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ミステリの祭典

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壁-旅芝居殺人事件
別題『旅芝居殺人事件』

作家 皆川博子
出版日1984年09月
平均点6.75点
書評数4人

No.4 7点 虫暮部
(2024/07/18 11:41登録)
 語り手が無味無臭で、重要な立場の割に部外者っぽい気分(名前が最後まで覚えられなかった)。そのせいで単なる好奇心からフラフラと探偵役じみた行動をしている、と思ったらラストの反転が効いた。
 登場人物の気持を非常に技巧的に扱っているなぁ、心理劇系かぁ、と読み進めると、存外に謎解き的な真相。しかし “ちょっとレコードのところにお行き” の台詞が後出しなのは如何なものか。

No.3 7点
(2022/07/21 23:53登録)
文庫本で本文150ページ程度であるにもかかわらず、北方謙三の『渇きの街』と共に日本推理小説作家協会賞の長編賞を受賞した作品。双葉社版の巻末解説では、選考委員たちがそろって文章を絶賛したことが書かれていますが、確かに独特な雰囲気を持った文章です。その文章ゆえというところもあるでしょう、1984年に発表された作品ですが、もっと古めかしい感じを受けました。もちろん旅芝居一座と芝居小屋という、昔ながらの芸能を題材に採り、さらに15年前の事件を絡めているせいもあります。作者の言葉によると、本作を構想するまで旅芝居については全く知らなかったそうですが、とてもそうは思えないほど、その古風な世界が感じられます。
謎解き的にも鮮やかな反転を見せてくれますが、ただ1点、15年前の事件のきっかけになった蘭之助の心理だけは、説得力を持った説明がつけられていないと思いました。

No.2 6点 蟷螂の斧
(2017/08/20 21:59登録)
裏表紙より~『芝居小屋桔梗座の最後の日、特別出演をした役者の立花が四綱渡りで落ち死んだ。そして奈落からは絞殺死体が発見される。じつは15年前の桔梗座でも、落下事件があり、奈落で殺人が起こり、役者が一人姿を消していた。小屋主の娘・秋子が時を隔てて起こった事件の真相に迫る。』~
第38回(昭和60年)日本推理作家協会賞作品。160頁の中編ですが、少し苦労しました。芝居用語、特に奈落の構造がいま一つ頭に入ってきませんでした(苦笑)。ラストのオチは「お初」かもしれません。推理小説としては初期の作品で、皆川ワールド(幻想的雰囲気)がまだ表現されていなかったですね。

No.1 7点 nukkam
(2012/09/12 17:32登録)
(ネタバレなしです) 1984年発表の本格派推理小説で、サブタイトルだった「旅芝居殺人事件」が後年の出版ではメインタイトルに昇格しています。幻想的作風と本格派推理小説の謎解きの融合は非常に難しいのですが、本書はもやもやした雰囲気と謎解きのすっきり感の両立に成功したと言えると思います。推理説明は決して論理的ではありませんが説得力は強く、ほとんどの謎が解き明かされてから最後はまたもやもや感が強まって終わってしまうのですが、本書の場合はそれもありかなと納得しました。

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