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ミステリの祭典

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転生の魔
私立探偵飛鳥井シリーズ

作家 笠井潔
出版日2017年10月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 ぷちレコード
(2023/02/11 22:29登録)
2015年、動画共有サイトで安保法案デモを見ていた山科三奈子は、群衆の中に43年前に姿を消した友人のジンと瓜二つの女がいることに気づき、その捜索を飛鳥井に依頼する。
70年代に青春時代を送った若者が現代の日本の闇を体現する存在になるプロセスには、戦後史を問い直す視点がある。何より、探偵も依頼者も還暦を過ぎ心身の衰えと病気に苦しみながらも過去と向き合い、奇怪な謎を解こうとする展開そのものが、少子高齢化が進む日本の戯画に思えた。
さらに作中では、政治に無関心な日本人が増えた理由、左翼過激派とイスラム原理主義の接点といった社会思想も議論されていく。本書は、これまでの問題意識を小説で表現した到達点なのである。

No.1 6点
(2022/08/22 23:20登録)
私立探偵飛鳥井のシリーズ、2017年出版の本作では飛鳥井も年齢が60歳後半になっています。長編としてはこれが2冊目ということですが、中短編に比べると、かなり注釈的な文章が多いと思いました。
その注釈的文章で、飛鳥井が依頼された人探しの元になった事件の起こった1972年の大学の状況が綴られていきます。探すべき人は、現代のネット動画に映っていた女で、依頼人が1972年当時知っていたジンと呼ばれる女と年頃からほくろまでそっくりだというのです。その女を見つけるのが無理なら、ジンを知っているはずの男。ジンは何度も転生を繰り返してきたと言う上、密室状態の大学のサークル棟から消えたというのですから、現象的にはほとんどカー(特に『火刑法廷』)です。ただホラー的な感じは全くしません。真相には、カーのような鮮やかさはありませんが、そもそもジャンルが違いますから、まあいいでしょう。

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