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ミステリの祭典

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北雪の釘
ディー判事 別題『中国鉄釘殺人事件』

作家 ロバート・ファン・ヒューリック
出版日1989年06月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2014/08/18 16:53登録)
(ネタバレなしです) 1961年発表のディー判事シリーズシリーズ第5作で、当初は本書をもってシリーズ終了する予定だったとか。そのためか寂寥感漂うエンディングになっています。謎の一部が他人の力を借りて解決しているところにちょっと不満を憶えましたが、それが劇的な幕切れににつながっているプロット構成は見事です。法廷場面を増やして判事らしい活動が多く描かれているのも本書の特徴です。

No.1 6点 mini
(2011/01/10 10:27登録)
寒さ厳しい冬の北辺国境の町、第5番目の赴任地”北州”に赴いたディー判事
当初は娘の失踪事件以外にはこれといった大事も無かったが、別の娘の首無し殺人事件が発生し、さらに起こった毒殺事件に絡み、過去の殺人疑惑まで浮上する

前期5部作の掉尾を飾る舞台は、最後の地方赴任地となった北辺の町で国境警備の軍隊も駐留している
この事件の後、判事は都に召還されて都の要職に就く
後期作には都に戻ってからの事件を扱う巻もあるが、一応前期の一区切りとなる作である
北部国境の町だけに異民族との交易など殺伐した雰囲気なのかと想像していたら案外とのんびりムード
当時の唐は国際的大帝国であり、周辺民族との関係が上手くいっていたのと地方軍隊が強力だったという事なのだろう
唐王朝は結局はこの強大な地方組織による反乱で内部崩壊するのだが、これに懲りたのか後の宋王朝では中央集権の元、近衛軍など内政重視に偏り過ぎて国境軍隊の弱体化を招き周辺異民族によって滅ぼされるのである
したがって唐代だけに異民族の侵入などの緊迫感は無くて、事件の方も極めて民間的な事件である
むしろ国家的大陰謀と言うなら、前期5部作だと「水底の妖」や「江南の鐘」あたりの方が一大事だ
「北雪の釘」は首無し事件という事で興味を引かれる人も居るかも知れないが、こっちは有りがちなパターンであり大多数の読者には真相が見えてしまうだろう
やはりメインは過去の殺人疑惑なのだろうが、これによって判事は窮地に追い込まれるのだが、事件そのものは小粒な感じで、前期5部作の掉尾を飾るにしては大団円ではない
どちらかと言えば悲しい出来事などで余韻の中、判事の地方赴任も幕が降ろされる事になるのである

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