?)も加わってアイワ探偵事務所の益々の発展を期待させるような締めくくりになりますが残念ながら本書がシリーズ最終作、それどころか作者はミステリーから離れて時代小説家としての道を歩んでいくことになります。 |
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| No.2207 | 5点 | 死体をどうぞ シャルル・エクスブライヤ |
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(2020/02/14 21:58登録) (ネタバレなしです) 1961年発表の本書はミステリー要素がとても希薄です。殺人が起きて犯人の正体は終盤まで伏せられていて、強いて言うなら本格派推理小説なのでしょうが犯人探しのプロット展開にならないのです。作中時代は第二次世界大戦下のイタリアの小さな村で、時々砲声が響き渡ります。ファシスト派と反ファシスト派に分かれて対立する村人たちが描かれていますが、政治思想などほとんど持ち合わせていませんのでそれほど深刻な雰囲気にはなりません。ファシスト派の人間も嫌われ者として描かれているのはほんのわずかで、ある人物が「貧乏なのにのん気で、不幸なのに笑いや叫びや歌声が絶えないイタリア」を再発見していくドラマが印象的です。村人たちが死体を隠し、死体を探す人間がそれを見つけると村人たちがまた別の場所へ隠すという展開が繰り返され、クレイグ・ライスほどの派手などたばた感はないもののユーモアにあふれています。犯人を示す手掛かりが読者に対してほとんど提示されず、これでは誰が犯人でもよかったようにしか思えないのは不満ですが。 |
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| No.2206 | 6点 | 黒龍荘の惨劇 岡田秀文 |
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(2020/02/10 21:45登録) (ネタバレなしです) 2014年発表の月輪龍太郎シリーズ第2作の本格派推理小説です。いわくありげな一族にわらべ唄をなぞったような見立て連続殺人と横溝正史を連想させるようなプロットですが良く言えば洗練、悪く言えば淡白な筋運びです。万人向けタイプではありますが、例えば綾辻行人の「時計館の殺人」(1991年)の強烈なサスペンスを堪能した読者には物足りなく映るかもしれません。またいくら作中時代が明治でもこの犯行計画は実行に無理があり過ぎのようにしか感じられません。とはいえ(無理矢理感はあるにしろ)大胆きわまる真相とすさまじいまでの悪意のインパクトの前に多少の不満を吹っ飛ばされるでしょう。発表当時結構な話題になったというのも納得です。 |
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| No.2205 | 6点 | シャーロック・ホームズ絹の家 アンソニー・ホロヴィッツ |
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(2020/02/10 21:24登録) (ネタバレなしです) 英国のアンソニー・ホロヴィッツ(1955年生まれ)は1979年のデビュー以来、児童書作家やテレビドラマの脚本家として活躍し大人向けの小説を書くようになったのは21世紀になってからのようです。日本で知られるようになったのはアーサー・コナン・ドイル財団が史上初めてシャーロック・ホームズシリーズの続編として公認した2011年発表の本書あたりからだと思います。個人的にはドイルこそ唯一の正当たる作者であり、財団が何と言おうとこれまで無数に書かれた非公認(?)のパロディー(或いはパスティーシュ)小説と同じじゃないかと(偉そうに)主張したいところですが。とはいえドイル作品の雰囲気をよく再現していることは認めます。私のお気に入りである、ホームズの人間鑑定場面もちゃんと用意されています。謎解きよりは冒険スリラー小説要素が強いですがホームズが推理を披露する場面もあります。おぞましい真相は読者の好き嫌いが分かれるかもしれませんが。レストレイドの無能警官ぶりもしっかり描かれていますが、読者の好感度を上げる工夫もありました。 |
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| No.2204 | 6点 | ラットマン 道尾秀介 |
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(2020/02/03 22:09登録) (ネタバレなしです) 2008年発表の本格派推理小説です。文学志向を意識している作者ですが本書も謎解き要素と物語要素の内、どちらかと言えば後者の方に注力しているように感じました。事件が引き起こした悲劇性や登場人物が抱える秘密が重苦しく描かれています。しかしながら終盤でのどんでん返しが連続する謎解きは鮮やかで、謎解きにもちゃんと配慮されていることがわかります。タイトルはミステリーのタイトルとしては魅力的でないように思いましたが、なかなか意味深です。 |
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| No.2203 | 5点 | シャーロック・ホームズの事件録 眠らぬ亡霊 ボニー・マクバード |
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(2020/02/03 21:45登録) (ネタバレなしです) 2017年発表のシャーロック・ホームズ事件録第2作です。ストーリの性格上やむを得ないところもあるのでしょうが苦悩して孤立するホームズがしつこいほど描かれており、個人的にはコナン・ドイル原作のヒーロー像を壊しているように思います。ドイル原作でワトソンがホームズの天才ぶりに感心する場面は私のお気に入りですが、本書ではそれもほとんどありません。ハーパーBOOKS版で500ページを超す厚さですがそれ以上に重厚さを感じさせるプロットで、登場人物リストに載っていない重要人物も少なくありません。前作で登場したフランス人探偵ジャン・ヴィドックが再登場していますが本書では単なるお邪魔虫的な脇役に過ぎないのが残念です。ホームズの学生時代のエピソードは無用の添え物かと思っていたら後半になると実は物語の重要な要素だったのには驚きました。犯人(というより悪人)の極悪非道ぶりが印象的です。 |
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| No.2202 | 5点 | 秘密パーティ 佐野洋 |
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(2020/01/24 22:00登録) (ネタバレなしです) 1961年発表の本格派推理小説です。タイトルがミステリーらしくないと考えたのか「完全殺人の完全なトリック」と読者の謎解き挑戦意欲をそそるようなサブタイトルが付いていますが、まあこれをあまり真剣には受けとらないほうがよいかと...(笑)。料亭に男女が集まって怪しげな映画を見ながら雰囲気が盛り上がりそうなところで事件が起こって秘密パーティは中断されます。脛に傷持つ面々は事件を自然死に見せかけることで合意し、隠蔽工作は上手くいったかに思えますが彼らの元に脅迫状が舞い込むというプロットです。怪死事件が起こったら殺人かどうか、殺人なら誰が犯人なのかという謎解きがミステリーの王道パターンですが本書についてはそれは完全に後回し、脅迫にどう応じるかと誰が脅迫者なのかが物語の大半を占めているのが特徴です。犯行はかなり無理筋かつご都合主義で、仮に犯行が成立したとしても(一応成立するのですが)後から秘密がばれてしまうリスクが常につきまとっているように思えます。 |
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| No.2201 | 4点 | アッサム・ティーと熱気球の悪夢 ローラ・チャイルズ |
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(2020/01/24 20:47登録) (ネタバレなしです) 2019年発表の「お茶と探偵」シリーズ第20作のコージー派ミステリーです。今回はお茶というよりお茶会の紹介になっていますがこれがなかなか興味深く、終盤でのボザールのお茶会描写はいい雰囲気を醸し出しています(結局シークレット・シッパーはお茶会に来たんでしょうか?)。そんなわけで「お茶」に関しては合格点なのですが、肝心の「探偵」に関しては...困りましたね(笑)。ドローンを熱気球に衝突させて被害者を墜落死させるというのが珍しく、これで3人もの死者が出るのですが誰が狙われたのかについてはあっさり絞り込まれてしまいます(死者の1人は登場人物リストに載せてさえもらえません)。犯人の行動は矛盾だらけで、犯行後すぐに逃げなかったのは不審に思われたくないからというのは理解できますが、そのくせ結構目立つ振る舞いを繰り返して馬脚を現しています。推理による解決要素がほとんどなくて謎解きとしては物足りないです。 |
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