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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:895件

プロフィール| 書評

No.475 6点 妖婦の宿
高木彬光
(2015/11/29 19:46登録)
 犯人当ての本格推理小説は犯人がわかったためしがないのですが、これはすぐにわかりました。ヤマ勘でなくきちんと理由もわかったことはひょっとしたら初めてかもしれません。私もいやな読者となってしまったのかもしれません。
 大体推理小説で犯人がわかってしまうと読む興味が薄れる傾向にあるのですが、本作品は初めのほうでトリックがわかってしまったのですが、読む分には面白さが減じるといったことはありませんでした。小説として優れているということなのでしょう。


No.474 7点 百万ドルをとり返せ!
ジェフリー・アーチャー
(2015/11/22 08:05登録)
詐欺や相場師の話はあまり好まないのですが、友人から「これは面白いからぜひ」と勧められ、読んでみました。
 なるほど面白い。登場人物もあくどいことをやってはいるが、冷血な人物はいない。
 インチキ商法に引っかかって巻き上げられた100万ドルを、頭を使って取り返す話なのだが、精緻な計画の割にハプニングが起きてちょっとハラハラさせる。
 この辺りがなかなかよくて、読んでいて楽しかった。
 最後はどんでん返しというかとんでもないこととなるのでびっくりしましたが、作者のサービス精神にあふれたところでもあるのでしょう。


No.473 6点 正三角形は存在しない 霊能数学者・鳴神佐久に関するノート
二宮敦人
(2015/11/13 21:53登録)
 初めは心霊現象研究会などという怪しげなお話で始まるのですが、最後まで読むとこれはちゃんとしたミステリーでありなかなかの出来であると感心しました。
 物語の三分の一ぐらいまでは怪しい話で、読みやすいのだがこれはちょっとどうかなあと思っていたのですが、主人公とマイコのしりとりの場面で、あまりのおかしさにクックと笑ってしまい周囲の人におかしなやつと怪しまれました。
 このあたりから話は急激に面白くなり、終盤のどんでん返し風の展開まで楽しく読むことができました。
 オカルトを数学的に解釈するなんてことはしょせん無理と思っていましたが、こういった展開は誠に意外。無理な押し付けではなくある意味で納得しました。


No.472 5点 真贋事件簿-京都寺町三条のホームズ(2)
望月麻衣
(2015/11/10 19:26登録)
Eエスプリタミステリーランキング第1位だと帯に書かれていますが、これはどうみてもミステリーというより軽い青春ドラマといった内容でしょう。お話に推理的要素はほとんどなく、ホームズ君が推理する内容はめちゃくちゃいい加減で、当たればよかったなあといったものなのですが、このお話の中では全て的中しています。
 だからといって全くダメということなないのですが、少なくてもミステリーとして期待してはいけない。
 こんなお話はいくらでも書けそうです。多少売れているようなのでまた続編が出るかもしれませんが、私はこれで終了としましょう。


No.471 9点 鍵の掛かった男
有栖川有栖
(2015/11/07 21:42登録)
 ずっしりとした本格物です。有栖川氏の作品では学生アリスシリーズが好きで、私の中では火村英生シリーズはちょっと落ちるのですが、これはすばらしい。
 大阪中の島のホテルを舞台として、物語はゆっくりゆっくり進んでいく。自殺とされた男の正体が全く分からないが、とても不思議なお話という言わけではない。火村は当分の間脇役で、専らアリスが地味に少しずつ真相を探っていくこととなる。
 普通こんな展開では読者は退屈してしまうのだが、作者の筆力と中の島に対する愛着がにじみ出て決して退屈させない。もちろん最後まで犯人は全然わからず、でも解決のあとはすっきりしており、作者独特の悲しみも共感しました。
 このところ有栖川氏の新作が若干さえない気がしていたのですが、こんなに重厚で長いお話に出会えて満足しています。
 あとは学生アリスの最終長編を心待ちにしています。


No.470 5点 京都寺町三条のホームズ
望月麻衣
(2015/11/01 16:59登録)
 骨董品に秘められた謎を、ホームズとあだ名がつくほどの推理力のあるイケメン大学院生がさらさらと解く。それに女子高生が加わってちょっとした恋の話も、といったお話。帯には人気ナンバー1キャラクターミステリーとしてある。
 作者は電子書籍大賞受賞とありました。電子書籍らしく「って」や「んだと」がやたら多く、私のような年代にはちょっと気になりました。
 嫌味がなく読みやすい。残酷な殺人などは全く出てこない。暇なときに読むのにはちょうど良い感じです。ただホームズ君の推理は実に見事に当たるが、ちょっとご都合過ぎではないでしょうかねえ。
 若い女性が書いているようで、話が推理より恋愛のほうに傾きがちです。
 京都の風情や骨董の薀蓄など悪くはないのですが、おじさんには気恥ずかしいね。
 でもシリーズものとして次作も出ているようなので読んでみようかな。


No.469 6点 からくり探偵・百栗柿三郎
伽古屋圭市
(2015/10/28 20:48登録)
 謎解け乙女がなかなか面白かったので、この作品も読んでみました。これも大正時代の探偵話。連作の間にちょっとした文章が添えられてあります。「謎解け」でもこういった趣向で、単なる短編集だけでなく長編としても成り立つような二重構造となっています。
 この作家は侮れない。冗談でやっていると思ったところが、実はちゃんとした理由があったことが最後に判明して、やっぱり背負い投げを食らいました。
 


No.468 6点 魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?
東川篤哉
(2015/10/24 15:09登録)
 推理小説に魔法使いが出てきては反則でしょう。なんせどんな密室でも魔法でとおりぬけ、瞬間移動でアリバイができたではお話にならないのですから。
 まあ本作品はこんなとんでもないことはやっていません(あたりまえか)
 倒叙型推理小説といった分類となるのでしょうか。なんせ犯人は分かっているし犯罪方法もはじめに述べてあるのですから。これをさえない刑事がマリィが魔法で解決?させたものを、現実に合わせての解決へ持ち込むといった推理小説としてあまり見たことがない筋書きとなったいます。
 第1作の魔法使いといかさまの部屋を読んだときは、大分がっかり。いつものギャグも大して面白くないし。さらに読んでいくとこの設定になれたのかまあ面白くは読めました。
 東川氏のファンとしては「謎解きはディナーの後で」がヒットする前の作品のほうが好みです。作者も売れっ子となり忙しいのか、作品の質がやや低下してきたように思われるのは残念です。


No.467 7点 帝都探偵 謎解け乙女
伽古屋圭市
(2015/10/18 09:38登録)
 なかなか大変なお嬢様と車引のお話。お嬢様が突然の名探偵宣言して、お抱え車引が陰で謎を解くという構造は、読んですぐにわかってしまう。読みやすくてまずますの感じと思って読んでいると、次第にこの物語の複雑さが披露されてくる。
 最後にどんでん返しがあり、おおなるほどと思っていたら、終章でさらにどんでん返し。ある面でうまく騙されていたことがわかる。
 作者は才能がありそうです。
 終章の話は悪くはない。確かに伏線も張ってあったのだが、こういった話にしなくてもよかったような気もします。このあたりは好みの問題でしょうが。


No.466 5点 奇岩城
モーリス・ルブラン
(2015/10/15 21:57登録)
 ルパンシリーズは有名ですが、ちゃんと読んだことはありませんでした。今回代表作とされる本作品を読んだのですが。
 まあはっきり言ってお子様向け大活劇といったところですかね。
 子供のころ読めばもっと良かったかもしれません。
 何となく怪人二十面相のような感じでした。暗号などもあるのですが、残念ながらフランス語の暗号のため私にとっては「ああそうなの」といった感じでした。


No.465 6点 化学探偵Mrキュリー3
喜多喜久
(2015/10/12 09:59登録)
 なんだかんだといって発売されているシリーズを全部読んでみましたが、「3」では舞衣が意外にもソフトボールの名ピッチャーであったことが判明する。さらにキュリー氏が全くの運動音痴であったことも分かり、ちょっとほほえましい。
 3作の中では「3」が一番良いようです。
 相変わらずすらすら読めるが、以外にも?キュリー氏が舞衣ちゃんを好ましく思っているようなこととなりました(大体わかっているけどね)。
 まだこのシリーズは続くかもしれませんがどんどんのめり込んでいくというほどの力はないように思います。


No.464 5点 化学探偵Mrキュリー2
喜多喜久
(2015/10/12 09:52登録)
 Mrキュリーシリーズの1を読んでもう一つと思っていたら、娘が3を借りてくれた。2は読んでいなかったのに3を読んだが、全然違和感はなかったが、やっぱり2も読まねばと思って購入しました。
 まあこんなもんですね。
 舞衣の図々しさはだんだん慣れたが、やっぱりやりすぎでしょう。
 慣れた分だけ安心して読めるというか、まあ暇つぶしに読むのならちょうどよさそうです。


No.463 5点 化学探偵Mr.キュリー
喜多喜久
(2015/10/12 09:46登録)
 科学探偵ミスターキュリーと、彼に厄介な話を持ち込むとんでもなくおせっかいでやたら図々しい舞衣という女の子の連作推理。
 キュリー氏も嫌がっているように見えるが、結局は舞衣の押しの強さに押し切られていやいや推理するが、これが見事に的中ばかりというある面でお定まりのお話ではあります。
 新しいところは科学探偵らしく科学にのっとった解決方法なのでしょう。
 登場人物がこんな図々しい娘というのはあまり好みではないのですが、読んでみると意外に嫌味な感じはなく、すらすら読めました。
 まあ暇つぶし程度なら悪くはないかな。


No.462 6点 殺人は容易だ
アガサ・クリスティー
(2015/10/04 08:29登録)
 ポアロやミスマープルが出てこないが、マープル物に近いイギリスの田舎のお話。嫌味のない人物が多くゆったりと読めました。
 解説にもあったが、名探偵マープルおばあさんが出てきてはこの話は成り立たない。読者をミスリードしていく手法はさすがであるが、この話だけだと物的証拠やありばいなどの証明がほとんどなく、ほかの人が犯人であるように書き換えても不都合はないように思えました。
 最後のシーンも急に犯人がべらべらと犯行理由をしゃべらせて(相手は睡眠薬を飲まされて眠る寸前のふりをして聞いている。なかなか寝ないで聞いているのも不自然だよね。)つじつまを合わせようとしているのですが。そのあたりの詰めがもう一つの感じがしました。
 


No.461 5点 時の娘
ジョセフィン・テイ
(2015/09/23 09:18登録)
 私は登場人物の名前を覚えるのが苦手なので、この物語を読むのに非常に苦労しました。ばら戦争に関しては世界史で昔習った程度で、リチャード3世なんて全く忘却のかなたの人物です。何度も系図を見ながら読んでいたのですが、系図に出てこない人物も多々あり、これがどんな関係なのかがわからなくなり、そのまま続けて読んでいくとまた苦難のことか不明の話となってしまう。仕方なく初めのほうを探し出しまた読み返すといった作業の連続なのです。たまたま国際線の飛行機の中で読んでいたので、ある意味良い暇つぶしとはなったのですが。
 歴史推理そのものは決して嫌いではないので何とか読み通しましたが、面白く読むまでにはとても至りませんでした。
 イギリス史に興味がある方や外国人の名前を覚えるのが得意な方にとっては非常に面白かったのかもしれませんが、私にとってはちょっと気を許すと全然話が分からなくなる、難敵の小説でした。


No.460 8点 予告殺人
アガサ・クリスティー
(2015/09/05 17:55登録)
 新聞に殺人の予告。そして集まった人たちの中で意外な殺人?と被害者が出る。実に奇抜な発想。こういった物語はだいたいかなりへんちくりんな人間が登場し、むちゃくちゃと思われる筋立てとなりがちなのだが、さすがクリスティーはきちんと話を作り上げていました。ちゃんと手がかりも示してくれているのだが、やっぱり全然犯人は分かりませんでした。
 私はこの作品、好きです。このサイトでは評価がやや低いようですが、本作品はミスマープル物の最高傑作と評価する方も多いのです。私も本作品は傑作と思います。残念ながら全作品を読んだわけではないので最高かどうかは分かりませんが、今まで読んだマープル物の内では一番と思いました。
 唯一欠点としては、外国人のメイドのミッチーがやたらうるさく、めちゃくちゃな人間として描かれているところぐらいでしょう。我々にとってはヨーロッパやアメリカは同じ感じがするのですが、イギリス人にとっては大陸の人やアメリカ人はおおいに異質な人種なんだということがよくわかる。


No.459 5点 猫とアリス
芦原すなお
(2015/08/29 21:11登録)
 「雪のマズルカ」が私には合わないと評価しましたが、芦原氏のファンなので続編もやっぱり読んでしまいました。多少の免疫ができたのか、作者も前作よりは本来の姿を見せているのかわかりませんが、「マズルカ」よりは良かった。でも芦原氏のほかの小説のほうがずっと好きです。ほんわかとした話ばかり書いているとこんな話を書きたくなる気持ちは分からなくもないのですが。話として現実性に無理があるところは、はんわか物なら許せるのですが、こういったシリアスなものとなると傷として目立ってしまいます。
 


No.458 5点 闇からの声
イーデン・フィルポッツ
(2015/08/09 08:15登録)
 小説だから許されるのでしょうが、現実にこれをやったら大変なことになるでしょう。完全な思い込み操作でもあり、冤罪が続出間違いなし。
 古い小説ですが、当時は(今もか?)イギリスが階級社会であることを改めて認識させられました。
 犯人も探偵も本質的には狂的要素が強くても、外見は極めて人当たりが良く紳士的です。
 フィルポッツのほかの作品でもそうですが、平凡な描写が多く退屈してしまうところが多々ありました。感じの悪い話ではありませんが、大して面白くもなかったというのが感想です。


No.457 7点 鏡は横にひび割れて
アガサ・クリスティー
(2015/08/08 07:40登録)
 クリスティーが70過ぎて書いた小説だけあって、話の組み立てや展開についてはよくできた小説と思います。相変わらずの意外な犯人や、意外な動機。それらをきちんと散らばらせてくれているのですが、やっぱり犯人は分からなかった。だからといって無理な話では決してなく、ミスマープルが謎を解いてくれるとなるほどと納得できます。
 私として多少評価が低めなのは、ミスマープルの話なので当然ではありますが、日常の平々凡々たる描写が結構多い(ここが魅力だという方も多いと思いますが)。私としてはちょっと退屈といった感がぬぐえません。探偵としてはポアロよりミスマープルのほうが好きなのですが、話としてはポアロ物のほうが好みかもしれません。


No.456 8点 葬儀を終えて
アガサ・クリスティー
(2015/07/26 08:10登録)
 登場人物がやや多いが、表に系図と人物像が載せてあるので読むのに苦労はなかった。
 意外な犯人、巧みな伏線など過不足なくくわえているのに(しかもこれが伏線ですよといわんばかりの書き方!)犯人は全然わからず、見事にやられました。
 こういった内容であると途中で緩むと急に面白くなくなるのだが、本作品はそういったところもなく、登場人物もあまり極端な人間はおらず(最終的には変な人間だが、まあ変でなければこんなことはしないが)、読んでいていやな感じは全く受けなかった。
 クリスティーの作品の中でも好きなもののひとつです。大変面白かった。

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