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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1505件

プロフィール| 書評

No.1465 5点 ヒトリシズカ
誉田哲也
(2023/09/04 20:52登録)
6つのエピソードから成る長編です。最後の『独静加』(ひとりしずか)を除くと、一応独立したエピソードですが、連作短編集とまでは言えないでしょう。すべての話に、静加が関わってきます。
目次がおもしろいデザインになっていて、第2話を読み終えた時点で、デザインの意味には気づきました。しかし目次で最も広い範囲を占め、また妙な形の第3話『腐死蝶』(ふしちょう)については、他のエピソードとは動機が全く異なり(唯一はっきり不快な動機です)、また警察官ではなく私立探偵の視点から描かれている点で、全体の統一性を崩してしまっているように思えました。このエピソードは不要ではなかったかと思えます。
もう一つ不満だったのが最終話で、全体のまとめ方としてはあっけなさすぎますし、他の話と設定年が離れすぎていて、本作発表時より未来の出来事にならざるを得ないのも、どうかと思いました。


No.1464 6点 チェスプレイヤーの密室
エラリイ・クイーン
(2023/08/31 21:25登録)
原書房から出版された外典コレクション3冊の実作者中では、ずば抜けて有名なジャック・ヴァンスによる作品です。と言っても、ヴァンスのSFは読んだことがないのですが。
訳者である飯城勇三の解説によれば、ヴァンスによる前作 “The Four Johns” の生原稿と出版されたものを比べると、「ほぼすべての文章に手が加えられていた」(たぶんリーにより)そうですが、本作を読んでみると、冒頭からリーだったらこんな書き方は絶対しないだろうと思える文章構成です。nukkamさんが「どこか冷めた雰囲気」と書かれているのもそういうことでしょう。
密室トリックはかなり早い段階からこのようなタイプではないかと想像してはいたのですが、大胆でありながらかなり現実的な方法です。しかしトリックが分れば犯人も自動的にわかるタイプではあります。
それにしても本来クイーンって不可能犯罪はあまり得意ではない作家だと思うんですけど。


No.1463 6点 ひそむ罠
ボアロー&ナルスジャック
(2023/08/27 09:27登録)
原題 "La lèpre"、癩病のことで、最後近く第11章に「私までらい病患者になってしまった」(比喩的な意味で)という表現が出てきます。邦題の方は、う~ん、罠と言うのでしょうかねえ。
1976年発表作で、前書きで作者は、登場人物は架空だが、「史的なバック・グラウンドは、われわれの記憶の中に刻みこまれたとおりのものである」と宣言しています。1944年から1957年までの政治的情勢を背景にしていて、近過去の社会派時代小説といった趣があります。人を殺さなかったのに、殺したと人々に信じられたため、英雄的な扱いを受け、代議士になった元高校教師の話で、ラスト数ページを除き、彼が軍隊で少尉になっている養子に書き送った手紙の体裁です。小説としては主人公の苦悩がじっくり描かれていて読みごたえがあったのですが、ミステリとしての終わり方はありふれたものでした。


No.1462 6点 京都辻占探偵六角 431秒後の殺人
床品美帆
(2023/08/21 22:45登録)
京都御池通付近にある「六角法衣店」の若き店主六角聡明を探偵役、駆け出しカメラマンの安見直行をワトソン役(三人称形式)とした連作短編集です。収録5編中、最初の『431秒後の殺人』は安見の恩人のカメラマンが、ビル屋上から落下したコンクリートブロックがあたって死亡した事件、最後の『立ち消える死者の殺人』は14年前、六角が12歳の時母親が病院から失踪した事件です。間の3編は二人が遭遇した殺人事件。
2番目の『睨み目の穴蔵の殺人』以外は、ややこしい物理的トリックを使っていて、嫌う人もいるかもしれませんが、発想はどれも悪くないと思いました。表題作はどうしても偶然に頼ったところはありますが、それより最終作、物理的トリック以外の部分で、うまくいくとは思えないところがあります。
人は見かけによらないという言葉がふさわしい話が多いのも、この作家の特徴でしょうか。


No.1461 6点 寄宿舎の連続殺人
W・エドワード・ブレイン
(2023/08/18 20:53登録)
作者のファースト・ネームは、ちょっと調べてみたのですが、ただWとしか出てきません。1976年から教職に就いていたそうで、知悉した世界をこの第1作では舞台にしています。
タイトルどおり男子寄宿学校で殺人が起こっていくストーリーで、訳者あとがきでは、「登場人物が感じる恐怖が、読者にもじわじわと伝わり」と書かれています。しかし、そのようなサスペンスはクライマックスの緊迫感を除くと、ほとんど感じられませんでした。それよりむしろ、主人公とも言うべき優柔不断な生徒トマスの学校生活、同級生や先生たちとの関係がじっくりと描かれていて、そこが興味深い作品です。特にルーム・メイトのグレッグと、一時期仲違いしていたのが友情を取り戻していくあたり、いい感じです。
もう一つの見どころは、エピローグで生徒たちにより上演されることになる『オセロー』と起こる殺人事件との対比でしょう。


No.1460 7点 猫とねずみ
クリスチアナ・ブランド
(2023/08/15 22:43登録)
全編通して、ほぼ女性向雑誌の身の上相談係カティンカの視点から書かれた作品です。彼女が遭遇した得体のしれない事件で、その意味ではサスペンスに分類していいでしょう。しかし、彼女が雑誌への質問者「アミスタ」が誰なのかいろいろ推測していく終盤は、やはりブランドらしい仮説のたたみかけで、さらにその裏に潜む真相の明かし方の鮮やかさなど、伏線もしっかりしていてさすがの手際です。
また、登場人物紹介表では、カティンカと一緒にカーライアンの邸に来た男とされているチャッキー氏の正体が完全に明らかになるのは、全体の6割を過ぎてある人物が死んでからです。そのような構成も、本格派の作家らしいところでしょう。
ただ、擡げて・闌け・豁達・緩つくり…難読漢字クイズみたいですが、すべて本作に出て来るもので、特にゆっくりした最初の方は相当読みにくく、いくら初版が古い(1959)にしてもと思えました。


No.1459 6点 ウラジオストクから来た女
高城高
(2023/08/08 23:01登録)
長めの短篇4編を収録した、時代設定が明治20年台の函館水上警察シリーズ第2作にして最終作です。最終作である理由は、最後1ページを読めばわかります。文体的意味でハードボイルドな作家らしい、外面だけを書いたラストで、その持つ意味は全く説明されていないのですが。
最初の表題作は、そんなことで警察が活動するかなと思えるような出来事から始まるのですが、意外にも過去の犯罪と結びついてくるという筋立てです。次の『聖アンドレイ十字 招かれざる旗』は、密猟についてのロシアとイギリスのいざこざが描かれ、五条警部など水上警察は2国の仲介に奮闘します。『函館氷室の暗闇』は銃殺事件から始まる最もミステリらしい作品。最後の『冬に散る華』』は博徒たちが逮捕された男に復讐するため水上警察を襲撃するという事件で、10年以上後に別の場所で起こった実際の事件をモデルにしているそうです。


No.1458 6点 ディミティおばさまと村の探偵
ナンシー・アサートン
(2023/08/05 10:28登録)
原題はただ "Aunt Dimity : Detective" で、邦題の「と村の」の部分はありません。原題からだと、ディミティおばさまが探偵であるようにも受け取れますが、そうではなく、探偵であるのは別人です。最後まで読んでみると、原題の意味はそういうことだったのね、と思えます。
前作では、コージーらしくないサスペンス要素が多かったのですが、そのためにはロリは住んでいるフィンチ村を離れる必要がありました。ところがこのシリーズ第7作では、フィンチで嫌われ者のおばあさんが殺される事件が起こるのです。最近起こった犯罪と言えば「牧師の書斎から古ぼけた目録一式が盗まれたこと」(『ディミティおばさまと古代遺跡の謎』)だけの「眠気をもよおすようにのどかで、おだやかな水たまりのような」村で。
そんな事件にもかかわらず、やはり最後はほのぼのとした結末になっているのが、このシリーズらしいところです。


No.1457 6点 Every Bet’s a Sure Thing
トマス・B・デューイ
(2023/08/02 23:59登録)
私立探偵マック・シリーズの第2作です。Kindle版の著作情報によれば1952年の出版。第1作発表は1947年ですから、5年も空いていますが、その間にはSinger Battsシリーズの1冊が書かれています。どんな作品なのかは不明ですが。
で、この第2作では、マックは大手の私立探偵社から頼まれて、二人の子ども連れの女をロサンジェルスまで尾行することになります。西海岸へ向かう汽車の中で、出張中のビジネスマンを装った彼は、女の長男5歳のロジャーと仲よくなるのですが…
明らかに悪役らしい男は汽車の中で早々と登場します。その後ロサンジェルスで殺人が起こり、その殺し方からして、誰が犯人であるかは誰でもすぐ見当がつくでしょう。しかし事件全体の構造はなかなか見えてきません。マックの友人ドノヴァン警部補が、「なんて休暇だ」どぼやきながらアクションについては、活躍してくれます。


No.1456 6点 亡者は囁く
吉田恭教
(2023/07/26 22:01登録)
元刑事の槇野康平は鏡探偵事務所で働く調査員です。その意味ではコンチネンタル・オプのタイプ。本作はそのシリーズの第2作です。彼は刑事時代には捜査四課、暴力団関係の部署にいた…と言っても、ハードボイルド的な感じはほとんどありません。暴力行為も辞さないのはもう一人の主役、「恐ろしく危ない美形の女刑事」東條有紀の方で、本作では第2章から登場します。
プロローグが25年前の出来事と、5年前の殺人事件のもの、2つあります。25年前に偶然出会った女を探してほしいという、盲目のヴァイオリニストからの依頼を受けて、鏡事務所で調査を始めると、5年前の事件とのつながりが見えてきて、という筋書きは、よくできています。人を踊らせるトリックの原理はシンプルで意外性がありますが、実現のための細かい手順が少々煩雑です。
なおタイトルの意味は、殺人事件がほぼ解決した後で明らかになります。


No.1455 5点 メフィストの牢獄
マイケル・スレイド
(2023/07/23 00:07登録)
スレイド初読。巻末解説では異色作だとしていて。謎解きミステリとしての意外性の希薄さも、理由のひとつだということです。確かに、犯人がメフィストと名乗る人物であることは最初から犯罪小説形式で明らかにしていますし、彼の正体を突き止める話でもありません。彼が手に入れたがる「秘宝」とは何か、またどこに隠されているのかの謎はありますが、答に特に意外性はありません。
事件の顛末は1週間で済み、その後に数日後のエピローグが2つ付く構成で、プロットは単純です。ただ、この作者やたら饒舌で、途中メフィストの想像する古代や中世のことが延々語られます。その古代・中世部分は翻訳者も文語体にするという悪ノリぶりで、かなり辟易しましたが、最後1/5ぐらいは展開もスピードアップし、それなりに楽しめました。
それにしても、作中でメフィストと比較されているモリアーティ教授は、そんな誇大妄想狂じゃなく、冷厳な人だと思うのですが。


No.1454 6点 非情の裁き
リイ・ブラケット
(2023/07/19 23:38登録)
本書の冒頭には、ブラッドベリによる『B&B ブラケットとブラッドベリ 千九四四年』という4ページほどの文章が付いています。書かれた日付は1998年10月16日。彼にとってブラケットは「最大の親友にして教師」だったそうです。もちろん後にはブラッドベリの方がはるかに有名になりますが。
SF短編は既にかなり発表していた彼女の長編デビュー作が、このいかにもハードボイルドなミステリだったというのは、意外な感じがします。ゴーストライターとして書いた作品も入れると、他にミステリ系長編は4冊あるようですが(すべて未訳)、どんな作品なのか気になります。
三人称形式ですが、一人称形式でも全然問題ないような私立探偵小説です。プロットはおもしろいのですが、犯人の人物造形があまり印象に残らず、そのせいか意外性もさほど感じなかったのが少々不満でした。


No.1453 7点 執念
黒岩涙香
(2023/07/13 00:06登録)
従来ボアゴベの『囚徒大佐』("Le Forçat colonel")の翻案と信じられてきた作品ですが、"Le Forçat colonel" はそう呼ばれた実在の人物Pierre Coignard (1774-1834)をモデルとした時代小説で、本作とは無関係です。実際の原作は、娘の結婚式から帰ってきた眞川(Maugars)伯爵を待っていたのは、新婿を窃盗容疑で逮捕しに来た警察官だったという出だしがそっくりな、ボアゴベの "L'Équipage du diable"(悪魔の一団)です。
原作英語版を所々ざっと読んだところ、事件の骨格は原作どおりですが、過去の窃盗事件犯人設定も含めストーリー展開はかなり変更されています。基本的には登場人物を整理し、話を単純化してメロドラマ的に仕上げています。後半の意外な展開は充分楽しめますが、ご都合主義的偶然が多いのが欠点でしょうか。最後の一文は「譯し終りて涙香も筆を投じて嘆息之を久ふす」となっていますが、決着のつけ方も涙香独自のものです。


No.1452 6点 フレッチ/呪われた大統領選
グレゴリー・マクドナルド
(2023/07/09 21:17登録)
フレッチのシリーズ第6作ですが、発表順が作中設定年代順とは一致しないことを本書の訳者あとがきで知りました。なんだかややこしい…
新聞記者であるフレッチ(I・M・フレッチャー)が、軍隊時代の上官であった、大統領候補の息子ウォルシュからの依頼で、大統領選の報道担当秘書になったところ、キャンペーンの途中で女性殺害事件が連続して起こり、という筋書きです。しかし、殺人事件の解明捜査よりもむしろ、候補のホイーラー市長が「大統領職なんてドア・ノブにすぎん。そして、官僚組織がドアだ。…(中略)…だが、ドアはしょせんドアだ。」と言ったりするところがおもしろい、大統領選の内幕を描いた作品になっています。
一応「本格派」とはしておきましたが、謎解きとしては、論理的整合性に問題があるわけではないものの、物足らず、それ以外の要素を評価して、この点数としました。


No.1451 6点 人形 (デュ・モーリア傑作集)
ダフネ・デュ・モーリア
(2023/07/06 21:33登録)
『レベッカ』『鳥』だけでなく、ニコラス・ローグ監督の『赤い影』(Don't Look Now)の原作者でもあることは、本書を手にして初めて知った作家です。実は『レベッカ』はDVDを持っていながら未見のまま。デビュー数年前に書かれていたらしい表題作は、イギリスでも単行本に初収録されたのは2011年のようです。
全14編中、最後の『笠貝』を除くと、ほぼ30ページ以内の作品ばかりです。最初の『東風』、表題作と、サスペンスないしホラーな話が続いた後、はっきりミステリ系と断言できる作品はありません。まあ『ピカデリー』は犯罪小説的と言えるかな、とか『幸福の谷』は幻想的だなとかぐらいのものです。しかし、だいたい読んでいて居心地の悪くなるような、「ミステリ」要素のほとんどないイヤミスと言ってよいような作品が大部分です。2作で主役を演じるホラウェイ牧師は、要するに人種差別主義者と同じ感覚ですね。


No.1450 5点 復讐の白き荒野
笠井潔
(2023/07/02 14:06登録)
読んだのは2000年4月に原書房から出版された版で、講談社文庫版(1991年9月)をもとに加筆・修正されたものだという注記がついています。最初に発表されたのは1988年、ソ連の謀略を背景にした、知床半島でのシーンから始まる作品です。どのように変更されたのかわかりませんが、ソ連崩壊後10年近くたってからの加筆・修正ということになります。
作者はあとがきで、「ル・カレ作品に代表的である「本格的な」スパイ小説をめざしている。」としていますが、読んでいてル・カレ、あるいはアンブラーのようなシリアス・スパイ小説という感じはしませんでした。むしろスピレインあたりをより劇画的にしたような作品になっています。意外性のあるスリリングな展開は確かにおもしろいのですが、話の裏が大げさすぎて、次々に黒幕のそのまた黒幕の、と明らかになっていく重層的構造は、かえって馬鹿馬鹿しく思えてしまいました。


No.1449 7点 殺意の夏
セバスチアン・ジャプリゾ
(2023/06/26 22:46登録)
フランスの「独創的な小説」に贈られるドゥ・マゴ賞の1978年度受賞作です。作者自身の脚色によるイザベル・アジャーニ主演の映画(1983)もヒットしました。視覚的な悲しいショッキング・シーンで終わる映画に対し、原作はていねいな真相解説の後、しみじみとした味わいを残します。
ただ初版本翻訳には問題があります。フロリモンの愛称はピーポーとされていますが、Wikiフランス語版等では Pin-Pon(パンポン)、まあこれは擬音語を翻訳したのでしょうが。「ドラアエ」は、ドライエで検索できる自動車メーカーDelahaye。「手回し風琴」は自動ピアノで、映画ではタイトル・シーンから出てきます。また、エリアーヌは「エルとか、あれと呼ばれていた」と書かれていますが、フランス語の "elle"(エル) は英語のsheの意味、つまり「彼女」です。他にも原文はどうなっているのだろうと疑問に思った所がいくもありました。


No.1448 4点 誰もが怖れた男
ジョゼフ・ハンセン
(2023/06/22 21:36登録)
デイヴ・ブランドステッター・シリーズの第4作。この後の作品は読んでいませんが、本作は同性愛テーマの集大成的なプロットだと思いました。殺されるのはタイトルどおりの警察署長で、ホモセクシャルな連中が「精神的に異常なだけじゃない。細菌をまき散らす」と公言するベン・オートンです。容疑者としてすぐ逮捕されたのが同じニュースの中でオートンについて「おごった豚め! 殺してやる」と言ったゲイ運動家ケアリー。
訳者あとがきによれば、1975年に公務員人事委員会が同性愛者の雇用を認めたといった事実を基にしているということで、実際、同性愛者に対する差別を撤廃する法律のことも作中に出てきます。
ただ、事件に対する様々な可能性をデイヴが探っていくところはおもしろかったのですが、最後のまとめ段階になってからが、偶然を多用しすぎ、また真犯人設定も印象に残らず、がっかりでした。


No.1447 5点 ハルカな花
天祢涼
(2023/06/19 21:09登録)
5編の連作短編集で、4編目の後に1つの話としてまとまっていない「間章」が入っています。5編はそれぞれ2月、5月、8月、11月、12月の月がタイトルの最初についています。12月が、それまで独立した作品だった各短編をつながりのあるものとしてまとめる構成です。日常の謎系ファンタジーとでもいうか、ファンタジー的要素があることは、第2作の段階ではっきりします。
最終作で、結局植物の成長速度を画期的に上げる「カグヤ」に関する問題点が明確にされていないのは不満でした。榊竜の計画にも、その理由でそんなことするのが納得できません。
それにしても、第1作目の終り頃には、ある別作品とのキャラクター的共通点、さらに雰囲気の類似が気になりだしました。その作品は小説ではなく、北条司の某マンガ。人物関係設定は全く違うのですが。その発表時期からしても、影響はあるのではないでしょうか。


No.1446 6点 コニャックの味
ブレット・ハリデイ
(2023/06/15 23:34登録)
表題作と『死人の日記』の中編2作が収録されています。
表題作は調べてみると1951年発表という情報がありましたが、そんなものでしょうか、おなじみジェントリイ課長も登場します。一方ルーシイ・ハミルトンが名前さえ出て来ないのは、どうなっているんでしょう。シェーンがコニャックに詳しいところを発揮する事件です。アクションは豊富で読ませますが、真相は今ひとつ。
『死人の日記』は1945年3月の事件だと最初に書かれていて、舞台も当時シェーンがいたニュー・オーリンズです。本作の方が少し長く、原書のタイトルはこちら(”Dead Man’s Diary”)が採られています。ルーシイの隣人からの依頼に始まるかなり複雑な話で、登場人物も多く、話のつながりがわかりにくいところがあります。殺人犯以外の人物によるあるトリックが事件を難解にしている、パズラーと言った方がいいような作品でした。

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