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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1515件

プロフィール| 書評

No.1475 6点 シュロック・ホームズの迷推理
ロバート・L・フィッシュ
(2023/10/14 10:39登録)
シュロック・シリーズのうち、『冒険』『回想』から1編ずつと、その後の発表作9編、それにシュロックものでない5編を収録した、光文社独自編集短編集です。
シュロックの推理は、英語原文でないとわからないものも多く、特に表題作は何が何だかですが、だいたいにおいて楽しめました。シュロックの迷推理で偶然事件が本当に解決できてしまうものもあります。シュロック以外のものは意外にほぼ正統的でした。
それにしてもシュロック・シリーズ、時代設定がよくわかりません。『アスコット・タイ事件』だと書き出しが「五九年の…」と年が二桁で示されていますが、ロンドンを馬車が走っている一方で日本大使館が存在します(Ogimaはオジマじゃなくオギマでしょう)。他の作品もそうで、新発明のラジオだとか映画(『羅生門』『ピーター・パン』等)だとか。最たるものは『ウクライナの孤児』で、1897年版の参考文献が最新版らしい七九年…???


No.1474 6点 水の眠り 灰の夢
桐野夏生
(2023/10/11 21:24登録)
『天使に見捨てられた夜』のコメントでは、ミロが「美術に詳しすぎ」と書きましたが、番外編の本作を読んで納得。母方の血筋なんですね。シリーズ第1作は未読なので、その中で経歴がどこまで描かれていたのかは知らないのですが。
最後に「なお、この話はフィクションであり、実在する個人、団体等とはいっさい関係ありません。」と書かれていますが、ジャーナリスト村野が追う2つの事件のうち一方は、実際に1962~3年に起こった草加次郎事件をそのままの名前でモデルにしています。実際に脅迫状が送られた吉永小百合の名前も出てきます。なおこの脅迫事件に対する警察の対応、犯人を罠にかけるはずが、犯人も現場に入り込みにくい警戒態勢をとっては、話になりません。
論理的にはそんな問題点もありますし、2つの事件の結びつきが偶然に過ぎないのも気になりますが、時代の雰囲気が感じられ、全体的印象はなかなかのものでした。


No.1473 7点 ロニョン刑事とネズミ
ジョルジュ・シムノン
(2023/10/06 20:29登録)
(原書 "Monsieur la Souris" を読んでのコメント)
原題のSourisは英語ではMouseに当ります。つまり本来ミッキーみたいなかわいい奴なのですが、この二十日鼠氏、年老いた浮浪者です。シムノンの非メグレものの常からすると、ほぼこの浮浪者の視点から描かれることになると思われそうですが、そうではありません。メグレこそ登場しませんが、「無愛想な刑事と消えたロエム氏」とサブタイトルを付けてもいいような、メグレもののスピンオフ警察小説になっているのです。
瀬名秀明氏の「シムノンを読む」で無愛想な刑事ことロニヨンの初登場作だと知り、気になっていた作品です。ロニヨン以外にも、リュカが警視として、またジャンヴィエ刑事も登場。後半はロニヨンが何者かに頭を殴られ、二十日鼠氏は誘拐されという展開を見せ、クライマックスはほとんど『メグレ罠を張る』あたりにも匹敵する緊迫感があります。謎解き要素もしっかりできた、楽しい作品です。


No.1472 5点 死のオブジェ
キャロル・オコンネル
(2023/10/02 21:36登録)
キャシー・マロリー刑事(作中では「巡査部長」と階級表記)のシリーズ第3作。なお、彼女は自分をただ「マロリー」とだけ呼んでくれと言っています。美術界で起こった事件で、邦題は作品、原題("Killing Critics")は美術評論に焦点を当てています。
天才ハッカーのマロリーですが、本作ではむしろ彼女の並外れた身体能力が誇示される作品です。年老いたとは言え元オリンピックの金メダリストである美術評論家クインとフェンシングの試合をやったり。このシーンは、ただクインを心理的に追い詰めればいいだけで、試合が必要だとは思えません。このクインは礼儀正しい好人物ですが、いったい何考えているんだかというところもあります。
捜査妨害をしてくる刑事局長に関する描き方が最後中途半端なのは不満でした。また、クライマックス、「その人物」はどうやって部屋に入ったのか等、論理的な疑問もあります。


No.1471 6点 妄想名探偵
都筑道夫
(2023/09/29 00:15登録)
タイトルの探偵役は、新宿のバー「まえだ」の常連、アルジェの忠太郎、略してアル忠さん、ミステリ作家の津藤幹彦の一人称で語られる7編の連作短編集です。「妄想」なのかどうかわかりませんが、アル忠さんは現在無職ながら、作品ごとに元は刑事だったとか新劇俳優だったとかポン引きだったとか言う、居所も定かでない正体不明人物です。最初の『「殺人事件」殺人事件』から最後の『「殺人事件」盗難事件』まで、最終作を除いてほぼ「×…×」殺人事件というパターンのタイトルになっています。
第1作はさすがに無理じゃないかと思えますし、第2作もまとめ方がすっきりしませんが、基本的には都筑道夫らしいロジック中心の作品集です。それだけに異色の『「ハードボイルド」殺人事件』が笑えました。最終作はアル忠さんの正体を明かしてくれるのかと思っていたら、結局そうはならず、という肩すかしを狙ったものでした。


No.1470 7点 眠れる犬
ディック・ロクティ
(2023/09/26 00:02登録)
1985年に発表され、受賞を果たしたネロ・ウルフ賞以外にも翌年の様々なミステリ賞新人賞にノミネートされた作品です。
冒頭に「はじめに」として、1982年にカリフォルニアで起こった連続殺人事件に関わった二人の人物が、それぞれの視点から書きあげた小説を、出版社の都合で1冊にまとめたのが本書だと説明しています。二人の視点から交互に一人称形式で書かれた小説はありますが、こんな言い訳をしたものは他に知りません。
その虚構作者の二人、私立探偵ブラッドワースと、依頼人である14歳の少女セレンディピティ(ブラッドワースは途中からセーラと呼んでいます)とが、いなくなった彼女の愛犬グルーチョを探して旅をする話です。
ハードボイルド系のストーリーですが、ブラッドワースがタフな探偵らしいアクションを決めるのは、最後の塔での犯人との対決シーンだけ。その後の彼の真相解説が意外でした。


No.1469 6点 曲がり角の死体
E・C・R・ロラック
(2023/09/19 20:51登録)
ロラック初読です。70冊以上の作品数がありながら、『ジョン・ブラウンの死体』が1997年に国書刊行会から出版されるまで、日本ではほとんど無視されてきた英国本格派黄金時代の女流作家。
曲がりくねった道に停められていた自動車の中で、評判の悪い実業家が一酸化炭素中毒で死んでいるのが発見されるという事件ですが、殺されたのはたぶん別の場所だろうということは、早い段階で指摘されます。その意味では原題 "Death at Dyke’s Corner" はちょっと違うんじゃないでしょうか。巻頭、周辺地図の裏に「登場する人物と地名はすべて架空のものである」とされていますが、その巻頭地図を参照しながら読んでいきました。
丁寧な捜査は飽きさせませんし、伏線もしっかりしています。ただクライマックスでの犯人のセリフの一部は、少なくとも藤村裕美氏の翻訳ではアンフェアと言うかあり得ないと言うか。


No.1468 5点 華やかな野獣
横溝正史
(2023/09/16 18:41登録)
中編の表題作の他に長めの短篇2編が収録されています。
表題作は、クイーンの某長編と同じアイディアが使われています。殺人現場からあるものがなくなっていることがわかった時点で、ひょっとしたらとは思いました。本作の方が2件目の殺人を組み込むことで複雑化していますが、そのため犯人の行動が妙に面倒になっているのが難点と言えるでしょう。ダイイング・メッセージも使われていますが、これはどうということもありません。
『暗闇の中の猫』がまた、クイーンの某短編を思わせる事件です。しかし銃殺される直前の被害者の行動が不確定という論理的欠陥はあります。なお、金田一耕助と等々力警部が初めて出会った事件で、みんな金田一さんと呼んでいますが、作者のうっかりミスでしょうか、ある登場人物が「金田一先生」と呼んでいるところがあります。
『眠れる花嫁』にもクイーンの有名作と共通する部分が一ヶ所あります。


No.1467 5点 赤いランプ
M・R・ラインハート
(2023/09/13 23:41登録)
英文学教授ポーターが、友人に2年前に起こった事件の顛末を聞かせてくれとせがまれ、その期間の日記を公開する、という体裁をとっています。
「サスペンスとホラー、そして謎解きの面白さを融合させたラインハートの傑作長編!」と宣伝されていて、ポーター教授が伯父から相続した幽霊が出ると噂される館のある田舎で起こった事件です。心霊現象は最初から次々起こるのですが、ただ降霊会で不思議な現象が起こったり、館の中で赤いランプが灯ったりというだけでは、怖くありません。最終的に大部分は合理的な真相が明かされてみると、プロットはきっちりできているのですが、語り口がもたついていて明瞭性を欠き、筋道がはっきりしません。ラインハートの文章がへただと思ったことはないので、パニックに陥りがちなポーター教授の性格ゆえのわかりにくさという面もあるのでしょうが、翻訳にもある程度問題がありそうです。


No.1466 5点 ロマンスのR
スー・グラフトン
(2023/09/07 23:40登録)
2005年に発表された本作の時代設定は1987年であることが、第4章には書かれています。ですから作中で重要な役割を果たすことになるPCも、持ち運びは簡単な程度ではあっても、かなりかさばる物で、記録メディアもフロッピー・ディスクです。携帯電話も出て来ません。
邦題は、D以来久々の、原題直訳とは異なるものになっています。原題は "R" is for Ricochet(跳弾)で、作品内容との関係がわかりません。一方「ロマンス」の方は、キンジーとチーニー・フィリップス警部補との間に芽生えますし、家主のヘンリーにもそんなことがあり、邦題の方が本作にはふさわしいと思えます。
富豪に頼まれて、仮釈放になる彼の娘リーバを刑務所に迎えに行ったキンジーが、リーバに振り回されっぱなしになる話で、既読作と比べるとハードボイルド味はほとんど感じられません。というわけで、ジャンルはサスペンスにしてみました。


No.1465 5点 ヒトリシズカ
誉田哲也
(2023/09/04 20:52登録)
6つのエピソードから成る長編です。最後の『独静加』(ひとりしずか)を除くと、一応独立したエピソードですが、連作短編集とまでは言えないでしょう。すべての話に、静加が関わってきます。
目次がおもしろいデザインになっていて、第2話を読み終えた時点で、デザインの意味には気づきました。しかし目次で最も広い範囲を占め、また妙な形の第3話『腐死蝶』(ふしちょう)については、他のエピソードとは動機が全く異なり(唯一はっきり不快な動機です)、また警察官ではなく私立探偵の視点から描かれている点で、全体の統一性を崩してしまっているように思えました。このエピソードは不要ではなかったかと思えます。
もう一つ不満だったのが最終話で、全体のまとめ方としてはあっけなさすぎますし、他の話と設定年が離れすぎていて、本作発表時より未来の出来事にならざるを得ないのも、どうかと思いました。


No.1464 6点 チェスプレイヤーの密室
エラリイ・クイーン
(2023/08/31 21:25登録)
原書房から出版された外典コレクション3冊の実作者中では、ずば抜けて有名なジャック・ヴァンスによる作品です。と言っても、ヴァンスのSFは読んだことがないのですが。
訳者である飯城勇三の解説によれば、ヴァンスによる前作 “The Four Johns” の生原稿と出版されたものを比べると、「ほぼすべての文章に手が加えられていた」(たぶんリーにより)そうですが、本作を読んでみると、冒頭からリーだったらこんな書き方は絶対しないだろうと思える文章構成です。nukkamさんが「どこか冷めた雰囲気」と書かれているのもそういうことでしょう。
密室トリックはかなり早い段階からこのようなタイプではないかと想像してはいたのですが、大胆でありながらかなり現実的な方法です。しかしトリックが分れば犯人も自動的にわかるタイプではあります。
それにしても本来クイーンって不可能犯罪はあまり得意ではない作家だと思うんですけど。


No.1463 6点 ひそむ罠
ボアロー&ナルスジャック
(2023/08/27 09:27登録)
原題 "La lèpre"、癩病のことで、最後近く第11章に「私までらい病患者になってしまった」(比喩的な意味で)という表現が出てきます。邦題の方は、う~ん、罠と言うのでしょうかねえ。
1976年発表作で、前書きで作者は、登場人物は架空だが、「史的なバック・グラウンドは、われわれの記憶の中に刻みこまれたとおりのものである」と宣言しています。1944年から1957年までの政治的情勢を背景にしていて、近過去の社会派時代小説といった趣があります。人を殺さなかったのに、殺したと人々に信じられたため、英雄的な扱いを受け、代議士になった元高校教師の話で、ラスト数ページを除き、彼が軍隊で少尉になっている養子に書き送った手紙の体裁です。小説としては主人公の苦悩がじっくり描かれていて読みごたえがあったのですが、ミステリとしての終わり方はありふれたものでした。


No.1462 6点 京都辻占探偵六角 431秒後の殺人
床品美帆
(2023/08/21 22:45登録)
京都御池通付近にある「六角法衣店」の若き店主六角聡明を探偵役、駆け出しカメラマンの安見直行をワトソン役(三人称形式)とした連作短編集です。収録5編中、最初の『431秒後の殺人』は安見の恩人のカメラマンが、ビル屋上から落下したコンクリートブロックがあたって死亡した事件、最後の『立ち消える死者の殺人』は14年前、六角が12歳の時母親が病院から失踪した事件です。間の3編は二人が遭遇した殺人事件。
2番目の『睨み目の穴蔵の殺人』以外は、ややこしい物理的トリックを使っていて、嫌う人もいるかもしれませんが、発想はどれも悪くないと思いました。表題作はどうしても偶然に頼ったところはありますが、それより最終作、物理的トリック以外の部分で、うまくいくとは思えないところがあります。
人は見かけによらないという言葉がふさわしい話が多いのも、この作家の特徴でしょうか。


No.1461 6点 寄宿舎の連続殺人
W・エドワード・ブレイン
(2023/08/18 20:53登録)
作者のファースト・ネームは、ちょっと調べてみたのですが、ただWとしか出てきません。1976年から教職に就いていたそうで、知悉した世界をこの第1作では舞台にしています。
タイトルどおり男子寄宿学校で殺人が起こっていくストーリーで、訳者あとがきでは、「登場人物が感じる恐怖が、読者にもじわじわと伝わり」と書かれています。しかし、そのようなサスペンスはクライマックスの緊迫感を除くと、ほとんど感じられませんでした。それよりむしろ、主人公とも言うべき優柔不断な生徒トマスの学校生活、同級生や先生たちとの関係がじっくりと描かれていて、そこが興味深い作品です。特にルーム・メイトのグレッグと、一時期仲違いしていたのが友情を取り戻していくあたり、いい感じです。
もう一つの見どころは、エピローグで生徒たちにより上演されることになる『オセロー』と起こる殺人事件との対比でしょう。


No.1460 7点 猫とねずみ
クリスチアナ・ブランド
(2023/08/15 22:43登録)
全編通して、ほぼ女性向雑誌の身の上相談係カティンカの視点から書かれた作品です。彼女が遭遇した得体のしれない事件で、その意味ではサスペンスに分類していいでしょう。しかし、彼女が雑誌への質問者「アミスタ」が誰なのかいろいろ推測していく終盤は、やはりブランドらしい仮説のたたみかけで、さらにその裏に潜む真相の明かし方の鮮やかさなど、伏線もしっかりしていてさすがの手際です。
また、登場人物紹介表では、カティンカと一緒にカーライアンの邸に来た男とされているチャッキー氏の正体が完全に明らかになるのは、全体の6割を過ぎてある人物が死んでからです。そのような構成も、本格派の作家らしいところでしょう。
ただ、擡げて・闌け・豁達・緩つくり…難読漢字クイズみたいですが、すべて本作に出て来るもので、特にゆっくりした最初の方は相当読みにくく、いくら初版が古い(1959)にしてもと思えました。


No.1459 6点 ウラジオストクから来た女
高城高
(2023/08/08 23:01登録)
長めの短篇4編を収録した、時代設定が明治20年台の函館水上警察シリーズ第2作にして最終作です。最終作である理由は、最後1ページを読めばわかります。文体的意味でハードボイルドな作家らしい、外面だけを書いたラストで、その持つ意味は全く説明されていないのですが。
最初の表題作は、そんなことで警察が活動するかなと思えるような出来事から始まるのですが、意外にも過去の犯罪と結びついてくるという筋立てです。次の『聖アンドレイ十字 招かれざる旗』は、密猟についてのロシアとイギリスのいざこざが描かれ、五条警部など水上警察は2国の仲介に奮闘します。『函館氷室の暗闇』は銃殺事件から始まる最もミステリらしい作品。最後の『冬に散る華』』は博徒たちが逮捕された男に復讐するため水上警察を襲撃するという事件で、10年以上後に別の場所で起こった実際の事件をモデルにしているそうです。


No.1458 6点 ディミティおばさまと村の探偵
ナンシー・アサートン
(2023/08/05 10:28登録)
原題はただ "Aunt Dimity : Detective" で、邦題の「と村の」の部分はありません。原題からだと、ディミティおばさまが探偵であるようにも受け取れますが、そうではなく、探偵であるのは別人です。最後まで読んでみると、原題の意味はそういうことだったのね、と思えます。
前作では、コージーらしくないサスペンス要素が多かったのですが、そのためにはロリは住んでいるフィンチ村を離れる必要がありました。ところがこのシリーズ第7作では、フィンチで嫌われ者のおばあさんが殺される事件が起こるのです。最近起こった犯罪と言えば「牧師の書斎から古ぼけた目録一式が盗まれたこと」(『ディミティおばさまと古代遺跡の謎』)だけの「眠気をもよおすようにのどかで、おだやかな水たまりのような」村で。
そんな事件にもかかわらず、やはり最後はほのぼのとした結末になっているのが、このシリーズらしいところです。


No.1457 6点 Every Bet’s a Sure Thing
トマス・B・デューイ
(2023/08/02 23:59登録)
私立探偵マック・シリーズの第2作です。Kindle版の著作情報によれば1952年の出版。第1作発表は1947年ですから、5年も空いていますが、その間にはSinger Battsシリーズの1冊が書かれています。どんな作品なのかは不明ですが。
で、この第2作では、マックは大手の私立探偵社から頼まれて、二人の子ども連れの女をロサンジェルスまで尾行することになります。西海岸へ向かう汽車の中で、出張中のビジネスマンを装った彼は、女の長男5歳のロジャーと仲よくなるのですが…
明らかに悪役らしい男は汽車の中で早々と登場します。その後ロサンジェルスで殺人が起こり、その殺し方からして、誰が犯人であるかは誰でもすぐ見当がつくでしょう。しかし事件全体の構造はなかなか見えてきません。マックの友人ドノヴァン警部補が、「なんて休暇だ」どぼやきながらアクションについては、活躍してくれます。


No.1456 6点 亡者は囁く
吉田恭教
(2023/07/26 22:01登録)
元刑事の槇野康平は鏡探偵事務所で働く調査員です。その意味ではコンチネンタル・オプのタイプ。本作はそのシリーズの第2作です。彼は刑事時代には捜査四課、暴力団関係の部署にいた…と言っても、ハードボイルド的な感じはほとんどありません。暴力行為も辞さないのはもう一人の主役、「恐ろしく危ない美形の女刑事」東條有紀の方で、本作では第2章から登場します。
プロローグが25年前の出来事と、5年前の殺人事件のもの、2つあります。25年前に偶然出会った女を探してほしいという、盲目のヴァイオリニストからの依頼を受けて、鏡事務所で調査を始めると、5年前の事件とのつながりが見えてきて、という筋書きは、よくできています。人を踊らせるトリックの原理はシンプルで意外性がありますが、実現のための細かい手順が少々煩雑です。
なおタイトルの意味は、殺人事件がほぼ解決した後で明らかになります。

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