home

ミステリの祭典

login
誘拐
名無しの探偵

作家 ビル・プロンジーニ
出版日1977年11月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 6点 クリスティ再読
(2018/09/30 22:06登録)
70年代のネオ・ハードボイルドで一番「らしい」部類のシリーズである。どこが「らしい」かって? 70年代のアメリカ社会の変容によって、ハードボイルドなタブガイが急速にリアリティを失って、ノスタルジアかパロディか、そんなものにしかならなくなった苦い自嘲を込めた探偵像が「新しい=ネオ」ということになったわけである。本作の「名無しのオプ」も、タフガイらしくもなくタバコの吸いすぎによる咳に怯えるし、パルプ雑誌のコレクションが趣味、また参照されるスターもアメリカの大衆文化が花開いた30年代...とおよそ「後ろ向き」な男なんだね。
で本作が第一弾になるわけだ。丁寧な風景・人物描写はあるが、誘拐から殺人に発展した事件のくせにあまり大した「イベント」が起きている印象がない。短めの長編だが、そこらが大いにハードボイルドらしくなくて、御三家だったらきっと短編にしかならないだろう。ハードボイルドらしいスピード感・ドライブ感に、作者は本当に関心がなさそうだ。主人公も警句を吐くでもなく、アーチャー以上に真面目な感じ。その「後ろ向き」なキャラを恋人に呆れられて捨てられるのを、グズグズと内省する。それでもミステリとして手堅いので、そうそうつまらないわけではないんだがなぁ。
「ハードボイルド」とコダワるのがもう必然性がないんだ、そんなことなんだろう...

No.2 6点
(2015/05/10 12:04登録)
名無しの探偵シリーズ第1作。
このラストには驚かされました。ミステリ的な意外性では、結局やはりそうだったかというところなのですが、最後の殺人後の真犯人の描き方にびっくりさせられたのです。これだけで評価はある程度アップします。
誘拐犯の1人が霧の深い金の受け渡し場所で何者かに殺されるというストーリーは、なかなかおもしろくできています。なぜ「私」が受け渡し場所をある程度離れてから殺人を行わなかったのかという疑問は、早い段階で提出された上、それなりの答はすぐに出されるのですが、最後に至っても結局すっきり解決されませんでした。さらに、その殺人に関して、犯人はどうやってある知識を得たのかという点も、真相がわかってみると、かえって疑問が出てきます。
細かく言えばそんな疑問もあるのですが、矛盾があるというよりも説明不足という感じなので、まあ許容範囲かな、というところです。

No.1 5点 kanamori
(2010/09/05 16:20登録)
パルプ・マガジンの蒐集が趣味で、肺がんを恐れながらも禁煙出来ない私立探偵・名無しのオプ登場のネオ・ハードボイルド、シリーズ第1作。
当シリーズは、本書の誘拐事件の身代金受け渡しとか次作の「失踪」など、当初は正統ハードボイルドのプロットを踏襲したような作風でしたが、徐々に密室殺人など本格ミステリに変貌していくちょっと変わった私立探偵小説です。
主人公の名前は一切表記されませんが、番外編の共作「依頼人は三度襲われる」では、「ビル」と呼ばれています。

3レコード表示中です 書評