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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1505件

プロフィール| 書評

No.1025 5点 惜別の賦
ロバート・ゴダード
(2018/05/05 12:05登録)
「今日」「昨日」「明日」の3部からなると言っても、「今日」はプロローグ、「明日」はエピローグで、大部分は「昨日」。ただし1日前の意味ではなく、10数年前の1981年とさらに過去の1947年を一人称形式でほぼ交互に描いていく構成です。
読み始めてしばらくは、トマス・H・クックに似た構造かなとも思っていたのですが、後半は全く違っていました。「わたし」が悔恨を感じている1947年の事件の真相はありきたりです。死刑になっても守りたかった秘密は意外と言えなくもありませんが、説得力は今一つ。その1981年の時点から見て過去の事件の全貌が明らかになるまでが長すぎる感じがします。まあその間にも新たな事件が起こっていて、「昨日」の最後3割近くはその過去に起因する新たな事件の展開だけになります。この部分はサスペンスが効いて展開の意外性もあり、おもしろくなります。しかし「明日」は結局それで?って感じでした。


No.1024 7点 ケイティ殺人事件
マイケル・ギルバート
(2018/05/02 17:48登録)
久しぶりの再読で、はっきり覚えていたのは結末の意外性だけでした。出版当時、クリスティーとクイーンの有名作を挙げて、それらに比肩するというような宣伝文句が使われていました。期待を高めることは間違いありませんし、だからこそ当時早速読んでみたのですが、その巨匠2作品の共通点を考えれば真相の見当がついてしまうというのが、売り方としては問題だったかなと思えます。そんな予備知識がなければ、最後に明かされる真相は、予測しにくいように巧妙に構成されていて、オチを知って読んでいるとその点に感心させられました。ただし、読者に推理の手がかりを示しておくタイプではありません。
半ば過ぎから裁判に向けての準備に入ってくるのですが、なかなか裁判が始まらないのは、弁護士でもある作者らしい手際というべきでしょうか。前半の地味さに比べ、最後の方で自殺を含め次から次へと人が死んでいくのには驚かされました。


No.1023 6点 吹雪の空白
水上勉
(2018/04/28 11:31登録)
作者あとがきによれば雑誌掲載時には『火の宴』と題されていたそうで、加筆訂正を経て昭和39年にカッパ・ノベルズで出版されたタイトルとは全く違っています。抽象的タイトルは何とでもなりそうであるにしても、特に別視点と言うよりまるで印象が異なるのもどうかと思われます。
序章は福井県山間の村で雪が降り続いた後の朝です。最後までいつのことかは明確にされませんが、たぶん第二次世界大戦中でしょう。第1~2章は昭和21年に起こった殺人と失踪、その後ラストの第15章までで昭和30年の事件が描かれます。社会派ミステリとしては、一家惨殺事件の動機があいまいな想像で終わってしまっていることを除けばきちんと構成されていて好感が持てます。ただ、第1章から登場する新聞記者が、警察と一緒に行動して捜査会議にまで出席するのは実際にはあり得ないと思いますが。


No.1022 5点 愚者たちの街
スチュアート・カミンスキー
(2018/04/25 22:53登録)
作者の新境地を開拓したと見られるリーバーマン刑事シリーズの第1作で、このユダヤ人老刑事の私生活がたっぷり描かれた作品になっています。娘の結婚生活の危機やユダヤ協会の運営など個人的問題を抱えながら、一方で娼婦殺しの捜査を進めていく構成です。
ミステリとしては、捜査途中で殺されかかった相棒のハンラハン刑事と、テキサス州の刑事だった市長から真相を明示する直接的な二つの名前を聞いた時に、その名前をわざと書かないという、本格派的なフェアプレイとは全く考え方の異なるものになっています。まあそれはそれでいいのですが、「意外な」真相は今一つすっきりできませんでした。
また、シリーズ第2作『裏切りの銃弾』ではそれほどでなかったと思うのですが、文章が読みづらいと感じました。翻訳の問題でしょうが、文の途中まで読んで、その文で何を言わんとしているのかが見えてこないのです。


No.1021 4点 密偵ファルコ/青銅の翳り
リンゼイ・デイヴィス
(2018/04/20 00:25登録)
密偵ファルコ・シリーズの第2作。
「古代ローマを舞台にしたハードボイルド風ミステリ」とは、巻末解説の冒頭に書かれていることですが、本作を読む限りではハードボイルドらしい冷たいストイックさや熱い憤りは全く感じられません。ファルコの、ちょっとしたことにも一喜一憂する子供っぽいような感情の起伏には、かなりうんざりさせられました。
時代小説的な点では、暴君ネロの作曲した音楽だとか、ローマン・コンクリートだとか、それにその近くの町が主要舞台となる、ヴェスヴィオ火山噴火で壊滅する8年前のポンペイだとか、いろいろおもしろいところはあるのですが。
ミステリ的には、ありふれた手ではあるのですが、途中にある意外性が仕掛けられています。しかし全体的な流れとしてはあまり効果的に使われていない気がします。主人公も悪役も、行動を冷静に追っていくと間抜けとしか思えず、今一つ楽しめませんでした。


No.1020 6点 くらやみ砂絵
都筑道夫
(2018/04/06 23:36登録)
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ2冊目の7作の中では、やはり第二席『天狗起し』が不可解な状況を一刀両断にするシンプルなロジックで一番鮮やかです。ただ死体を苦労して屋根の上に置く必要があったとは思えませんが、駄右衛門天狗ねぇ、うまいネーミングです。第七席『地口行灯』のダイイング・メッセージもいいですけど、その他にはオヤマの立ち聞きした会話から始まる第一席『不動坊火焔』、英国古典短編を無謀にした第六席『春狂言役者づくし』が気に入りました。第二席『やれ突けそれ突け』は小味。第四席『南蛮大魔術』は後の泡坂妻夫をも思わせる話ですが、最後のひねりの部分の論理は想像に過ぎない上、「役どころを教えておいたほうが、うまくいく」のはその場合でも同じでしょう。第五席『雪もよい明神下』は複雑にし過ぎと思えました。
第一席では悪役だったイブクロがその後の作品ではなめくじ長屋の仲間になります。


No.1019 6点 暗殺のジャムセッション
ロス・トーマス
(2018/04/02 23:19登録)
マッコークル&パディロのシリーズ第2作、と言ってもこのシリーズを読むのは初めてなのですが。マッコークルの一人称形式で語られ、第1作『冷戦交換ゲーム』の内容にも多少は触れられています。どうやらマッコークルはその第1作の冒険のすぐ後に結婚したらしいですね。
本作の舞台はワシントンで、そのマッコークルの愛妻フレドルが、パディロに暗殺計画を実行させるために誘拐されるというストーリーです。金のためなら何でもする悪党たちを巻き込んでの、アフリカ某国首相暗殺計画は、裏切りの連続で予断を許さない展開になりますが、パディロが呼び寄せる3人が本当に全員必要だったとは思えません。作者の都合で(それで話が面白くなっていることは間違いありませんが)ちょっとひねくりすぎている気もします。
原題の “Cast a Yellow Shadow” は、アラブの言葉で、いろんな悪い運命を背負っているという意味だそうです。


No.1018 7点 結婚は命がけ
ナンシー・ピカード
(2018/03/25 19:27登録)
国際ミステリ愛好家クラブのマカヴィティ賞(第2回)受賞作。
この作家の作品は原題と邦題とがまるっきり違っているものが多いのですが、本作は “Marriage Is Murder” なのでかなり近い例外作です。
市民財団所長ジェニー・ケインのシリーズ第4作で(第3作だけは未訳らしいです)、家庭内暴力とその結果起こる殺人がテーマのかなり深刻な内容です。それにジェニーとジェフ・ブッシュフィールド刑事との間近に迫った結婚式の話をからめて話は進んでいきます。二人の結婚の方は無事まともな式を終えることができるのかというユーモラスなサスペンスもあり、事件の重苦しさと対照的に描かれています。
最後、ジェニーの親族が事件に巻き込まれることになるサスペンス調の展開の後の事件の結末は、発端からすると意外性があるのですが、個人的にはあまり後味が良くないようにも思いました。


No.1017 5点 大尾行
両角長彦
(2018/03/13 23:39登録)
ハイテク・ミステリ。
最初の尾行シーンでは、おいおい何やってんだかと思ってしまいました。私立探偵社の探偵たちがハイテク機器を利用して3人1組で次々に入れ替わりながら1人の人間を尾行していくというところから始まるのですが、これ、尾行する相手(作中ではマルタイ―対象者の意味―と呼んでいます)がどこに行くか見当がついていなければ不可能な尾行方法です。それにいくら何でも対経済効果が悪すぎます。
しかし尾行不可能な女の消失は、これも何かハイテクを使ったんだろうなと見当は付きますが、なかなか鮮やか。その後の製薬会社の暗部を暴いていくあたりとどうつながってくるのかと思っていたら、少々拍子抜けでした。それでも主人公が製薬会社に捕まってしまうあたりからはスリリングでおもしろく読ませてもらったのですが、このどんでん返し結末は爽快感はそれなりにあるものの、やはりフェアとは言えませんねえ。


No.1016 8点 野獣死すべし
ニコラス・ブレイク
(2018/03/03 23:23登録)
名作とされることも多いわりに、最初読んだ時はそれほどとも思わなかった作品です。たぶん「驚けなかった」という人が多い結末がその最大の理由です。しかし久しぶりに再読してみると、なるほどよくできた小説だと評価を改めました。その趣向が、読者を驚かせることが目的なわけではないところに感心させられます。
倒叙とか犯罪小説風とか言われる第1部の日記部分は、全体の1/3強ぐらいですが、その中にもまずは憎むべき轢き逃げ犯人の捜索という謎解き要素があります。そして殺人決行当日朝の記述で終わった後の短い第2部で、第1部が日記でなければならなかった理由も納得できる構成になっているところがうまくできています。
終盤のミスリーディングは全く覚えていなかったのですが、これも読者を騙すためだけでなく、結末の付け方と関連付けられていて味わいがありました。


No.1015 6点 アンブローズ蒐集家
フレドリック・ブラウン
(2018/02/27 23:53登録)
フレドリック・ブラウンというと、どちらかと言えばSFの方が有名なように思えますし、自分自身もSFは2冊読んでいるのですが、ミステリは短編集『真っ白な嘘』しか読んだことがないという状況でした。しかし長編の数ではミステリの方がかなり多いわけで、最近翻訳されたこの作品を手に取ってみたところ、なかなか気に入りました。
エド・ハンターのシリーズ(彼の一人称形式とは言え伯父のアムと一緒に私立探偵をやっているのですから、エド&アム・シリーズと呼ぶべきかもしれません)の第4作です。ジャンルとしては本作の段階では2人は私立探偵ですし暴力的な場面もあるので一応ハードボイルドに入れてみました。
アム(アンブローズの愛称)伯父の失踪事件で、邦題は犯人の偽名アンブローズ・コレクターのことですが、原題 "Compliments of Fiend"(『悪魔より愛をこめて』)より内容に合っている感じがします。


No.1014 6点 地下街の雨
宮部みゆき
(2018/02/24 23:27登録)
実は宮部みゆき初読です。
全7編、普通の犯罪事件が解決されるタイプのミステリは1編もありません。
冒頭の表題作はここまでしなくてもという気はしますが、意外なオチを持ったいい話という感じでした。『決して見えない』『混線』とホラーが2編、後者は平凡な出来で、怖いのは前者ですけど、これも多少もやもや感が残りました。『不文律』はよくわかりません。『勝ち逃げ』は誉めている人が多いのがうなずける秀作で、爽やかさを感じさせる種明かしの後のちょっといじわるなラストも好きです。警察官が主人公の『ムクロバラ』は、ミステリらしい設定だなと思って読んでいたら、これにもホラー的なところがあり、その点はそれほど感心しなかったのですが、オチをうまくまとめていました。これも好評な『さよなら、キリハラさん』はお婆さんの扱いに感心しましたが、論理的整合性に疑問を感じました。


No.1013 7点 猶太人ジリウク
ジョルジュ・シムノン
(2018/02/17 23:53登録)
『13の秘密』、『ダンケルクの悲劇』(13の謎)と同時期に書かれた、その2冊と同じくショートショートと言っていい長さの13の連作謎解き短編集です。原題は "Les 13 coupables"(13の犯罪者)。1937年に春秋社から出版されて以来新訳も出ず、日本では絶版状態が続いているもので、読んだのはそんな稀覯本ではなく、原書です。日本で永らく無視されていても出来栄えはなかなかのもので、他の2冊と比べて短くしやすい基本設定になっていて、「クイーンの定員」にも選ばれている短編集です。
主役はフロジェ判事。ただし裁判官ではなく、メグレ・シリーズでもお馴染みのコメリオ判事と同じく予審判事で、警察とも協力し容疑者を尋問して裁判に回すべきか否かを決定する役割です。表題作のジリウクを始めとして、様々な国籍の容疑者をフロジェ判事が尋問し、ほとんどがその場で事件解決となる構成で、ホワイダニットが中心となっています。


No.1012 6点 用心ぶかい浮気女
E・S・ガードナー
(2018/02/12 15:21登録)
ペリー・メイスン・シリーズは奇妙な依頼などで冒頭に意表外なシチュエーションを設定する場合が多いですが、本作は少なくとも既読作の中では最もとんでもない謎を提出してくれます。
ただし第1章は依頼人の登場ではありません。メイスンは既に交通事故の損害賠償に関する依頼を受けていて、ひき逃げした自動車を追っている状況から話は始まります。その自動車のナンバーについての匿名の手紙をドレイク探偵が受け取るのですが、これが何とも怪しげな手紙で、さらにメイスンの事務所に事故の目撃者なる女が現れて、その手紙の内容を否定する証言を行う展開には、さすがのメイスンも頭をかかえることになります。
真相は込み入っているようでいて意外に明快な筋が通っています。ただ、バーガー検事があまりにメイスンをやっつけることにばかり拘泥して本筋の殺人の証拠固めが疎かになっているのは、いかがなものかと思われますが。


No.1011 7点 悪いうさぎ
若竹七海
(2018/02/07 23:43登録)
この作者を読むのは初めてで、タイトルからしても、うさぎがたくさんいるとぼけた味のカバーイラストからしても、ハードボイルドと言っても軽いタイプかと思っていたのですが、本当にハードな内容を持った作品でした。
プロローグの「前哨戦」から常軌を逸した男が登場して、ヒロイン葉村晶は乱闘の結果入院する羽目になってしまいます。この男はその後もさらに出てきますが、その嫌がらせは登場時の乱暴さからすると違和感があります。その男の話は脇筋ですが、もう一つ、晶の友人の恋愛話も脇筋になっていて、この恋愛の相手もそうとう病的な奴です。その上メインの失踪事件の依頼人がわけのわからない富豪という、変人オンパレードの作品になっています。
ここまで非常識人を揃えているからこそ、真相の異常さもそれなりに納得できる世界になっていると言えるかもしれません。最後説明不足な点はいくつかありましたが…


No.1010 7点 赤く灼けた死の海
ジョン・D・マクドナルド
(2018/02/03 08:33登録)
原題は "The Empty Copper Sea" ですから、ただの赤ではなく赤銅色です(以前に『赤い雌狐』があります)。色付きタイトルのシリーズなのですから、ただの「赤」は別出版社から出ていたにしても、全く同じ色は避けるべきじゃないでしょうか。
トラヴィス・マッギー・シリーズの中でも、邦訳があるものの中では最も新しい作品です。直前作の『レモン色の旋律』をminiさんはハードボイルドに投票されたと書かれていますが、本作も文章さえそれっぽくすれば、典型的なハードボイルドと呼べそうなストーリーです。まあバウチャーが、作者を取り違えて読んでも失望しないだろうと言っていたロス・マクみたいな深みを期待すれば、不満があるかもしれませんが、それでも結末には意外な哀しみがあります。真相はこんなところかなと予想できるものの、心理的な矛盾があり迷っていたのですが、なるほど、そういうオチでしたか。


No.1009 6点 孔雀の羽根
カーター・ディクスン
(2018/01/30 22:28登録)
久々の再読ですが、メインの密室トリックだけはかなり細部まで覚えていました。それほど印象的な基本アイディアなのですが、今回気づいた不備もあります。物理的可能性を問題視する人が多いようですが、そうではなく、不可能犯罪を演出するには犯人が警察にその監視方法を強制できなければならないはずだという点が引っ掛かったのです。また、HM卿が第19章で言う「四番目の方法」には説得力がありません。
なお、この「方法」(手段)という言葉は変で(たぶん翻訳が)、実際には「理由、動機」です。H・M卿は『白い僧院の殺人』の時「殺人者が密室状況を作り出す手段は三つしかない」と言ったというふうに本書では訳しています(p.295)が、その『白い僧院』(同じ厚木氏訳!)では「不可能な状況を作り出した動機だ」(p.201)となっています。
トリックに疑問はあるものの、再度の謎の手紙以降一気に盛り上がる構成は気に入っています。


No.1008 5点 戸田巽探偵小説選Ⅰ
戸田巽
(2018/01/25 22:21登録)
巻末の解題によれば、作者は神戸に生まれ、関西で活動した人だそうで、選集Ⅰには、発表が1931年5月の『第三の証拠』から1936年3月の『ムガチの聖像』まで16編の小説の他に、評論・随筆もいくつか収録されています。
最初の『第三の証拠』はサスペンス調の犯罪小説で、結末に意外性のあるものになっていて、特にタイトルの証拠はちょっとしたアイディアです。ところが続く4編(内3編がショート・ショート)はミステリじゃない…『或る日の忠直卿』なんて変な時代小説です。どれもつまらなくはないのですが、「探偵小説選」と言えるのかと思っていたら、『目撃者』以後はちゃんとミステリになっていました。1編だけ中編と言える長さの『出世殺人』は3つの独立した事件を組み合わせたもので、ちょっと偶然が過ぎる気もします。たった2ページの『吸血鬼』はもっと長い小説の冒頭部分だけ取り出した感じで、拍子抜けでした。


No.1007 5点 ベーカリーは罪深い
J・B・スタンリー
(2018/01/22 00:02登録)
作者のファースト・ネームのJは、どうやらジェニファーらしいですが、本作はその作者のダイエット・クラブ・シリーズの第1作です。のんびりした田舎町、殺人事件の捜査より「デブ・ファイブ」のメンバーたちのダイエット食品に筆を費やすところなど、まさにコージーという感じの作品になっています。各章の頭には、その章で出て来る食べ物(ダイエット食品とは限らない)の成分表が付けられているという徹底ぶり。あとがきで訳者は作中の鶏胸肉のハーブ・ローストを試したところ好評だったなんて書いてあります。「つぎはナマズのボンベイ風に挑戦してみよう」というのは、材料を手に入れるのが難しそうですね。ちなみにナマズは刺身を食べたことがあり、美味です。
評も殺人事件より食べ物中心にしちゃいましたが、実際謎解きとしてはたいしたことはありません。犯人が判明した後30ページぐらいはサスペンス風味になります。


No.1006 7点 カリブの鎮魂歌
ブリジット・オベール
(2018/01/16 22:48登録)
1作ごとに様々なジャンルを試みる(少なくとも6作目までは)オベールの5作目は、タフな中年私立探偵ダグ・ルロワがカリブ海の島々を飛び回って活躍するハードボイルドです。三人称形式ですが、ほとんどダグの視点から書かれているので、コンチネンタル・オプのパターンを踏襲して一人称形式でもかまわなかったのではないかとは思えます。また最後の方は冒険小説といった方がいいくらい派手な展開も見せてくれます。
カリブ海域の地理はほとんど知らなかったので、読んだついでに調べてみると、特に事件の中心となる「グアドループ島の北西約五十キロメートルのところに位置」するサント=マリー島は架空の島ですね。
サイコな感じの連続殺人をテーマにして、灰汁の強い登場人物たちを揃え、意外性にもあれこれ工夫を凝らしたところはこの作家らしく、軽快な筆致で楽しませてくれました。

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