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ミステリの祭典

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最悪の館

作家 ローリー・レーダー=デイ
出版日2020年04月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 びーじぇー
(2020/10/12 20:06登録)
夫を亡くした女性が偶然に若者たちと宿で一晩を過ごすことになり、彼らの一人が殺されたことから事件に巻き込まれるフーダニットの作品。
作者は別作品でメアリー・ヒギンズ・クラーク賞の受賞歴もあるが、本作も「さよならを言う前に」などクラークが得意としたトラウマを持つ女性が事件を通してトラウマを克服するまでを描くサスペンスの延長線上にある作品と考えると理解しやすい。殺人事件の謎を追う作品であるが、それ以上に主人公となる女性が事件を通して肉体的にも精神的にも何度も追い詰められながら、自分の過去を直視することが出来るようになるまでを描く作品なのだ。クラークのように視覚的な描写が得意というタイプの作品ではないが、その分、心理描写が深掘りされている。

No.2 6点 HORNET
(2020/08/03 19:32登録)
 イーデンは、不慮の事故で夫を亡くしたうえ、そこで夫の不実を知ることになった。そんなイーデンが、生前の夫が旅行を予約していた星空の保護区、ダークスカイ・パークを訪れる。ところが到着早々、別のグループと予約が重なっていたことが分かり、やむなく同宿することに。その夜、グループの中心人物と目された男性マロイ何者かに殺された…。無関係なグループの悲劇に巻き込まれていくイーデン。アンソニー賞受賞作。

 若者グループたちにとっては邪魔者だったはずのイーデンが、一人一人と関係を深め、彼らの人間関係を解きほぐしていくキーマンとなっていく様はなかなか面白い。「誰も信じるな」というのが謳い文句になっているが、フーダニットというのはそもそもそういうものだと思っているから、とりたてて本作品が目を見開くような展開というわけでもない。日常を離れた行楽地での悲劇というのもオーソドックスな設定だが、それをオーソドックスに楽しめたというのが素直な感想。

No.1 6点 nukkam
(2020/05/28 20:17登録)
(ネタバレなしです) 米国のローリー・レーダー=デイが2020年に発表した本格派推理小説です。主人公で語り手でもあるイーデンは亡き夫が結婚記念日を指定して生前に予約した天体鑑賞ツアーに参加します。もっとも彼女は暗闇恐怖症を抱えており、感傷に浸るどころではありませんが。ハヤカワポケットブック版の巻末解説で「万華鏡の如く移り変わる人間像を描く」ことに主眼を置いたプロットのため物語のテンポは非常に遅く、しかも丁寧過ぎで複雑過ぎる人物描写のおかげか誰が誰だかなかなか把握できません。後半になって色々な事件が起きたり人物関係の歪みが大きくなったり、更にはイーデンの夫のとんでもない秘密が明かされたりと重厚な語り口ながらサスペンスも盛り上がります。犯人を特定する具体的な物証がほとんどない推理は謎解きとして物足りないですがドラマとしてはなかなかの読み物です。

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