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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1505件

プロフィール| 書評

No.1365 6点 ディーバ
デラコルタ
(2022/06/11 07:27登録)
小説の他ヨガや禅の本も書いているダニエル・オディエが別名で1979年に発表した作品で、ただDelacortaだけの名前では本作と同じゴロディッシュとアルバのコンビシリーズなど、かなりのミステリを発表しています。ただ邦訳は今のところ本名作も含め、本作のみのようです。本作が邦訳された理由はもちろん、ジャン=ジャック・ベネックス監督による映画化。新感覚フランス映画の開幕を告げたと評判になった映画は、ミュージック・ヴィデオ的なスマートな映像センスが特徴でした。
その原作はというと、映画はうろ覚えですが、明らかに異なるところがかなりあります。ディーバ(歌姫、ラテン語の女神が語源)にあこがれる青年ジュールが一応主役で、2つのテープに関する事件の絡み合わせ方は同じなのですが。でもゴロディッシュはどうしてもR・ボーランジェの表情・口調が頭に浮かびます。ラスト・シーンは映画の方がよかったかなぁ。


No.1364 6点 シンシナティ・ブルース
ジョナサン・ヴェイリン
(2022/06/08 20:52登録)
邦題からもわかるとおりシンシナティに住む私立探偵ハリイ・ストウナーのシリーズ第1作です。訳者あとがきには「オリジナル・タイトルは “The Lime Pit” といい、」としただけで何の説明も付けていませんが、直訳すれば「石灰坑」。どう関係するんだろうと思いながら読んでいったところ、クライマックス部分で実際にそのものが出てきました。
貧しい老人からの依頼を、最初は適当に片付けるつもりだったストウナーですが、行方不明になった少女の写った未成年ポルノ写真(訳者あとがきに制度詳細が載っています)を見て、採算を度外視して本気で事件に取り組むことになります。直接の悪役は最初から明らかで、他に黒幕がいることは早い段階から明かされます。
ストーリーはハードボイルドらしいのですが、ストウナーが事件についてとは限らず様々なことについてやたら思索を巡らしていて、そこはハードボイルドらしくなく、煩雑に思えました。


No.1363 6点 牧逸馬探偵小説選
牧逸馬
(2022/06/04 09:24登録)
目次には34の小説と11編の評論・随筆とが挙げられていますが、さらに短い掌編小説に分割されたものもあるので、実際の小説数は37編になります。その目次より細かく分割された『真夜中の煙草』第1話『舶来百物語―或る殺人事件』は、巻末解題には書かれていませんが、W・F・ハーヴィー『炎天』の翻案です。
あっさりした頭のいい詐欺が好きだという作者らしいユーモラスな短編が多いのですが、そうとは言い切れない『上海された男』の味は、代表作と言われているだけあって、格別です。また、中には読者への挑戦まである1927年発表の『東京G街怪事件』の他、『砂』、『十二時半』、『碁盤池事件顛末』など謎解きタイプもあり、ホラー系もあります。創作篇の最後に収められた『七時〇三分』はH・ホーン原作の『競馬の怪談』を中編化したものですが、タイムパラドックス領域に踏み込んでしまったため中途半端になったように思われます。


No.1362 7点 幽霊の死
マージェリー・アリンガム
(2022/06/01 20:50登録)
タイトルの意味がよくわからない小説です。事件の大元となると言ってもいい高名な画家は既に死んで何年にもなりますが、その幽霊が出るとかいうこともありません。比喩的な意味ではあるのでしょうが、あいまいで、作中で「幽霊」という言葉が出てくるわけでもありません。
最初のうちはフーダニットな感じなのですが、第2の殺人が起こった直後、全体の半分過ぎあたりで、キャムピオン氏(こう表記されています)は犯人が誰であるか悟ります。その後間もなく死因がはっきりした段階で、彼はオーツ警部に自分の考え(推理というほど確たるものではない)を語るのです。で、それからは動機が問題になり、その動機も判明すると、最後はキャムピオン氏と犯人との対決というサスペンス調になる、ちょっと変わった構成です。一貫性がないと言う人もいるかもしれませんが、個人的には気に入りました。


No.1361 6点 廃墟の歌声
ジェラルド・カーシュ
(2022/05/26 23:43登録)
カームジンもの4作は角川書店の『犯罪王カームジン』の収録作と重複しているので、残りは表題作等9編ということになります。で、通読してみると、カームジン以外で純粋なミステリと言えるのは(カームジンものでも1編はファンタジーですが)、半分以下です。しかし、SF・ファンタジー・ホラー系でも、ミステリ的な謎解きや意外性を持った作品は多いです。
最初の表題作は、廃墟アナン(原題は “Voices in the Dust of Annan”)の描写が始まった時点でオチの見当はついてしまったのですが、伏線をきっちりと張って、「私」がどうなるかは予測できませんでしたが、味わいのある結末にしています。『ミス・トリヴァーのおもてなし』は、今昔物語にもありそうな結末ですが、この後に『飲酒の弊害』(冒頭部分に注目)を持ってきた編集は、狙ったのでしょう。編集といえば、最後は表題作との対応で『魚のお告げ』にした方がよかったかもしれません。


No.1360 5点 修験峡殺人事件
水上勉
(2022/05/23 23:17登録)
1961年に『黒壁』のタイトルで発表された作品を、なんと20年以上後の1982年に大幅に手を入れて改題したものだそうです。象徴的なタイトルが、流行のトラベルミステリっぽいものに変っても、中味はやはり水上勉らしい、地方の風俗、風景が印象に残る社会派作品です。
「通産省の出店のようなもの」である近畿地方公益事業部の土木担当課長が行方不明になるのが発端で、その課長が死体で発見される第3章以降(全15章)は、ほぼ警察官の視点から書かれています。水上勉作品にはよく警察に協力する民間人が登場しますが、本作の殺された課長の部下甲斐は、最後にほとんど名探偵っぽい説明を、刑事にしてくれます。でもこれは、近畿の数県の刑事たちが調査結果を持ち寄って真相に迫っていく過程を描いた方が良かったようにも思えます。
しかし、この作家には珍しくダイナミックな迫力のあるクライマックスはなかなかのものです。


No.1359 6点 やくざの帰還
ミッキー・スピレイン
(2022/05/20 23:37登録)
収録中編2編のうち。表題作はライアンの一人称で語られる、『おれはやくざだ!』の続編です。長編ではご存知マイク・ハマーの他タイガー・マンのシリーズがある作者ですが、中短編では同じ主役を使ったものは他にはないようです。前作についても多少触れられていますが、話のつながりはありません。前作の訳は井上一夫の一人称を「わたし」としたかっちりした文章だったのに対し、本作の久保順訳は「おれ」で、「喰うことにしたんだな。」とか「全くいいや。」とか、さすがにくだけすぎかなと思えます。ポケミス100ページほどの中に、様々な要素をつめこみ、誰が誰やらわからなくなるようなところもありましたが、次から次へと人が殺されていくスピード感はなかなかのものです。
『私生児バナーマン』は表題作ほど目まぐるしくはありませんし、訳文も少しおとなしめ。悪役の正体が明かされた後の意外性は、本作ではうまくきまっていると思いました。


No.1358 6点 雲なす証言
ドロシー・L・セイヤーズ
(2022/05/17 20:42登録)
ウィムジイ卿の第2作は、今までに読んだ後期3作と比べると、翻訳のせいもあるかもしれませんが、文章が気取りすぎと思えました。特に最後の方、重要証拠のかなり長い手紙全文をフランス語で書き、その後に訳を付けるという、そんな必要があったのでしょうか。翻訳文ではそれ以前、パーカー警部がパリで調査を進める部分なども、わざと堅苦しい言い回しに訳した意味がわかりません。
もう一つ、事件が解決した後の夜のウィムジイ卿等の酩酊ぶりは、ライスのマローン弁護士だってこれほど酒癖が悪くはないだろうと思えるほどで、何なんだこれという感じ。
しかし、ウィムジイ一家を襲った事件の顛末自体はおもしろくできています。ホームズをも思わせる現場検証、ウィムジイ卿が命の危険にさらされること2回、手がかり提出手順も悪くないですし。もう少し真相の意外性が出るよう構成を工夫した方がよかったかなとも思いますが。


No.1357 5点 報復の密室
平野俊彦
(2022/05/11 20:58登録)
2020年度の第13回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞した作品で、完全に「本格派」な作品です。
薬学部教授の一人称形式で語られますが、作者自身が薬科大学の教授で、熟知した世界を舞台にした作品になっています。巻末の選考評で、島田荘司はプロットを褒めながらもかなり文章表現に文句をつけていますが、確かにあまり文章表現の達者な人とは言えません。たとえば冒頭部分ももっとドラマティックにできたと思います。でも、理科系の先生のデビュー作なのですから、いいとしましょう。最後の部分は大仰な感傷性がうまくはまっていると思います。
最初の教授の娘の殺害事件については、密室構成方法をすぐ二つ思いついたのですが、どちらもありふれたもので、警察がそれについて何の調査もしないはずがありません。そこが全体構成的には弱点ですが、第2の殺人の密室トリックは意表を突く方法でした。


No.1356 6点 虎狼
モー・ヘイダー
(2022/05/08 08:44登録)
原題は邦題以上にシンプルに "Wolf" ですが、ポケミスで約450ページと長い小説です。まあ、この作家にはもっと長大な作品も多いようです。また、あらすじから残酷で読むのがしんどい展開かと危惧していたのですが、実際には文章は読みやすく、予想よりかなり早く読み終えてしまいました。
科学者一家の別荘で起こる拘禁事件と、そこから逃げ出した小犬の持ち主を探すキャフェリー警部の部分とをカットバックしていく手法で書かれています。
巻半ば、拘禁者たちの立場から書かれた部分で、彼等の依頼者について明かしてしまっているのには、構成的に疑問を感じたのですが、クライマックスを迎えてみると、なるほどと納得させられました。犯人たちの企みが、このタイプの作品の定番パターンを覆す結末を生み出していて、うまくまとまっているのです。
ただ、キャフェリー警部の幼少期のトラウマに根差した突飛な行動には閉口しました。


No.1355 6点 Le rapport du gendarme
ジョルジュ・シムノン
(2022/05/03 17:47登録)
原題の意味は「憲兵の報告」。
田舎のかなり裕福な農家を舞台にした作品です。ロワ家の前の道で、見知らぬ男が自動車に轢かれて重傷を負っているのが発見されます。男はしばらく意識不明のままなのですが、彼はロワ家の住所が書かれた紙を持っていました。たぶんポケットから落ちたその紙を、ロワ家の主婦ジョゼフィーヌがこっそり拾い上げるのを見た憲兵のリベルジュは、疑惑を抱き、報告にもそのことを書きます。
男は何者なのか、そこに来た理由は何なのか、また誰に轢かれたのか。普通なら、その謎解きが中心になるでしょうし、実際最後までにはそれらの問いにも答は一応用意されているのですが、それよりもその男がロワ家で介抱されることになったことがきっかけで、疑心暗鬼がロワ家を包み、最後にはとんでもない事態になってしまうという、シムノンの中でも特に後味の悪い結末の作品です。


No.1354 6点 熱愛
香納諒一
(2022/04/29 10:20登録)
香納諒一は『心に雹の降りしきる』を読んだ後、ハードボイルドとは言えないものが2作続きました。本作はというと、主人公の鬼束は一応刑事くずれの私立探偵ですし、やくざの世界がかなりリアルに描かれてはいるのです。しかし「ミスター」と呼ばれる謎めいた超一流の殺し屋が出て来るというのが、それはそれでおもしろいのですが、ハメット・タイプとは違うという気がします。このゴルゴ13みたいな殺し屋の素顔は、かなり早い段階で明かされます。ただ、最後にひとひねりしてはありますが。
自動車の中で組長の「馬鹿息子」の銃が暴発し、ミスターの秘密を聞き出そうとした相手が死んでしまうという、あほらしいとも言えるようなシーンから始まる話です。ところが鬼束がこの馬鹿息子と、さらに彼の引きこもり的な弟との絆を深めていくところが、なかなか感動的なラストにつながってきます。


No.1353 6点 眼の壁
マーガレット・ミラー
(2022/04/26 20:32登録)
翻訳本(1998.4.1初版)としてなら、2点がせいぜいだと思えました。翻訳日本語の文章が稚拙なだけでなく、ひとつの文の途中で突然改行されたところ(p.276等)だとか、明らかな誤植が何箇所もあって、校正が甘すぎます。そんなわけで、原作は本作の2年後に出版された『鉄の門』の格調高さとはかけ離れた文章には憮然としながらも読んでいったのですが。
ストーリーそのものは、殺人がかなり早い段階で起き、後はその捜査が中心になるというほとんど本格派タイプで、この作家に期待するものとはちょっと違うところがありますが、なかなかおもしろくできていました。サンズ警部が警察官としてはエキセントリックすぎるようにも思えますが。
松本清張に同じタイトルの作品がありますが、清張の方がその抽象的な意味が最後に説明されるのに対し、こちらは第1章から、具体的な感覚として示されます。


No.1352 5点 共鳴
イアン・バンクス
(2022/04/19 20:41登録)
全英で「ベストセラー・リストのナンバー・ワンに輝いている」そうですが、正直なところ前半はこれのどこがいいんだ、という感じでした。不満だったのは主人公の新聞記者キャメロン・コリーの一人称で語られる彼の日常です。巻末解説では「ゴンゾー(Gonzo、解説では「ならず者」と訳している)・ライフ・スタイル」としていますが、ならず者という積極的なワルではなく、単なる臆病なぐうたらです。そんな男が、酒を飲んで、マリファナをやって、パソコン・ゲームをして、自慰して、寝た、といったことをだらだら書いた日記にすぎないとしか思えませんでした。
まあ、原書ではYouの二人称形式で語られているらしいシリアル・キラー視点部分は、原文で読めば「犯人=読者」の味を楽しめたのでしょうか。殺人動機が誰でも思いつきそうなものなのが、かえって共感をよびそうですし、コリーが逮捕されてからはさすがにおもしろくなってきます。


No.1351 6点 探偵三影潤全集1 白の巻
仁木悦子
(2022/04/16 08:19登録)
私立探偵三影潤ものの作品を集めたこの第1巻は、シリーズ唯一の長編『冷えきった街』、及び『白い時間』『白い部屋』の2短編を収めています。
三影潤は以前大きな探偵社に勤めていたのが、友人の桐崎と一緒に独立したという設定で、現実的な私立探偵ではありますが、『冷えきった街』(初出1971)を読んでいくと、コンチネンタル・オプ由来の一人称形式ですし途中格闘シーンもありますが、最初のうちハードボイルドらしい感じはしませんでした。事件の起こる邸宅の見取り図が載っていたりして、やはりパズラー系の雰囲気が濃厚です。しかし後半に入り、三影の過去が語られ、竪岡家の過去の事件の様相が明らかになってくるあたりから、ロス・マク(後期)っぽくなってきます。そんな作品としては、真相はなかなか味わい深いものになっていました。
2短編はさらにパズラー寄りで、特に『白い部屋』はほとんどベッド・ディテクティヴです。


No.1350 8点 はなれわざ
クリスチアナ・ブランド
(2022/04/13 20:30登録)
原題を直訳すれば、鮮やかな手際のはなれわざと言うより、豪快な力業です。"Tour de FORCE"(フランス語)ですからね。ちなみに離れ業に相当するのは Tour d'adresse。
クリスティーの『白昼の悪魔』と比較している人もいますが、それはあくまで舞台設定が共通するというだけのことで、事件経過や真相は全く異なります。あ、でも同じアイディアをひとつだけ利用していましたか。それより、クイーン30年台の某作と、犯人隠匿アイディアでは共通するものを感じました。本作の方が大胆な使い方で、その可能性は何となく頭にちらついていたものの、やられたなあと思える落とし方にしています。
ただ、初期傑作群と比べると、最終段階に入ってからのダミー解決つるべ打ちではなく、様々な仮説がコックリル警部もまじえてじっくり検討される構成になっているため、多少盛り上げ感に欠けるとは言えるでしょうか。


No.1349 8点 雨のやまない夜
サム・リーヴズ
(2022/04/10 08:01登録)
シカゴのタクシー・ドライバー、クーパー・マクリーシュのシリーズ第2作は、第1作よりハメット寄りのハードな内容になっていました。クーパーは恋人ダイアナが巻き込まれた事件の解決に奮闘することになります。戦うべき相手は最初からわかっていて、フーダニット的な要素はほとんどありません。「ほとんど」と言うのは、最後にちょっとした意外性があるからです。早い段階から気にはなっていた点ではあったのですが。
しかしアクションやサスペンスがすぐれているというだけではなく、プロットもなかなか工夫されています。冒頭部分でクーパーと知り合う老人とか、トリニダードからやって来るセシルとか、特に後者は事件関係者の知り合いではあるものの、どう事件に絡んでくるのかといったところ、よくできています。二人の最終的扱いは、何となく逆になるのではないかと予想していたのですが、文句はありません。


No.1348 6点 ファントム・ピークス
北林一光
(2022/04/04 23:28登録)
映画『CURE』等の黒沢清監督による文庫版巻末解説を読むと、作者は元映画宣伝会社に勤めていたそうですが、その中でスピルバーグの良さも語られていて、同監督作品名は一切出てきませんが、本作を読んでみるとプロローグから明らかに『ジョーズ』の山中バージョンだとわかります。『ジョーズ』と違うのは、半ばまで長野県の山に出没するそいつの正体がわからないことで、実在の動物かどうかさえ不明です。
まあ、正体そのものには意外性はないですし、伏線はあからさまですが、どこからそいつが現れたのかは工夫されています。実際のところ、後半はエスカレートしていくパニック・シーンと、そいつの出自捜査とが並行して描かれていくことになります。さらに最後の「対決」部分もうまく考えられています。そのような意味でミステリ的興味をも兼ね備えた…ホラーと言うかサスペンスと言うか、そんな作品です。


No.1347 6点 ディミティおばさま幽霊屋敷に行く
ナンシー・アサートン
(2022/04/01 20:58登録)
このシリーズ第6作では、ディミティおばさま以外にも(たぶん初めて?)幽霊が登場します。いや、登場というほど明確な形にはなっていないでしょうか。ロリが幽霊は怖くないと言うのも、おばさまを知っていれば当然。この設定でおばさまをどうやって登場させるのだろうと疑問を感じながら読んでいたのですが、その疑問を忘れたころになって、そう来ましたかというところです。
幽霊屋敷といっても、実際にはカーのようなタイプのところもあり、幽霊は本物なのかどうかが問題になります。また、プロローグではロリの車ががけ崩れに合いますし、秘密の通路が出てきたり、最後には他の登場人物ですが戦闘アクションもあったりということで、これまで読んだ3冊の中では最もコージーらしくない、サスペンス色の強い作品になっています。真相がまた意外というか、ほのぼの系からは程遠いもので、驚かされました。


No.1346 5点 ハニー誘拐事件を追う
G・G・フィックリング
(2022/03/29 21:01登録)
ハニー・ウェストのシリーズ第3作は、深夜ハニーが事務所に現れた男に拳銃を突き付けられ、服を脱げと脅されるシーンから始まります。すぐに男の言葉は、別の服に着替えさせるのが目的だとまともな説明がつけられますが、そんなまず読者を驚かせておいて、という趣向が全編にわたって繰り返される作品です。以前読んだのはシリーズ第8作だったので、少しは落ちつきが出て来ていたということなんでしょうか。本作はともかくむりやり危機一髪連続展開にしてしまおうという意欲ばかりが目立ちます。正当防衛も含め、殺される人の数もやたら多いですし、ハニー自身ずいぶんひどい目に合わされます。
誘拐事件の真相については、意外ではあるのですが、ハニーを巻き込むことになったそもそもの理由には、必然性が全くありません。他にもご都合主義だらけではあるのですが、読んでいる間はそれなりに楽しめてしまいました。

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