(2020/03/10 20:06登録)
(ネタバレなしです) 1998年の一尺屋遥シリーズ第6作の本格派推理小説です。高校生時代の一尺屋が登場し、友人の今御堂蘭と一緒に山道で立て続けに起きた3件の交通事故(3人死亡、1人重傷)の謎解きに挑みます。不思議な交通事故というと高田崇史の「QED 竹取伝説」(2003年)が思い浮かびますが、本書でも事故当時に爆発音を聞いたとか人魂を見たとかの不思議な証言が相次いでなかなか魅力的な謎です。しかしこの謎でプロットを支える自信がなかったのか(まあトリックはユニークですがあれを何度も実行したというのが無茶苦茶です)、13年前に起きた少年の怪死と生き返り(?)、各章(8章まであります)のタイトルは「なぜ」で始まる謎、登場人物たちの複雑な関係や秘密と謎の乱れ打ちで、まとまりを無視して突き進みます。一尺屋の推理は論理的でないだけでなく、間違いを犯人に訂正してもらっている始末ですっきり感がありません。作者は本書以降はあまり目立った活動をしていないようですが、それもやむなしかなと思います。それにしてもハル(遥)やラン(蘭)という人物名で男性、美聖学園という校名で男子校って...いやあまり考えないようにしましょう(笑)。
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