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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1515件

プロフィール| 書評

No.775 6点 蟻の木の下で
西東登
(2015/03/07 11:20登録)
1964年の乱歩賞受賞作ですが、論理やトリックを期待して読むと、がっかりするでしょう。序章は一応伏線になっていますが、情報不足で読者にはその意味は絶対わかりません。その後第1章から登場する人物は素人探偵役のように見える展開ですが、途中であっけなく覆されます。新興宗教の会員が付けているバッジが手がかりになりそうなのですが、これも事件とは全く無関係で、ただその新興宗教を出してくるために無理やり現場近くで発見させただけのご都合主義です。ヒグマが殺したのかどうかなんて、偶然の土砂降りがあっても、検死でわかるはず。
とまあ、ミステリ構成上の欠点はずいぶんありますが、作者の狙いは戦時中の軍隊での非人間的な軍曹と、金こそご本尊としか思えない新興宗教を描くことにあったわけで、社会派的な事件の骨格自体は悪くないですし、そのテーマを描く中盤は迫力があります。最後が駆け足になり過ぎたことが残念。


No.774 8点 眠れる美女
ロス・マクドナルド
(2015/03/03 21:48登録)
冒頭の、本作の悲劇的ヒロインとも言えるローレルが石油まみれになったカイツブリを抱いているシーンが印象的です。そのカイツブリは水鳥の一種ということしか知らなかったので調べてみたら、湖や沼地に生息することが多く、見た目にはカモ系みたいですが、動物学的にはフラミンゴに近いそうで。
ローレルの失踪事件が誘拐事件らしき様相を呈してきて、さらに一見無関係な人物の死へと続いていくストーリーは、ロス・マクらしい複雑な人間関係を少しずつ暴き出していきます。偶然と思われていた複数の出来事が必然的なつながりを持つことがわかってきて、過去の事件が明るみに出てきて、と疑問の多い事件を収束させていく手際はやはりうまいものです。そして最後には疑問を抱く暇もないほどの連続どんでん返し早業で締めくくってくれました。そんな意外性を出す技巧が悲劇性を損なっていないところ、さすがです。


No.773 6点 サクリファイス
アンドリュー・ヴァクス
(2015/02/26 00:15登録)
バーク・シリーズの第6作は、第1期最後の作品と言われています。以降のシリーズがどうなるのかは、知らないのですが、本作では以前の作品の登場人物たちがかなり回想されています。またヴァクス自身作家になる前にそれが専門の弁護士だったという子ども虐待のテーマが明確に打ち出された作品です。
一方、最後に派手なシーンはあるものの、既読の『フラッド』『ブルー・ベル』に比べるとハードさが減退しているのが少々不満。
タイトルが登場人物の名前でないのは今回が初めてですが、内容とそぐわない気もしました。「犠牲」とは何らかの、特に神聖な(Sacred)目的のために捧げられたものだと思うのですが、今回バークが守らなければならない少年ルークは犠牲者(Victim)ですし、ヴードゥー教のクイーンが作品に宗教的な色彩を与えてはいますが、悪役のエセ黒魔術の視点にはそんな高尚な思想など全くありません。


No.772 5点 西尾正探偵小説選Ⅰ
西尾正
(2015/02/22 12:48登録)
13編の短編と評論・随筆を収録しています。
小説デビュー作『陳情書』は、合理的な説明もできそうなのに、あえて不思議さをそのまま放置したような、とりあえず怪奇探偵小説と呼べる作品です。同じ手を別の形で使った『床屋の二階』、さらに代表作の一つと言われるだけあって不気味な雰囲気はずばぬけている『海蛇』もホラーないし幻想系。その3作も超常現象そのものよりもそれに捉われた異常心理に重点を置いているのが、作者の持ち味なのでしょう。これも代表作の『骸骨』、その他『土蔵』『青い鴉』『めつかち』等も大雑把に言えば異常心理を扱った作品です。巻末解題で定住していたのか避暑に訪れていたのか不明確だとしている鎌倉を始めとして、海岸沿いの町を舞台にした作品が多いのですが、海水浴場の明るさからは程遠い、陰鬱な雰囲気が特徴です。
一方ひねりすぎの『打球棒殺人事件』『白線の中の道化』では作者の野球ファンぶりを見せてくれます。


No.771 5点 カブト虫殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2015/02/17 23:39登録)
作者の代表作と言われる直前の2作が派手な連続殺人だったのに対して、今回は地味なじっくり型という印象です。事件に関連する古代エジプト学についての薀蓄もたっぷり披露されていて、古典的な風格があり、ヴァン・ダインらしい重厚感に満ちた作品と言えるでしょう。一方謎解き面では、犯人が仕掛けるメイントリックは、本作の10年ほど前に書かれたイギリス有名作家のアイディアの焼き直しです(ヴァン・ダインはその作品を読んだことを公言しています)。しかし原案の方がそれ以外のアイディアも盛り込まれて意外性演出に工夫が凝らされていましたし、本作の方が狙い実現の確実性が劣ると思えるのでは、後発の意味がありません。
なお、タイトルの「カブト虫」とは実際の昆虫(Beetle)ではなく、Scarab。井上勇氏の訳ではスケラブとしていますが、普通はスカラベと表記される、古代エジプトで使われていた甲虫型の印章のことです。


No.770 5点 死の記憶
トマス・H・クック
(2015/02/14 11:36登録)
トマス・H・クックの記憶シリーズ第1作…というより、本当に「記憶」に相当する言葉が原題に含まれているのは、本作 “Mortal Memory” だけです。
文学性豊かだとか重さがいいとかいう意見が多いようですが、正直なところ、むしろ現在の「私」の態度、愚かさにあきれた作品です。そのうちばれるに決まっている嘘を無自覚に(病的な嘘つきではないにもかかわらず)つき続けますし、S・キングの『デッドゾーン』の透視能力者じゃあるまいし、体験していない過去の出来事を勝手に「見た」と思い込みますし。
その「私」の愚行が間接的原因で起こる悲劇も、その後の「私」の執念の原動力になっていると言えなくはないのですが、必然性はあまりありません。
一家に起こった過去の惨殺事件を少しずつ暴いていく過程や、ラストで明らかにされる真相はよかったのですが、もう少し違った書き方はできなかったものかと思ってしまいました。


No.769 7点 死のある風景
鮎川哲也
(2015/02/09 22:07登録)
角川文庫版巻末解説で河田陸村氏は、鮎川哲也と海外の巨匠たちとの関係、比較を書いていますが、その中でクロフツについては、あえて違いを述べています。鮎川の場合にはクロフツと違って、地名が日本人にとってお馴染みだというのがその趣旨ですが、これは読者の側の違いにすぎないでしょう。それよりも、鮎川はむしろクロフツ流の、1人の警察官(主にフレンチ警部)が思いつきを地道に検証していく、その捜査過程で読ませる作家ではないと思えます。本作でも、聞き込み捜査は何人かの刑事が行っていて、鬼貫主任警部の出番は全13章のうち1章だけです。
さらに本作では第1章の自殺事件が、その後の殺人とどう絡んでくるのかという構成的な興味もありますが、そのような構成の意外性は、私が今まで読んだ限りではクロフツ作品にはありません。まあ、本作でもその結び付きを最後まで引っ張るわけではなく、途中であっさり明かしてしまいますが。


No.768 6点 復讐は俺の手に
ミッキー・スピレイン
(2015/02/06 21:19登録)
悩める探偵といえばまずクイーンを思い浮かべますが、本作ではマイク・ハマーは過去の事件を思い出してかなり悩んでいます。とは言っても、スピレインですからクイーンみたいなマジな重さはなく、白々しい感じもしますが。思い出しているのは『裁くのは俺だ』のラスト・シーンなので、あのデビュー作の結末を踏まえた上で、どうひねりを加えるつもりなのかと思っていたら、こう来ましたか。最後の3ページぐらいで思いがけないことを起こしてくれます。その時点で、発表当時の常識、しかも作者の発想を考えれば、当然そうだろうと想像できるのですが、これまたクイーンばりに最後の1行でタネを明かしてみせる技巧まで使うとは、驚きでした。
そんな意外性演出以外にも、冒頭の事件でハマーが私立探偵の免許を取り消され、私立探偵の資格を持っているヴェルダを表に立てて捜査を続ける構成など、なかなか楽しめました。


No.767 8点 ハリウッド警察25時
ジョゼフ・ウォンボー
(2015/02/01 14:00登録)
ドキュメンタリー風警察小説と犯罪小説とのミックスとでも呼べばいいのでしょうか。
単なるちょっとした喧嘩なども含め、ハリウッド警察が扱う様々な事件をパトロール警官や刑事たちが処理していく様子が描かれていて、最初のうちはミステリとは呼べないとも思えるほどノンフィクション的です。しかしこのエピソード羅列が、ユーモアもありなかなか楽しいのです。10人を超えるパトロール警官が登場しますが(登場人物表の約2/3が警察官)、それぞれの個性がしっかりと描かれています。まあ始めのうちはさすがに名前が覚えられず少々混乱しましたが。
それでも、早い段階からメインとなる事件は犯罪者の側から書かれた部分が所々に挿入されていきます。これも最初は大した事件になりそうにもなかったのが、どんどん話が大きくなっていき、いつ警察に尻尾をつかまれてしまうかというサスペンスもあります。ラストの感動部分も含め、非常に楽しめました。


No.766 5点 奥信濃殺人事件
中町信
(2015/01/27 21:38登録)
プロローグは、何か仕掛けてあることは明らかで、しかしエピローグを読んでなるほどと感心させられる1文が含まれていました。
ひなびた温泉で起きる毒殺事件、さらに東京の病院での殺人と続く中盤までは、あまり興味の持てない展開でした。フーダニットであるにもかかわらず、関係者の数は極端に少ないのです。さらにローレンス・ブロックや水上勉の後に読むと、小説としてのうま味がありません。
しかし、証言をしなかった理由について、「私が疑われてしまうからです」とある登場人物が語るあたりから、謎解きの興味がふくらんできます。それ以前にも、別の人物が口にしたあるセリフや、恐喝とは信じられないといった謎もあるんですけれど。そして最後には毒殺の経緯や密室の逆転発想などさすがにトリックに対するセンスの良さは感じさせてくれました。ダイイング・メッセージはかなり苦しいですけど。


No.765 6点 冬を怖れた女
ローレンス・ブロック
(2015/01/24 21:58登録)
マット・スカダーは簡単に「アル中」と分類されてしまうことが多いようですし、本作の作品紹介にもそう書いてありますが、実際に読んでみると、こんなセリフが出てきます。「あなたはアル中なの?」と聞かれ、スカダーは「私はアル中といってもおかしくないくらい飲んでる。でもそのせいで何もできなくなるということはない」と答えているのです。さらに飲むのをやめるか量を減らすことについても、「できると思うよ。理由があれば」と言っています。で、本作の中ではまさにその理由も発生するのです、それがTetchyさんも書かれている依頼人の奥さんとの事情。それにもかかわらず、最後には…
嫌われ者の警察官が容疑者となった娼婦殺しの事件については、犯人は見破れなかったのですが、たいして意外とも思いませんでしたし、動機的に今ひとつすっきりできませんでした。しかし事件解決後の出来事には驚かされ、また考えさせられました。


No.764 6点 紐と十字架
イアン・ランキン
(2015/01/19 21:58登録)
シリーズ名はリーバス警部となっていますが、このシリーズ第1作ではリーバスは部長刑事です。
巻末解説に載っているランキン自身が語った2点は、どちらもなるほどと納得できるものでした。1つ目は本作を発表した時、シリーズ化するつもりは全くなかったことです。確かに事件の内容はリーバス個人の過去と密接に結び付いたものであり、シリーズで毎回この手を使うわけにはいきませんから、当然と言えるでしょう。もう1つはJ・エルロイから影響を受けたということで、解説では『黒と青』をエルロイの『ブラック・ダリア』と比較していますが、本作は最近読んだエルロイの第1作『血まみれの月』(本作の3年前、1984年発表)に、事件内容や主人公と犯罪者との関係(ジキルとハイドを別の人物とする)など、かなり似ているのです。
最後があっさりし過ぎかなとも思うのですが、とりあえずこの点数で。


No.763 5点
水上勉
(2015/01/15 20:54登録)
ずいぶん以前に読んだ時には、つまらないと思った作品でした。
今回再読してみても、作者の代表作と比べるとやはり平凡な印象はぬぐえません。初読当時に感じた空手の扱いに対する不満は、けなすほどでもなかったと思い直したのですが、この作者にしては意外に謎解き的な骨格になっているだけに、かえってアイディアの平凡さ、蓋然性の弱さが気になってくるのです。最終章の表題でもある「耳はなぜ落ちていたか」については、誰でもすぐある仮説を思いつくでしょうし、またその答に、蓋然性の面で弱点があることにも気づくでしょう。
しかし一方で、昭和30年代の安保反対も含めた労働争議状況の描写については、さすがに迫力を感じました。水上勉というと社会派ではあっても、松本清張と異なり政治的な要素を持ったものは珍しいのですが、その意味での異色テーマも、うまく描いています。


No.762 5点 バートラム・ホテルにて
アガサ・クリスティー
(2015/01/12 12:06登録)
ミス・マープルものなのに、ジャンルとしては本格ではなく警察小説としてしまいました。
実際のところ、本作で中心となる事件は謎のグループによる多発する強盗事件で、途中には列車強盗の顛末が、強奪後の犯罪グループの動きまで含めて描かれているのです。そしてその事件を追っているのは、もちろんセント・メアリー・ミードに住む老婦人ではなく警視庁。上司からもおやじさんと呼ばれているデイビー主任警部が中心となって活躍します。
全体の7割ぐらいでやっと殺人が発生するのですが、どう見てもこの殺人、強盗団とは直接の関係はないのです。つまり2つの事件を並行して描くパターン、しかも強盗団事件だけでなくその殺人事件の真相も、ミス・マープルだけでなくデイビー主任警部も見破ってしまっているのです。というわけで、採点も警察小説としての点数です。


No.761 5点 閉じた本
ギルバート・アデア
(2015/01/06 22:06登録)
本サイトではクリスティーへのオマージュ作品『ロジャー・マーガトロイドのしわざ』(未読)しか批評されていなかったので、本作も謎解き系だと思って手に取ったのですが、内容紹介からしても明らかにサスペンス小説でした。まあ謎解き的にも完全に会話と内面描写のみで書かれた、いわゆる地の文がない作品なので、すぐに何か仕掛けてくるなとは予想できますし、実際「マーガトロイド」の元ネタとは全く違う仕掛けはあります。しかしそれも、なるほどな程度でした。ではサスペンスはと言うと、中盤になってやっと怖い疑惑が出てくるのはちょっと遅すぎる感じです。動機に不満を述べている人もいるようですが、これは一応伏線もあり、そんなに悪くないと思いました。
実は本作で一番感心したのは、ミステリ的な部分ではなく、目が見えない人の立場を別の場合と重ね合せた考察でした。これはミステリとしてはクライマックスに向かう部分に現れます。


No.760 4点 もういちど
矢口敦子
(2015/01/03 00:22登録)
心臓移植手術を受けた19歳の慎一は、自分の中に「銀色の影」-ドナーの魂が棲みついたことに気づく。
という発端だけなら、これはファンタジーですが、そのドナーの魂と語り合ってみると、死の状況に疑問があって…とミステリな話になってきます。一方でドナーの魂は結局どうなるのだろう、という疑問も持ちながら読み進んでいったのですが、これが結局釈然としませんでした。最終章で作者が何を語ろうとしているのか、伝わってこなかったのです。魂の意思が明確ではありませんし、心臓移植をしたら必ず魂がついてくるという小説設定とも思えません。心臓病の慎一の心情はなかなかよく描けていると思うのですが。
ミステリとしてはそれなりに意外性のある展開と結末をつけていますが、ミスディレクションがかえって全体的なまとまりを悪くしてしまっているとしか思えないのが不満でした。


No.759 5点 消された時間
ビル・S・バリンジャー
(2014/12/28 22:13登録)
『歯と爪』の後に発表された作品で、同じように章ごとにカットバックしていく手法を使っています。ただ、前作が全く関係なさそうに思える2つの話を交互に配していたのに対して、今回は明らかに関係がある話で、しかもカットバックによって不可解な状況を生み出しているというところが、新たな工夫と言えるでしょう。ただしその2つの話には分量的に、miniさんも指摘されているとおり(1:9というほどではありませんが)大差があります。なお、その不可解な状況は話が進むにつれて次第に見えてくる構成なので、作品紹介で何が不可解なのかを明かしてしまっているのはネタばらしとも言えます。
で、奇数章のメインとなる記憶喪失の男の話なのですが、これが今ひとつ物足らない感じで、しかも偶数章の死体遺棄の必然性が弱いという点、どうしても『歯と爪』に比べると点数は低くなってしまいます。


No.758 6点 血まみれの月
ジェイムズ・エルロイ
(2014/12/24 23:39登録)
ロイド・ホプキンズ・シリーズ第1作で、ケネス・ミラー(ロス・マク)に捧げられています。訳者あとがきによると、エルロイはチャンドラーやロス・マクを読んで文章表現を勉強したそうですが、それにしてはこれら2巨匠とは、文章がかなり違います。本来ハードボイルド文章は気取っていても、ストイックなところがあるものですが、エルロイには抑制よりもむしろ誇張されたような表現が多いのです。
抑制がきかない、自制心がないのは、主役のホプキンズ部長刑事にも言えることです。作品紹介には「上司からも部下からも見放され、〈静かな狂気〉と化した…」と書かれていますが、静かとは言えませんし、最初からかなり非常識な人物です。対する連続殺人犯「詩人」は〈激しい狂気〉とされていますが、これも疑問。むしろ同じ狂気でも根底にあるのが「善」と「悪」の違いというだけのように思えます。そんな善悪の戦いのサイコ・サスペンスとして、この評価。


No.757 6点 誰がための刃 レゾンデートル
知念実希人
(2014/12/21 22:21登録)
サブタイトルの「レゾンデートル」(raison d’être)とは存在理由のこと。主人公の医師は末期癌で、自分が生きる理由についての意識変遷が一つの軸になっているとは言えますが、深刻さよりもアクション・エンタメとして楽しめる作品です。
それにもかかわらず、本作が本格派系ミステリ賞であるばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞したのは、結局はこの賞でも謎解きの意外性より小説としての完成度の方が優先されたということでしょう。島田荘司は選評で、本作の「本格」性についてかなり無理やりなことを書いていますが、そこまでこだわらなくても面白ければ、という気はします。実際のところ、謎解き的には誰でも早い段階で切り裂きジャックがどんな人物かは気づくでしょうし、ペンダントの秘密もどうということはありません。
ギャル曽根をも思わせる(作者も意識はしたのかな)ほどの大食いヒロイン設定には、苦笑させられました。


No.756 6点 殺人稼業
ブレット・ハリデイ
(2014/12/16 22:03登録)
1945年に発表されたマイケル・シェーン・シリーズ第11作の舞台は、彼の地元マイアミではなく、メキシコにごく近いエル・パソです。本拠地から2000キロ以上も離れたそんな町でも、シェーンの名前は地元警察に知られているほど有名な私立探偵ということになっているんですねえ。
シリーズの中でも、白眉と言われると作品紹介には書かれている作品です。実際、これはなかなかよくできています。実はシェーンが事件を調査し始めてすぐ、なぜはっきり確認しておかないのだろうと思った点が一つあったのですが、それが真相に直結していました。その意味では確かに作者の都合で話を進めるためにごまかしているとは言えるのですが、犯人の側からすればまさかそんなことが起こるとは予想できないでしょうから、犯罪計画としては安易な妥協はありません。
そのご都合主義を除けば、市長選挙戦をめぐるハードボイルドらしい展開も、最後の謎解きも楽しめました。

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