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ミステリの祭典

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nukkamさんの登録情報
平均点:5.44点 書評数:2811件

プロフィール| 書評

No.2151 6点 密室・殺人
小林泰三
(2019/07/30 21:57登録)
(ネタバレなしです) ホラー短編作家としてデビューした小林泰三(こばやしやすみ。私はずっと「たいぞう」だと思ってました)(1962-2020)の長編第1作が1998年発表の本書です。意外にもユーモア本格派推理小説として展開し、密室の中にいたはずの人間が密室の外で死体となって発見されるという1種の逆密室の謎が提示されます。エキセントリックな容疑者たち相手に探偵助手役の主人公の苦心の捜査が描かれています。それに加えて主人公の抱えるトラウマによる乱心描写がホラー作家として評価の高い作者ならではですが、捜査が完全に中断されてしまうので本格派好き読者の好き嫌いは分かれるかもしれません。結末の付け方も賛否両論あると思いますがなかなか力の入った作品で、謎解き伏線の張り方が巧妙です。


No.2150 5点 囲いのなかの女
E・S・ガードナー
(2019/07/30 21:38登録)
(ネタバレなしです) E・S・ガードナー(1889-1970)が亡くなった後にいくつかの作品が遺作として出版されましたが、その中にペリー・メイスンシリーズ第81作となる本書と第82作の「延期された殺人」(1973年)があります。アガサ・クリスティーのように死後発表用として計画していたわけではなさそうですが、いずれにしろファン読者にとっては嬉しい贈り物だったでしょう。1972年の出版となった本書の幕開けはなかなか印象的です。依頼人が旅行から帰ってくると自宅が鉄条網で二つに寸断されていて、半分を見知らぬ女性に占有されているのですから。依頼人の意外な秘密や「日光浴者の日記」(1955年)を彷彿させるどんでん返し(ちょっと偶然の要素が強過ぎか?)など読ませどころが沢山です。真相を見抜く手がかりが後出し気味なのが残念ですけど。


No.2149 5点 カケスはカケスの森
竹本健治
(2019/07/30 21:22登録)
(ネタバレなしです) シリーズ探偵の登場しない1990年発表の本格派推理小説です。Tetchyさんのご講評で紹介されているように二人称形式を採用しているのが大変珍しく、しかも時々一人称による語りまで混ざっているのは私は他に例を知りません。二人称の「あなた」は最初からどういう人物か紹介されているのに対して一人称の「わたし」は正体不明の人物として描かれているのもユニークです。ただ二人称だと往々にして読者に作中人物の役割を与えて作品世界に誘うのですが、本書ではそんなことはないのでこの二人称形式が効果的だったのかよくわかりませんでした。本書と同年に発表された綾辻行人の「霧越邸殺人事件」を連想させるところがあり、読み比べてみるのも一興かと思います。ただ本格派としての完成度では綾辻作品の方に軍配が上がり、消化不良気味の謎解きになっているのは謎解き好き読者の評価が分かれそうです。


No.2148 5点 世紀の犯罪
アンソニー・アボット
(2019/07/16 20:45登録)
(ネタバレなしです) アメリカのアンソニー・アボット(1893-1952)はジャーナリストだったフルトン・アワスラーのミステリー作家としてのペンネームで、1930年代から1940年代前半にかけて発表されたニューヨーク市警のサッチャー・コルト警察本部長シリーズ(長編8作といくつかの短編)の本格派推理小説で人気を博しました。私はこのシリーズ、「ナイトクラブレディ」(1931年)と「シャダーズ」(1943年)を先に読んでいますがあまりにも無茶苦茶なトリックにB級ミステリーの典型という印象を抱いていました。しかし1931年に発表されたシリーズ第2作の本書は死体発見の場面こそやや派手ですが、全体としてはそれほど破天荒な内容ではありません(英語原題の「The Crime of the Century」はあまりにも大仰ですが)。コルトの強引な捜査活動はリアリティのかけらもありませんし、読者に対して真相を推理できる手掛かりをフェアに提示しているかも疑問ですが、14章でコルトが登場人物たちの容疑を次々に羅列する場面はいかにも本格派黄金時代に書かれた作品であることを感じさせます。


No.2147 4点 墓場への持参金
多岐川恭
(2019/07/16 20:25登録)
(ネタバレなしです) 1965年発表の本書は佐野洋による光文社文庫版の巻末解説で紹介されているように、この作者としては「珍しく」本格派推理小説の要素を持ち、中盤では土地売買に絡む詐欺疑惑が注目されるなど社会派推理小説要素もあります。作品の個性となっているのが終章で、ここではある人物による手紙で複雑な人間関係と思惑が明らかになります。これが佐野洋が賞賛した「人間の謎、人間心理の深さを見事に描いている」ということなのでしょう。しかしながら自白形式なので推理による謎解きを期待する読者に受けるかは疑問ですし、それ以上に問題視されそうなのは火葬場の事件のトリックのひどさです。受けるどころか怒り出してしまう読者がいるかもしれません。


No.2146 5点 密室殺人
ルーパート・ペニー
(2019/07/10 21:57登録)
(ネタバレましです) ビール主任警部シリーズ第8作の本格派推理小説である本書と別名義による非シリーズ作品を1941年に発表してルーパート・ペニー(1909-1970)はミステリー作家としての活動を停止しました。英語原題の「Sealed Room Murder」の通り密室殺人が起きるのですがこの事件は中盤以降まで起こらず、それまでは器物破壊や紛失(盗難?)などの小さな事件が相次ぐ展開でチマチマかつごちゃごちゃした印象が否めません。お世辞にも人物描写が上手いとは言えない作風なので大勢の家族が同居する大きな屋敷という舞台背景も十分活かされていないように思います。とはいえ「読者への挑戦状」の後で図解入りで丁寧に説明される密室トリックはなかなかに印象的でした。


No.2145 5点 朱漆の壁に血がしたたる
都筑道夫
(2019/07/10 21:41登録)
(ネタバレなしです) 1977年発表の物部太郎三部作の第3作となった本格派推理小説です。冒頭でワトソン役の片岡直次郎が密室状態の倉の中で被害者と2人きり、しかも出入口は他人が出入りしなかったとの証言でいきなり容疑者となります。この作者らしく論理を重視した謎解きなのは本来なら私の好みなのですが、密室トリックが個人的にはそんなトリックは使って欲しくなかったという魅力に欠ける真相だったので推理の面白さが半減です。文章自体は平明ですらすら読めるのですが、複雑な人間関係に難解なプロットと私のような頭脳レベルでは理解に苦労しました。最後の1行には思わずふふふっと(気味悪いな)笑ってしまいましたが。


No.2144 7点 思考機械「完全版」第一巻
ジャック・フットレル
(2019/07/05 20:49登録)
(ネタバレなしです) あのタイタニック号の沈没事故に乗り合わせてまだ30代の若さで落命してしまったアメリカのジャック・フットレル(1875-1912)と言えば思考機械シリーズで有名です。ロボット探偵とかAI探偵とかではなくれっきとした人間で、「2たす2はつねに4なのだ」というせりふをよく使い、「不可能」という言葉を使われるのが大嫌いです。作者は短い生涯の間にシリーズ作品を長編1作と50作近い短編を残しましたが単行本化されてない作品も少なくありません。没後100年を過ぎて2019年に国内出版された作品社版(全二巻)はおそらく世界初の完全全集版という大偉業です。お値段ははっきり言って「とても」高いのですが、新聞発表されてそれっきりだった作品をかき集める苦労を考えるとあまり文句は言えませんね。第一巻の本書は長編「黄金の皿を追って」(1906年)、作者の生前に出版された第一短編集(1907年)の全7作、第二短編集(1908年)からは序章的な「思考機械」と5作(残り8作は第二巻)、そして単行本化されなかった短編5作を収めてます。初期作品が懸賞小説だったのは驚きで、有名な「十三号独房の問題」でも思考機械の脱獄トリックを読者に当てさせてます。途方もない真相の「百万長者ベイビー・ブレイク誘拐事件」さえも消えた足跡トリックをほぼ完璧に当てた読者がいたのはすごいですね。容疑者の言動が不自然過ぎるほど怪しいとか推理の粗いのが気になる作品もありますが、第一短編集の作品は(懸賞小説だけあって)プロットは複雑、謎解き伏線も当時としてはかなり気配りされた力作が多いです。第二短編集になるとページ数が少なくなってシンプルになり読み易い半面、出来不出来が目立ちます。個人的な好みは「ラルストン銀行強盗事件」、「燃え上がる幽霊」、「赤い糸」、「行方不明のラジウム」です。あと「黄金の皿を追って」での思考機械のあわてふためく場面には思わず笑ってしまいました。


No.2143 5点 猪苗代マジック
二階堂黎人
(2019/07/05 20:20登録)
(ネタバレなしです) 2003年発表の水乃サトルシリーズ第5作(社会人編第3作)の本格派推理小説です。1984年に「処刑魔」と名乗る人物による連続殺人事件が発生し、犯人は逮捕されるのですがその10年後に新たな「処刑魔」による連続殺人が起きてサトルが巻き込まれ、いえ自ら捜査に割り込みます。「もったいぶるのは好きではありません」と言いながらサトルの説明は結構まわりくどいし、この人が犯人でないのは明白と言いながら直前にアリバイを尋ねていたのは一体何だったんだと突っ込みたくなります。賛否両論になりそうなのが最後の一行のどんでん返しで、推理力の高い読者なら納得してすっきりできるのかもしれませんがそういうレベルに程遠い私は唐突過ぎてもやっとした読後感しか残りませんでした。


No.2142 7点 飛ぶ男、墜ちる女
白峰良介
(2019/06/24 22:00登録)
(ネタバレなしです) コピーライターの白峰良介(1955年生まれ。余談ですが夫人は黒崎緑です)が1991年に発表した長編ミステリーデビュー作です。「広告クリエイター殺人事件」の副題を持っていて広告業界が描かれていますが社会派推理小説ではなく、講談社ノベルス版の作者のことばで紹介されているように「謎と論理を重視した」本格派推理小説です。屋上から男性が飛び降りるのを目撃されたのに墜落現場へ行ってみると倒れていたのは女性の死体だったという序盤の謎が実に魅力的で、謎が追加されていく展開の中盤、理詰めの推理でトリックや犯人を特定する終盤と多くの本格派好き読者を納得させるであろう完成度です。最終章で犯人の自白で明かされる部分は読者が推理しようもないところもありますが全体の中では大きな弱点ではないでしょう。文章は抑制が効いていて地味ですが筋立てがしっかりしているので退屈しません。これだけの作品ですから鮎川哲也が巻末解説で注目の新本格派推理小説家と評価したのはもっともだと思いますが、その後はあまり活躍していないようなのが(私が知らないだけ?)惜しまれます。


No.2141 5点 おしゃべり時計の秘密
フランク・グルーバー
(2019/06/24 21:39登録)
(ネタバレなしです) 1941年発表のジョニー・フレッチャー&サム・クラッグシリーズ第5作のユーモア・ハードボイルドです。ちょっと信じられないような状況下で殺人を実行する犯人の度胸には驚愕を通り越して呆れてしまいますが(普通なら時と場所を改めるでしょう)、とにかくこの事件に巻き込まれて容疑者となったジョニーとサムがどたばたを繰り広げながら犯人捜しをする展開が安定の面白さです。もちろんあの手この手で金欠問題を何とかしようとする悪戦苦闘ぶりも読ませどころです。タイトルに使われている時計の秘密だけでなく意外な人間関係が暴露されたりと謎解きもおろそかにせず、ぎりぎりまで正体を披露しない犯人当てのジョニーの推理も結構しっかりしていますが、果たして本格派推理小説好きの読者がフェアな謎解きだと納得できる伏線が張られていたのかは自信ありません(私が気付かず読み落としていた可能性も十分ありますけど)。


No.2140 5点 山之内家の惨劇
檜山良昭
(2019/06/24 21:23登録)
(ネタバレなしです) 檜山良昭(1943年生まれ)は架空戦記小説のブームに火をつけた作家の1人として知られており、他にも歴史ミステリーや冒険小説、果てはノンフィクションも手掛けていますが1982年発表の本書は現代を舞台にした普通の本格派推理小説で、この作者としては異色作かもしれません。山之内家の関係者を次々に災厄が襲いますが、鎌倉時代の源家の滅亡と符合するような展開に刑事たちは悩まされます。刑事が(理由はあるのですが)張り合って手柄争いしたり、警察主催による降霊会が主催されたりとリアリティーを期待する読者にはお勧めしづらいプロットです。それならば開き直って派手に仕立てるのも一手ではと思いますがどういうわけか地味で堅実にまとめようとしており、どこかちぐはぐな印象を受けました。


No.2139 5点 血染めの鍵
エドガー・ウォーレス
(2019/06/24 21:08登録)
(ネタバレなしです) イギリスのエドガー・ウォーレス(1875-1932)は口述した物語を秘書にタイプさせるという、ペリー・メイスンシリーズで知られるアメリカのE・S・ガードナーと同じ手法で長編170作以上、短編950作以上という驚異的な数の作品を残しています。多作家の宿命として死後は急速に忘れられたようですが1923年発表の本書は密室トリックが非常に有名で、後世の作家が紹介したり転用したりしており、作品を知らなくてもトリックだけは知っている読者も多いのではないかと思います。一般的にスリラー小説家と認識されているウォーレスならではでしょうか、本格派推理小説に分類していい作品ではありますが犯人の正体が判明する肝心の場面は本格派の定型パターンから大きく外れていて、1920年にデビューしたアガサ・クリスティーなどの本格派とは一線を画しています。怪しげな中国人が登場するところは時代を感じさせますね。


No.2138 5点 怒れる老婦人
レオ・ブルース
(2019/06/18 22:11登録)
(ネタバレなしです) 1960年発表のキャロラス・ディーンシリーズ第7作の本格派推理小説で、国内では「AUNT AURORA Vol.6」(1993年)で翻訳紹介され、後にはROM叢書版でも出版されました(2023年)。会話中心に進むプロットはアガサ・クリスティーを彷彿させると言えなくもありませんが、キャロラスと容疑者のやり取りばかりが延々と続くプロットは一本調子で、しかも容疑者が20人を超すのですから冗長にさえ感じてしまいます。容疑者同士の会話をすべり込ませてメリハリをつけていたクリスティーとはストーリーテリングが雲泥の差です。ひねりを効かせすぎた真相も読者の好き嫌いが分かれるかもしれません。


No.2137 5点 仲のいい死体
結城昌治
(2019/06/18 21:53登録)
(ネタバレなしです) 1961年発表の郷原部長刑事三部作の最後を飾る本格派推理小説です。もっとも創元推理文庫版の巻末解説によれば郷原が脇役として登場する作品が他にあるようですが。過去の2作と違って地方を舞台にして転勤した郷原の(やや頼りなげな)活躍を描いているのが特徴です。重要な手掛かりをもう少し早い段階で伏線として登場させていればとは思いますが、通俗性やユーモアの中に埋もれることなくしっかりした謎解きを用意しています。


No.2136 5点 十一番目の災い
ノーマン・ベロウ
(2019/06/14 22:04登録)
(ネタバレなしです) 以前に「消えたボランド氏」(1954年)を読んで「これで裏社会の描写がもっとこってりしていたら本格派推理小説というより通俗スリラーになったかも」と生意気な感想を当サイトに投稿しましたが、その1年前の1953年発表のシドニーを舞台にした本書はまさに通俗色が「こってり」で、第11章で説明される2種類の裏社会、怪しげなナイトクラブや麻薬組織と普通の本格派とは大きく雰囲気が異なります。第17章ではそれまでに起こった犯罪の真相の一部が読者に知らされますが、そこには推理による謎解きがありません。直後の第18章で不可解な人間消失が起きるのですが、現場が犯罪組織の拠点であるナイトクラブでは中立公平な証人など期待しようもなく、謎解きに取り組みたい読者は途方に暮れるのではないでしょうか。結末の衝撃度ではある意味「消えたボランド氏」を上回るだけに、本格派好きの私としては読者の謎解き意欲をかき立てる工夫の足りない、惜しい作品に感じました。


No.2135 6点 悪魔の呼気
由良三郎
(2019/06/10 23:24登録)
(ネタバレなしです) 1990年発表の本格派推理小説で、タイトルはちょっと不気味ですが中身は怖い要素は全くなく、主人公で探偵役の祖父と孫娘のコンビの会話にはユーモアが混じっているほどです。トリックに工夫しているのはこの作者らしいですが、一方で舞台となる老人ホーム描写のリアリティーがいまひとつに感じられるのもこの作者らしいというか...。まあ謎解きを活発にするためにはうるさいぐらいの高齢者たちを揃えて会話をにぎやかにする方が都合よいのかもしれませんが。細かい粗(あら)は気にせず次から次へと仮説が組み当てられてはひっくり返される謎解き展開を単純に楽しみながら読むのが正解なのでしょう。もっとも事件解決後のまさかの締めくくりはいくらなんでも蛇足ではという気もしますけど。


No.2134 5点 金時計
ポール・アルテ
(2019/06/10 23:05登録)
(ネタバレなしです) 2019年発表のオーウェン・バーンズシリーズ第7作の本格派推理小説ですが、行舟文化版の巻末解説によればフランス本国よりも日本での翻訳版の方が先に出版されたらしいのには驚きました。雪の上の死体の周辺に犯人の足跡が残っていない不可能犯罪が発生しますが、本書の最大の特徴は2つのエピソードを交差させながら物語が進むプロットでしょう。1つは1911年に発生した殺人事件の謎解きでオーウェンが活躍しています。もう1つは時代を1991年とし、1966年頃に見た映画のタイトルは何かという謎で始まるミステリーらしからぬエピソードですがだんだんと様相がおかしくなっていくのが印象的です。図解入りで丁寧に説明される足跡トリックは本格派好き読者を満足させるでしょうが、悪夢を見てるかのような(両方の時代の)結末の重苦しさは何と表現したらよいのやら。


No.2133 5点 相馬野馬追い殺人事件
皆川博子
(2019/06/10 22:33登録)
(ネタバレなしです) 1984年発表の本格派推理小説です。早々と殺人事件が起きるのですが間違い殺人の可能性が出たためか捜査は難航します。さらに投石による落馬事件とか(事故かどうか微妙な)風呂場での感電死事件とか走行中の車内の排気ガス漏れ事件などが立て続けに発生しますが、どれもミステリーの謎としてはインパクトが弱いです。人間関係が複雑な上に誰が主人公なのかさえ曖昧な描写なのでとても読みにくかったです。推理も明確な証拠がほとんどありません。終盤での2人の人物によるコン・ゲーム(だまし合い)的なやり取りが不思議なサスペンスを醸し出しているのが印象的ですが、他にはこれといった特徴がないように思いました。


No.2132 5点 ドアは語る
M・R・ラインハート
(2019/06/03 23:09登録)
(ネタバレなしです) 本格派推理小説一辺倒で他のミステリージャンルを敬遠している私はサスペンス小説家として名高いラインハートはあまり関心がなく、1930年発表の本書が私にとっては「螺旋階段の闇」(1908年)に次いで2冊目のラインハート作品です。ハヤカワポケットブック版の巻末解説では「クリスティーを思わせる」と紹介されていますが、作風が大きく違うように思います。手掛かりらしきものが多数散りばめられ、最後まで犯人当ての興味で引っ張るプロットで本格派推理小説に分類できる内容ではあります。とはいえほとんどの容疑者が怪しい行動をとるというのが謎としては過剰演出気味だし、展開も非常に回りくどくて重厚過ぎて読みにくいです。謎解き説明がいまひとつ明快でないところもクリスティーとは大きく異なります。丁寧に書かれた力作ではあるのですがもう少し風通しを良くして欲しかったですね。

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