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ミステリの祭典

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死者のノック
ギデオン・フェル博士シリーズ

作家 ジョン・ディクスン・カー
出版日1959年01月
平均点5.67点
書評数9人

No.9 5点 文生
(2023/06/23 22:20登録)
密室トリックに関しては不備が指摘されているものの、個人的にはアイディア自体は悪くないと思います。ただ、長篇でメインをはれるほどものではなく、どちらかといえば短編向きかなと。また、多くの人が指摘しているようにフーダニットミステリーとしては悪くありません。もっとも、それがいまいちミステリーとしての面白さに結びついていないというか、どうにも盛り上がりやケレン味に欠けている感じがします。カーのなかではかなり印象の薄い作品。

No.8 6点 人並由真
(2020/12/19 20:23登録)
(ネタバレなし)
 1948年のアメリカはバージニア州。そこのクイーンズ大学の学舎で奇怪な悪戯が繰り返され、70過ぎの警備員と、その孫で祖父のかわりに見回りにきた孝行者の16歳の少年が相次いで生命の危機に晒された。そのころ、同大学の英文学教授で39歳のマーク・ルースベンは、19世紀の英国の小説家の巨匠ウィルキー・コリンズ関連の貴重な資料を確保。英国の学者ギデオン・フェル博士もその噂を聞きつけてやってくるが、そんなマーク当人は、結婚5年目の美貌の妻で32歳のブレンダと離婚の危機に瀕していた。ワシントンの年下のボーイフレンド、フランク・チャドウィックのもとに走ろうとするブレンダ。彼女は自分の言い分として、先にマークが近所の多情な美女ローズ・レストレンジと浮気したと指摘するが、それはマーク当人には身に覚えがないことだった。だがそんな夫婦の騒ぎの直後、彼らの周辺で密室殺人事件が発生した。そしてその被害者は……。

 1958年のアメリカ作品。HM文庫版で(とりあえず)読了。
<フェル博士、海を渡る>の設定で、コリンズの幻のミステリ作品もメインプロットにからむ。しかも序盤から、どこかあの『連続殺人事件』を思わせる男女コンビの痴話ゲンカや、大学でのイタズラ事件などもお話に動員されてケレン味は十分。
 オカルト要素はまったく皆無だが、後期カーらしい<読みものミステリ>としては、読んでいる間じゅう、たっぷり楽しめた。
 まあフェル博士の渡米については、作者カー自身がすでにアメリカに来て10年以上で、そろそろ自分のレギュラー探偵を、第二の故郷で活躍させたくなったというところであろう。

 登場人物はやや少なめ、会話も多くてすごく読みやすい。
 これが、あの(オレがこれまでの生涯で最悪に読みづらいと思ったミステリのひとつ)『盲目の理髪師』(井上一夫翻訳版)と同じフェル博士シリーズか!? と思ったほどだ。結局は、作者の創作時期と、翻訳の訳文によってシリーズものの感触なんてまったく変わってしまうんだよという、きわめて当たり前の話だが(笑)。

 でまあ、予想外にシンプル……しかしいまひとつ細かいところが分からない密室トリックに関しては、読後、webの噂を参考にうかがうと、やはりみなさんひっかかってたようで(笑)。
「死者のノック」「密室」「(中略)」の三つのキーワードを入れてGoogle検索したら、すぐ例のサイトに行った。おかげで、脇に一応、持ってきておいたポケミスの旧訳版までリファレンスするはめになった。
 ……でもこれって、できればビジュアルによる説明が欲しいな。
 
 登場人物の頭数が限られていながら、犯人当て&フツーのミステリとしては、まあまあフツーによく出来ているとは思う。カーのB~C級路線としては<そのリーグのなかでの>佳作~秀作といえるんじゃないかと。
 キャラ描写にしても、最終的に(中略)という決着もスキだし。クロージングもこれはこれで、作者がやりたかったことなんだろうから、まあいいんでないの(笑)。

 最後に、HM文庫の新訳、高橋豊訳は期待どおりに読みやすかったけれど、フェル博士の話言葉がどうもね~。やっぱりその辺は、旧訳版の村崎訳の「わっはっは、わしは……」調の方がずっと楽しいぞ。

No.7 7点 レッドキング
(2020/10/29 21:04登録)
二部屋の密室。 一部屋目では「密室殺人」、二部屋目は「人間消失」。しかも二部屋とも「完全」な密室。これだけで我が高点基準7点進呈!
(密室構成の出来については突っ込まない・・ただ前から思っとったんだが、外からも内からも鍵で開閉できる扉って普通なのか?・・まあいいやコマカイことは)

No.6 5点 ボナンザ
(2020/01/19 12:37登録)
カーらしいロマン要素があふれた犯人当て。
密室ものということになっているがそちらに期待してはいけない。

No.5 5点 nukkam
(2016/09/02 10:08登録)
(ネタバレなしです) 1958年発表の本書は「疑惑の影」(1949年)以来久しぶりのフェル博士ものです(シリーズ第19作)。アメリカを舞台にした作品なんですがあまりそれらしさは感じられませんでした。英国作家のウィルキー・コリンズが構想したミステリーが謎解き議論で採り上げられているからかもしれません。内容的には密室の謎、図書館での追跡劇のサスペンス、膨れ上がる疑惑など結構盛り沢山です。しかし登場人物に生命感を感じられず全体的には物語としての盛り上がりに欠けているように思います。フェル博士も謎は解くものの最後は情けない役どころを演じているのが気に入りませんし、強引な締め括りもあれで本当に丸く収まるのかすっきりしませんでした。

No.4 6点
(2015/04/12 14:14登録)
密室トリックの説明に不備があることがよく話題にされる作品です。翻訳の問題なのか、原文も間違っているのか、議論もあるようです。
しかし個人的には、ずいぶん以前に読んだ時にそのことには全く気づかず、すんなり納得できてしまっていました。原理がシンプルで、実行手順も明確なため、細かい用語の使い方は気にならなかったのでしょう。今回読み返してみると、説明自体には1ヶ所問題点があるのですが、実際の事件の設定ではその見方に対する対処ができています。
そんなわけで密室は覚えやすいトリックなのですが、それ以外は記憶に残っていませんでした。しかし再読で、フーダニットとしては他の方々も書かれているように、かなりのものだと再認識しました。体育館での理由不明な「いたずら」やある人物が何を見たのかの謎にもうまく説明をつけていますし、人物関係的な意味での犯人の設定も意外性を生み出していると思います。

No.3 4点 kanamori
(2011/01/13 17:48登録)
舞台が米国の大学周辺という、フェル博士登場のミステリとしては、現代的でちょっと毛色の変わった作品。
ウィルキー・コリンズの手紙が重要な役割をし、手紙の内容を模したような密室殺人が起こりますが、この密室トリックの解明部分が読んでいてよく理解できない。男女の愛憎問題が絡むのもまたかと思わせますし、フェル博士も別人かと思うほど精彩を欠いているように感じました。

No.2 6点 E-BANKER
(2010/05/16 17:19登録)
フェル博士の探偵譚。
実在の推理作家コリンズ幻の作品「死者のノック」を真似た犯人が密室殺人を企てるという内容。
「密室」という言葉に惹かれて本作品読んでしまうと、ガッカリすること請け合いです。
ごく単純な錯誤を利用したトリックですし、実はあまり殺人事件の本筋には関係ありません。
今回、フェル博士はあまり出番がなく、ラストで真犯人の指摘をするのが唯一の見せ場。
本作品は、むしろフーダニットとして割合よくできているので、フェル博士がきっちり伏線を回収して真犯人を指摘してくれるのがいいですね。
その点ではまあまあ評価できる作品かもしれません。
ただ、地味ですね・・・

No.1 7点 Tetchy
(2008/11/16 14:52登録)
大学内の各所で起きるいたずら事件がエスカレートし、ついに殺人事件までに発展して、フェル博士が乗り出すといった内容。

肝心の密室トリックに矛盾が在るといわれる本書。確かに読んでいる最中はどっちが表でどっちが裏か、ゴチャゴチャになりますが、私は最後の犯人に至る推理が、理路整然としている感じがあり、意外と好印象です。

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