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ミステリの祭典

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赤き死の香り
ビル・クレイン

作家 ジョナサン・ラティマー
出版日2008年06月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2021/10/16 05:12登録)
(ネタバレなしです) 1939年発表のビル・クレインシリーズ第5作にしてシリーズ最終作となった軽ハードボイルドです。これまでのシリーズ作品でも探偵仲間とチームプレーしているクレインですが本書では女性探偵、しかも所長であるブラック大佐(とうとう生身の出演はありませんでしたね)の姪のアンが登場します。クレインは彼女との結婚さえも考えているようですが、二人の仲がどう発展するのかも本書の読ませどころの一つです。大富豪とその一族が登場し、既に2人が自動車の排気ガスによる一酸化炭素中毒で謎の死を遂げています。銃撃戦あり、肉弾戦あり(最も派手なのは女性同士のそれでした)、ギャング登場とハードボイルドらさしさが随所に発揮されています。相変わらず酒と女性にだらしなく、しかもそれが往々にして(特にアンとの)トラブルの火種になるクレインのせいで展開がぐだぐだ気味ながらも17章では出色のサスペンスでぎゅっと引き締め、それに続く怒涛のアクションの末に解決と思わせて、そこからクレインが本格派推理小説の名探偵さながらの推理でもう一回引き締めます。あの犯行が完遂したら本当に犯人は目的達成できるのか疑問に思わないでもありませんが謎解き伏線のカモフラージュは非常に巧妙で、特に殺人に使われた小道具の一つは非常に印象的でした。本書までほぼ毎年1作発表していたラティマー(1906-1983)は1940年代から映画やテレビのシナリオライターとして活躍するようになりペリー・メイスンシリーズ(レイモンド・バー主演版)や刑事コロンボシリーズまで手掛ける一方で、ミステリー小説家としては1940年代に1作、1950年代に2作発表して終わってしまいました。

No.1 5点
(2015/05/04 22:59登録)
ビル・クレイン・シリーズ5作目にして最終作。
この作家にはスピレイン等のようなハードさはなく、途中でクレインがギャングに捕えられる窮地にしても、あっさり助かってしまい迫力がありません。一方、持ち味のコメディ・タッチは『処刑6日前』より増していますが、後の『シカゴの事件記者』ほどでもなく、ちょっと中途半端な感じがしました。クレインが酒にだらしないのも、むしろうんざりさせられます。そんなわけで連続一酸化炭素中毒死の事件の推移は、途中までは今ひとつ乗り気になれません。
それでも最終段階で、探偵事務所長の娘アンの独自調査とのカット・バックを利用したり、銃撃アクションを入れたりして、なかなか楽しませてくれました。犯人の意外性や伏線は、さすがにうまくできていると思います。殺人未遂に終わった事件については、この発想に対して批判的な人もいるでしょうが、個人的には気になりませんでした。

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