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ミステリの祭典

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殺人者の空

作家 山野浩一
出版日2011年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点
(2015/04/18 09:22登録)
J・G・バラードのファンとしては、同じニューウェーブSFの作家ということで名前は知っていた山野浩一ですが、実際に読むのは今回、表題作など6編を収めたこの短編集(仮面社版)が初めてです。
このタイプの元祖といえばやはりカフカ。彼の持つ絶望的な重いリアリティに明確な科学的根拠を与えて理知的に(しかも熱狂的に)世界を構築したのがバラードだとすると、山野浩一は科学的な説明を多少入れることはあるにしても、むしろ不条理な世界を奇妙な明るさ、軽さを持ってそのまま描いた、安部公房に近い作風です。果てしなく続き渡ることが不可能なハイウェイ(『メシメリ街道』)、地球上からの加速度的な人間消失(『Tと失踪者たち』)など、理屈が全く通らない世界です。そして主人公の自己喪失感、『首狩り』中の言葉では「どのみち私には敗北しかない」という感覚が、ほぼ全作品に共通しています。全然ミステリではありません。

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