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ミステリの祭典

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死を呼ぶブロンド
私立探偵マイケル・シェーン

作家 ブレット・ハリデイ
出版日1961年01月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 人並由真
(2023/01/06 11:10登録)
(ネタバレなし)
 その年の初秋のマイアミ。ある夜、「ヒピスカス・ホテル」の一室で死体を見た女は怪しい男に追われ、すでに乗客がいるタクシーの車内に逃げ込む。タクシーの運転手アーチイはトラブルにあったらしい女に、もし警察以外で助けを欲しいなら、地元の有名な私立探偵マイケル・シェーンに相談するよう進言した。かくして秘書兼恋人のルーシィ・ハミルトンとデート中だったシェーンは、またも新たな事件に関わり合う。一方、ヒピスカス・ホテルでは、室内に死体があると匿名の通報があり、ホテル探偵でシェーンも知人のオリイ(オリヴァー)・パットンが調べに向かうが、指示された部屋にはどこにも死体などはなかった。

 1956年のアメリカ作品。
 マイケル・シェーンシリーズの長編第26弾。
 
 メインゲストキャラのひとりが朝鮮戦争からの帰還兵で、ほかにも同様の人物が登場。そういう時節の物語だと実感できる。
 
 ルーシィとシェーンはすでに完全に相思相愛の仲で、ルーシィが自宅のアパートの鍵をすでにシェーンに2年前に渡しているという叙述もある。少なくともシェーンは再婚も考えているらしい。その辺も踏まえて、今回はルーシィのストーリー上での役割が非常に大きい。ネタバレになるので、詳しくは言わないが。
(しかしルーシィって、喫煙女性だったんだねえ。まあ1950年代のアメリカ女性って、かなりその傾向が強いけれど。)
 
 物語はシンプルなようで、かなり錯綜しており、確実に登場人物メモを作った方がいい内容。しかしその分、ストーリーの全域に仕掛けられた大ネタはかなり強烈で、これまで読んだシリーズの中でもたぶん間違いなく上位の出来。
 偶然が功を奏し、真相の解明(事件の説明)がシェーンの直感による面も大きいのはよろしくないが、それでもこれだけサプライズを食らわせてくれれば、お腹いっぱいである。
 
 シェーンとルーシィがプライベートでデートを楽しんでいる最中、緊急の事件の依頼があったら、どういうシステムで連絡がいくのか(シェーンのアパートの受付とかがスムーズに対応してくれる)、その辺のメカニズムもわかり、ファンには楽しい一編。

 第12章で点描的に登場し、事件にちょっとだけ関わり合う不倫カップルの描写が、どことなくウールリッチっぽいのも印象的。秀作。

No.1 6点
(2018/06/03 00:03登録)
1956年発表作ですから、ハリデイが書いた赤毛の私立探偵マイケル・シェーンのシリーズでも後期になります。実際のところ邦訳のあるものの中では最新作です。ただし1958年からは他の作家(主にロバート・テラルという人らしい)がハリデイ名義で30冊以上書き継いでいるそうです。
ハードボイルドの私立探偵小説の中でも、本シリーズは少なくとも有名どころでは珍しいことに三人称形式で書かれています。本作ではその形式だからこそできる、シェーンの視点と犯人など他の人物視点との切り替えを利用して、読者にシェーンがまだ知らないことを教えてくれ、サスペンスを生み出していますが、さらに犯人の側からも描きながら謎を残すような工夫もしています。
第1章の午後9時32分から第25章の午前0時までの2時間半ほどの出来事だけで構成されていて、シリーズ中でも短めの作品ですが、最後きれいにまとめていて、なかなか楽しめました。

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