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ミステリの祭典

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nukkamさんの登録情報
平均点:5.44点 書評数:2929件

プロフィール| 書評

No.429 6点 北雪の釘
ロバート・ファン・ヒューリック
(2014/08/18 16:53登録)
(ネタバレなしです) 1961年発表のディー判事シリーズシリーズ第5作で、当初は本書をもってシリーズ終了する予定だったとか。そのためか寂寥感漂うエンディングになっています。謎の一部が他人の力を借りて解決しているところにちょっと不満を憶えましたが、それが劇的な幕切れににつながっているプロット構成は見事です。法廷場面を増やして判事らしい活動が多く描かれているのも本書の特徴です。


No.428 7点 スリー・パインズ村と運命の女神
ルイーズ・ペニー
(2014/08/18 16:18登録)
(ネタバレなしです) 2006年発表のガマシュ警部シリーズ第2作です。デビュー作の「スリー・パインズ村の不思議な事件」(2005年)と舞台は同じ、登場人物も一部共通しています。前作のネタバレはありませんが前作を先に読んでおくことを勧めます。丁寧な心理描写としっかりした人間ドラマが楽しめますが、本格派推理小説としての謎解きも十分に楽しめます。何しろ凍った湖上での感電死なのですから。


No.427 8点 飛ばなかった男
マーゴット・ベネット
(2014/08/18 16:04登録)
(ネタバレなしです) 英国の女性作家マーゴット・ベネット(1912-1980)のミステリー作品は長編8作に短編1作の存在が知られているのみですが、その数少ない作品の1作がCWA(英国推理作家協会)のゴールド・ダガー賞(当時はクロスド・レッド・ヘリング賞と呼ばれてました)を受賞していてかなりの実力者と思われます。1955年発表の本書は記念すべき1回目のゴールド・ダガー賞の最終候補作で、惜しくも受賞を逃しましたがベネットの最高傑作とも評価されている本格派推理小説です。消息を絶った飛行機に搭乗予定だった4人の男。だが搭乗した(らしい)のは3人、名乗り出ない1人は誰かというユニークな謎、さらには物語の大半が回想シーンで占められているユニークな本格派推理小説です。これは明らかにパット・マガーの「被害者を捜せ!」(1946年)や「七人のおば」(1947年)の影響が見られますね。登場人物が個性豊かに描かれており後半になるとサスペンスもかなり盛り上がってきます。推理の論理性ではマガー作品を上回る出来栄えです。新訳で再販して大勢の読者に読んでもらいたい傑作です。


No.426 5点 個室寝台殺人事件
草川隆
(2014/08/18 13:28登録)
(ネタバレなしです) SF作家として活躍していた草川隆(1935年生まれ)が(多分)初めて書いたミステリー作品が1986年発表の本書です。本格派推理小説に分類できますが犯人の正体は早い段階で見当がつき、ハウダニットの謎解きが中心になります。猟奇的犯罪、密室、さらには奇術師登場と派手そうな設定の割には地味な捜査と推理に終始します。しかも密室については実はトリックらしいトリックがなく、密室に期待するとがっかりすると思います(そもそもこれを密室と称してはいけないと思います)。また探偵役が複数(鈴木刑事、下川刑事、そしてある女性)いるのはいいのですが、彼らが全部の謎を解くわけではなく一部は第11章、第12章の犯行再現描写の中で説明されており、これも謎解きプロットとしてはちょっと物足りません。猟奇的事件を扱っていながらグロテスク描写に走らず、登場人物も無用に多くせず読みやすい点はいいのですが作品としての個性が欲しいですね。


No.425 10点 ビッグ・ボウの殺人
イズレイル・ザングウィル
(2014/08/15 16:52登録)
(ネタバレなしです) ロシア系ユダヤ人とポーランド人の間に生まれた英国のイズレイル・ザングウィル(1864-1926)はジャーナリストやシオニスト(ユダヤ民族主義者)としての活動がキャリアの中心でミステリー作品はわずかに本書と短編1作のみですが書かれた時代を考えると本書は驚異的にハイレベルの作品です。現代ミステリーや黄金時代(第一次世界大戦と第二次世界大戦の間)のミステリーを読み慣れた読者には目新しくないかもしれませんが、本書が発表された1891年当時の読者にとっては衝撃のトリック、衝撃の結末ではないでしょうか。冒頭に作者による序文が付けられていますが、「物語の主要部分でデータは全部出しておかなければならない」と、この時代にフェアプレーを意識していたこともまた革新的です。30年後の作品と言っても通用しそうな先進性が際立っています。


No.424 6点 ミステリ講座の殺人
クリフォード・ナイト
(2014/08/15 16:37登録)
(ネタバレなしです) 米国のクリフォード・ナイト(1886ー1963)は米国本格派推理小説黄金時代の1937年にデビューした作家で、ハントゥーン・ロジャーズを名探偵役にしたシリーズ作品を年2作のハイペースで次々に発表しました。1940年代後半に本格派の人気がなくなると非本格派路線へと作風を変えたところは同時代のヘレン・マクロイやパトリック・クェンティンと共通しています。1937年発表のシリーズ第2作である本書を読む限りでは謎解きに関係のない要素は最低限の描写にしようており、例えば探偵役のハントゥーン・ロジャーズは英文学教授という設定なのですが文学に関する話を全くしないのです。同時代のファイロ・ヴァンスやエラリー・クイーンなどやたら文学作品からの引用を連発する探偵とは大違いです。そのためか文章が特に上手いとも思えないのですが回りくどい表現も一切ないため意外と読みやいです。冒頭で「29の手がかり」があることを宣言し、巻末には手がかり索引を配置しているガチガチの本格派推理小説です。


No.423 6点 大鴉殺人事件
エドワード・D・ホック
(2014/08/15 14:10登録)
(ネタバレなしです) アメリカのエドワード・D・ホック(1930-2008)は短編ミステリーの名手として名高く、その作品数は800を超えるとも言われます。単純比較はできないとはいえ、短編12作を長編1作と換算しても60作以上書いた計算になるので多作家と評価しても差し支えないでしょう。一方長編作品は10作にも満たないそうです。1969年発表の本書はその数少ない長編第1作で、探偵役の名前がハードボイルド小説を連想させるハメットですが、中身は純然たる犯人当て本格派推理小説です。登場人物も多くなく読みやすい作品でした。メインの謎であるダイイングメッセージは謎解きの説得力が強力というわけではありませんが、他にも犯人当ての伏線は用意してあり、際立った特色はないものの安心して読めます。


No.422 5点 ベラミ裁判
フランセス・N・ハート
(2014/08/15 13:41登録)
(ネタバレなしです) 米国の女性作家フランセス・N・ハート(1890-1943)はは全部で4冊ほどのミステリーを書いたそうですが1927年発表のデビュー作の本書が最も名高いです。世界最初の法廷ミステリーとも言われ、エラリー・クイーンやレックス・スタウトが激賞しています。ほとんど全編に渡って法廷場面が描かれていることから日本でも早くから注目され、戦後間もなくの時期に裁判関係者への参考書として翻訳許可を申請して「小説だから」という理由で却下されたという面白いエピソードが残っています。夫が弁護士ということも手伝ってか法廷描写は結構リアルですが物語の流れをスムーズにするよう手続き的な流れなどは適宜省略されており、「裁判記録」ではなくちゃんと「小説」になっています。本格派推理小説に分類できますが被告人が有罪か無罪かを謎の中心にすえているところは異色です。法廷ミステリーの先駆的作品という歴史的価値だけでなく、プロットは緻密で証拠に基づく謎解きもしっかりしていて当時としては高水準のミステリーだと思います。ただ私の読んだ異色探偵小説選集版は旧仮名づかいだらけの古い翻訳であまりにも読みにくく、これからの読者向けには新訳版を出して欲しいです(本当は6点評価にしたいのですが翻訳で1点減点しました)。


No.421 5点 学長の死
マイケル・イネス
(2014/08/15 11:45登録)
(ネタバレなしです) 英国のマイケル・イネス(1906-1994)はオーストラリア、米国、英国で大学教授または準教授を歴任し、シェークスピアなどの文学作品研究者としても活躍したするなどこれぞ知識人というキャリアの持ち主です。ミステリーを書いたのも教授ならば著作の一つもなくてはと考えたのがきっかけだそうで、アプルビイ警部シリーズを中心に40作以上のミステリーを書きました(ちなみに本書の世界推理小説全集版では警視と表記されていますが多分間違いです)。その特色はファルス派と称される破天荒なプロットとユーモア、そして高尚な文学知識が散りばめられた独特なスタイルだそうです。1937年発表のアプルビイシリーズ第1作の本書はデビュー作のためか手堅過ぎるぐらいの文章で書かれており、ちょっと退屈でした(文学知識の方は危惧したほど乱用されていませんが)。第10章なんか後年の作者ならもっとユーモアを混じえて盛り上げたでしょう。登場人物も誰が誰だか整理が大変です。しかしながら第17章の「誤解の連鎖反応」が紐解かれる謎解きはなかなか劇的で読み応えがありました。


No.420 6点 チャーリー退場
アレックス・アトキンスン
(2014/08/15 10:20登録)
(ネタバレなしです) 演劇界との関係が深く舞台俳優や劇作家としてのキャリアをもつ英国のアレックス・アトキンスン(1916-1962)の1955年に発表した唯一のミステリー作品で本格派推理小説です。劇場を舞台にしておりその描写力はさすがと思わせますが大勢の登場人物の整理に苦心しているようなところもあり、同じ劇場ミステリーでもヘレン・マクロイの傑作「家蠅とカナリア」(1942年)と比べると少し雑然としているように思います。しかし劇が進行する中で迎えるクライマックスシーンはなかななかの迫力で、細かい場面切り替えが効果をあげています。謎解き伏線もしっかり張ってあります。


No.419 5点 月蝕の窓
篠田真由美
(2014/08/15 09:52登録)
(ネタバレなしです) 2001年発表の桜井京介シリーズ第8作の本書は講談社文庫版の作者あとがきでも紹介されていますが桜井京介の視点で描かれる場面が多く、もともと社交的な性格でないシリーズ主人公の上に自閉気味になって悩んでばかりなので物語が何度も停滞します。さらにサイコ・サスペンス色を濃くして歪んだ感情描写を多々取り込んでいるのですから読んでて気が滅入ること!これはこれで高く評価する読書も多いでしょうが個人的には肌が合いませんでした。爽やかな読後感を残した「未明の家」(1994年)がとても懐かしくなりました。


No.418 5点 首切り坂
相原大輔
(2014/08/15 09:25登録)
(ネタバレなしです) 相原大輔(1975年生まれ)が2003年に発表したデビュー作で明治44年を時代背景にした本格派推理小説です。最後に明かされるトリック(若竹七海は「お茶目なトリック」と評価しています)はなかなか意表を突いたものですがプロットとの関連がなく、典型的な「トリックのためのトリック」になっています。動機が完全に後出し的説明になっているところも弱点と指摘されるかもしれません。おどろおどろしいタイトルながら直接的な描写がほとんどなく、すっきりした文体でむしろ洗練さを感じさせます。この題材なら島田荘司や二階堂黎人なら怖さや不気味さをもっと強調できたでしょうけどこれは好みの問題で、私は本書程度が読みやすくて丁度よかったです。


No.417 6点 鐘楼の蝙蝠
E・C・R・ロラック
(2014/08/14 18:35登録)
(ネタバレなしです) 1937年発表のマクドナルド警部シリーズ第12作の本格派推理小説です。相次ぐ失踪事件、ついに死体が発見されたと思えば首なし死体と雲をつかむような状況が続きます。マクドナルドの捜査も少しずつ進展はしているのですが、一方で頭のいい犯人に巧妙にミスリードされているのではという不安がつきまといます。退屈ぎりぎりで踏みとどまったのは後半の展開が変化に富んでいることと(演出は抑制を効かせ過ぎという気もしますが)、最終的に5つの仮説を組み立てて犯人に迫るマクドナルドの丁寧な謎解きがあってのものです。


No.416 5点 指に傷のある女
ルース・レンデル
(2014/08/14 18:23登録)
(ネタバレなしです) 1975年発表のウェクスフォードシリーズ第9作で、シリーズ作品としては異色のプロットになっています。犯人の正体は意外と早い段階で見当がついており、決定的な証拠をウェクスフォードたちが捜す展開となっています。最後に驚きの仕掛けを用意してあるのは見事ですが、本格派推理小説として評価するとこれは微妙かもしれません。あらかじめ謎として提示されていたわけではないのですから、巧くだまされたという快感にはつながりませんでした。


No.415 5点 ゴールド2 死線
ハーバート・レズニコウ
(2014/08/14 17:37登録)
(ネタバレなしです) 1984年発表のゴールド夫妻シリーズ第2作の本格派推理小説です。探偵役のアレックス・ゴールドの毒舌がシリーズ前作の「ゴールド1 密室」(1983年)に比べてかなり抑えられているのはいいのですが、その分語り手役(妻のノーマ・ゴールド)がより攻撃的になってしまったような...(笑)。ゴールド夫妻以外の登場人物は個性を感じられないし、謎解きは結構緻密なんですけど細かすぎて却って印象に残りにくくなってしまいました。


No.414 5点 余波
ピーター・ロビンスン
(2014/08/14 17:17登録)
(ネタバレなしです) 2001年発表のアラン・バンクスシリーズ第12作となる警察小説です。私の読んだ講談社文庫版では「英国叙情派ミステリーの傑作」と宣伝されていますが本書の内容をちゃんと読んだのでしょうか?「水曜日の子供」(1992年)では異常性格の犯人を登場させていてもまだ穏健な作風を感じさせていましたが本書あたりになるとグロテスクな場面が赤裸々に描写されているし、特に前半部では喜怒哀楽の「怒」ばかりが突出していてぴりぴりした雰囲気が漂っています。初期作品が持っていた叙情的作風は影もかけらもありません。これはこれで非常によくできた作品で、上下巻合わせて800ページを越すボリュームも苦になりませんでしたがやはり私は初期作品の「叙情性」が懐かしいです。


No.413 5点 六つの奇妙なもの
クリストファー・セント・ジョン・スプリッグ
(2014/08/14 17:02登録)
(ネタバレなしです) スペイン内乱に義勇軍として参加して戦場に散ってしまったクリストファー・セント・ジョン・スプリッグ(1907-1937)の遺作となった1937年出版の本格派推理小説です。不可能犯罪を扱っていますがトリックはさほど感心できず、ちゃんと捜査していたらすぐに見破られていたのではと感じました。またタイトルにも使われている「奇妙なもの」もカー(カーター・ディクスン名義)の「五つの箱の死」(1938年)の謎めいた数々の品物と比べるとインパクトは弱いです。本書の方が先に出版されたのでカーに影響を与えた可能性もありますけど。ヒロイン役に迫り来る危機また危機や犯人の凶悪性の描写などはサスペンスに満ち溢れており、不可能犯罪の謎解きに過度に期待しなければ十分楽しめる内容です。カーよりもルーファス・キングの「不変の神の事件」(1936年)の方が近い雰囲気の作品だと思いました。


No.412 6点 予期せぬ夜
エリザベス・デイリー
(2014/08/14 16:39登録)
(ネタバレなしです) エリザベス・デイリー(1878-1962)はヘンリー・ガーメッジ(ハヤカワポケットブック版ではガーマジ)を探偵役にした本格派推理小説を16冊書いた米国の女性作家です。1940年に本書でデビューした時には既に還暦を過ぎていたという、英国のエリザベス・ルマーチャンドに匹敵する遅咲きです。年下ながら作家としては先輩格のアガサ・クリスティーから「お気に入りの米国作家」と評されていますが、本書の雰囲気はまるで英国の本格派推理小説風で私にとっても好みでした。コナン・ドイルの某作品をちょっと連想させるところがありますがどんでん返しで意外性の演出に成功しています。プロットが後半は事件の乱発で錯綜気味になってしまうのと、ある殺人事件の動機がちょっと納得しづらいのが気になりますがまずまず楽しめる謎解きでした。


No.411 6点 悔恨の日
コリン・デクスター
(2014/08/14 16:16登録)
(ネタバレなしです) 当初は前作の「死はわが隣人」(1996年)をモース主任警部シリーズ最終作とする予定だったのが読者からの抗議が殺到して書き上げられたのが1999年発表のシリ-ズ第13作の本書で、今度こそシリーズ最終作です(未発表の隠し玉作品が出てこない限り)。そういう経緯で書かれるとおまけレベル、下手をすると蛇足的な作品になってしまうのですが本書はいい意味で裏切ってくれました。これは最終作にふさわしいし、内容的にも前作より優れていると思います。シリーズ中かなりの大作となりましたが謎解きプロットはしっかりしていますし、最終作としての演出もばっちり極まっています。作中で「ウッドストック行最終バス」(1975年)のネタバレがあるので最低でもそちらは先に読了しておくことを勧めます。それからハヤカワ文庫版はシリーズ全作を同じ訳者(大庭忠男)で統一していますが、本書の翻訳時には訳者は八十歳を超えていたとか。高齢に加えて緑内障と戦いながらの達成には本当に頭が下がります。これこそプロの仕事ですね。


No.410 4点 ネロ・ウルフ最後の事件
レックス・スタウト
(2014/08/14 15:42登録)
(ネタバレなしです) スタウト(1886-1975)の最後の作品となった1975年発表のネロ・ウルフシリーズ第33作の本格派推理小説です(英語原題は「A Family Affair」です)。作者が最後の作品のつもりで書いたのかはわかりませんが内容的にはシリーズ締め括りにふさわしい趣向が用意されています。但しこの趣向はある程度シリーズ作品を読んでいないとわかりにくいので、できればシリーズ作品を沢山読んでいることを勧めます。謎解きとしては読者に対してアンフェアなのが残念です(例えばソール・パンザーがある手掛かりを説明していますが、あれは普通の読者には手掛かりとして認知できないと思います)。とはいえシリーズファン読者なら読み落とすわけにはいかないでしょうね。

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