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ミステリの祭典

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飛ばなかった男

作家 マーゴット・ベネット
出版日1957年01月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 5点 蟷螂の斧
(2016/06/07 18:08登録)
回想シーンが長すぎて・・・。結局、物語の前後を逆にしただけのようなもの。

No.2 5点 人並由真
(2016/05/25 14:07登録)
(ネタバレなし)
 英国からアイルランドに向けて離陸後、事故で消息を絶った小型飛行機には、4人の乗客が搭乗しているはずだった。だが離陸前の情報や証言を整理していくうちに、その4人の予定客=詩人のハリー、ブローカーのモーリス、心臓を患ったモルガン、映画館経営者のジョオのなかの「誰か」が飛行機に乗らなかったことが分かってくる。一体、その該当人物は誰か? そしてその者はなぜ姿を現さないのか? 別件の犯罪捜査のからみもあり、警察のルイス警部、ヤング部長刑事は、4人に関係があった宿泊施設「塔のある館」に事情調査に乗り込むが…。

 往年の名ミステリ叢書として知られる、旧クライム・クラブの姉妹編路線・現代推理小説全集の一冊。解説役だった植草甚一の高評もあって人気の高い絶版ミステリゆえ、満を持して読み始めた(本自体は大昔に入手していたのだが)。

 先にnukkamさんが書かれている通り「(犯人ではない)当該者を探せ」という大設定は、まんまマガーの諸作と同様ではある。それで本作の場合、まぁ創意といえば創意があってこの趣向自体は面白い。
 ただ中身の方は存外に地味というか退屈で、本文およそ250ページ(二段組)のうち、序盤を経たのちの5分の3ほどが、飛行機離陸前の時制の日常描写に費やされる。読むこちらとしては当然この描写のなかに、「誰がくだんの人物か」という伏線や手掛かりが忍ばされるんだろうな、と見当はつくものの、そういう前提ありきでこの部分を読み進めるのは、まず目的あっての作業の読書のようでどうにもかったるい。
 登場人物の立ち位置が明確でそれぞれのキャラクター付けがきちんとされており(「塔のある館」の主人チャールズや、その娘のヘスター&ブルーデンス姉妹なども含めて)、翻訳も旧刊にしてはとても読みやすかった、それらの点のは救いだったが。どうせなら、ルイス&ヤングコンビの方を、この中盤部分でももっと前面に出して、事件の謎にくいつく読者と同じ視点で物語を語っていけば、もうちょっとテンションもスピード感も高まったんじゃないかと思うんだけれど。

 それでも終盤の展開、事件の真相は、あぁこうきたか…という感じでちょっと感心。思いがけない方向からの意外性を見せつけるミステリ的な昂揚感は、それなりに味わえる。
 実際のところ、幻の名作とか、その刊行年の年間ベストとか、そういう激賞とは程遠い作品だとは思うけれど、万が一再刊されたら大きな期待をしなければ、現代の読者でもそれなりには楽しめるかもしれない。そういう一冊。
(そう言いながら、翌年にCWAゴールデンダガー賞を取ったという、この作者の未訳の作品が気になってきてもいる。論創あたりで出してくれないかな。)

No.1 8点 nukkam
(2014/08/18 16:04登録)
(ネタバレなしです) 英国の女性作家マーゴット・ベネット(1912-1980)のミステリー作品は長編8作に短編1作の存在が知られているのみですが、その数少ない作品の1作がCWA(英国推理作家協会)のゴールド・ダガー賞(当時はクロスド・レッド・ヘリング賞と呼ばれてました)を受賞していてかなりの実力者と思われます。1955年発表の本書は記念すべき1回目のゴールド・ダガー賞の最終候補作で、惜しくも受賞を逃しましたがベネットの最高傑作とも評価されている本格派推理小説です。消息を絶った飛行機に搭乗予定だった4人の男。だが搭乗した(らしい)のは3人、名乗り出ない1人は誰かというユニークな謎、さらには物語の大半が回想シーンで占められているユニークな本格派推理小説です。これは明らかにパット・マガーの「被害者を捜せ!」(1946年)や「七人のおば」(1947年)の影響が見られますね。登場人物が個性豊かに描かれており後半になるとサスペンスもかなり盛り上がってきます。推理の論理性ではマガー作品を上回る出来栄えです。新訳で再販して大勢の読者に読んでもらいたい傑作です。

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