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ミステリの祭典

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黒地の絵
松本清張 傑作短編集〔二〕

作家 松本清張
出版日1958年01月
平均点7.00点
書評数5人

No.5 5点 ボナンザ
(2023/12/27 14:30登録)
どれも今だと濃密な文章で描きそうなものを淡々と読みやすく書いてしまうのが清張の持ち味か。

No.4 7点 パメル
(2020/06/14 10:30登録)
9編からなる短編集。新潮文庫版で読了。9編全て標準作以上で凡作はないという印象。その中から、3編の感想を。
「装飾評伝」岸田劉生をある程度モデルにしたという作者の言葉があるが、小説の主眼は、天才に圧倒された人間の畏怖と嫉妬が憎悪と復讐の念に変わるさまを描く点にある。陰湿な復讐それ自体を生の目的とせざるを得なくなった人間の姿が彷彿する。
「真贋の森」鑑定能力のない権威の実態を世間に晒す企みがどうなるかが読みどころ。犯罪者の語りで成るために謎解きの興味はないが、描写は陰影深く、動機にも迫力がある。真贋とは物に対する以前に、人間に対するものだという主題が底に響いている傑作。中野好夫氏は、この作品を日本美術界の閉鎖的アカデミズムに対する鋭い風刺の挑戦を試みたものと述べている。
「空白の意匠」弱い立場にある地方新聞の律儀な広告部長を主人公とし、決して彼自身の手落ちではない偶発的な、しかし新聞社には致命的なミスによって、彼の懸命な努力、奮闘にもかかわらず、哀れな結末に追い込まれていく過程が読ませる。結末も鮮やか。

No.3 7点
(2018/07/28 10:19登録)
同じタイトルの短編集は光文社からも出ていますが、それは新潮文庫版とは、表題作以外は全く異なっています。で、この評は新潮文庫版の方に対するものです。
暗く異様な感じの表題作は、今回再読してみると、現代では表現にもテーマにもかなり問題がありそうですが、迫力のある作品であることは間違いありません。
これも評判のいい中編『真贋の森』は唐突なオチが気になる人もいるかとは思いますが、やはり傑作。この作品を、或る日本美術史教授が絶賛していたとことが記憶に残っています。ちなみに「竹田」という画家のことがちょっと出てきますが、美術に詳しくない人は「たけだ」と読みそうです。これは江戸時代後期の田能村竹田のこと。
ALFAさんも好きだという『拐帯行』もいいですが、偶然が過ぎるとも思えます。雑誌か何かで紹介されたルートだという説明でもあれば、納得できるのですが。

No.2 7点 ALFA
(2017/03/09 17:21登録)
9編からなる短編集。
最も読みごたえのあるのは「真贋の森」。日本美術史界という閉じられた世界の中で、あるたくらみが緻密に構築されていくのがスリリング。エンディングはもう一方の「解」のほうが読み手のカタルシスは強いのだがなあ。それだけ読者に対する「動機」の刷り込みがうまいということ。
もう一つのフェイバリットは「拐帯行」。鮮やかな反転とどん底からの希望が見えて読後感がいい。
表題作は社会性とインパクトのあるモチーフによる復讐譚だが、尺の長さのわりにミステリとしての構造はシンプル。
「確証」は、何もこんなものをモチーフにすることはないだろうと思ってしまう。

No.1 9点 斎藤警部
(2016/10/07 23:23登録)
同集では現代小説篇の第一巻「或る『小倉日記』伝」以上にミステリ要素の濃厚な現代小説篇第二巻。題名だけ眺めてもその雰囲気は伝わると思います。それはそれとしても胆力が尋常でない、読む者を片っ端から吹っ飛ばさずにいない様な、内なる何かを振り切ってしまった小説の群れ。表題作の激烈さは世に知れた通り。

二階/拐帯行/黒地の絵/装飾評伝/真贋の森/紙の牙/空白の意匠/草笛/確証
(新潮文庫)

氏の他書評でも似たようなこと書いてますが「二階」なんて当たり前過ぎる漢字二文字単語で胸が苦しくなるほど素早い暗黒予感の奔走を強いるこの表題オーラの眼力、これが怖いんですよ。

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